ウクライナ戦況

300日目を経過したウクライナ侵攻、ロシア軍はベラルーシに装備を移動中

ロシア軍は東部戦線で攻勢を強化しており、ベラルーシ国内でロシア軍の動きを追跡するグループは「ロシア軍が戦車や装甲車をウクライナ国境近くに移動させている」と報告、ベラルーシ当局もウクライナ国境に近い都市へのアクセスを制限したらしい。

参考:Российские наемники могут обстрелять Беларусь и обвинить Украину, – ЦНС

21日に米国がパトリオットシステムの提供を発表する予定なので「これまでとは違う何か」を仕掛けてきても不思議ではない

侵攻開始から300日目が経過した東部戦線ではロシア軍が攻勢を強化しており、ベラルーシはウクライナ国境に近いロイェウ、ブラヒン、ホイニキへのアクセスを制限、さらにワグナーの傭兵も国境地域に到着して「偽旗作戦=ベラルーシ領に発砲してウクライナの攻撃だと主張する準備を進めている」とウクライナ側が警告している。

出典:GoogleMap 東部戦線の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

東部戦線の状況は上記のようになり、クピャンスクの北に位置するシンキフカにも「ロシア軍が攻撃を加えている」という報告があるものの今のところ前線の位置に大きな変化はなく、ソレダルとオプトネでロシア軍が若干の前進を遂げた位だが、散々警告されていた「ベラルーシからキーウ方面への再侵攻」には動きが観測されている。

西側当局やシンクタンクは「ロシア軍がキーウ方面への再侵攻に踏み切る可能性は低い」と見ているが、ベラルーシ国内でロシア軍の動きを追跡するグループは「ロシア軍が戦車や装甲車をウクライナ国境近くに移動させている」と報告しており、ベラルーシ当局もウクライナ国境に近いロイェウ、ブラヒン、ホイニキへのアクセスを制限、ウクライナ側も「ワグナーの傭兵も国境地域に到着して偽旗作戦=ベラルーシ領に発砲してウクライナの攻撃だと主張する準備を進めている」と警告している。

出典:GoogleMap

アクセスが制限されたロイェウ、ブラヒン、ホイニキは「2月24日のウクライナ侵攻でロシア軍の拠点として機能した都市だ」と言われており、西側当局やシンクタンクの見立てが正しいのか、それともロシア軍はキーウ方面に本気で再侵攻するつもりなのか判断がつかないが、21日には米国がパトリオットシステムの提供を発表する予定なので「これまでとは違う何か」を仕掛けてきても不思議ではない。

ウクライナ軍のザルジュニー総司令官も「再びロシア軍が攻勢にでる。攻勢に出る場所はドンバスに限定されておらず連中がキーウ攻略に再挑戦するはまず間違いない」と主張しているが、ロシア国内で訓練を受けている動員兵(約20万人)の準備が整うのは「来年の2月頃」と予想しているため、流石に「ロシア軍が直ぐベラルーシ方面から攻めてくる」ということはないはずだ。

因みにゼレンスキー大統領はバイデン大統領と会談するため電車でポーランドのプシェミシルまで移動、そこから車でジェシュフ空港に向かい「米軍機で米国に向かった」と報じられており、バイデン大統領は「(ゼレンスキーと)話し合うことが沢山ある」と述べている。

関連記事:ゼレンスキー大統領、兵士激励のため銃弾が飛び交うバフムートを訪問
関連記事:ウクライナ軍総司令官、ロシア軍の動員計画は非常に上手くいっている

 

※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

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コメント

    • STIH
    • 2022年 12月 22日

    なんという戦線の長さ。直線距離で300 kmくらいあんのか。そりゃいくらでも火砲が必要なりますわ。
    ウクライナもロシアも厳冬期で膠着状態ですが、ロシアは後方で兵力の育成を実施+大量の旧式兵器を整備して開戦1年の2月に再侵攻を図るわけですか。
    流石に去年みたいな失態は犯さないでしょうから、ベラルーシからキーフに再侵攻するのはやらないと思うのですがどうでしょう。

    9
      • o
      • 2022年 12月 22日

      キーウ方面何てガチガチに要塞化されてるでしょうし、開戦当初より兵の練度も劣り装甲戦力も火砲も不足する現状で仕掛けても、到底上手くいくとは思えませんしね。
      常識的に考えればやらないと思うけど、常識を駄目な方向に何度も覆してるのがロシア軍だから、解らないなぁ…

