中国関連

中国、駆逐艦の発電能力を4倍に向上させるターボジェネレーター統合

複数の中国メディアは最近、中国海軍の艦艇に将来搭載される高エネルギー兵器や電気推進を実現するために必要な電力量を満たすため20MW相当のターボジェネレーター統合を行ったと報じており、海外メディアが注目している。

参考:China adds turbo generators to warships to power high-energy weapons, state media says
参考:New Turbo Generators Quadruple Power Generating Capacity For China’s Heavy Destroyers

中国が統合電気推進実現に向けて前進、20MW相当のターボジェネレーターの実用テストを開始

中国船舶工業集団(CSSC)の704研究所が開発に成功した20MW相当のターボジェネレーターの統合は中国海軍艦艇の発電能力を4倍に引き上げることを意味しており、このような艦艇の発電能力は英海軍のクイーン・エリザベス級空母や米海軍のズムウォルト級駆逐艦が実現した統合電気推進、指向性エネルギー兵器やレールガンといった高エネルギー兵器の実用化に欠かせない技術だ。

中国はどの艦艇にターボジェネレーターの統合を行ったのかは明らかにしていないが、海外メディアは新型の055型駆逐艦に統合した可能性が高いと見ており、20MW相当のターボジェネレーターを3基~4基搭載すれば1万3,000トンの艦体を30ノットを越える速力を実現でき、指向性エネルギー兵器やレールガンといった兵器に必要な電力供給も十分可能になると指摘している。

出典:public domain ズムウォルト級ミサイル駆逐艦

因みに米海軍のズムウォルト級は35MWの電力を発生させるロールス・ロイス製「MT30」を2基、3.8MWの電力を発生させるRR450を2基搭載して最大77.6MWもの電力を供給することが可能だが、指向性エネルギー兵器やレールガンといった兵器が搭載されない限り、艦の電力需要は1基のMT30を稼働させるだけで十分まかなえると言われているため発電量から見た統合電気推進のハードはそこまで高くない。

そのため統合電気推進実現のキモは、艦内で使用される電力を共用化して制御することが出来るかにかかっていると言えるが、指向性エネルギー兵器やレールガンが実用化されるまで十分時間は残されているので、じっくりと開発を進めればコケることはないだろう。

中国人研究者による科学技術や研究結果の軍事転用問題は日本も他人事ではない

話はだいぶ変わるのだが、トランプ政権は中国が米国の技術や研究結果を不正に入手していることに対抗する取り組みを強化しており、これに関する興味深い記事を見つけた。

参考:Report Finds 250 US Collaborators with Chinese Military-Tied Researchers, Says Threatens National Security

スタンフォード大学のフーバー研究所は7月30日に発表した報告書の中で、中国人民解放軍の軍事技術や兵器開発に貢献している7つ大学(名称は伏せらている)と米国の研究機関が共同研究を行い発表した論文が254件も見つかったと指摘、共同研究のテーマは新エネルギー技術や航空工学など多岐に渡り、共同研究に参加した研究機関の数は米国の大学や政府が資金援助をおこなっている研究所など115ヶ所にもなる。

さらに報告書は、中国人民解放軍に協力している7つ大学に所属した中国人研究者が米国の研究機関と共同研究を行う際に中国軍との繋がりを隠そうとした事例が幾つも発見されたと報告しており、中国軍の機密プロジェクトに関与していた中国人研究者も確認されたらしい。

そのためフーバー研究所は「中国人民解放軍は学術研究を装って米国の科学技術や研究成果を入手して、中国軍の防衛研究や兵器開発プログラムに転用している」と指摘、中国や中国人研究者との共同研究は米国の安全保障を危険に晒すと結論づけた。

出典:Sunson Guo / flickr Public domain

この件に関しては日本も他人事ではない。

米国は今年5月、中国人民解放軍への協力を疑われる研究機関や大学の研究者に対し入国を禁止する措置をとったが、フーバー研究所は「中国側は研究者との繋がりをネットや海外に変更して入国禁止回避を試みている」と指摘しており、中国人研究者の全員が中国人民解放軍との繋がりがある訳ではないが巧妙に繋がりを隠蔽してくるため見分けがつかないのだ。

