中国関連

特殊塗料を塗った戦闘機「J-16」は、中国第3のステルス戦闘機になり得るか?

事実の真意は不明だが、もし中国の主張が正しいなら、J-16は中国にとって第3のステルス戦闘機になるかもしれない。

参考:China’s New Stealth Fighter?: Is the J-16 Getting Stealthy or Not?

コーティングだけで第4世代機が第5世代機に近いステルス性能を獲得?

中国人民日報傘下の環球時報紙(グローバルタイムズ)は、中国空軍が運用中のマルチロール戦闘機「J-16」は、特殊なコーティングによって第5世代機に近いステルス性能を獲得したと報じている。

中国の軍事専門家によれば、「J-16」の機体形状はステルスよりも空中機動性に有利な特性を持っているが、特殊なコーティングを施すことで敵レーダーからの検出を回避できる可能性があると言い、機体のカモフラージュ塗装と組み合わせれば、敵は「J-16」を近距離でしか認識できず、戦闘において「J-16」は非常に優位な立場を占める事ができるという。

但し、特殊なコーティングが一体どのような仕組みで、敵レーダーからの検出を回避できるのか明らかにはしていない。

そもそも中国空軍の「J-16」は、ロシアから入手した第4世代機「SU-27」を無断でコピーした「J-11」をベースに開発された機体であるため、レーダー反射断面積を減らすための設計が取り入れられていないが、中国が「J-16」を開発する際、レーダー波吸収素材を取り入れたためオリジナルの「SU-27」や「J-11」に比べ、ステルス性能が向上していると言われている。

そこに今回登場した「特殊なコーティング」を施すことで中国空軍の「J-16」は、第5世代に近いステルス性を獲得したと言っているのだ。

果たして、特殊なコーティングがどのようなものなのかは想像もつかないが、全く手がかりが無いこともない。

中国の科学者達は、メタマテリアルの一種である「メタ・サーフェス(人工表面)」を使用した新しいステルス技術(恐らく塗料形式、もしくは機体の外皮)の開発に成功したという。

メタ・サーフェスとは、自然界には存在しない反射特性を持つ人工表面のことで、メタ・サーフェスに照射されたレーダー波を含む電磁波の反射を制御できると言われており、反射される電磁波の挙動を正確に計算するための数学モデルを、中国は世界で初めて完成させたらしい。

米国のF-22やF-35、中国のJ-20やJ-31は、主に形状制御技術によってレーダー反射断面積を減少させ、マイクロ波など短波を使用したレーダーに対するステルス性能を確保しているが、この技術だけではステルス機探知に有効な長波を使用したレーダーから身を隠すことが難しいと言われている。

出典:pixabay

現在、長波を使用したレーダーにある程度のステルス性を持っているのは、凹凸の少ない曲線で構成された全翼機のステルス爆撃機「B-2」だけだ。

しかし、メタ・サーフェスを使用し、長波に有効な新しいステルス技術が完成すれば、全翼機のような形状でなくとも長波を使用したレーダーに対するステルス性能を確保でき、事実上、軍事用に使用されているレーダーに対して、完全なステルス性を持つことになる。

恐らく、今回「J-16」に使用された「特殊なコーティング」は、このあたりに関連する技術によって開発されたのかもしれないが、メタ・サーフェスの技術自体がまた実用化域には達していない段階で、機体形状の設計変更を行わず、第5世代に近いステルス性能を確保できるのかについては正直、疑問だ。

SU-27のレーダー反射断面積は、F-15と同じレベルといわれており、これをベースにした「J-16」が、幾ら「レーダー波吸収素材」や「特殊コーティング」を施したとしても、正面からの受けるレーダー波に対しては直線的なエアインテークが、機体横方向から受けるレーダー波に対しては大型の垂直尾翼がレーダー波を反射してしまうため、これをどうにかしない限り大幅なステルス性向上は見込めない。

出典:public domain

F/A-18E/Fのように、エアインテーク内のエンジン吸気ファン手前に「レーダーブロッカー」を設置するという手もあるが、おそらくこのような手段を全て用いたとしても、「J-16」が達成できるレーダー反射断面積は、ステルス性が大きく向上したF/A-18E/F(1㎡)程度ぐらいだろう。

もし「特殊コーティング」によって、レーダー反射断面積が0.001㎡以下になるようなことがあれば、中国空軍の航空機は既存機を含めて全てがステルス機化してしまうことになる。

流石に、これは嘘くさいと言うしかないが、真実は果たして・・・

 