      32
      • HY
      • 2022年 12月 22日

       いや、プーチンはやるよ。膠着状態を出するためにもウクライナ征服という悲願を達成するためにも、あらゆる手段を使って実行するでしょう。ウクライナがそれにビビれば領土割譲を前提とした「一時的な」停戦交渉に持ち込めますし。

      19
        • .
        • 2022年 12月 22日

        まぁ動員兵がドンバス方面の守備に回されこもられるよりは
        塹壕から出て向かってきてくれた方がウクライナ的には好都合だろうし
        消耗がますます早まったロシア側の都合の悪い条件で停戦が成立する可能性は
        高まるかもですね…

        2
      • タイヤキ
      • 2022年 12月 22日

      前回ウクライナ側が行った首都近郊の農業用ダムの破壊は最早できないから首都近郊だけ早くに泥沼発生させるのはウクライナ側できないから、前回よりロシア攻めやすく補給はしやすいだけどどうするでしょうね。

      2
      • トーリスガーリン
      • 2022年 12月 22日

      1点言及するなら現在の膠着状態は厳冬だからではなくむしろ暖冬だから発生していると思われます
      寒いから膠着しているのではなく凍り切っていない泥濘があるから膠着している感じです
      戦力再編とウクライナへのインフラ攻撃を考えると時間は基本的にロシアに利すると考えられ、仮に早い段階でウクライナが攻勢に出れず露軍がイニシアティブを握ったならば東部・または南部戦線において露軍の大規模構成が発生する可能性は高いと思います

      6
        • .
        • 2022年 12月 22日

        >時間は基本的にロシアに利すると考えられ

        それはロシアの戦力の余剰が十分で摩耗もせず、かつミサイルの残弾が無限な前提で
        ミサイルもドローンの在庫も乏しく、明らかに攻撃の頻度時代も落ちてる現状では
        嫌がらせ以上の効果は望めないでしょう。
        そもそも都市への空襲が相手国の継戦能力と意思に与える影響は限定的であると
        WW2など過去の戦訓で十分立証されてますし。

        ロシアの空襲より、西側の制裁がロシアの兵站や経済全体に与える影響は中長期的にも
        より深刻化していくでしょう。ウクライナが何もせずとも、ロシアのインフラは日々崩壊してます。

        4
          • トーリスガーリン
          • 2022年 12月 22日

          それ位速やかにロシアが弱体化していくなら自分もそれが望ましいと思います
          ただ向こう数か月程度に限るならロシアのインフラが社会体制維持が困難なほど崩壊してしまうとは考えにくいと思います
          そうなると動員して以降3か月以上訓練を続けている動員兵たち(15万~20万程度?)が順次戦線へと投入され始め、ロシア軍の大きな弱点だった歩兵不足が解消されて行くと思われます
          BTGを廃止しているというのもその流れの一環だと思うので、古いタイプの戦争を着実に実施するという意味では時間が経過するほど短期的にはロシア軍の戦力増大の方が大きいと考え時間はロシアに利すると考えた次第です

          6
    • りんりん
    • 2022年 12月 22日

    両軍とも春までに2回程度はサプライズを仕掛けてくるのではないでしょうか。
    それが軍事的な攻撃か、政治的な駆け引きかは分かりかねますが。
    まずはクリスマス前後でしょう。
    ゼレンスキーの米国訪問もそのひとつでしょうが、ウクライナはもうひとつ仕掛けてくる可能性があります。
    ロシアが仕掛けることができる最大のサプライズはベラルーシ参戦ですが(戦術核攻撃がありますが・・・これはサプライズの域を超える)、これをやるとルカシェンコがもたないしポーランドとバルト三国を刺激しますからねえ。
    さすがら難しそうな気がします。
    まあ、だからこそのサプライズではありますが。

    16
    • 58式素人
    • 2022年 12月 22日

    今更だけど、一度書いたこともあるけれど、もう一度。
    ベラルーシ国境沿いとロシア国境沿いに
    広くて深い対戦車豪と人工丘陵をペアで巡らして障壁を作るべきでは。
    加えて、最低限度で、ベラルーシとロシアに通ずる道路と鉄道を
    切断・破壊しておくべきでは。直ぐには復旧できない形で。今のうちに。
    戦争の終わり方にもよるけれど。復旧は当面考える必要はないと思います。
    大陸国家にとって、鉄道と河川舟運は安価に大量に軍隊と軍需品を送る手段です。
    ロシアは頭Zと散々に言われているいますが、彼等には、彼等の目算があるでしょう。

