中国関連

ロシア依存からの脱却、中国が国産戦闘機用エンジンの大量生産に近づく

中国はロシアからの輸入に頼っていた戦闘機用エンジンの国産化と量産に目処がついたため、パキスタンと共同開発した第4世代戦闘機「JF-17(別名:FC-1)」や第5世代戦闘機「J-31」などの大量生産が可能になったと報じられている。

参考:China completes construction of medium-thrust aeroengine production line

中国の戦闘機輸出や空軍の発展に大きく寄与することになる戦闘機エンジンの新製造ラインが完成

中国のグローバルタイムズ紙(環球時報の英字版)は10日、航空エンジンの開発・製造を行っている中国航空発動機集団有限公司(AECC)が建設中だった戦闘機エンジンの製造ラインが完成して受け入れ検査に合格したと報じており、この新しい生産ラインは第4世代戦闘機「JF-17(別名:FC-1)」や第5世代戦闘機「J-31」に搭載されるWS-13を大量生産するためのものだと指摘しているため非常に注目される動きだ。

中国とパキスタンが共同開発したJF-17はロシアから調達したクリーモフ製エンジン「RD-93(RD-33の派生型)」を搭載しているのだが、同機の輸出がMiG-29やMiG-35輸出の障害になると判断したロシアが一時的にRD-93の供給を停止するなどJF-17製造はモスクワに判断に依存している。

出典:Shimin Gu / CC BY-SA 4.0 パキスタン空軍のJF-17

さらにロシアはRD-33の製造事業にインドのヒンドスタン航空機を参加させてロシアとインドの共同事業に発展させたので、今後のRD-93供給にはロシアだけではなくインドの意向まで絡んでくること中国は懸念している=つまりパキスタンへのJF-17供給を遮断したいインドはRD-93の中国輸出を妨害してくる可能性があるという意味だ。

そのため中国はRD-93を置き換えるために国産エンジン「WS-13」を開発して実機への搭載が始まったが供給量が十分ではなく、現在開発中の第5世代戦闘機「J-31」や同機を艦上戦闘機に改造した「J-35」の開発も進んでいるためWS-13の供給量を大幅に引き上げる必要に迫られていたが、待望の生産ライン増設が完了したため「同エンジンを搭載する戦闘機の大量生産が可能になった」と中国軍の兵站に関連した機関で上級顧問を務める人物が主張している。

出典:Weibo 開発中の第5世代戦闘機「J-31」

JF-17は基本的に輸出向けで中国空軍は採用していないが同機は第5世代戦闘機「J-20」に用いられた技術を多数流用してアップグレードした「JF-17 Block3」の初飛行が2020年に成功しており、国産エンジン「WS-13」の安定供給は同機の輸出に欠かせない。

さらに第5世代戦闘機「J-31」や同機を艦上戦闘機に改造した「J-35」にはRD-93やWS-13をベースに開発中の国産エンジン「WS-19(最大推力117kNらしい)」が採用される予定なので、中国航空発動機集団有限公司の新製造ラインが稼働すれば戦闘機の海外輸出や中国空軍の発展に大きく寄与することになるはずだ。

関連記事:中国が開発を進める第5世代戦闘機J-31、艦載機型J-35は年内に初飛行を予定
関連記事:再掲載|激安の第4.5世代機誕生、中国がJ-20の技術で「JF-17」を改良
関連記事:インド空軍、中国の戦闘機「JF-17 Block3」に対して仏製戦闘機「ラファール」は優位性を失う
関連記事:中国は困惑、ロシアがインドに「T-14」を供給して軍事バランスを調整

 

