英国王立防衛安全保障研究所は「人民解放軍空軍のPL-16はPL-15と同等の能力をもつ小型化された空対空ミサイルでJ-20のウェポンベイに6発搭載できる」と指摘していたが、Defense Newsは22日「PL-16は米軍のAIM-260に対する回答で最大射程は300kmを超えるかもしれない」と報じた。
参考:Can China’s latest air-to-air missile take on its US equivalent? Definitely maybe, experts say.
参考:China’s PL-16 Ultra-Long Range AAM: Ex-Fighter Pilot Explains Why Networks, AWACS & EW Matter More Than Missile Range
PL-16とAIM-260のどちらが優れているのかのみで「どっちが強いのか」と考えても無意味だろう
英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は中国の航空戦力に関する報告書の中で「2020年時点のJ-20は技術的に比較的未熟で、2025年後半になると改良され技術的に成熟したJ-20Aが登場し、これをベースにした複座型のJ-20Sも含めて同機の年間生産数は120機、最低でも約13個航空旅団で320機~350機のJ-20、J-20A、J-20Sが運用されている」と言及したが、最も能力向上が著しいのは空対空ミサイル分野だと警鐘を鳴らしている。

出典:彩云香江
“人民解放軍空軍のPL-15とPL-17はロシア、米国、欧州が使用する空対空ミサイルより大幅に射程が長く、まもなくPL-16も実戦配備されるだろう。PL-16はPL-15と同等の能力をもつ空対空ミサイルだが、本体の小型化と折りたたみ式のフィンを備えているためJ-20のウェポンベイに6発搭載できる。PL-15、PL-16、PL-17は何れもAESAレーダー・シーカー、ホーム・オン・ジャムとパッシブ・ホーミングといったデュアルモード能力を備えている可能性が高い”
“PL-15、PL-16、PL-17はAMRAAMで武装した西側戦闘機に対して絶対的な射程の優位性をもたらすだけでなく、非常に高いピーク速度に起因する目標到達時間=time-to-targetの優位性も提供する。これは中国軍機と西側軍機が同時にミサイルを発射し合った場合、中国のミサイルがおそらく先に目標に到達することを意味し、重大かつ潜在的な戦術的アドバンテージとなる。2025年5月のパキスタン空軍とインド空軍の交戦(シンドゥール作戦)は情報公開が不完全ではあるものの、西側やロシアの同等兵器と比較した中国製ミサイルおよび航空機の能力に関する有用な洞察をもたらした”
🔺🇮🇳❌🇵🇰:
Visuals of Rafale’s M88 engine from Bathinda, Indian Punjab. The Rafale was destroyed by PAF. pic.twitter.com/7OdwD8bnlH— Tactical Tribune (@TacticalTribun) May 7, 2025
“一連の長距離交戦において少なくともラファールとSu-30MKIが1機ずつ撃墜され、インド空軍は他にも2〜3機の戦闘機がパキスタン空軍によって撃墜された可能性がある。パキスタン当局も「ラファールに命中したPL-15Eは200km離れた場所から発射された」と主張している。正確な数値(珠海航空ショーで展示されたPL-15Eの説明文には最大射程145kmと記載)はともかく、比較的新しいインド空軍の戦闘機がJ-10CEから発射されたPL-15Eによって被弾したことは事実であり、これは前例のない距離における初交戦だった”
“シンドゥール作戦とウクライナでの戦争における中国製とロシア製の長距離空対空ミサイルの性能の対照は際立っている。ロシアは状況認識力が非常に限られた旧式化のウクライナ軍機に対し、定期的にR-37Mを使用しているにも関わらず、Su-35、Su-30、MiG-31は4年にわたる戦いの中でウクライナ軍機を数機しか撃墜出来ていない。シンドゥール作戦で少なくとも1機のラファールを撃墜したPL-15Eは「中国軍向けのPL-15」よりも能力が著しく劣っていたことも強調しておく価値がある”

出典:Government of India/GODL-India
“PL-15Eのベースラインになったと思われるPL-15は10年以上前から人民解放軍空軍で運用が始まっており、この期間に見せた中国の軍事技術や進化や産業力の発展を加味すればPL-15ファミリーは中国軍向けにソフトウェアとハードウェアのアップグレードを複数回受けている可能性が高い”
要するにPL-15はデュアルパルス固体ロケットモーター(Dual-Pulse Rocket Motor)の採用によってAMRAAMを超える射程距離を実現しただけではなく、目標に接近した終末誘導段階で第2パルスに点火して再加速することで、最大9Gの回避機動までしか行えない戦闘機を追尾できるようになる、つまり「第1パルスの加速による慣性飛行で目標に到達しても、目標の敵機は回避機動でミサイルの慣性エネルギーを消費させてくるが、PL-15は第2パルスによる再加速によって逃げ切れないノーエスケープゾーンを大きく拡大させている」という意味だ。

