中国関連

中国の電子戦機J-16Dが間もなく実戦投入可能に、J-20との相乗効果をアピール

中国中央テレビ(CCTV)は6日、珠海航空ショーでデビューした電子戦機J-16Dが実戦的な戦闘訓練に投入されており「もう間もなく実戦の戦闘に投入できるようになる」と報じている。

参考:China’s J-16D electronic warfare aircraft starts combat training, ‘to team up with J-20 stealth fighter’

敵のレーダーに検出されにくいJ-20と敵のレーダー機能に干渉して能力を発揮できないようするJ-16の組み合わせで圧倒的な戦闘効率が得られる

戦闘機J-16を改造して開発されたJ-16Dは米海軍が運用しているEA-18Gと同じ専用の電子戦機で、特にJ-16Dの機首周りやレドームは完全に再設計され新型のAESAレーダーを搭載していると推測されており、機体の至る所にアンテナを増設・主翼端には専用のポッドが設けられており、J-16DはEA-18Gと同様に機外に携行する外部ポッドで追加の電子戦装置を運ぶことが可能だ。

今年9月に開催された珠海航空ショーで初公開(J-16Dの存在自体は2015年頃に複数の情報チャンネルを通じて確認されているが公式に一般向けへ公開されたのは今回が初めて)されたJ-16Dには3種類の外部ポッドが搭載されていることが確認されており、米メディアは「どのような機能を備えているのか現時点では不明だがJ-16DはEA-18Gと同じように機内に搭載された電子戦装置と外部ポッドの電子戦装置を組み合わせることで複数のエミッタ(敵の電波放射源)に一斉攻撃を行うことが出来るため、J-16Dが提供する強力な電子戦能力は非ステルスのJ-16やステルスのJ-20などと連携すると強力な脅威になる」と見ている。

これを裏付けるように中国中央テレビ(CCTV)は「実戦的な戦闘訓練に投入されたJ-16DはJ-20に随伴してシームレスな運用の動きが期待されており、両機は共同で敵のレーダー資産を破壊するよう設計されている」と述べているのが興味深い。

出典:U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Jerilyn Quintanilla

つまり敵のレーダー資産とは地上固定のレーダーサイトや移動式のレーダー装置、空中を移動しながら交戦区域の認識力や戦闘の管制を行う早期警戒管制機などの存在を指しており、中国のグローバルタイムズ紙(環球時報の英字版)の取材に応じた中国人の軍事アナリストは「敵のレーダーに検出されにくいJ-20と敵のレーダー機能に干渉して能力を発揮できないようするJ-16がチームを組むことで圧倒的な戦闘効率が得られる=敵の地上レーダーや早期警戒管制機の支援が効果的でなくなるとより戦いが楽になるという意味」と説明しているので、米メディアの懸念は決して的外れではないのだろう。

J-16Dは旅客機や輸送機ベースの電子戦機とは異なり戦闘機ベースなので、敵と遭遇して交戦するリスクの高い空域まで戦闘機に随伴できる=よりエミッタ(敵の電波放射源)に近い場所で電子妨害を実行できるという利点があり、認識力が低下すればするほど優れた決断を下すための情報が少なくなるため戦闘効率は悪化していく。

当然、中国が対峙する敵側(米国)も同じように電子戦を仕掛けるため「より認識力が低下した方が不利になる」という意味だ。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Isaiah Williams

最も米国と軍事的に衝突する可能性が高い台湾付近は中国本土に近すぎるため、中国軍は航空機ベースの電子戦機(J-16、Y-8G/X/XZ、Y-9G)だけでなく地上ベースの電子妨害装置も投入してくる可能性が高く、米軍は地理的な不利な環境で中国軍の電子戦能力を上回らなければならない。

米国は冷戦終結後に電子戦関連への研究・開発費を大幅に削減(現在は再び投資額を増やしている)してしまったが、ロシアや中国は電子戦関連への研究・開発費を維持もしくは増額したためロシアの電子戦能力は米国を完全に上回っていると言われており、中国も圧倒的だった米国との技術格差を縮めてきているため「交戦区域を台湾に限定すれば中国の干渉力の方が上回っている」との可能性も否定(実際のところは一部の関係者にしか分からないので断言はできない)できなくなっている。

