中国関連

中国が最も恐れるシナリオ、印日米豪にインド洋を抑えられること

香港のサウスチャイナ・モーニング・ポスト紙は5日、インドが両国の軍事的対立の影響で「中国を困らせる行動に出る」かもしれないと報じている。

参考:India set to pose growing challenge to China at sea

中国は新型コロナウイルスの批判から面子を守るため全てを失い掛けている?

中国にとってインド洋の海上交通路確保は太平洋進出よりも価値が高く、現在進めている「真珠の首飾り戦略」最大の障害はインドの存在だ。

インドは海軍や空軍を利用して中国~中東~欧州への貿易ルートを容易に遮断することが可能だが、空母や戦闘機への投資を進めた中国軍はインド洋でインド海軍や空軍を圧倒できるだけの力を持ち始めたため、インドがこのまま「非同盟」の姿勢を貫いてくれるなら、これほど都合が良いことはない。

出典:日本防衛省・統合幕僚監部 / CC BY 4.0 中国海軍の空母「遼寧」

しかし、カシミール州ラダック地域で発生した両国の軍事的対立は、インドを「非同盟」から「同盟」へと後押しするかもしれないと中国が警戒している。

香港のサウスチャイナ・モーニング・ポスト紙は5日、インドが両国の軍事的対立の影響で中国を困らせる行動に出るかもしれないと報じた。

インドは既に米国と基地の相互利用や燃料や物資を融通しあうための協定(LEMOA)、軍事機密に関する情報共有のための協定(GSOMIA)、通信の互換性やセキュリティに関する協定(COMCASA)など国防に関する重要な3つの協定を締結済みで、モディ首相が発表した「インド太平洋海洋イニシアティブ」は米国の対中戦略とも一致するため、もはや両国の関係は準同盟関係と言っても差し支えないと見ている。

出典:海上自衛隊 国際共同演習「マラバール(Malabar)2019」

さらにインドはオーストラリアとも「後方支援に関する相互取り決め(MLSA)」を締結したため、中国は日米印3ヶ国の海軍が参加して行われる国際共同演習「マラバール(Malabar)」にオーストラリアを招待する可能性が高いと見ており、印日米豪4ヶ国による対中国包囲網強化=インド洋への進出を警戒してのだろう。

インド海軍は最近、日本の海上自衛隊とインド洋で親善訓練を実施したが、インド海軍のチャウハン元副提督(中将)は「私達は友人との距離を縮める必要がある、このような訓練はインド洋に対する中国軍の影響力排除に対する準備が整っていることを中国に気づかせることが出来る」と海上自衛隊とインド海軍が実施した訓練の意味について強調したが、中国の軍事アナリストも「インド海軍単独なら中国海軍に対抗することは出来ないが、日本や米国と組めば中国海軍に対して優位な立場を得られる」と語っている。

出典:海上自衛隊 インド海軍と海上自衛隊と親善訓練の様子

補足:日本も現在、インドと物品役務相互提供協定(ACSA)締結交渉が大詰めを迎えている

結局、習近平主席率いる中国は新型コロナウイルスの批判を交わすため強行策に打って出たが、かえって豪州の脱中国やインドの米国陣営接近を早めただけで、香港への強行姿勢も優遇措置を失う結果に終わり、中国は新型コロナウイルスの批判から面子を守るため全てを失い掛けているのかもしれない。

恐らく中国が最も恐れているのは、非同盟を貫いていたインドが日本や米国と手を組みエネルギー輸送の重要航路であるインド洋の制海権を確固たるものにされることで、インド洋を人質にとられれば南シナ海の内海化が全くの無駄=白旗を上げるしか無いため何としても防ぎたいところだが、自ら振り上げた拳を成果もなく下げれば国内から批判を浴びるため「行き着くところまで突っ走る」しか無いのかもしれない。

問題はインドが中国が困るほど米国へ接近することを許容するかどうかだが、仮に中国が困るほど接近すれば習近平主席は戦略の練り直しを迫られることになるだろう。

関連記事:海上自衛隊、日米印3ヶ国の海軍による「国際共同演習 マラバール」初主催
関連記事:インド、日本は数少ない友好国で自衛隊との演習は中国への圧力になる

 