※アイキャッチ画像の出典:Robert Sullivan / Public domain

米軍、複数の空対空ミサイルを運搬可能な空中発射型UAV「LongShot」開発を発表前のページ

米軍を最も安価に攻撃する方法を明かす米海兵隊大将、答えはコストコで売っている次のページ

関連記事

  1. 中国関連

    中国覇権を支援した米政権の対中政策、最大の過ちはフィリピン基地の喪失

    米シンクタンクで中国問題を専門に扱うフィッシャー氏は30日、世界秩序を…

  2. 中国関連

    手堅くB-2を模倣? 中国空軍がステルス爆撃機「H-20」の公式CGを初公開

    中国人民解放軍空軍は5日、秘密のベールに包まれているステルス爆撃機「H…

  3. 中国関連

    中国、待望の新型エンジンWS-15を搭載するJ-20Bの初飛行に成功か

    中国では新型エンジン=WS-15を2基搭載するJ-20Bの初飛行シーン…

  4. 中国関連

    中国、無人化した低コストの戦闘機「J-7」を飛ばして台湾空軍の負担増を狙う

    中国空軍は無力な無人標的機として活用していた戦闘機J-7を「台湾空軍の…

  5. 中国関連

    中国、ヘリコプターのステルス化やティルトロータータイプの有人戦闘機を開発中か

    中国は敵のレーダーに発見されにくい低観測性=つまり航空機や艦艇等の開発…

  6. 中国関連

    中国で間もなく開幕する珠海航空ショー、無人機がショーのハイライトに

    今月8日に開幕する珠海航空ショーでは「新型の無人航空機やカウンタードロ…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 2月 10日

    とにかくエンジン
    エンジン作れないで国産も何もない
    中華の躍進はようやくここからか、まあがんばってくれ

    11
    • ソソソナス
    • 2021年 2月 10日

    中国が国防予算に大金を費やしている以上、いずれはロシアや米国と同等レベルの兵器を生産できるようになると思う。日本は費用対効果を良く考えてメリハリをつけて安保技術を開発していくしかない。個人的には空母も強襲揚陸艦よりも、共同交戦能力、潜水艦、長射程誘導弾、無人偵察機の四つに注力すべきだと思うのですが?

    33
    • 匿名
    • 2021年 2月 10日

    また一歩、中国軍が厄介になった。
    日本もいい加減防衛予算増やさないと…

    33
      • 匿名
      • 2021年 2月 10日

      中国空軍の主力戦闘機に搭載されているWS-10シリーズは既に国産化していたので、中国軍としてはWS-10の実用化を優先していた、ということでしょうか。

      9
        • 匿名
        • 2021年 2月 10日

        輸入のAL-31を置き換えるために開発したエンジンがWS-10とWS-15、RD-93(RD-33)を置き換えるエンジンがWS-13とWS-19。AL-31はJ-16を除くJ-10・J-11・J-15・J-20に採用されてきていたのに対して、RD-93は
        輸出用のJF-17とメーカー試作中のJ-31くらいだからどうしたって優先度が低い。

        3
      • 匿名
      • 2021年 2月 10日

      予算もだけど、人員不足どうするかね
      そうりゅう事故もだけど、事故や不祥事が多いのも任務多忙が原因の一角にあると思うんだよな
      現場は悲鳴を上げていると言われて久しいし

      29
    • 匿名
    • 2021年 2月 10日

    いつかこの時が来ると思ってはいたがエンジンの国産化は大きいな

    19
    • 匿名
    • 2021年 2月 10日

    ほーん
    じゃあ日本は防衛費増やすね♡

    2
    • 匿名
    • 2021年 2月 10日

    昔からボーイングの下請けとかやってノウハウ積んできてるし国産化は時間の問題だったな

    16
    • 匿名
    • 2021年 2月 10日

    鉱物資源とのバーター取引でアフリカに大量に輸出されそう

    4
    • 匿名
    • 2021年 2月 10日

    WS-19の推力11.5tしかないのか
    中国にしてはだいぶおとなしいというかなんというか
    燃費を取ってバイパス比を極端なまでに上げなかったからかな?
    なんか思ったよりもずいぶんと小型な機体になりそうだねJ-35