※アイキャッチの出典:aapsky / stock.adobe.com

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 8月 20日

    中国の技術発展速度が驚異的なのは明らかだけど、軍事的な発表に関しては信頼に足るデータも開示されないし検証もできないしオカルトや都市伝説と同様の話としか言えないのがなんとも。
    日本の潜水艦の潜航可能深度もそうだけど、我々が真実を知ることが出来る日は訪れないのでしょうなぁ。恐らくはその前に死んじゃう。

    • 匿名
    • 2019年 8月 20日

    わぜわざこういうのを流すというのは逆に、次世代戦闘機の開発がうまく進んでいない焦りを感じます。

    1
    • 匿名
    • 2019年 8月 20日

    もう日本がどれだけ足掻いても追い付けないレベルの話になってしまったな

    議会と市民団体と財政難に縛られたアメリカの軍事技術レベルは落ちる一方
    トップランナーは既にロシアと入れ替わって久しい
    中国はロシアの一歩半後ろを追走する一方嘗ての「西側」諸国は彼らの後を追うモチベーションすら失ってしまった
    5年後の世界はロシアと中国が覇権を分け合う状況になるだろう

    1
      • 匿名
      • 2019年 8月 20日

      ないよ

      2
      • oominoomi
      • 2019年 8月 21日

      ロシア・中国の軍事技術を軽視するのは禁物ですが、この両国からの情報は必ずしも正確でない、と言うよりかなり話が盛られていると考えた方が良いと思います。
      一度身に染み付いたプロパガンダ体質は、なかなか変わるものではないです。

      2
        • サンパン
        • 2019年 8月 21日

        だいたい、こういうのを言い出す場合、開発途上国向けに製品を売ろうとか、技術を使って加工した兵器(J16はロシアからエンジン売ってもらえなくなるので、売りにくいでしょうけど)の販売を検討してるときじゃ無いかなと思います。
        J-31の時も当初、積極的に情報公開してた理由が、開発元が軍から資金を得られなかったために、軍事企業が自前資金と技術で開発して海外向けに売ろうと宣伝してたからでした。J-31の話のソースは瀋飛飛機研究所の李天院士(2013年当時)の伝記から。

        2
    • 匿名
    • 2019年 8月 20日

    それが有用ならロシアがとっくにやってるっての。
    ロシアが手を出してないんだからお察し

    1
    • 匿名
    • 2019年 8月 20日

    空自F-2はステルス性向上のための若干の形状変更と電波吸収材を採用していますが、原型のF-16のRCS 1.x台と比較してどれくらい向上しているのかよくわかってないですね。
    レガシーホーネットからスーパーホーネットの形状変更でRCSが3.x台から1.x台まで低減してますが、レーダー対策素材が形状変更並の効果を発揮するのかは、F-2の事例が参考になりそうです。

    • 匿名
    • 2019年 8月 20日

    サイレントイーグルやアドバンスドスーパーホーネットといった第4世代に手を加えたなんちゃってステルス機
    今回の塗るだけステルスは上記以下にしかならんだろうな

    • 匿名
    • 2019年 8月 20日

    劣勢側の精一杯のプロパガンダですので、一々真に受けるのは馬鹿らしいと言うものです。
    実態は、大量破壊兵器があると吹かし、惨めに散ったフセインと変わらんでしょう

    • 匿名
    • 2019年 8月 21日

    中国四万年の歴史ですから。

    • 匿名
    • 2019年 8月 22日

    皆様ご存知の通り、環球時報は中国共産党筋の機関誌です。
    バイアスがかかっている記事とふんで読み解くと裏が見えるようです。

    記事の内容は孫氏の兵法にある、必ず勝つという勝算がない場合、勝てるようになるまで時間を稼ぐ、に即していると見れます。
    ステルス機数はアメリカ・同盟国との差が歴然であるため、ステルス塗装を施すと旧型機もにわかステルス機に早変わり、自軍を実力以上に演出し、時間を稼ぎその間にステルス機の製造に邁進する、が目的と思われます。
    次に控える作戦に備え、相手をけん制しつつ水面下で準備を進めるためと考えると良く分かるような気がします。

    2
    • 匿名
    • 2019年 8月 23日

    レーダー反射断面積(RCS)について取り上げるなら、前面はエンジン吸気ファン、背部はエンジン排気ノズルでスーパーホーネットのレベルには到底及ばないでしょう。

    ロシアと中国のステルス機の特徴として、背部のレーダー反射断面積の対策に注力していないというのがあります。
    これは攻撃(戦闘)完了後、後ろからのレーダーに捕捉されやすいという弱点を晒すことにことになります。
    攻撃後は最大速度で離脱という使い方を前提ということでしょうか。

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