中国関連

クアッド同盟を警戒? 中国とインドが軍を後方に下げることで合意

インドと中国は国境地域に配備された軍を後方に下げることで合意したと報じられている。

参考:India, China foreign ministers agree to quickly disengage border troops

インドと中国がカシミール州ラダックの国境未確定地域で睨み合いを続ける双方の軍を後方に下げることで合意

現在、モスクワで開催中の上海協力機構(SCO)外相会談に参加しているインドのジャイシャンカル外相と中国の王毅外相が10日に会談、カシミール州ラダックの国境未確定地域で睨み合いを続ける双方の軍を後方に下げることで合意したと報じられている。

両国の外相は「国境未確定地域での軍事的緊張状況は双方にとって利益はない」という認識で一致、両軍による対話を継続して迅速に軍を後方下げ、適切な距離を保つことで軍事的緊張を緩和することで合意したらしい。

出典:Public Domain 人民解放軍地上部隊の兵士

本当に国境未確定地域から中国が軍を下げるのかは今後の推移を見守る必要があるが、インドは米国が提唱するクアッド同盟(米日豪印)に参加するのか揺れており、今年10月に開催が予定されている米日豪印4ヶ国による会合で日米印3ヶ国で実施している国際共同演習「マラバール(Malabar)」にオーストラリア参加を認めるかが一つの焦点となっている。

これまでマラバールへのオーストラリア参加が実現しなかったのは「中国を刺激する」という理由でインドが反対したためだが、今年5月以降に発生したインドと中国の軍事的対立の影響でインドがオーストラリア参加を容認するのではないかという見方が欧米を中心に強まっているが、当のインド政府は「中国軍の撤退交渉の内容次第」というスタンスを崩していない。

米国務省副長官のスティーブン・ビーガン氏は先月、クアッド同盟と呼ばれている米日豪印4ヶ国の関係を「北大西洋条約機構(NATO)に準じたものに拡張して公式化することを米国は目指している」と発言して注目を集めており、その第一歩となるのが日米印3ヶ国で実施している国際共同演習「マラバール(Malabar)」へのオーストラリア参加なので、今回の外相による合意で国境未確定地域の緊張状態が解消に向かえばマラバールへのオーストラリア参加は不発に終わる可能性が高いだろう。

そうなれば米国がクアッド同盟と呼んでいる米日豪印4ヶ国の協力体制は不完全なもの(米日豪3ヶ国だけでは地政学的に中国と中東を結ぶインド洋を確保することが難しく中国包囲網が不完全)になり、クアッド同盟にベトナム、韓国、ニュージーランドを加えた「太平洋版NATO」への発展も幻で終わるはずだ。

中国もインドがクアッド同盟参加で揺れているのを知っているため、これ以上の対立は自分たちの首を締めるだけ=クアッド同盟成立を後押しするだけと考え、本当に国境未確定地域から軍を後方に下げる可能性は高い。

果たして中国はインドとの合意を守り国境未確定地域から軍を後方に下げるのか?注目される。

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain カナードを装備したインド空軍の戦闘機 Su-30MKI

自衛隊とインド軍の関係強化が実現、日印が物品役務相互提供協定に署名前のページ

受注すれば約1兆円? 韓国、ポーランドに戦車「K-2」の共同生産を提案次のページ

関連記事

  1. 中国関連

    中国、建造を再開した4隻目の空母に原子力推進を採用する可能性大

    香港のサウスチャイナ・モーニング・ポスト紙は13日、技術的な問題で建造…

  2. 中国関連

    手堅くB-2を模倣? 中国空軍がステルス爆撃機「H-20」の公式CGを初公開

    中国人民解放軍空軍は5日、秘密のベールに包まれているステルス爆撃機「H…

  3. 中国関連

    中国が未確認の武装無人水上艦をテスト中、以前のUSVよりも実用性が向上か

    米国のUSNI News(米国海軍協会)は11日、中国軍が遼寧省大連近…

  4. 中国関連

    中国、極秘に開発してきたステルス爆撃機「H-20」を年内にも公開予定

    これまで秘密のベールに包まれていた中国のステルス爆撃機「H-20」が珠…

  5. 中国関連

    中国はカザフスタンへのロシア干渉を拒否、中央アジアの力関係に変化の兆し

    トカエフ大統領と会談した習近平主席は「カザフスタンに対する如何なる勢力…

  6. 中国関連

    遂に量産機が完成か? 中国空軍指定色に塗装されたステルス戦闘機「J-31」が姿を現す

    米国メディアは、中国がJ-20に続いて開発したステルス戦闘機「J-31…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 9月 11日

