ウクライナ戦況

ロシア軍占領下のスタハーノフで大きな爆発、HIMARSによる攻撃か

ロシア軍の占領下にあるスタハーノフで大きな爆発が観測され、ウクライナ軍がHIMARSを使用して弾薬庫を破壊した可能性が浮上している。

HIMARSによる物資集積拠点への攻撃報告は減少中、交戦範囲外に下がった可能性が高い

ロシア軍はHIMARSに攻撃を回避するため物資集積拠点を前線から100km後方に移し、補給方法を車輌による前線部隊への直接補給に切り替えたと言われており、HIMARSによる物資集積拠点への攻撃報告も減ってきたが、ロシア軍の占領下にあるスタハーノフで大きな爆発(後方への移動が間に合わなかった弾薬庫が攻撃を受けたらしい)が観測された。

ただ上記でも述べた通り「HIMARSによる攻撃回数」は6月末~7月上旬からどんどん減少しているため、HIMARSの交戦範囲(最大80km)に存在した目標は破壊したか、交戦範囲外に下がった可能性が高い。

因みにロシア国防省は16日「補給や休養のため前進を停止(小規模部隊による攻撃は維持)していたドンバス方面の部隊に攻撃再開を命じた」と発表しており、Sivers’k方面やバフムート方面の攻撃が活性化すると予想されている。

必死にHIMARSを破壊したとアピールするロシア国防省、今のところ視覚的に破壊が確認されものはない

ロシア国防省はハープーンを保管してあった倉庫やHIMARSを破壊したと発表したが、OSINTで戦況を分析する人々は「HIMARS破壊の視覚的な証拠としてロシア軍が公開した動画に移る車輌はHIMARSとは異なる」と指摘しており、商業用ドローンの映像よりも不鮮明でそれっぽい動画を公開するのはプロパガンダの一種だと主張している。

管理人がロシア側の情報戦だと認識している行為は現在3つあり、1つ目は大々的に戦果が報じられるHIMARSを「破壊した」と国営メディアを巻き込んで偽情報を流布する行為、2つ目はウクライナへの武器支援に疑念を植え付けるため「ウクライナ軍兵士が金銭を得るためHIMARSやCAESARをロシア軍に売り渡した」と国営メディアを巻き込んで偽情報を流布する行為、3つ目は実際の戦況と異なり「防衛ラインを突破したロシア軍がスラビャンスクに迫っている」という偽情報をSNSにばら撒く行為だ。

ウクライナに関する関心が低下してきたため西側諸国が発信する情報量が減り、SNSでは不確かな情報が目立つようになっている。

追記:ポーランドが提供した自走砲KRABがロシア軍の攻撃で破壊されたことが視覚的に確認された。

関連記事:ウクライナ軍による反撃、14日もロシア軍の弾薬庫や司令部施設などを破壊
関連記事:ロシア軍がHIMARS×2輌を破壊したと発表、但し視覚的な証拠はなし

 

※アイキャッチ画像の出典:@TpyxaNews

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コメント

    • ぺこぽん
    • 2022年 7月 18日

    プロパガンダはお互い様なんで戦線の動きと被害が隠し難い航空戦力で判断かなと
    まあ地味な陣取り合戦してるしゲームチェンジャーとかが好きな人達が飽きてきたんでしょうね

    5
      • くらうん
      • 2022年 7月 18日

      ゲームチェンジャーと呼ぶかどうかは興味ないが、数両でロシア軍全体の兵站拠点をはるか後方に下げて補給効率を極低下させたのは大いに評価されるべき。

      53
    • 名無しさん
    • 2022年 7月 18日

    相変わらずロシアのプロパガンダは雑で、すぐにウソがばれる代物が多いですが、
    裏を返せばそれだけHIMARSの被害が無視できないほど大きいという事なのでしょう。

    HIMARSのおかげで弾薬庫を後方に下げさせることには成功しましたが、
    ここから押し返していくにはウクライナ側に戦車や面制圧できる火力が必要になってきます。
    果たして西側諸国の支援はこのタイミングに間に合うのでしょうか。

    30
    • トブルク
    • 2022年 7月 18日

    HIMARSによる攻撃は技術的奇襲のようなものなので、ロシア側対応すれば戦果は減るでしょうし、弾薬にも限りがあったのでしょう。
    とはいえ、ごく少数のHIMARSにしては十分な戦果で、ロシア側に対応のための負荷をかけることもできたでしょう。
    今後も西側の新しい兵器が投入される度に、ロシア側は少しずつ 戦いにくくなっていくんでしょうね。

    23
      • てつ
      • 2022年 7月 18日

      逆に言えば、少数のHIMARSと限られた弾薬で最も効率良く行える作戦が弾薬庫の狙い撃ちなんでしょうね。
      弾薬庫の狙い撃ちはHIMARSと到着前からSu-24とSu-25がやっていて(それ以前は戦車や装甲車を狙っていた)、攻勢再開後のロシア軍の砲撃が以前より少なくなっているとの観測もありますし、追加のHIMARSやMLRS、榴弾砲も到着しつつありますから、時間稼ぎにもなっています。
      後はNASAMSやIRIS-T SLが到着してミサイル攻撃を防げるようになれば、落ち着いて機甲部隊や重砲部隊を攻撃できるようになるのではないでしょうか。

