イタリア防衛産業企業のレオナルド S.p.Aは、英国防省と「テンペスト・プロジェクト」に関する契約を結んだと、世界最大級の軍用機エアショー「ロイヤル・インターナショナル・エアタトゥー」で発表された。
参考:Leonardo contracts Tempest large-body test aircraft
搭載されるセンサーやシステムの開発を始めているテンペスト・プロジェクト
第6世代戦闘機開発計画「テンペスト・プロジェクト」を主導する英国は、チーム・テンペストの一員でもある、イタリア防衛産業企業のレオナルド S.p.Aと、タイフーンやF-35の性能向上に関するサポート、テンペストに搭載されるシステムとセンサーの試験飛行が行える、テストベッド機(ボーイング757)提供に関する契約を結んだ。
参考:チーム・テンペストとは、プロジェクトを主導するBAEシステムズを中心に、航空電子機器を担当するイタリアのレオナルドS.p.A.、兵器システムを担当するMBDA、エンジンを担当するロールス・ロイスなどが「Team Tempest」に参加している。
英国防省は、契約金額についての詳細は明らかにしなかったが、テストベッド機による試験飛行は2020年代に稼働すると話し、2030年代初頭での運用開始を目標に開発されるテンペストは、表面的な機体ではなく、システムとセンサーに重点を置いて「内側」から開発しているという。
これは過去の航空機設計とは異なり、機体の設計よりも、ソフトウェア開発の方が重要度が高く、開発に掛かる作業量が多いため、機体よりも先行して開発が行われているからで、現代の戦闘機開発における65%はソフトウェアだと言われている。

出典:public domain F-117
F-117のように人間の能力だけでは飛行させるのが難しい空力特性の形状でも、コンピュータ制御+フライ・バイ・ワイヤで制御が可能になり、もはや機体設計(空力的な意味で)は、戦闘機開発の核心では無くなっているのかもしれない。
テンペストは、任務に合わせ柔軟な変更が可能なペイロードシステムが特徴で、これはステルス性能を損なう事無く後続距離を延長するためのコンフォーマル・フューエル・タンク(密着型増槽)や、ステルス性能を損なう事無く機外への兵器搭載を可能にするコンフォーマル・ウェポンベイなど、従来のステルス戦闘機が、ステルス性能を維持するために犠牲にしてきた機外への増槽、兵器搭載能力を再び取り戻すことを意味している。
他にも、長距離センサー、人工知能の搭載、ウェアラブル化したコックピット、指向性エネルギー兵器(通称:レーザー兵器)への電力供給能力、「サーブル・エンジン」開発から得られる技術で実現(するかも)を狙う「極超音速飛行」が可能な戦闘機用エンジン、容易なメンテナンス性など、多くの斬新な機能が盛り込まれる。
補足:サーブル・エンジンとは、大気圏内ではジェットエンジンとしてM5.0以上で作動し、大気圏外ではロケットエンジンとしてM25で作動するという極超音速複合予冷空気呼吸ロケットエンジンだ。2つのエンジンの仕組みを両立させる為に重要なのは、高温で流入してくる空気を如何に管理するかが重要で、リアクション・エンジンが開発した革命的な冷却装置「プリ・クーラー」は、1,000度Cの高温空気を、たった1/100秒で-150度Cまで冷却できると言う。

出典:ボーイング ロイヤル・ウィングマン
さらにテンペストは、ボーイングが開発中の自律飛行可能な無人機「ロイヤル・ウィングマン」と連携することも可能だ。
最近、スウェーデンが合流(仮)を表明し、徐々に開発の動き見えてきた、英国主導のテンペスト・プロジェクト。
次に参加を表明する国は一体どこだろうか?
※アイキャッチ画像の出典:pixabay
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