欧州関連

ポーランド陸軍の次期主力戦車に新たな挑戦者、イタリアが国際共同開発を提案

ポーランドが陸軍近代化の一貫として進めている次期主力戦車調達計画「Wolf(狼)プログラム」に新たな挑戦者が現れた。

参考:Will Poland build a Main Battle Tank with Italy and Spain? “Political decisions are the key”

イタリアが次期主力戦車の共同開発をポーランドとスペインに提案、成立するかどうかはポーランド次第?

ポーランドは陸軍近代化の一環として旧式のソ連製戦車「T-72」と国産の主力戦車「PT-91(T-72の独自改良型)」を更新するため新型の主力戦車調達を検討中で、ドイツとフランスが共同で開発中の次期主力戦車「MGCS(レオパルト3や欧州戦車とも呼ばれている)」プログラムへの合流を打診したが拒否されてしまったため、韓国の現代ロテムが提案している主力戦車K-2PL(K-2ポーランド仕様)の採用が有力視されているのだが、ここに来てMGCS合流を同じ様に拒否されたイタリアが音頭を取って次期主力戦車の共同開発をポーランドとスペインに提案したと報じられている。

出典:Italian Army / CC BY 2.5 アリエテ

イタリアは陸軍の主力戦車「C-1 アリエテ」を更新するための次期主力戦車を必要としており、同じように次期主力戦車を必要としてるNATO加盟国と共同で国際開発を行うプログラム立ち上げを検討中で、このプログラムへの参加をポーランドとスペインに打診したらしい。

ポーランドメディアは提案を受け取った国防省が内容の精査を行っていると報じており、ポーランド国営の防衛産業企業PGZは「我々は国際協力を通じて新しい主力戦車を開発する準備が出来ているが、イタリアの提案した共同国際開発に参加する国の選択やワークシェアについては政府レベルの協議に委ねられており我々には決定権がない」と語り「このような国際プロジェクトの成否は規模が重要で、経済的にも実行可能で収益性の高いプロジェクトにするなら最低でも2~3ヶ国が開発に関与して採用することを保証しなければならない」と言っている。

ただPGZは韓国の現代ロテムと共同でK-2PLの現地生産を提案して高い評価を得ているので、イタリアの提案に飛びつくようなことはないだろう。

再設計されたK-2PLは10トン以上の装備や装甲の追加に耐えられポーランド独自のセンサーや通信・戦闘管理システムを採用することも可能で、K-2PLの海外輸出や親会社の現代自動車グループによるポーランドへの直接投資、韓国政府による融資がセットになった総合パッケージでポーランド産業に安定的な雇用や新たなチャンスをもたらすとだろうと現地メディアの評判も上々だ。

更に付け加えればイタリアやスペインと共同開発した次期主力戦車が開発国以外にも売れればポーランドの防衛産業にとっても恩恵が大きいが、イタリア、ポーランド、スペインの次期主力戦車需要は1,000輌~1300輌程度で半分以上(500~800輌)がポーランド陸軍の需要で賄われており、イタリアやスペインの防衛産業にとっては美味しい話かもしれないがポーランドの防衛産業にとっては自国の需要を他国に分け与える形になるため余り良い話とは言えない。

しかもポーランド国防省は次期主力戦車の配備を急ぎたいと言っているため、利害の調整に手間がかかり一から主力戦車を新規開発するイタリアの提案に興味を示さないかもしれない。あとは政治的にポーランド政府がどの様に判断するかだが、イタリアが提案した次期主力戦車の国際共同開発はポーランド陸軍の需要が基盤になっているため何か特別な提案をポーランド側に行っている可能性もある。

どちらにしても競合無しと言われていたポーランドの次期主力戦車調達計画「Wolf(狼)プログラム」に新たな挑戦者が浮上したのは確かで、今後の動向に注目していきたい。

 

※アイキャッチ画像の出典:Italian Army / CC BY 2.5 アリエテ

アルメニア、有利な交渉を実現するため戦争を決断したと認める前のページ

ギリシャがF-35A購入を米国に正式要請、2021年引き渡しを要求次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    独仏がウクライナと安全保障協定を締結、2024年に101億ユーロの軍事支援を約束

    英国に続きドイツとフランスが「安全保障に関する2国間協定」をウクライナ…

  2. 欧州関連

    トルコ、S-400問題の解決に向けて米国と「クレタモデル」をベースに交渉開始

    トルコはS-400問題の解決に向けて米国と「クレタモデル」をベースにし…

  3. 欧州関連

    続々とウクライナ入りする支援国、エストニア国防相とサウジ外相がキーウ訪問

    ロシア軍による侵攻開始から1年が経過したが、象徴的な侵攻日(2月24日…

  4. 欧州関連

    欧州産業界がウクライナ向け砲弾供給に関する責任を否定、時間が足りない

    EUは今年3月「砲弾100万発を12ヶ月以内にウクライナへ供給する」と…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 11月 17日

    エンジンと砲塔は大丈夫だろうが装甲技術はあるのかな?
    イタリアは日本と似てて山が多いから素の状態では軽い戦車が欲しいだろう。
    ポーランドはレオ2使ってるから重くてもいいだろうし、要求条件が合うだろうか?