※アイキャッチ画像の出典:海上自衛隊 インド海軍と海上自衛隊と親善訓練の様子

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コメント

    • 天滅中共
    • 2020年 7月 05日

    武漢ウイルスで対米関係悪化の中、尖閣諸島領海侵犯、台湾ADIZ侵入、対豪州サイバー攻撃、香港国安法施行、あげくにインド兵を撲殺してあらゆる方面を敵に回す習小近熊平…単に無能なのか、私の様な凡人には分からぬ深謀遠慮があるのか…

      • 匿名
      • 2020年 7月 05日

      中国を一番知る日本人! の石平さんは、単に無能!それも底抜けに外交は無能!と言っておられます。。

      共産党内部の権力闘争は、お強いかと(笑)
      我が国の政治家にも良く似たタイプが牛耳ってますね(涙)

      1
      • 匿名
      • 2020年 7月 05日

      戦前の日本だって、1931年の満州事変に始まって37年には盧溝橋事件と日華事変に米砲艦パネイ撃沈&英砲艦レディバード号砲撃事件、ワシントン・ロンドン軍縮条約の破棄をやらかして、その後もノモンハン事件、仏印進駐等を経て太平洋戦争を始めるのだから、中国も同じ道を辿っているだけなのかもよ

      • 匿名
      • 2020年 7月 05日

      中国は覇権にこだわるあまり優秀な頭脳の無駄遣いを繰り返しているように見えますね。
      中共が大本営を演じている限り重大なエラーを回避する仕組みは無視され続けるでしょう。

    • 匿名
    • 2020年 7月 05日

    インドはアメリカの同盟国たちと関係を築いて、アメリカとは間接的な同盟がちょうどよさそう

    >>振り上げた拳を成果もなく下げれば国内から批判を浴びるため
    こういうのって検閲で誤魔化すことはできないのかな?さすがにそこまで万能じゃないか

    1
      • 匿名
      • 2020年 7月 05日

      対中国で考えるとインドとロシアの関係を損ねてロシアと中国を更に近づけるのも余りよろしくないから確かにアメリカとは間接的な同盟のままで良いかも

      1
        • 匿名
        • 2020年 7月 05日

        今以上に中国とロシアが近づいたところで、やれることに大差はないでしょう。この2ヵ国以外の国がまとまっていくことは、それとは比較にならない影響がありますから。

        1
      • 匿名
      • 2020年 7月 05日

      国民から政府への批判ではなく、政府内で習ちゃんが批判されるのがまずいのでは。

      1
      • 匿名
      • 2020年 7月 05日

      香港の件もタイムリーなので英連邦に復帰という方向で

    • パンダ3尉
    • 2020年 7月 05日

    インド洋の制海権を失ったら、中国がこれまで未開のアフリカに施してきた莫大な投資は全て無駄になるでしょう。巨額の不良債権化した一帯一路政策が、中国財政を圧迫し自壊するシナリオを日本としては追求すべきと思う。中国財政が悪化し、米国債の現金化を行おうとしたときこそ、日本が尖閣その他領土の保全に邁進する絶好の機会である。

    • 匿名
    • 2020年 7月 05日

    中国は明らかに対外政策の計画を早めている兆候があり、これは早急に外に打って出ないと国内がもたないことを意味し、だめ押しとしてのコロナ禍の影響の大きさを感じさせます。周辺国は溢れる腐海への対応が必要です。

    • 匿名
    • 2020年 7月 06日

    こういった対中包囲戦略は冷戦時代の封じ込めと同じ発想であり、時代錯誤で間違った政策だ。
    中国を国際社会に迎え入れ、平和共存の道を模索する事こそが唯一の現実的政策なのは明白だ。
    反中というナショナリズムに迎合するのは愚かな衆愚政治家がやることであり、賢明な指導者は中国との関係を真剣に追及するだろう。
    軍事安全保障は古い。経済的相互互恵関係を発展させよ。

      • 匿名
      • 2020年 7月 06日

      天安門事件をご存知ですか?

      検索できる環境下なら、お忘れですか?

      そして21世紀の香港事件を!!

      その後の江沢民~・・・~キンペー 経済発展により平和な民主国家に成長するは、西側の勝手な思い込み間違いでした。

      アメリカ・民主党の対北朝鮮政策と、結果的に同じ結末に至りました。

      国際社会は同じ失敗を看過できません。北朝鮮は言うに及ばず、共産党・中国は想像以上に追い込まれてます。

      あと一息です! 