    5
    • 無無
    • 2022年 12月 22日

    先日のロシア軍志願体験レポートに依れば、前線には戦意もやる気もないとのこと
    その状態でクリスマス攻勢をかけても兵士には帰郷を望んでの厭戦気分が高まるのみで期待薄
    プーチンはそういう現場をどの程度知っていることやら

    10
      • kitty
      • 2022年 12月 22日

      「クリスマスまでには帰れるさ」

      が今世紀にも受け継がれていくのですねえ…。

      22
      • 暇人28万号
      • 2022年 12月 22日

      (何年後かの)クリスマスには帰れる!
      、、、もしくは、あなたにクリスマスは永遠にこないという畑の肥やしになるエンド

      8
    • 爆弾
    • 2022年 12月 22日

    東部戦線で現状、勝利が見込めない以上
    第二次キエフ侵攻で首都制圧がロシアがとれる数少ない起死回生の手だけど
    ここまで負けが混んでる今、あの狸爺がベラルーシ経由での侵攻を許すかね…

    14
    • TKT
    • 2022年 12月 22日

    この戦況図を見ればわかりやすいですが、もはやロシア軍はなぜかバフムトにこだわってるとかではなく、シベルスクの北東や、ドネツク市の東でも複数の地区で攻撃、攻勢を行っています。スバトボの東でも一部で攻撃を行っています。

    理由はザルジュニ司令官の言うように、予備役兵動員による部隊編成がおおむね上手く行っていることであり、またウクライナ軍側の兵器や弾薬が不足していることでしょう。中にはすでに主力はポーランド軍やルーマニア軍の部隊なんだ、などという主張までありますが、今のウクライナ軍戦車の主力はポーランド軍が供与したT-72戦車というのは確かです。

    ベラルーシにロシア軍が移動していて、キーウを攻撃するというザルジュニー司令官の予想も本当かどうかはよくわかりませんが、キーウでは停電が続いて、多くの市民が寒さに震えているという話もあり、要塞化されていたとしても、計画通りに機能するかよくわからず、またキーウからドネツク州やハルキウ州に移動した部隊も多いでしょうから、現状でどれくらいの兵力がキーウに配備されているのかはよくわかりません。

    大統領警護旅団のようなのもすでにキーウからドネツク州に移動して戦っていると言われます。また部隊の編成や配備以前に兵器や弾薬が全般的に不足しているといわれます。

    女や子供が銃を執るといっても、すでに停電による避難勧告で多くの住民が西部や国外に避難、退去しており、たとえ女や子供が銃を執っても弾薬がなければ撃つことができません。

    ザルジュニ司令官によると予備役動員による部隊編成が完了するのは来年の2月ごろといいますが、今はもう12月の後半であり、そんなに先の話ではありません。

    8
      • (=^・^=)
      • 2022年 12月 22日

      スロビキンがプーチンにヘルソン撤退を飲ませて戦線縮小したのに今さらキーウまで風呂敷広げることはありえん。
      仮に占領できても他の戦線と孤立した地域になり維持していくのも難しい。自らインフラも破壊してるのに。
      また政治的にもキーウを戦場にし破壊することは西側の怒りを買い軍事援助のステージを上げてしまう。
      国境沿いで陽動のための軍事行動はあり得るが前回のような侵攻はまずあり得ないだろうな。

      6
    • 霞ヶ浦
    • 2022年 12月 22日

    ここまで動きないとウクライナの攻勢はほぼ終了したと見ていいか?
    この先は戦力差が開いていくのが予想される事考えると厳しいな

    2
    • 名無し
    • 2022年 12月 22日

    ウクライナは夏の時点でも散々ヒステリー気味にネガティブな発言してて、周りももうダメだダメだ言ってたけど結局ハルキウとヘルソンで大カウンター成功させてるからなぁ
    ここの掲示板のネガコメも当時と似た雰囲気になってきてるな

    23
    •  
    • 2022年 12月 22日

    様々な局面で何度も非合理的な行動をとったロシアが相手なので首都侵攻の可能性を否定するのはかなり難しい。

    12
    • 反革命分子
    • 2022年 12月 23日

    戦況図を見て思うのですが、現在前線になっていないロシア-ウクライナ国境はどうなっているのでしょうか?
    互いに余力があるわけではないので野放図に戦線を広げるわけにもいかないでしょうが、国境を跨いでほんの少し前線を迂回すれば便利という誘惑は常にありそうです。
    パイプラインもそうですが、全面戦争状態なのに紳士協定じみた暗黙のルールがあるのが奇異に思えるもので。

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