出典:NAVAIR
米空軍がPL-15に対抗するため調達を開始するAIM-260はAIM-120と同サイズで、ミーティアが採用しているラムジェット推進を取り入れるのが不可能なため、War Zoneは「PL-15が採用したデュアルパルスロケットモーターと同じ手法でAIM-120を上回る射程を確保しているはずだ。誘導装置や弾頭など推進部以外を小型化し、推進剤の容量アップを組み合わせることでAIM-120を上回る射程を確保している」と予想している。
PL-16については中国人民解放軍空軍の内部ブリーフィングで使用されたスライド画像が流出し、このスライド画像が本物ならPL-16はデュアルパルス固体ロケットモーター(Dual-Pulse Rocket Motor)ではなく可変推力固体ロケットモーター(variable-thrust solid rocket motor)を採用し、発射~巡航~終末機動の間の推力を連続的に調整できるため有効射程(300km超)とノーエスケープゾーンのさらなる拡張が可能になり、PL-15をJ-20のウェポンベイに収まるよう小型化しただけという単なる派生型という枠に収まらなくなる。
By the way, we finally got the official confirmation of long-rumored PL16 being in service. It is more compact than PL15 but is able to achieve an even longer range. The photo was taken during a pilots seminar, you can see the difference between flight envelope of PL16 and PL15 pic.twitter.com/rJoTup2hQP
— Little Otter General Soilder (@Liu91mr) July 27, 2025
Defense Newsも22日「中国軍のPL-16は米軍のAIM-260と互角に渡り合う可能性があり、その延長された射程と終末段階での再加速能力によって、アジア太平洋地域におけるあらゆる紛争で中国人民解放軍に優位性をもたらす可能性がある」「PL-16はロッキード・マーティンが米軍向けに開発中のAIM-260への回答だ」と報じた。
“この中国製ミサイルは推定200km〜300kmという長大な飛翔距離を誇り、飛行の最終段階で二度目の推力を生み出すデュアルパルスまたは可変推力固体ロケットモーター技術を搭載しているとされる。ロッキード・マーティンのAIM-260も同様に追加の推力を生み出す機能を備え、少なくとも200kmを飛翔すると予想されている。オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)のマルコム・デイビス氏も「PL-16のスペックであれば大型で動きの遅い航空機を追尾できるだろう」と指摘する”
PL16 will incorporate multi pulse, variable thrust with 300km+ range
And the PL15 kill at 180km https://t.co/IsuOZ4tGUQ pic.twitter.com/0QTbbPykX2
— Hûrin (@Hurin92) June 2, 2026
“デイビス氏も「この長距離射程において最も重要なのは終末段階での機動性と誘導能力だ」「PL-16は早期警戒管制機、空中給油機、偵察機の撃墜を目的に設計されているため、長距離を飛翔したあとでも撃墜率は極めて高い」「ここから読み取れる中国人民解放軍空軍の戦略は明確だ」「米空軍、米海軍、同盟国軍にとって重要な戦闘支援機=コンバット・イネイブラーを排除すれば、我々は航空戦力を投射できなくなる」「中国側はPL-16を迅速に生産するだろう」「問題は米国がいかに早くJATMを量産体制に乗せられるかどうか」という”
ミサイルの射程距離は「レーダーで検出した目標を最大射程で必ず撃墜できる」と保証するものではなく、ミラージュ2000の操縦経験をもつ元インド空軍のパイロットも「この300km超という数字は理想的な条件下での理論値に過ぎないため実戦での有効性は別問題だ」「視程外戦闘において重要なのはネットワークの強靭性、セキュアなデータリンク、オフボードからの目標指示、電子戦の優位性、先進的なAWACS、空中給油機、そして高脅威環境下でも安定したトラックを維持できるシステムだ」と指摘。
Usual disclaimers apply. Treat this as an entertainment piece with no sources for now.