    5
      • 匿名
      • 2021年 2月 10日

      そもそも艦載機化が決まったのも機体がコンパクトに収まるからですしおすし。

      5
      • 匿名
      • 2021年 2月 10日

      小型スリムエンジンでF414やEJ200クラスの推力があるのだから、そんなに制限はないかも。
      より大推力が必要なら量産体制の整ったWS-10や開発中のWS-15とかの大型エンジンを積めばいいしね。

      4
        • 匿名
        • 2021年 2月 11日

        そうかスパホはブロック3でもF414-EPEを導入しないでGE-400のままって肩透かしな内容だから最大推力は9.8t×2から変わらんのか…
        だとすると次世代艦載機はJ-35の方が推力勝ちすると…
        おいおいおいアメリカ様マジで遊んでる場合じゃねぇよ

        3
    • 匿名
    • 2021年 2月 10日

    金属素材情報てXF9-1のブレードに使う1800°に耐えるやつとかググると日本のサイトで組成とかたくさん出てくるけどあれ規制しなくていいのかな 余裕かましててTITANはもう大同とかの硬度や靱性の高いやつはまるっきりコピられて安くでまわってる 特許とか関係ないからなあ 劣化コピーと甘く見てるとまあまあやられかねない タービンの振動抑制技術もIHIは厳しく管理しないと他業種に出してるからもうヤバいきがする

    21
    • 匿名
    • 2021年 2月 10日

    これでまた一歩J-35の実用化に近づいたな。エンジンの国産化が本当に成功したなら、2021年はちうごくにとって軍事的に躍進した年になるだろう。本当勘弁して欲しい。我が国お金ないのに…

    8
    • 匿名
    • 2021年 2月 10日

    JF-17といえば、文×数×なる軍事ライターが「中国製戦闘機を買うメリット」という記事で「中国に対峙するため」中国製のJF-17を買うべきとか言っててたまげたのを思い出した。

    17
      • 匿名
      • 2021年 2月 10日

      その文×数×氏は、JF-17を買って研究せよ、と言っているんでしょうか?
      パク空軍は、JF-17の戦闘力はF-16とタメとか鼻息荒いですがw、
      実際には、どの程度なのでしょうね。

      1
        • 匿名
        • 2021年 2月 10日

        いや、中国空軍の数に対抗する為、F-35とJF-17等のハイローミックスすべきと。なぜ中国製をあげるか理解不能。

        7
        • 匿名
        • 2021年 2月 10日

        元の記事見たけど、ハイローミックスのローの部分をJF-17にすればよいぞ、と書いてあった。
        うん、想像以上にすごい電波だった・・・

        13
        • 匿名
        • 2021年 2月 10日

        そんなこと言いだしたらSu-57もS-400も買えってことになってしまうんですよねえ・・。
        そりゃあアメリカだって買いたいでしょうよ。

        6
        • 匿名
        • 2021年 2月 10日

        F-35とJF-17等のハイローミックスしろって言ってた。正気かな?

        8
      • 匿名
      • 2021年 2月 10日

      あれは「スクランブル用の安価な軽戦闘機を別に購入したほうが良い」って言いたかっただけだと思うけどね。
      まぁ、どうして例えでJF-17が出てきたのか理解できないけど。

      6
        • 匿名
        • 2021年 2月 10日

        >どうして例えでJF-17が出てきたのか理解できないけど
        そう、これが最大の問題。ハイローミックスは理解できるが、なぜメイドインチャイナを筆頭例にしたのか。思考回路がおかしい。

        12
        • 匿名
        • 2021年 2月 10日

        確かに、高頻度の出動に耐えうる運用コストと信頼性に加え、相手から「視認される」必要があるスクランブル用途に高額で運用コストも高く繊細なステルス機なんか使う意味ないからね

        文谷的には安価で運用コストも低い西側の旧世代戦闘機に適当な例が思い浮かばなかっただけで、調達単価さえ安けりゃテジャスでもそれこそKFXでも何でも良かったんだろうよ