      • 匿名
      • 2020年 7月 06日

      まごう事無き正論
      戦争が起きて真っ先に血を流すのは、ネットでブツブツ言ってるだけのカタログミリヲタではなく愚かな政治家達の為に犠牲となる自衛隊員達だからね…

      • 天安門事件
      • 2020年 7月 06日

      天滅中共
      習小近熊平
      習包子
      勿忘六四
      香港独立
      解救維吾爾
      解救西蔵

      • 匿名
      • 2020年 7月 06日

      それは間違っている。
      あなたが中国共産党を知らないだけだ。
      世界から見捨てられるぞ、そんなこと日本がしたら。
      中国との関係って奴らの良いなりになることだぞ。
      大体日本を軍事力で恫喝してくるくにと、なんの互恵関係があるんだよ。

      • 匿名
      • 2020年 7月 06日

      「経済的相互互恵関係を発展させよ。」って、そうじゃないから世界中で問題になってるんでしょうに・・・
      中国人が利益を分かち合うなんてことは無いんですよ?
      この世界にある富は、全て自分の物ってのが彼らの考えです。

      • 匿名
      • 2020年 7月 06日

      「中国を国際社会に迎え入れ、平和共存の道を模索」
      50年近くそれをやってきて、中国側に全くその気が無い事がよ〜く分かったとこです。

    • 匿名
    • 2020年 7月 06日

    記事には「結局、習近平主席率いる中国は新型コロナウイルスの批判を交わすため強行策に打って出たが」とあるがいうほど強硬策に出てる感あるか?と疑問が湧く。中印国境のにらみ合いもインドが国境の近くに大きな道路を建設したことに対する反発から始まったことであること、インドにとって、中国が実効支配しているカシミールの一部地域アクサイチンは中印国境紛争の屈辱的な敗戦で失った地域であり、インド領だと主張しているのに対し、中国にとってそこはただの最果ての地で、実効支配線より向こう側には領有権を主張していないなど国家としても国民感情としても温度差があることから、衝突はインド側が仕掛けた可能性が高い。ましてや香港の問題も別に今年からの問題ではなく、日本のメディアは報じないが外国勢力による扇動も問題視されていたから暴動を鎮めるために国家安全法が制定されるのは当然の流れだと思う。
    むしろコロナへの批判に対してはマスクや医薬品の援助をアピールして印象をよくすることに努めているように見える。それに一歩も譲歩せず、過去の自分の主張を通す姿勢は昔からの中国政府の特徴で今に始まったことじゃない。
    武力衝突を機会にインドがコロナによる国内の不満を中国に向けつつ、中国に対抗したい国々を味方につけたり支援を得ようというのが大筋の見方か。
    日本は大国間の本音と建て前を見抜き、国益につながるような選択をとってほしい。。。と思うが安部には無理そうな気がする

      • 匿名
      • 2020年 7月 06日

      日本語をよく勉強していらっしゃいますね。
      これがプロの仕事かぁ。

      • 匿名
      • 2020年 7月 06日

      もう、真実なんかどうでもいいです。これまで工作員や軍事圧力で日本に圧力をかけてきていた中国が、今まさに世界中から孤立しかねない、あるいは既になっている状況です。ある意味、うれしい状況なので中共に配慮も同情もないです。

      • 匿名
      • 2020年 7月 07日

      どこを縦読みすればいいのですか?
      ここまで流暢に中国のプロパガンダ垂れ流されるとお笑いなんですが。

    • 匿名
    • 2020年 7月 06日

    安倍さんの構想が結実してきてますね。とはいえインドも軍事だけ中国だけには構っていられない感。

    • 匿名
    • 2020年 7月 06日

    インドもはよ対中包囲網と対中議員連盟に参加して楽になろうや
    第三世界ではなく西側諸国になってしまうが中国が暴れすぎなんだから国家方針転換もやむなしやろ

    • 匿名
    • 2020年 7月 06日

    おそるべしファイブ・ヘアーズ

    • 匿名
    • 2020年 7月 08日

    昔のチャイナはもっと外交がうまかったよな
    まあつまり小国だったからなんだけど
    自分たちが大国になったと勘違いして外交が滅茶苦茶になった
    アメリカみたいな真の大国でなくいいとこ地域大国でしかなかった

    • 匿名
    • 2020年 7月 14日

    内モンゴルでは肺ペストが流行しているという情報もあるし、検疫せずに中国人を入れるのは危険。

    • 匿名
    • 2020年 7月 16日

    中共の言い分は「盗人にも三分の理」の類ばかり

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