果たしてJ-16Dは戦闘訓練が完了して「いつ実戦に対応してくるのか?」は不明だが、着実に電磁スペクトル分野の能力を高めてくる中国に米国は頭を悩ませているだろう。

関連記事:海外メディアも注目、珠海航空ショーで初公開される電子戦機J-16Dと無人偵察機WZ-7

 

※アイキャッチ画像の出典:中華民國國防部 中国空軍のJ-16

空自、那覇基地のバックアップとして離島の民間空港拠点化を検討前のページ

中国、世界初となるツインシートの第5世代戦闘機「J-20S」が初飛行に成功次のページ

関連記事

  1. 中国関連

    再掲載|第4.5世代へ進化した中国のJ-10C、F-15EXやF-16Vに匹敵か?

    中国の第4.5世代戦闘機「J-10C」はロシア製よりも性能が優れている…

  2. 中国関連

    海警法で武器使用を容認した中国、中国海軍の056型コルベットを中国海警局へ移管

    中国海軍は2012年~2019年にかけて計72隻建造した056型コルベ…

  3. 中国関連

    海外メディアも注目、珠海航空ショーで初公開される電子戦機J-16Dと無人偵察機WZ-7

    今月末に開幕する珠海航空ショーに中国人民解放軍はステルス戦闘機J-20…

  4. 中国関連

    中国、日本が対艦ミサイルで台中戦争に介入すれば弾道ミサイルで日本本土に報復

    環球時報紙の胡編集長は5日、石垣島に陸自のミサイル部隊配備に関するニュ…

  5. 中国関連

    狙いはF-35製造への打撃、中国が米防衛産業に対するレアアース輸出規制を検討中

    中国政府は米国の防衛産業を狙ったレアアース(希土類)の輸出規制を検討中…

  6. 中国関連

    中国、小型無人機を遠方に投射するため「無人空中スウォームシステム」を開発

    米空軍はステルス無人戦闘機「XQ-58Aヴァルキリー」のウェポンベイか…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 11月 08日

    日本の電子戦機計画はどうなったんだ…
    F-15ベースの話もいつの間にか消えちゃったしまさか電子戦機の遅れまで米空軍を真似るのか?

    17
      • 匿名
      • 2021年 11月 08日

      そういえばいつの間にかEA-18G導入の話も聞かなくなりましたね

      7
        • 匿名
        • 2021年 11月 08日

        敵基地攻撃能力みたいな華やかなものに夢中になってないがしろにならないことを祈る

        17
      • 匿名
      • 2021年 11月 08日

      国内における研究開発はスタンドオフ電子戦機にシフトしたんでしょうね。
      記事にある通り中露の電子戦能力開発は米に先行している状況なので、前線運用型は今後の動向を見極めようと一旦仕切り直しなんじゃないでしょうか。

      3
        • 匿名
        • 2021年 11月 08日

        スタンドオフ電子戦機は中露側のミサイル射程延長によってアメリカでも生存性を担保できないかつ一機でも落とされると戦力が激墜ちしてあまり望ましくないんじゃなかったっけ…

        7
      • 匿名
      • 2021年 11月 08日

      F-35やF-15JSIに搭載するかもしれないコグニティブタイプのECMで暫くは凌ぐ気なのかもしれませんね。

      2
      •   
      • 2021年 11月 08日

      電子戦機の活躍する場面は侵攻爆撃だから日本の場合はあまり
      他国でも制空任務には付かないし、対艦攻撃も防空圏の外縁からだしな

      防空網に飛び込むような戦い方はちょっと
      現存艦隊主義のようなバトルオブブリテンを見習うべき

      1
    • 匿名
    • 2021年 11月 08日

    正面装備だけでなくこういった電子戦能力やISR能力の獲得・強化に多額の予算があてられる事を願うしかねぇな

    サイバー防衛隊も千人前後じゃ少なすぎる、中国のように10万越えとは言わんが規模で言うなら旅団規模は欲しい

    人材集まるかなぁ・・(;-ω-)ハァ‐

    16
      • 匿名
      • 2021年 11月 08日

      > 人材集まるかなぁ・・(;-ω-)ハァ‐

      正直かなり難しいだろうなあとは思います。

      現在の求人市場はIT・通信業でくくっても6.41倍というとんでもない売り手市場で、さらに希少なセキュリティ人材ともなると10倍を軽く超える状態です。

      年収も最低ラインが600万からで、このレベルでは20代前半のジュニアレベルのセキュリティエンジニアしか採用できません。30前半くらいのミドルレベルを採用しようとすると最低800万は超えます。
      そしてシニアレベルになると年収1000万を超えるレベルとなり、これはサイバー防衛隊の司令である一佐の年収水準と同じになります。
      シニアの中でも特に優秀な層は上から順に外資へ引き抜かれていきます。外資に入ると年収2000万円さえ突破する勢いです。