    16
      • 匿名
      • 2020年 11月 17日

      イタリアも火力ではチェンタウロ2戦闘偵察車も有りますし、主力戦車にはそれなりの装甲が欲しいのではないでしょうか

      3
      • 匿名
      • 2020年 11月 17日

      イタリアは使用場所によりますよ。北部は平原だから防御力高い重戦車が欲しいでしょうし、中部~南部は日本山間部と同じ感じですね。こっちはチェンタウロがあるけれど。

      5
        • 匿名
        • 2020年 11月 17日

        南部の仮想敵って何処なんでしょうかね
        北部と同じく不安定なバルカン半島方面?

        2
      • 匿名
      • 2020年 11月 17日

      ただ現代イタリアには近くに強大な仮想敵がなく、自国領内の山間部で戦車戦をする可能性は日本以上にずっとずっと低い
      なので軽量な戦車ってのはそこまで求められていないかと。それこそしばらくはチェンタウロで必要十分

      逆に日本以上に海外派兵する国なので、レオパルトのような重装甲な戦車は言うほどミスマッチという訳でもない

      15
    • 匿名
    • 2020年 11月 17日

    まあポーランドはK-2路線は変わらないだろう
    KFXと同じで性能が未知数で形になるのがいつになるのか分からない物に投資するより
    行く行くは国産の礎になるかも知れないオプション付きのK-2の方が実りがいい
    案外、焦ってるのは独仏かもな、順調に進めばあっちの方が先に完成するだろうがグダグタしてたらイタリアの先を越されるかかも知れないし

    13
      • 匿名
      • 2020年 11月 17日

      韓国製兵器って韓国国内で製造すると不具合の宝箱だけど、国外で現地生産されるとカタログスペック通りの性能を発揮する上に不具合もないですからね。

      8
        • 匿名
        • 2020年 11月 19日

        あとは、パワーパックさえ韓国以外にしとけば何とかなりますね。

        5
    • 匿名
    • 2020年 11月 17日

    イタリアはセンタウロ2に戦力全振りするかと思ってたけど、ちゃんとMBTの計画はあったんだな
    でも結局アリエテMK2は没なのか、自動装填装置とか割と先進的だったのに

    7
    • 匿名
    • 2020年 11月 17日

    まぁ、おおかたK2PLで変わらないでしょうね。K2にも、輸出実績ができるのは、韓国防衛産業にとって喜ばしいことです。
    やっぱりすごいですね

    4
      • 匿名
      • 2020年 11月 17日

      韓国がすごいというよりは、韓国よりも大きな利益を提示できない限り契約には進展しないよって合理論の話だよ
      これ順番が狂ってイタリアが先に提案してたらどうなっていたやら

      12
        • 匿名
        • 2020年 11月 17日

        たしかにそれはあるな。でも、韓国も馬鹿にしたもんではない。自ら進んで提案するだけ、偉いでしょ。

        12
          • 匿名
          • 2020年 11月 18日

          コメを見れば一発で分かるが、次期主力戦車の話では無く韓国は凄いを言いたいだけなので、話題とは関係ないコメともとれますね。

          12
      • 匿名
      • 2020年 11月 17日

      この自分の立ち位置を全く隠す気のない文体は清々しいね
      日本人に擬態する連中はこの人見習ってくれよ

      14
    • 匿名
    • 2020年 11月 17日

    ポーランド的にはイタリアにパワーパックの生産を取られそうだから、旨味が薄い話だろうな

    3
    • 匿名
    • 2020年 11月 17日

    イタリアの次期MBTのほうが気になるなあ
    おとなしくMGCS買う気はなく自前でやる気あったのか
    戦車は地形の影響をもろに受けるから航空機・艦艇より国際共同開発における要求仕様のすりあわせめっちゃめんどくさそう

    7
      • 匿名
      • 2020年 11月 17日

      そう言えば、MBTの国際共同開発で成功した例あったかな?

      2
        • 匿名
        • 2020年 11月 19日

        それ以上はいけない

        4
    • 匿名
    • 2020年 11月 17日

    イタリア、本気で次期MBT作るつもりなのかね
    このままじゃレオパ3を言い値で買わされそうだから、独自開発の可能性をチラつかせて値切りたいって思惑もありそう

    5
    • 匿名
    • 2020年 11月 17日

    いずれにせよポーランドはこれで堂々と値切りできる
    防衛産業は政治力がないと儲からんなあ

    11
    • 匿名
    • 2020年 11月 17日

    要は、完コピしても文句を言わない契約じゃなきゃダメなのか。
    後ろの心配がない西側の最前線として、軍事需要があるから、軍需は国内でやりたいのね。

    • 匿名
    • 2020年 11月 17日

    イタリアのオットーメララ130mm滑空砲装備のMBTはロマンを感じるけどパワーパックや複合装甲とかどの国と組むのかな?

