フライングブーム方式の空中給油機にはKC-46AとA330MRTTがあり、両機を対象にした競争入札でKC-46Aは全敗したため、A330MRTTの市場シェアは米国を除くと90%以上で、Airbusもパリ航空ショーで「非常に大きな需要を受けてA330MRTTの増産を検討している」と表明した。
参考:Airbus mulls boosting tanker production on ‘very high’ demand
A330MRTTの市場シェアは米国を除くと90%以上、AirbusもA330MRTTの好調ぶりを誇示
現在時点で入手可能なフライングブーム方式対応の空中給油機はBoeingのKC-46AとAirbusのA330MRTTがあり、競争入札を実施しなかった日本やイスラエルはKC-46Aを発注したものの、両機を対象に競争入札を実施したシンガポール、カナダ、韓国、アラブ首長国連邦、インドネシアではA330MRTTに全敗で、その原因は幾つかあるものの最大の要因はKC-46Aの信頼性と将来性に起因している。

出典:U.S. Air Force photo/Airman 1st Class Colby L. Hardin 3Dメガネを装着してRVSを操作する様子
KC-46Aが採用した空中給油システムの構成要素=リモートビジョンシステム(RVS1.0)には小手先の修正で解決不可能な不具合が残されており、米空軍とBoeingはRVS2.0開発を決定して「2024年3月から交換作業に入る」と発表したものの、RVS2.0の開発は難航して何度も完成時期を先延ばしし、最も新しい完成時期は2027年夏になっている。
BoeingはKC-46Aの基本的な能力を完成させるのに手間取っているが、AirbusのA330MRTTには致命的な欠陥がないため導入国の評判も良く、フライングブーム方式の自動空中給油システム=A3R開発も完了し、スペインが2022年にA3Rを実装したA330MRTTを正式な空中給油機として認定、2025年にはA3Rを使用した夜間の自動空中給油に関する認証を取得予定で、さらにA3Rを無人機への自動空中給油に対応させるA4R、自律的編隊飛行システムのAF2、プローブ&ドローグ方式の自動空中給油システムを開発中だ。

出典:Airbus
この全てが実用化されるとA330MRTTは有人機と無人機の両方に自動空中給油を行うことができ、A330MRTTは自律的に無人機との協調飛行も可能になり、KC-46AのRVS2.0にも自動空中給油の実装を見越した「将来の拡張性」が含まれているらしいが、今のことろKC-46Aを自動空中給油システムに対応させる計画は正式なものではなく、将来性においてもKC-46AはA330MRTTに大きな遅れをとっている。
さらに米空軍を含む空中給油機を運用国では「もっと多くの燃料を搭載できる空中給油機が必要」という認識が高まり、Airbusは2023年11月「空中給油機のベースをA330からA330neoに移行することで飛行状態での抵抗が減少し揚力が増加する」「その結果として燃料消費量が削減され航続距離(と給油に回せる燃料が)が増加する」「成熟した給油関係の各コンポートをA330neoに移植する技術的リスクも低い」と言及、2024年のファーンボロー国際航空ショーで「燃料消費量の削減と航続距離の増加が見込める第2世代のA330MRTT=A330MRTT+計画を開始する」と正式に発表した。

出典:Alex Cheban/CC BY-SA 4.0
Airbusは今月16日に開幕したパリ航空ショーでも「A330MRTT+のローンチカスタマー契約が締結に近づいている」「現在生産中の初号機は2028年までに納品されるだろう」と述べたが、空中給油機に対するニーズについても「現在は年4機~5機のペースでA330MRTTを生産しているが、既存の顧客だけではなく潜在的な顧客からのニーズも非常に高いため生産能力の増強を検討している」「ここでの検討とは『検討以上のこと』を意味する」「産業上のボトルネックを解消するため投資を行えば年6機~8機を生産することができる」「さらなる生産能力の追求も可能だが、それは別の問題だ」と述べ、A330MRTTの好調ぶりを誇示した格好だ。
因みにDefense NewsもA330MRTTの好調ぶり報じる記事の中で「A330MRTTの市場シェアは米国を除くと90%以上だ」「AirbusはA400Mの新機能=ドローン運搬・制御、電子戦プラットフォーム、戦場空域の通信ハブとして機能もパリ航空ショーで披露した」と報じたが、A400Mの生産率については興味深い言及がある。

出典:Bundeswehr/Jane Schmidt
Airbusが考えるA400Mの生産ライン維持には年8機分の作業量が必要で、これを下回る可能性が出てきたため「フランスとスペインが発注したA400Mの納品を前倒して年8機分の生産率を維持すること」で合意し、2029年初頭まで作業量を確保した格好だが、この合意は一種の生産枠スワップのようなものらしい。
この間に輸出契約が決まれば「フランスとスペインが発注したA400Mの納品期日」は元に戻り、その枠で生産されているA400Mは輸出向けに振り返られ、Airbusも「現在の世界情勢を考えれば今から4年後のことを過剰に心配する必要はない」と述べ、2029年以降も生産ライン維持に必要な受注を確保できると自信を見せている。
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※アイキャッチ画像の出典:public domain A330MRTT





