    ここでちゃんと秩序構築ができるかどうかが、この先インドが中国から侵食され続けるかどうかを決定付けると思います。
    インドは段階的にまずは関税引き上げなどで対処したいのでしょうが、領土問題は経済を武器にしてもなんの解決にもなりませんね。
    秩序への挑戦は、より強固な秩序の構築以外に対抗手段はないでしょう。

    15
    • 匿名
    • 2020年 9月 11日

    中国は軍事関連で刺激しなくても、インドが開発を進めるだけで勝手に攻めてくるのはよく理解したでしょう。永続することはないその場しのぎの合意で終わるのか、恒久的な抑止力の構築に動くのか、インドはしばらく行ったり来たりを繰り返すことでしょう。

    しかし中国が変わらない以上、最終的な結論は変わらないと思います。今回の交渉も中国はインド側の開発停止を暗に要求してくるはずです。

    15
    •  
    • 2020年 9月 11日

    合意があっても、信頼性の低い国が合意通りに実行するかどうかというのは別問題

    12
    • 匿名
    • 2020年 9月 11日

    自衛隊とインド軍の間で食料や弾薬を融通する物品役務相互提供協定(ACSA)に署名
    日印、物品協定に署名 安全保障で連携強化
    リンク
    もう元には戻らないでしょう(インドが非・同盟主義に固辞することは無い)

    8
      • 匿名
      • 2020年 9月 11日

      物品役務相互提供協定に弾薬は含まれてないよ。融通しあうのは食料や燃料なんかの物資や通信や補修なんかのサービスだけ

      2
        • 匿名
        • 2020年 9月 11日

        日印の場合は日豪とかと違って武器の互換性の問題で弾薬融通するのはいろいろ難しいかも。
        とはいえ、弾薬以外は豪とのACSAとほぼ同じ内容ですね。

        日豪:リンク
        日印:リンク

        1
        • 匿名
        • 2020年 9月 11日

        弾薬が除外って、どこソースか教えて?
        一行目は記事からの引用だし
        ACSAで弾薬を融通しなければ意味が無い 
        他の(日米とか、自衛隊のACSA)記事でも弾薬が除外なんて、アホな事は書かれていない

        1
          • 匿名
          • 2020年 9月 11日

          外務省が日本語で公開してるACSAの内容読めば「この協定は日本国の自衛隊又はインド軍隊による武器又は弾薬の提供を含むものと解してはならない(第2条3項)」とかてますよ。

          9
          • 匿名
          • 2020年 9月 11日

          時事も原文読まずに記事を書いたんだろうね。

          3
          • 匿名
          • 2020年 9月 11日

          このブログの一つ前の記事に書かれてるというのに
          アホはお前だろ

          6
      • WSO
      • 2020年 9月 13日

      日本とインドガーなんて的外れな話していても意味無いんですよ。そもそも論的にインドと豪州という当事者同士が安全保障関係強化の協定締結してんだから。

      【豪印、防衛協力で新協定 対中けん制 首脳が合意】(2020年6月5日付け日経)
      『豪州のモリソン首相とインドのモディ首相は豪印関係を従来の戦略パートナーシップから包括的戦略パートナーシップに格上げすると決めた。相互後方支援協定の締結でも合意した。ロイター通信によると、この協定で両国の軍隊が互いの艦船や航空機に燃料補給したり、整備施設を利用したりできるようになる。』

      1
    • 匿名
    • 2020年 9月 11日

    合意しても本当にきちんと軍を後方に下げるかどうかという疑問が。
    微妙な所に配置しておいて、「合意は守ってるだろ?いちゃもんつけるな!」みたいな姿勢を見せる様な気がする。

