中国関連

沿岸部に集中していた戦力が分散? 中国がインド方面にJ-16配備を開始

今年6月に発生したインドとの軍事的緊張の影響で、装備更新が後回しにされていた中国の西部戦区(司令部は成都市)にJ-16が配備されていると報じられている。

参考:Chinese Fighter Units Transition Straight From J-7 (MiG-21) to Cutting Edge New J-16 Jets

第二戦線の形成は中国が意図したものなのか?不本意なもなのか?

中国人民解放軍は5つの担当区域(戦区)に分けられており、東シナ海や台湾を担当する東部戦区(司令部は南京)と南シナ海を担当する南部戦区(司令部は広州市)には実戦配備が始まった国産の第5世代戦闘機J-20、ロシアから導入したSu-35やSu-30MKK、国産の第4.5世代戦闘機で最も優れてるJ-16が優先的に配備されているのだが、その他の戦区では未だにMiG-21をコピーしたJ-7シリーズやJH-7といった旧式機が現役機として運用されている。

出典:防衛省 / CC BY-SA 4.0

しかし今年6月に発生したインドとの軍事的緊張の影響で装備更新が後回しにされていた西部戦区(司令部は成都市)へのJ-16配備がJ-7を更新する形で始まっており、沿岸部の戦力強化に集中していた中国軍の方針に変化が起きていると言えるだろう。

J-16はSu-27をコピーしたJ-11Bをベースに国産のAESAレーダーや複合材料など多くの独自技術を投入して開発した第4.5世代戦闘機で、J-20の戦力化が始まったばかりという事実を考慮するとJ-16は実質的に中国空軍で最も優れた能力を備えた主力戦闘機だが調達コストが高価で160機(推定)程度しか配備されていない。

これを西部戦区に回し始めたということはインドとの軍事的緊張が長期化することを想定した動きと受け取ることができ、中国はインドに対して安易な妥協や譲歩はしないという意味だろう。

出典:flickr経由 Public Domain 中国のステルス戦闘機J-20

どちらにしても中国は沿岸部で米国、台湾、日本、ベトナム、インドネシアなどの国と軍事的に対峙しながら、内陸部の国境地帯でインドとも軍事的に対峙することになるため日本視点から見れば中国軍の力を分散させる第二戦線が形成され始めたと言えるが、インドとの軍事的緊張は中国が仕掛けたものなので拡張された軍事力に自信をもった中国が意図的に第二戦線を形成して米軍の力を分散させることを狙っているのかもしれない。

実際、米国はインド洋を担当する第1艦隊設置やディエゴガルシア島への爆撃機配備などを検討しているため、中国はイランと組んでインド・中東方面の軍事的バランスを崩して米軍を疲弊させることを狙っていると解釈することも可能だ。

そのため中国の意図を挫くためにはインド・中東方面を米国単独ではなくNATOの英仏や日豪印で支えることが重要になってくる。

逆に国際的な足並みが揃わず米軍が疲弊していくようなことに慣ればインド太平洋地域全体の軍事的バランスが崩れる可能性もあるため、来年辺りは特に中東やインド方面の動きが日本にとって重要になってくるかもしれない。

恐らく中国はある種の計算があってインドとの軍事的緊張を仕掛けたと思うので、現在の状況は中国にとって予想外の状況ではなく狙ったものなのだろう。

関連記事:米海軍長官が提唱したインド洋担当の第1艦隊構想、実際には司令部設置のみ?
関連記事:イラン、中国やロシアと共同で「アジア版NATO」創設を主張

 

※アイキャッチ画像の出典:Dmitriy Pichugin / GFDL 1.2 中国空軍のSu-30MKK

ロシアが追加発注した第4.5世代戦闘機「Su-35S」の中身はSu-57に近い?前のページ

SM-3迎撃実験への対抗? ロシアが対弾道ミサイル迎撃システム「A-235」をテスト次のページ

関連記事

  1. 中国関連

    F-35製造に影響も? 中国の対ロッキード・マーティン制裁はレアアース輸出制限か

    ロッキード・マーティンは中国市場で民間旅客機を販売しているボーイングと…

  2. 中国関連

    中国、第5世代戦闘機「J-20」の弱点を「ステルス処理」した排気ノズルで克服か?