    4
      • 匿名
      • 2020年 11月 17日

      イタリアはパワーパックも複合装甲も自国で作れる工業能力がある
      お金がなくて調達できないだけ

      10
    • 匿名
    • 2020年 11月 17日

    新型戦車を必要とする技術的な飛躍ってあったろうか?
    べトロ二クスくらいなら、既存の戦車でも組み込めるだろうに。
    ポーランドもT-72の生産ラインがあったはずだから、既存のT-72の車体に新型砲塔とユーロパックを搭載して、新型戦車や自走砲にした方がいいのではないか。
    1つの師団の補給部品の品目数を抑えないと、実戦で苦労する羽目になるよ。
    そういうところは、ロシア(旧ソ連)は上手だよね。

    2
      • 匿名
      • 2020年 11月 18日

      T-72では力不足では。
      本家ロシアもT-72系からT-14に切り替えつつあるんでしょ。

      4
      • 匿名
      • 2020年 11月 18日

      無人砲塔で重量効率、生存性の追求、UAV搭載とか、はじめからAPS搭載前提の設計とか。
      材質も進化しているだろうし。

      • 匿名
      • 2020年 11月 18日

      カセトカありきの車体じゃ弄るにしても余地がなぁ…
      主砲砲弾を砲塔バスルに搭載してたならワンチャンあったかもね 

      1
      • 匿名
      • 2020年 11月 19日

      ポーランドか東ドイツからT72のモンキーお古をまとめ買いしたフィンランドが、のちに研究用に解体した画像を公開してたが、複合装甲なんか効果の怪しい雑な代物だったよ
      湾岸戦争のときも米英戦車にボコボコにされてるし、元から問題の多すぎる欠陥品の可能性高い

      2
      • 匿名
      • 2020年 11月 19日

      ロシアの新しい戦車T-14アルマータ
      wikiより>
      T-14の主な武装は2A82-1M 125mm(4.92 in)スムースボア砲で、2A46 125mm砲の代用品です。ロシアの情報源によると、その銃口エネルギーはドイツヒョウ2のレインメタル120mm砲よりも大きく、10〜12rpm(毎分のラウンド)の発射速度、ATG8kmの最大有効浸透範囲を含む。2A82-1M 125 mmの大砲は、装甲貫通フィン安定化廃棄サボット(APFSDS)発射物、誘導ミサイル、高爆発対戦車(HEAT-FS)砲弾、エアバーストHE-Fragシェルおよび他のタイプの弾丸を含む幅広い弾薬を発射することができます。 2A82-1M砲用に開発されたVacuum-1(3BM69) APFSDSラウンドは、長さ900mmの貫通器を持ち、2kmの距離でRHA相当の1mを貫通できると言われています、100m~5kmの9M119M1 Invar-Mのような誘導ミサイルを発射することができ、ヘリコプターなどの低空飛行目標に新しい3UBK21 SATGMを搭載し、それに特化して開発された有効範囲を備えています。

      この性能だと我々の側の戦車の装甲(M1エイブラムス等)を貫通して来るハズですが輸出モデルはVacuum-2(3BM70) APFSDSでRHA相当の900mmを貫通(モンキーモデル)になるでしょう。
      ドイツのラインメタル AGは新しい130mm L/51戦車砲を開発して対抗してきました、そして新型戦車が求められているものの冷戦期の様な需要がない為共同開発でというのも有りなのでは?日本も参加しても良い位ですよ、今は違う所にお金かけた方が賢い選択かも?(ドイツは冷戦時代戦車2100両所有していたのが今は400両以下なので)
      wikiより>
      アルマタに対して、ドイツのラインメタル AGは新しい130mm L/51戦車砲を開発し、ドイツ連邦軍にサービスを提供する120mm L/55以上の装甲貫通を 50% 増加させると主張した

    • 匿名
    • 2020年 11月 18日

    イタリアがいまから戦車作っても、いつ誰に使うのかって疑問は残るw
    ヨーロッパはぬるま湯地域が多いから、ポーランドとは温度差もあるだろね
    アジアとは比較にならん

    3
      • 匿名
      • 2020年 11月 19日

      意外とこれが未来の戦車かも?
      懐かしの戦車(M24チャーフィー)が魔改造されているようなの出てます・・ロシア?
      無人戦闘車両(UCV、Unmannned Combat Vehicle)
      リンク

      アメリカもちゃっかり出てます・・
      wikiより>
      Ripsaw M5は完全に自律的で、モジュラー設計の最高速度は60 mph(96 km/h)まで全ての電気タンクである。その速度と自律的な能力は、タンクが核攻撃から抜け出すことを可能にする可能性があります。
      リンク

    • general
    • 2024年 2月 22日

    真面目な話日本とイタリアは長大な海岸線や山がちで縦深に乏しい国土と似てる点が多いから
    戦闘車両ひいては戦車なんかを共同開発しても比較的もめなさそうな気がするんだよな

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  2. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  3. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  4. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  5. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
PAGE TOP