      自衛隊に入ることによって生じる守秘義務や様々な制約も加味して考えると、愛国心以外で自衛隊に入るメリットが皆無なんですよね。

      7
    • 匿名
    • 2021年 11月 08日

    最近まで、西側の技術をパクっただけの劣化コピーと笑っていたが
    ここまでくると笑えない状況

    6
      • 匿名
      • 2021年 11月 08日

      むしろ兵器開発の歴史でパクりパクられやってないほうが少ないんだよなぁ…
      一部の人間が国威発揚()のために変に持ち上げてるだけで

      21
        • 匿名
        • 2021年 11月 08日

        でも中国はパクるレベルが度を越えすぎているんだよな・・・。
        国ごと盗むレベルで

        2
          • 匿名
          • 2021年 11月 08日

          国ごと盗める技術があるし国ごと盗んだ技術を自分の物にする技術もある。
          中国の恐ろしいところはその貪欲さ。

          16
      • 匿名
      • 2021年 11月 09日

      中華兵器が電子装備や電波兵器のハイテク分野で劣るなんてのは、もはや過去のイメージですからね
      今は立派なハイテク先進国

      4
    •   
    • 2021年 11月 08日

    発電タービンのない電子戦ポッド
    能力的に疑問符なんだけど

    1
      • 匿名
      • 2021年 11月 08日

      ポッド下面に吸気口、側面に排気口らしき突起があるので多分個別のジェネレータ搭載しているんだと思う。
      アメリカが開発中のNGJ-MBもジェネレータ内蔵方式だし、電力を馬鹿食いする次世代電子ポッドには空力依存のオープンタービンだと発電量が足りないんだろう。

      9
      • 匿名
      • 2021年 11月 08日

      EA-18Gが使ってる電子戦ポッドAN/ALQ-99が旧式のポッドというのもある。
      発電用タービンがない電子戦ポッドも他に存在してるし発電能力では以外と問題ないかも。
      発電用タービンを搭載するメリットは、搭載する航空機の制約を減らせる所だと思う(F-15EXみたいな非電子戦機で運用できる可能性)。

      6
      • 匿名
      • 2021年 11月 09日

      F-35の発電量は初期型は160kVA、最新モデルでは400kVAにアップしていて
      これはF-22/FA-18の2.5倍、F-15/F-16/ラファールの4倍相当
      でも、どこにも発電用タービンの羽根なんて追加されてないし露出もしてない
      でしょ?
      今はエンジン連接のスターター兼用内蔵ジェネレータの発電量を増やす方向だから
      ステルス性にも不利な発電タービンなんてとっくに主流じゃない
      Su-27はエンジン出力に余裕があるし機内容積もあるから、内蔵ジェネレーター
      でも十分な発電量が確保出来るんでしょう

      2
    • 匿名
    • 2021年 11月 08日

    C2ベースのスタンドオフ電子戦機の研究と開発は今年の2月から26年まで続くそうなので、それまでは日本側の対抗手段は車載式の地上システムくらいですかね。

    2
    • L
    • 2021年 11月 08日

    99%対台湾と日本用だろうと思うと嫌だなぁ

    7
    • 匿名
    • 2021年 11月 09日

    中国軍については、実戦データがないから、次々に新兵器が出てきても、
    個別でも、総体でも、戦力評価に余るところだよね。

    1
      • 匿名
      • 2021年 11月 09日

      極東某国と一緒ですね(^^)

      3
    • 匿名
    • 2021年 11月 09日

    あの、ぶちゃいくな機体のおっきい奴は?電子戦用の奴でしょ?

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  2. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  3. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  4. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  5. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
PAGE TOP