    新型エンジンを搭載した第5世代戦闘機「J-20」の写真が中国のネットに…

  3. 中国関連

    軍事的圧力を強化する中国、インド方面に第5世代戦闘機「J-20」を配備

    インドと国境未確定地域で軍事的対立が続く中国は、遂に第5世代戦闘機J-…

  4. 中国関連

    中国、世界初となるツインシートの第5世代戦闘機「J-20S」が初飛行に成功

    中国が開発を進めていた世界初となるツインシートの第5世代戦闘機「J-2…

  5. 中国関連

    中国の電子戦機J-16Dが間もなく実戦投入可能に、J-20との相乗効果をアピール

    中国中央テレビ(CCTV)は6日、珠海航空ショーでデビューした電子戦機…

  6. 中国関連

    中国、米空軍が脅威だと認識している空対空ミサイル「PL-15」の輸出バージョンを発表

    今月28日に開幕した珠海航空ショーで中国は国産の視界外射程(BVR)空…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 11月 27日

    中国の当面の狙いは何かな。すぐにインドや台湾と本気で交戦する情勢ではないから、やはり内政での諸民族弾圧へのカモフラージュ?
    またはバイデン米国の動向を探る牽制球かな

    15
    • 匿名
    • 2020年 11月 27日

    東部戦区と南部戦区に配備されているJ-16を西部戦区に回したのではなく、西部戦区に配備されている旧式戦闘機をJ-16で更新できるほど、J-16が増産されているということですよね。
    中国軍としては計画通りの更新作業になるかと思います(計画通りなのが1番恐ろしいですが。)

    27
    • 匿名
    • 2020年 11月 27日

    評価が難しいところ。
    中印国境の紛争自体は日常茶飯な話なので意図的なものであったかは疑問。多分偶発的なもの。

    普段は国際社会から注目を集めないので、なあなあで終わってゆくのが、今回は注目を集めた。これが「集めた」のか「集まってしまった」なのか。。。
    意図的なエスカレートなのか引っ込みがつかなくなったのか。インドがいつになく強硬だったのでインド側の思惑に乗せられて引きずり込まれた可能性も無きにしも非ず。インドからすると自分の戦線に味方を集められたともいえる。

    さて、どういう形でことが収まるのか。我々からすると陸の話は参加できないので見てるしかないし、余裕もないけれど、このまま暴発はないだろうし、仲介者もいないし、さてさて。

    6
    • 匿名
    • 2020年 11月 27日

    中国の場合は予算も配備も各地区での取り合いなので、このインド方面の緊張も本気の対外政策なのか内政の一端なのか、判断が難しいところ

    5
    • 匿名
    • 2020年 11月 27日

    バイデン政権はコースト制関連とかもっと単純に反トランプとかでインド方面の対中方針がまだ不透明と言う話も
    中国のJ-16配備が予定を繰り上げた形ならまだしも予定通りならより危険

    1
      • 匿名
      • 2020年 11月 27日

      コーストじゃないカーストだ

      5
    • 匿名
    • 2020年 11月 27日

    >西部戦区(司令部は成都市)へのJ-16配備がJ-7を更新する形で始まっており・・・
    部隊の異動ではなく機種転換なので完熟には時間がかかりそう。
    その間の空白に遺漏はないのだろうか。

      • 匿名
      • 2020年 11月 28日

      実は西部戦区にJ-16が配備され始めたのは2018年8月から。
      J-16が配備されるまではJ-11、Su-27UBK及びJ-7シリーズの最新型J-7G(第4世代機)が主力だった。
      だから、急な機種更新ではないので戦力の空白期間は発生しないと思うよ。

      7
        • 匿名
        • 2020年 11月 28日

        なーんだ。
        ちょっと残念。
        教えてくれてありがとう。

    • 匿名
    • 2020年 11月 27日

    忙しそうで何より

    • 匿名
    • 2020年 11月 27日

    中国共産匪賊の様なならず者が自信をつけると何するか分からんから恐ろしい。

    6
    • 匿名
    • 2020年 11月 27日

    最近の中国見てると計画通りだとはとても思えんが…
    まあどっちにしろ軍事力なんてのは無駄喰らいなんで意図的でもそうでなくてもどっちでもいいから
    精々金注ぎ込んで浪費してくれ
    中国の戦力はとっくに日本を上回っており対抗なんて不可能という輩がいるが
    こうやって全方位に敵を作って一方面に全力を注げないのが中国なんだから
    そこらへんちゃんと考慮して語らんとね