But just saying. This was lowkey foretold if you had digged enough 🤷♂️
(I personally hope they integrate this into a multi-pulse architecture since they can complimentary) pic.twitter.com/PYGcbmNYMB
— ✌️🦌 ◂Ⓘ▸ (@repl1cant_19) June 2, 2026
“メーカーが公表する最大射程は通常、高高度、最適な発射条件、非機動目標といった理想的な試験環境で測定された値で、実戦では大気の抵抗、高度差、速度差、目標の機動、電子妨害、デコイ、先進的なEWシステムによるシーカー捕捉の阻害や中間誘導の妨害、発射母機がミサイルを誘導し続けるか、データをハンドオフできるかといった要因で有効射程が大幅に低下する。真の優位性はネットワーク中心の運用にあり、AWACSや他機のセンサーが目標を探知し、別のステルス機からミサイルを発射させるオフボード・キューイングが可能になれば、発射母機はレーダーを使わず低観測性を維持したまま極めて長距離から攻撃を仕掛けられる”
“PL-16はJ-20のウェポンベイに搭載できる空対空ミサイルを4発から6発に拡張する点は非常に重要で、J-20は低観測性を維持したまま火力密度を高められるのだ。将来の制空権は統合センサー・ネットワークによる共通作戦状況図、耐妨害性を備えたセキュア・データリンク、早期警戒と目標指示を担う生存性の高いAWACSやISTARプラットフォーム、空中給油による戦闘能力の持続性、自軍のネットワーク保護と敵ネットワークの攻撃が可能な先進的EW能力、センサー融合による高信頼のトラックで決定づけられ、敵のネットワークを崩壊させる能力の方がミサイル自体の運動性能を上回る影響力を持つ”
Secretive AIM-260 Air-To-Air Missile Finally Breaks Cover
The AIM-260 has been in development for years as a much-needed longer-range successor to the venerable AIM-120 AMRAAM.https://t.co/UKAjSpa7fj
— TWZ (@thewarzonewire) May 15, 2026
最大射程や有効射程においてPL-16とAIM-260のどちらが優れているのかは不明だが、例えば「PL-16携行のJ-20を操縦する中国人パイロット」と「AIM-260携行のF-35を操縦する米国人パイロット」が大空で手に汗握る戦いを繰り広げるという想像は映画かゲームの世界の話で、現代の空中戦において「ミサイルの射程」「戦闘機のステルス性」「パイロットの腕」はキルチェーンにおける一要素でしかない。
実際の優位性を大きく左右するのはキルチェーン全体における共有された状況認識力、ネットワークの質と保護、早期警戒と目標指示、統合されたセンサーやネットワークによる高品質な目標の継続的追跡能力、航空戦力に対する航空支援能力、敵のキルチェーン全体を支える上記全ての能力を妨害する能力で、このキルチェーン全体の土台があって初めて「ミサイルの射程」「戦闘機のステルス性」「パイロットの腕」が生きてくるため、PL-16とAIM-260のどちらが優れているのかのみで「どっちが強いのか」と考えても無意味だろう。

出典:@RupprechtDeino
それでもデュアルパルス固体ロケットモーター(Dual-Pulse Rocket Motor)から可変推力固体ロケットモーター(variable-thrust solid rocket motor)への技術進化は非常に興味深く、空対空ミサイルの長射程化を活かせるキルチェーン全体の土台があるのなら航空作戦は大きく様変わりするだろうし、PL-16に対抗するためには対称兵器=同じ能力をもつ空対空ミサイルの開発とキルチェーン全体の土台を崩す能力、最も効果的なのは中国軍のネットワークを崩壊させる能力の獲得で、そういった意味では電磁スペクトル分野の能力が戦場の優位性を決定づけるのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:weibo





