このような状況を踏まえると、日本も中国の大学や研究機関等との共同研究について何かしらの対策を講じなければ日本の安全保障が危険にさらされることになるという意味で、中国人民解放軍への協力を疑われる研究機関や大学の研究者に限定した対応では意味をなさないのはハッキリしている。

一般論として中国人民解放軍とは無関係の研究者まで制限の対象に加えるのはやり過ぎかもしれないが、無関係の研究者を制限の対象から外せば中国は無関係の研究者に装ってくるので、原因の切り分けを不可能にしている責任は中国側にあると言えるだろう。

果たして日本に極端な対応が取れるのかは疑問だが、第6世代戦闘機相当の次期戦闘機開発が控えているので中国のターゲットになっているのは間違いないだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:rhk111 / Public domain 052C型駆逐艦

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 8月 02日

    流石中国
    膨大な資金とマンパワーで着実に進化してる
    統合電気推進は次世代のゲームチェンジャー的要素の1つですが、これは失敗を恐れず挑戦した米英とそれに続く中国の三つ巴ですね

    日本はこの分野かなり出遅れて居るが、さて

      • 匿名
      • 2020年 8月 02日

      今後は経済的にも差を広げられる一方だから、中国に対抗するなんて考えるだけ無駄だね

        • 匿名
        • 2020年 8月 02日

        じゃあ、中国に征服されてこの書き込みも出来なくなるね
        今から中国語を勉強したら?

        3
          • 匿名
          • 2020年 8月 02日

          実際ビジネスマンは中国語喋れると強い
          英語はもう当たり前すぎてなんのアピールにもならんし

          • 匿名
          • 2020年 8月 02日

          中国に対抗するなんて考えるだけ無駄だね←こんなこと書き込むのは在日か中国人でしょう。相手にするだけ無駄ですよ。

          3
        • 匿名
        • 2020年 8月 02日

        你脑袋没问题吗?

        • 匿名
        • 2020年 8月 03日

        「中国政府が日本政府に対し、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での多数の漁船による領海侵入を予告するような主張とともに、日本側に航行制止を「要求する資格はない」と伝えてきていたことが2日、分かった。」

                尖 閣 占 領 開 始

        2
      • 匿名
      • 2020年 8月 12日

      天安門事件
      残念ながらもう持ってるんだよなぁ…
      しらせって言うんだけど
      だから技術は持ってる。
      クソ高いから作ってないだけ

      2
    • 匿名
    • 2020年 8月 02日

    中国の経済は謎だなぁ。
    倒れそうで倒れない。
    何かカラクリがあるんだと思うけど、それは何なのだろうなぁ。

    2
      • 匿名
      • 2020年 8月 02日

      嘗てのソ連がそうだったのだが共産主義国家の場合、国防予算は不景気だろうが何だろうが増額させる傾向が強い
      更に、軍事関連の予算は国防予算以外の予算枠に振り分ける事が多いので、実は国家予算のかなりの割合が軍事関連の予算になっている事が多い
      つまり中国等の共産主義国家では、経済がどうなろうと共産党が軍事予算は増やし続ける体質があるので…後は言わなくても分かると思う

      2
      • 匿名
      • 2020年 8月 02日

      人口の約1割が支配階級、約2割が富裕階級、残りが搾取される奴隷階級
      10億超える人口で内需だけでやっていけるから簡単に潰れないよ

      2
      • 匿名
      • 2020年 8月 02日

      外国からの直接・間接投資、アフリカなどの新・経済植民地からのアガリなどあるし。

      1
      • 匿名
      • 2020年 8月 02日

      ソ連は50年間GDPを偽装し続けていたし
      中国も似たようにかなり盛られた数字だと思いますが、海外との貿易額は誤魔化せないのでそこから実際の経済力を計算できるそうな。