    14
      • 匿名
      • 2020年 9月 11日

      それならそれでいいんじゃないでしょうか?
      そのように居直るならインドはクワッド同盟にOKで話を進めますよというだけのことで
      中国がクワッド同盟を嫌がるなら、いつまでもとは言えないけどもしかするとインドはクワッド同盟を今後のカードに使えるかも

      2
    • 匿名
    • 2020年 9月 11日

    これ、下げるのは軍だけで、インド側のインフラ開発は続行するのか気になる

    もしそうなら、クワッドを上手く脅しカードに使ってほぼ無血で中国を追っ払ったインドのテクニカルノックアウトという事になるけど

    16
    • 匿名
    • 2020年 9月 11日

    中国らしくない
    いつもなら相手_インド_同じように国境?を挟んで開発し始めるだろうに

    • 匿名
    • 2020年 9月 11日

    所詮は似たもの同士
    イモ引かずに潰し合え!

    • 打倒共匪
    • 2020年 9月 11日

    中共の奴らは例え今退いてもまたすぐに悪さをするだろう。

    7
    • 匿名
    • 2020年 9月 11日

    インドは、他国の軍隊を本国内に置く意思は無いから、米国の提案は論外だろうけど、
    インド洋で中共海軍がミサイル演習でもするようなら、豪州の出番があるか。
    犠牲者は出たが、現状でインドは国境をうまく管理していると思う。

    3
    • 匿名
    • 2020年 9月 11日

    中国としてはここまでやっておいて引き上げたら
    自国民から弱腰と見られるから面子が立たないんじゃ無いかな?
    おとなしく引き下がるか疑問だ

    8
    • 匿名
    • 2020年 9月 11日

    ここで中国が根本的な方針転換を行わなければ、いずれは同盟に入る事になるのは明白
    本格的な対立構造になる時期が多少遅れただけだと見る
    しかし、今のインド・アメリカの状態では遅れても中国有利になるとは思えないな

    2
    • 匿名
    • 2020年 9月 11日

    これでインドが対中包囲網に意欲を失わないか心配
    インドは西側に組み込まれたくないと思ってるのもまた事実だしな

    3
    • 匿名
    • 2020年 9月 11日

    インドの微妙な距離感を忘れないように
    歴史的にも、第三世界の雄としての振る舞いかたがありますから、白人主導(米、そしてオーストラリアも)の同盟関係に組み込まれるのは避けるでしょう
    もちろん中国との駆け引き材料としては使うでしょうが

    4
    • 匿名
    • 2020年 9月 11日

    個人的にはインドは海上でのみ日米豪に協力してくれればそれで充分かと思う
    インドは地理的にもちょっと立ち位置が違うし、ポテンシャルが大きい国だからアメリカのような大国に干渉されたくないってのも理解できる
    今後中国の圧力が強まれば自然とクアッド同盟に近い協力関係が深化するんじゃないかな

    5
    • 匿名
    • 2020年 9月 11日

    似たような協定は既に7月に結ばれ裏切られてる
    あてにならん

    2
    • 匿名
    • 2020年 9月 11日

    やっぱりこういう時9条が枷になるな?
    中国が9条で同盟が成立しないと睨んでいるだろうから、
    未だ撤退しないんだろうな。

    2
    • 匿名
    • 2020年 9月 11日

    アメリカとしては言い出した時からこの展開はとっくに織り込み済みでしょう
    たとえ今回オーストラリアを招待しなかったとしても次は日米豪がインド洋で軍事演習をして、その後は西太平洋・南シナ海・インド洋の軍事演習を日米豪・日米印で恒常化していく
    そして次に中国とインドが軍事衝突を起こせばそこでクアッド同盟成立だよ

    2
      • 匿名
      • 2020年 9月 11日

      インドとは同盟関係というかたちを取らなくても、インドの立場を尊重して、インド海軍だけ”不文的に”日米豪と協調してもらえればいいでしょう。いますぐ豪州がマラバールに呼ばれなくても、士官がオブザーバー参加くらいするでしょうし。