日本目線、中国空軍は本当に厄介ですよね。
中国製ミサイルの実戦使用により、空対空ミサイルの信頼性も一定の担保がされたと思います。
中国空母が、沖縄周辺~太平洋にかけて軍事演習を繰り返しているわけですから、日本も対抗する防衛力を引き続き強化していきたいものですね。
当たらなくとも狙われた航空機は回避軌道を取る必要があるので、長射程というのはそれだけで厄介な存在ですよね。
射程が300kmあるとしても、その300km先の標的が見えていてロックオン出来なければ意味がない訳ですね。
機体自体のステルス性を向上させる事も重要ですし、電子戦機によるジャミングやゴーストの創出、無人機による囮、高付加価値の早期警戒管制機は、無人機をネットワーク化する事で的を絞らせにくくするなど、戦場の統制のオーケストレーション化を一層進めていかなければ、今後の空の戦場では生き残れなくなるでしょうね。
GCAPで英国が説明するコンセプトだと大電力でサーバラックを前線に運ぶとのことなので無人機のコントロールとAWACS的な役割をステルス機に持たせるのでしょうね
中国は後方支援の小回りの利かない大型機を距離を伸ばしたミサイルで狙うみたいなのでその対策にはなるかなと
あとは間に合うかですが
24式対空電子戦装置と対空電子戦部隊に関連する産経の記事で300キロ程度とみられるKJ2000のレーダーの探知範囲を数十キロに狭めるみたいな話が出てたけど、逆もまた然りだからな。
ただカタログスペックなんて(その数値が本当かはともかく)通信電波でいうベストエフォートでしかないし、実戦だと花形兵器よりも旧式機や変なのが活躍したりするから、あくまで手段の一つと思っとかんと。
大型機には、対対空ミサイルレーザーみたいなのを積んだ護衛機が必要になってくるのかな?
あるいは非武装の盾役のドローンを10機くらい随伴させるか
戦闘妖精雪風のフリップナイトですね。
戦車のトロフィーシステムみたいに、対AAMミサイル(後ろ向きに発射)なんて徒花が短期間のうちには出てきたりして。
最終的にはDEW兵器で迎撃する時代になるんでしょうけど。
映画エアフォースワンで、ミサイルを撃たれたエアフォースワンを守る為に、敵の撃ったミサイルに体当たりをやるF-16がいたんですけど、盾役無人機ならあの戦法を躊躇いなく出来るんでしょう
将来の空戦は攻撃を拡張するロングショットとか、撃墜前提の盾役無人機とかがバンバン飛んでるんでしょうか…
被害を恐れて慎重な行動をさせられるだけでも不利になりますね
この類の話題で今ひとつ現実感を持てないのが、300キロというと東京と名古屋位の距離があるわけで、それで交戦って???と感じてしまうのは現代人でない、ということなんでしょうね。
古来より兵器の発展はより遠くから、より大火力でという方向でほぼ一貫していたかと思います。
剣よりも槍、槍よりも弓、弓よりも銃、銃はライフリングを加えてより遠くへ、大口径の砲でさらにもっと・・・そしてとうとう見えないほど遠くの敵を撃つに至ったのが第一次世界大戦で、「戦場から煌めきが消えた」という感覚の由来の一つだったりするのかなと思ってみたり。
そもそも動物の争いごとは感覚器(つまりは目)で敵を捉え、興奮や怒り、恐怖でもって取っ組み合うものですから、視程外戦闘を知っていても実感できないというのは正常だと考えてよろしいかと。
ものすごい時代ですよねぇ…。
でえじょうぶだ。殆どの人のイメージが『戦争=第二次大戦のやり方』だから。
戦車のAPFSDSとか魚雷のバブルジェットとかステルス効果とか興味あっても理解できないのに、興味無い人にはより分からないです。
やっぱりステルスいるよね、これ
欲を言えばCCA等にだってなければ一方的にやられるだけかもしれないし
戦闘機に対する防御装置として、AN/ALQ-184(V)9って言う曳航式のデコイが有るのですが、無人随伴機のRCSを低下させる事の反対に、リフレクター等を搭載してレーダーに大きく映る様にして、更にデコイを搭載する事で、無人機をミサイルキャリアー、センサーとして使うと同時に複数回使える盾として使うのも良いかもしれません。
無人機でも有人機でもデコイ弾発射で身代わりとか。
レーダー反射3だけじゃなく、赤外線も模倣しなきゃ駄目かも
空対空ミサイルを撃ち落とす対空対空ミサイルの開発が急がれるな