      1
        • 匿名
        • 2020年 8月 12日

        為替がアレなのでそれすら盛られているかも

        1
    • 匿名
    • 2020年 8月 02日

    中華人民共和国出身者は全員スパイの可能性ありと警戒し、重要情報から遮断するべき。記事の様に偽装する奴もいるし、そうでなくとも国家情報法だの国防動員法だのあるから。本当に真面目な中国人研究者等には申し訳ないが、中国共産党が数々の蛮行を続ける限りはやむを得ない。
    あと、日本に入ってくる奴だけじゃなくて、「千人計画」とやらで中共に引き抜かれる日本人もどうにかして欲しい。

    1
    • 匿名
    • 2020年 8月 02日

    在日中国人って100万人くらいいなかったっけ
    どうすんだろ

    • 匿名
    • 2020年 8月 02日

    そんな主機関レベルの発電機、何処にどうやって追加した?
    ガスタービンだと尚更吸排気系が嵩張るから、簡単にポン付けなんて出来ないぞ(出来るんだったら、45型停電駆逐艦の改修はもっと楽な筈)
    055型だと、スプルーアンスよろしく最初から後日搭載予定で吸排気系含めスペースを確保していた可能性は有るが。何しろデカイからな

      • 匿名
      • 2020年 8月 02日

      普通に、ディーゼルを止めてガスタービンに置き換えただけだと思いますぜ。
      さらに、既存艦の改修ではなく同シリーズの新造艦を仕様変更したのだと思います。
      これなら、「主機の本体(だけの)重量あたりの発電能力を」4倍にするのは普通にクリア可能。

      艦船において電気を食うのは、高周波数かつ高出力なレーダー、レールガン()、電磁カタパルト、レーザー光線砲()、(電動推進の場合は)推進ペラまたはウォータージェットです。

      海自の場合、レーダー以外の電力イーター装備は無いので、統合電気推進は避けているものと思われます。
      メリットより、変換ロスによるエネルギー効率の低下、つまり燃費悪化と航続距離の低下というデメリットが上回るという判断。
      海自が配備している統合電気推進艦は、しらせだけなのかなぁ

      2
    • 匿名
    • 2020年 8月 02日

    ほんとうにチャイナにハイテクあるならこっちもスパイしようね、支那人は何でもカネで売るから

    • 匿名
    • 2020年 8月 02日

    一方、今時スマホですら使ってる様な完全にコモディティ化したリチウムイオンバッテリー搭載のそうりゅう型を、さも自慢げに語る日本人ェ…

      • 匿名
      • 2020年 8月 02日

      おうりゅうからリチウムイオンを採用してAIPを廃したのはAIPがそこまで出力高くないわりに艦内容積をかなり喰うからというのとリチウムイオンが従来の鉛蓄電池より充電にかかる時間が短い、自己放電量が少ない、体積辺りの蓄電に優れる等を含めた汎用性の高さから採用されたのであっておうりゅう以降を馬鹿にするのはどうかと思う。
      あと、コモディティ化についてはマルクス経済学の用語を指しているのならここでは不適切だと思われます。wikiの要約になるが対象となる商品が機能による差別化が不可能になり、市場では価格による競争しか出来なくなるという意味だけどこれに乗っ取ると本邦の様な防衛装備品が少数生産になりがちで量産効果を得にくく高コストにつながりけど、リチウムイオンがコモディティ化しているのなら安価ではあるが性能差がほとんど無くなっている民生品を使うことによって、建造コストを削減し、少ない防衛費の中でさらに少なくなる割り当て費の中でなんとかやりくりしようとしている海自の意図とも取れますが、そのことについてはどうお考えでしょうか? 長文失礼しました。

      5
    • 匿名
    • 2020年 8月 02日

    コモディティ化をガラパゴス化の意味で使う哀れな五毛に祝福を

    2
    • 匿名
    • 2020年 8月 02日

    スパイ防止法も、他国に対しての発言力も交渉力も無いくせに一部の基礎技術は有っても
    これから日本主導の第6世代戦闘機を順調に出来るとはとても思えない
    出来てもあいつらに散々邪魔され技術と機密を抜かれるだけ
    完成したころには超少子高齢化と経済が破たんして守る価値も無くなった日本になっているだろう