空中給油機は、イスラエルのライジングライオン作戦により、どのように使われたのか少し落ち着けばクローズアップされることになるでしょう。
空軍の運用能力に大きな影響を与えますから、運搬量や操作性はもちろんですが、稼働率や整備の容易さなどが求められるためソフトウェアに不安があるものは競争に負けても仕方ないなと。
重要な作戦があるときに、ソフトウェアの問題でちょっと今は使えないなんて事になれば話しにならないわけで…(少し厳しいかもしれませんが)そもそも武器は枯れた技術を使ってでも安定性を求められるものなわけですから、不安のあるものはなかなか使いづらいでしょうね。
>両機を対象にした競争入札でKC-46Aは全敗
草
>将来性においてもKC-46AはA330MRTTに大きな遅れをとっている。
…草も生えない
アメポチムーブをやめられない日本が調達し続けるのは予想が付きますが、さぞかし今回、酷使したであろうイスラエルが、「やっぱ問題あるからA330MRTTに乗り換えるわ」とか言ったら大草原。
パリ航空ショーでイスラエル企業がどういう扱いを受けてるのを見るに、イスラエルがエアバスに尻尾を振る可能性はほぼゼロじゃないかなと思います。
もう何度も書いてるけどA330MRTTはデカ過ぎて日本じゃ運用無理、以上
改修すれば対応可能
KC-46の改修とどっちが早くて安上がりかな?
言っとくけどA330MRTTってC-17よりデカいからね
改修って簡単に言うけど、滑走路延長するのに立ち退きだけで何年掛かると思ってるんだ
そんなに簡単に改修できるならC-2なんて作らずC-17買っとるわい
君、これまでもやたらとこのどうしようもない欠陥機擁護してるけど、それこそ無理があるように思うんだよなぁ
A350は普通に民間空港で運用してるし、A330MRTTが多少の改修で運用できない空港なんて数少ないと思うが…
それかKC-46にA3R実装するとか(無理そう)
空自の基地ではどうなんだろうね。
Google mapの航空写真で空自の美保基地や入間基地を見る限りでは、C-2やKC-46を数機停めるだけで狭そうだから、A330をまとめて停めるのは確かに難しいかなぁ。
あのね、美保基地と小牧基地の滑走路はコード4Dなので、翼幅52m以上の飛行機は離着陸しちゃいけないの
A330MRTTの翼幅は60.3mだし、そもそも原型のA330-200の離陸滑走距離は2770m(美保基地は2500m、小牧基地は2770m)
KC-46Aの原型であるB767-200ERは2480mで翼幅48m
もちろんそのまま幅を広げれば良いなんてものではなく、滑走路とエプロンの舗装強度217t→233t以上に強化する必要があるから、滑走路もエプロンも一度全部引っ剥がして地盤強化しないと行けないんだぞ
「乗り入れできる」と「恒久的な運用拠点になる」というのは全く別物です。合同演習などで一時的に受け入れるのであればほとんどの基地で難なく受け入れできると思いますが、毎日のように離着陸し整備能力も持たせようとすると途端にハードルが上がります。
KC-46は明らかに欠陥機ですが、導入経緯や各地の基地を取り巻く環境を踏まえると一概にA330MRTTが優れている訳ではないので難しい問題ですね。
補強だけはしているみたいですけどね。
そもそも航空会社が使ってないから国内で整備できないからね>A330やA310
国内の旅客企業がいれてくれるんなら整備委託できるけど
フランスが独自に嫌がらせこみでB-767MRTT作ればそっちに行くかもですが。
A330MRTTに懸念があるとすれば、欧州(特に仏独)の『正義感』で調達や部品供給に支障をきたしそうなところか。
こういう時に選べないデメリット
これだけグダグダになっているというのに国内ではろくに批判なく淡々と進むKC-46調達
ぶっちゃけ何でこんなもの調達してるの?と聞かれると米軍も買ってるから…以外に何も言えない現状(白目
A330MRTTとKC-46Aのスペックをwikiで良いから確認してみ
その後C-17も一緒に調べると何で日本がA330MRTT選ばないからわかるから
A330は、C-17より大きいんだね。
A330-200:C-17:B767-200ER
全長:58.8m:53.0m:48.5m
全幅:60.3m:51.8m:47.6m
全高:17.4m:16.8m:15.9m
国内空港で運用が制限されるし。
エアバス自体がどうしてもまずは初期はEU圏やそれらの旅客機いれていた旅客メーカーメインになるからね。
順当にボーイング系いれていたメーカーがメインだとそうなる。
運用実績、整備経験、国内産業への還流など申し分ない機体なので数年前までは良い取引だと思っていたんですけどね。
全部ボーイングと米空軍が悪い。
日本は空中給油機を輸送機として使い倒す数少ない国だから
災害時には支援物資輸送で全国各地の基地や空港に着陸する必要があり、機体の取り回しが良いほうがいい
A330MRTTの話題はもう目に入るだけでネガ気分が止まらない
もうKC-46にA3R実装してくれと言いたいが、無理だろうなぁ…