    9
    • 匿名
    • 2020年 11月 27日

    いつものちうごくですな。戦闘機マシマシ、お船マシマシ。

    2
    • 匿名
    • 2020年 11月 27日

    中国の高性能機置換によりインドは「やるなら今のうちだ」ってならないのかな。
    ブータンの方でもごたごたがあるようだし。

    1
      • 匿名
      • 2020年 11月 27日

      本気の台湾進攻が始まったらチャンスとばかりに周辺国が仕掛け始めた場合どう対処するのか興味はアル。
      そういえば北朝鮮ともかなりまずい関係になってるとか。

      4
        • 匿名
        • 2020年 11月 27日

        深読みかも知れないが、その台湾侵攻の下準備として、予想される周辺国からの仕掛けに対応する配置を予防的に実行しだしたのかも知れない。
        おそらく台湾方面はすでに常時臨戦を保ってるだろうが、敵は背後にもありだから
        地図みたら納得するが、中国は広大なぶん隣接国家も多いから、意識してる問題や緊張も同程度に多いはず

        5
          • 匿名
          • 2020年 11月 28日

          インド海軍はフリーハンドなのでそれは無いと思いますね。
          本来参加しないインド海軍に介入の大義名分を与えたとも言えるので、中共としては「下手うった」と思ってるかもしれません。

          2
      • 匿名
      • 2020年 11月 27日

      インドとの戦いで、軍備を消耗しても、続く国があると言えるか?
      想定以上の損耗なら確実にロシアは、ウイグルと珍宝島周辺を占領しそうだが。

      3
    • 匿名
    • 2020年 11月 27日

    あぁ、台湾侵攻の保険とも見れますね。こうして膠着状態でインドを釘付けにしておけば、取り敢えず相手にするのは太平洋側だけでいいので。

    2
    • 匿名
    • 2020年 11月 27日

    2017年、係争地ドクラムでの中国の道路建設を不満に思ったインドは中国実効支配地域に侵入し両軍はにらみ合いとなった
    交渉の結果、両軍の引き離しそして中国の道路建設中止が合意された

    2020年、係争地ラダックでのインドの道路建設を不満に思った中国はインド実効支配地域に侵入し死傷者を出す小競り合いとなった
    交渉の結果、両軍の引き離しが合意された
    しかしインドの道路建設は続行され、さらには日米豪と急接近し合同軍事演習が実施された

    中国は2017年の再現を狙ったがうまくいかなかった
    日米豪に接近させることなくインドの道路建設を中止させることができると思っていた
    現在の状況は中国の当初の狙いからは外れてる
    ただ中国は現実を直視し戦略を練り直しているだけだ

    6
    • 匿名
    • 2020年 11月 27日

    一週間ほど前に中国の制服組トップが能動的な戦争立案について言及してるから、おそらくは国内向けのやってますアピールなんでないかな
    インドに対して、中国側からちょっかい出すかもしれないけど、大事にはならないと思う

    1
    • 匿名
    • 2020年 11月 27日

    正直言って、中国は年内にも台湾に侵攻しかねないほどの勢いですよ。
    習近平が半永久独裁者にアップグレードしたのは通常の任期では台湾を潰せないからに他なりません。
    つまり台湾に本気出す理由以外でこんなことはやらんということです。

    3
  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 欧州関連

    再掲載|導入自体が間違い?タイフーンを導入したオーストリアの後悔
  2. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  3. 日本関連

    国産防衛装備品の海外輸出が実現!フィリピンが日本製警戒管制レーダー「J/FPS-…
  4. 日本関連

    リチウムイオン電池採用艦!日本のそうりゅう型潜水艦11番艦「おうりゅう」就役に世…
  5. 欧州関連

    再掲載|英海軍の闇、原潜用原子炉の欠陥と退役済み原潜の処分費用
PAGE TOP