      7
        • バクー油田
        • 2022年 7月 18日

        ロシアはセベロドネツク→リチャンスクの戦いで、「戦いは数だよ兄貴」で勝つパターンを掴みました
        要は今回の戦争では、無限砲撃は質を圧倒出来てウクライナ軍を圧倒出来る事が出来ましたので
        こっから無停止攻撃で一気にウクライナ軍は崩壊してまくりかねない情勢だったと思います。
        その無限砲撃を支えてたのが戦線の近くでそこら辺に山積みにした弾薬庫だったわけで、これをHIMARSで
        破壊した事でこの勝ちパターンを破壊したので、少ないからあそこを攻撃したというより、まさに必勝パターンを封じる芯を突いた攻撃と思います。
        弾薬庫を後方又は分散化させた場合、ロシアのロジスティクスと在庫管理能力では今後無限砲撃は無理ですので
        おっせおっせの大進撃は無理になり、無限砲撃に対抗できず崩壊の危機にあった疲弊したウクライナ軍こそ一服再編する時間を得る事が出来ました。
        後はウクライナ軍に対してどれだけの補充が入るかで領土奪回が可能かどうかになってきますが、少なくともロシアは新たな勝ちパターンを開発するか、半導体供給ルートを確保出来てハイテク兵器が量産できるようにならない限り、これ以上の侵攻は無理と思います。

        4
    • Ard
    • 2022年 7月 18日

    次は補給路ぶん殴られて前線で立ち往生やろか

    9
    • おわふ
    • 2022年 7月 18日

    ロシアも同等以上の兵器を持っているわけで、単に戦術ミスと思いますよ。
    HIMARSの搬入まで発表されているのに対策が遅すぎるでしょう。

    そもそも情報が筒抜けなのも何とかしないと。
    戦力差を活かし始めてマシになったとはいえ、戦力差の割にロシア軍は駄目ですね。

    11
      • ななし
      • 2022年 7月 18日

      ロシア軍はその編成と指揮系統上の理由で、前線近くの集積所を分散するのは難しいと言われています。これは指揮官が、集積所の分散に伴う権限の分散を嫌がってるということらしいです。
      分散した集積所を管理する人材がおらず、分散に伴う前線への複雑な補給を調整することが困難になり、結果効率が落ちる。更には、そもそも権限の移譲自体を良しとしない風潮があるらしです。(ロシア軍特有の高官に権限集中的な構造)
      なので、実際に被害が多発するまでろくな対策をしなかった(出来なかった)ということらしいです。

      14
        • G
        • 2022年 7月 18日

        大量のロケット砲や火砲を相手陣地が更地になるまで打ち続けるドクトリンでは、弾薬の補給源(集積所)が多元化すると事務的にも輸送的にもかなり面倒になりますからね

        9
        • 2022年 7月 18日

        ロシア軍の後方担当の人数は同規模の米軍の1/2以下らしいので、手が回らないのでしょうね

        3
      • けい2020
      • 2022年 7月 18日

      外部的攻撃で奇襲されて、弾薬庫が大爆発が何箇所も確認されてる時点で、
      ロシア軍は相変わらず、軍事的基本をまったく無視してるんだろうなって安心した

      補給がダメすぎて作戦大失敗したんで、プーチンから補給をなんとかしろと勅命、
      勅命に従うために反撃を全く考慮しない補給最優先
      結果、東部の後先考えない攻勢は成功
      補給最優先の勅命はそのままなので、前線移動に合わせて隠蔽・防御を考えない補給拠点乱立

      そこを狙って一斉に補給拠点への長距離攻撃を食らって、露天弾薬庫(単なる平積み)が爆発しまくり
      派手な爆発が無いような補給拠点とかも、甚大な被害受けてる可能性が高いかも

      7
    • 2022年 7月 18日

    >ロシア軍はHIMARSに攻撃を回避するため物資集積拠点を前線から100km後方に移し、補給方法を車輌による前線部隊への直接補給に切り替えたと言われており、

    なんか補給の効率が悪くなりそう。

    7
    • あばばばば
    • 2022年 7月 18日

    (補給線が)のーびーる、のーびーる……(ストップの号令がない)

    4
      • no war in UA
      • 2022年 7月 18日

      ストレッチマンでしたっけ…w

      3
      • ido
      • 2022年 7月 18日

      (64キロの車列が)みーえーる、みーえーる…(燃料がないなった)

      1
    • 2022年 7月 18日

    スタハーノフ市ってスタハノフ運動のスタハノフじゃないか
    生産性向上のシンボルがロシア軍非効率のせいで標的になるのは皮肉だ

    2
    • 通りすがりのななし犬
    • 2022年 7月 18日

    スタハノフは、3か月ほど前、セベロドネツクおよびリシチャンシク攻防戦において、南方のポパスナに侵出してきたロシア軍の後方(南東)10km~20km前後にある都市ですね。ウクライナ軍のT1302の補給ルートを塞ぐことを目指していた。

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