        如何せん、Low側といえども近年の西側の機体では調達価格が高騰し過ぎて例に出すには適当な機種も無い訳だが… 実際の話、比較的安いと言われるF16ですら現在調達可能なBlock 70辺りになると高騰していて、中国やロシア機とコストパフォーマンスで比較されたら存在霞むからね

        1
          • 匿名
          • 2021年 2月 11日

          他に思いつかないからって中国機を出すのはおかしい。絶対に不可能なのだし。

    • 匿名
    • 2021年 2月 10日

    中国の軍事技術開発へ投入される予算は日本の何倍だ?10倍超えてるか?
    まあ時間さえ経てば他のジャンルでもこういうニュースがバンバン出てくるだろうな

    7
    • 匿名
    • 2021年 2月 10日

    生産量は書いてるけど、WS-13の「ライフ、寿命」には一言も触れてないのは何故www?

      • 匿名
      • 2021年 2月 10日

      どうせ中国は強烈な少子化で近い将来に絶苦境に陥るし、ソレまでに米帝を圧倒するのが目的だから、少々寿命が短い程度だと問題にもならないよ
      いくら兵器が有っても動かす人間が居なくなるから、今建造中の大艦隊も更新時期までにはハリボテ化決定だしね。使い捨てでも問題無い

      それに、米帝もデジタルセンチュリーシリーズ構想を打ち出しているから、ソレが上手く行けばエンジンだって現状よりも要求される寿命が短くなるだろうし

      3
      • 匿名
      • 2021年 2月 10日

      むしろ時代のトレンドだぞ
      米軍が進めるデジタルセンチュリーシリーズではエンジン寿命を従来の1万2000時間から3000から4000時間程度に短縮してコストを削減する予定だし

      6
    • 新・にわかミリオタ
    • 2021年 2月 10日

    中国と日本じゃ、かけてる金額の桁が違うからね。総合的な技術力ではもう勝てない
    次期戦闘機に期待してるけど、どうなることやら。

    10
    • 匿名
    • 2021年 2月 10日

    力関係は完全に中国>>>ロシアだな

    3
    • 匿名
    • 2021年 2月 10日

    まだ正式採用すらされていないうちに、XF9が世代遅れの旧式エンジンになってしまったとはね…
    中国の驚異的な開発スピードにはとても日本の航空宇宙技術では太刀打ちできないのか

    2
      • 匿名
      • 2021年 2月 10日


      針に餌ついてないですよ?

      7
    • 匿名
    • 2021年 2月 11日

    未だに工作機器は日本やドイツから持ってきたものを使っているのにね~金をかければ高性能な工作機器は他国から持ってこれるから出来上がるものは一見すると素晴らしい物を造る事が出来るようにはなっているけれど・・・

    工作する大もとの金属一つをとっても中国国内で製造したものは基礎的な冶金技術が追い付かなくて金型を作っても圧をかけていると突然崩壊するなんて事が中国では普通にあるからなぁ。

    彼の国のように戦車のパワーパックを作っても中国と同じように基礎的な冶金が出来てないからドイツと同じような代物は作り上げても耐久性がなくて使い物にならないということがあるんですよ。

    1
      • 匿名
      • 2021年 2月 11日

      たった20年で「中国に出来っこない」から「でも工作機械は外国製だし、基礎技術はまだまだだし」にキャッチアップしてきてるのを甘く見すぎでしょう。

      いい加減根拠のない楽観論はやめませんか。

      9
        • 匿名
        • 2021年 2月 11日

        艦載機に中国製のエンジンが使われるようになったら信じてやらんこともない。

          • 匿名
          • 2021年 2月 11日

          本記事って「これから艦載機に中国製のエンジンが使われるようになる」って話ですよね?

          5
        • 匿名
        • 2021年 2月 12日

        つーかその「外国製の工作機械」の供給元の一つが本邦である事が問題なんだよな。
        「中国の脅威」以上に「日本の企業の危機感の無さ」がヤバい。

        6
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  2. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  3. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  4. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  5. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
PAGE TOP