      3
    • 匿名
    • 2020年 9月 11日

    進めた兵を下げるだけでアメリカの戦略を挫くことが出来たんだから中共の大勝利やね
    国際合意なんて守る国じゃないからまたいつでも好きな時に進軍すればいいし

    2
      • 匿名
      • 2020年 9月 11日

      ぶっちゃけ、ガチの戦いになったら今の世の中には中国に勝てる国なんて存在しないからなぁ
      インドな常識的な判断下したと思うわ

      1
      • 匿名
      • 2020年 9月 11日

      逆。
      そもそもこの国境対立を仕掛けたのは中国だし、衝突が起きた所へこの話を持ち出すことで中国は兵を下げざるを得なくなった。アメリカからインドへの贈り物だよ。
      中国が兵を引けばここでの話は流れであろうことくらいアメリカが想像できないわけがないんだから
      これは最終的にクワッド同盟に持っていくための布石に過ぎないよ

      4
    • 匿名
    • 2020年 9月 12日

    インドはアメリカと同盟を組むとロシアとの軍事交流が難しくなるから、クアッド同盟なるものには消極的だろう。
    兵器体系を複雑化させてまで、どの国にも兵器体系を依存しない事がインド軍の軍備から見られるので
    インドがクアッド同盟なるものに参加する可能性はこれからも低いと思う。
    でも、宿敵パキスタンが中国と蜜月関係を結んでるので、インドがアメリカに接近する可能性が有るとすれば、パキスタンに絡んで中国が動いた時だろうと思う。

    2
    • WSO
    • 2020年 9月 13日

    >米国が提唱するクワッド同盟(米日豪印)

    その4ヵ国の枠組みを最初に提唱したのは「セキュリティ・ダイアモンド構想」の安倍総理ではないかと。そこけっこう重要な事だと思うので付記した方がいいと思われますが。

    インド・パシフィック ディフェンスフォーラムHP↓
    『【安倍首相は2006年の著書「美しい国へ」の中でも述べているように、早くからオーストラリア、インド、日本、米国の4ヵ国による安保連携を提唱している。』

    『2012年、安倍首相は内閣総理大臣に再就任する直前に執筆した英語論文「Asia’s Democratic Security Diamond(アジアの民主主義セキュリティダイアモンド)」で、インド太平洋地域の安保連携の構想を再び主張している。同首相は再びオーストラリア、インド、日本、米国に対して、「インド洋地域から西太平洋に至るまでの海洋公共財の保護」および「中国による海洋と領土の拡大の阻止」を呼びかけた。』

    『ランド研究所の防衛アナリスト、ジェフェリー・ホーナング(Jeffrey Hornung)博士は、「安倍首相のセキュリティダイヤモンド構想は名案である」とし、「これにより、同様の価値観を持ち、航行の自由、民主主義、人権、法の支配を真に優先する国が結束できる」とFORUMに語っている。』

    ちなみに、今では米国・米軍が当たり前のように使っている「インド・太平洋」という用語・概念も安倍総理が初めて使用したという記述もアリ。

    【セキュリティダイヤモンド構想】の日本語wiki↓
    『2007年にインド議会演説で当時首相だった安倍晋三が「自由で繁栄するインド太平洋」というテーマでインド・太平洋という用語を外交用語として最初に使用し、日印両国の協力を強調した[4]。』

    4
    • WSO
    • 2020年 9月 13日

    インドは消極的。インドは中立方針。マラバールに豪州参加は無い。と思うそこのあなた。

    過去記事の「2020.07.11 中国が恐れていた印日米豪4ヶ国による共同演習「マラバール」実現か」
    上これを読もう!

    1
    • 匿名
    • 2020年 9月 14日

    太平洋版NATOの構築は意欲的な計画だし間違いなく作る意義はあると思うが、
    インドとしては中国は地続きの国だし、もしこの計画が頓挫した時の中国との関係悪化を考えれば慎重にはなるのは当然だな。
    海を隔てている日本とインドではやはり危機感が違うのでインド側の思惑もよく理解できる。

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  2. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  3. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  4. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  5. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
PAGE TOP