      • 匿名
      • 2020年 8月 02日

      実は中国の方が一人っ子政策で超歪な人口ピラミッドで超絶な少子化の未来が待っております
      2100年には14億の人口が7億まで減る事が予想されています。

      2
    • (`ハ´)
    • 2020年 8月 02日

    そのうち電磁カタパルトの使用にも転用されるんやろうか

    • 匿名
    • 2020年 8月 02日

    国防動員法があるんだから人民解放軍と無関係な中国人なんて研究者だろうがそこらのおっさんだろうが一人も居ねえわwww

    1
    • 匿名
    • 2020年 8月 02日

    昨年のニュースで、東大がファーウェイからの資金援助について見直し検討
    ってのがあったけど、こんな感じで日本の大学はチャイナマネーに侵されているんだろうな。
    そのくせ、日本の防衛技術への軍学共同には反対するという。

    3
      • 匿名
      • 2020年 8月 02日

      そりゃ研究でも何でもカネがかかるし、出してくれる所があるなら断りたくないでしょ。あのアメリカでさえ、ほとんどの分野にチャイナマネー入っているじゃん。
      世の中カネを持っている奴が強いのは当たり前なんだから、外国資本が嫌なら日本の政府や企業が出せばいいんじゃないの?

        • 匿名
        • 2020年 8月 02日

        防衛省からの資金提供の代わりの研究協力を断ってなかったら、それも言えたんだけどねぇ・・・

        確か、そんな話あったよね?

        1
          • 匿名
          • 2020年 8月 02日

          学術会議とか、日本防衛の為の軍事研究には否定的なのに、中共に引き抜かれた日本人研究者が軍事研究する事には何の対策もとらない。

          3
            • 匿名
            • 2020年 8月 02日

            すでに中共どもに軍事研究に加担していたからとか
            笑えない話だったりして

            2
    • 匿名
    • 2020年 8月 02日

    統合電気推進は装備電力とか航続距離とか魅力的過ぎるけど日本は保守的過ぎてな
    米英中に性能劣るが安定した主機構成を選んだのが海自

      • 匿名
      • 2020年 8月 02日

      統合電気推進は何かしらの被害で電源喪失すると即漂流なので、紙装甲の船体構造が主流の現代戦闘艦には相性が悪い。だから技術革新により完全な電気式推進が主流になるのは民間高速船とかだと思う。

      3
    • 匿名
    • 2020年 8月 02日

    ほい情報
    「中国海警局の巡視船が尖閣諸島(沖縄県石垣市)の領海に侵入する際、中国海軍のミサイル艇が巡視船に連動して台湾付近に展開していることが1日、分かった。4月14日から今月1日まで110日連続で巡視船が尖閣周辺を航行した期間にも同様の動きがあり、中国本土ではミサイル部隊が展開していることも判明。不測の事態に備え、周辺海域を警戒する海上自衛隊の護衛艦を牽制(けんせい)する狙いがあるとみられる。」
    リンク
    中国、やる気満々

    3
    • 匿名
    • 2020年 8月 02日

    東大もどうかしてる
    防衛省への研究協力には後ろ向きなのに、人民解放軍のフロント企業からは資金提供OKだの
    売国学者から淘汰しないとな

    2
      • 匿名
      • 2020年 8月 02日

      実は戦前から、東大に限らず日本の大学は左翼の巣窟でしたから、何を今更って思いがします

      1
    • 匿名
    • 2020年 8月 02日

    数年前に見たNIMS(国立の材料研究機構)の映像にも女性研究者が映ってたなぁ。
    名前からは台湾籍か中国籍か、はたまた香港籍かの判断はできないけど国立組織の研究者も一辺精査したほうがいいでしょ

    2
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