ドイツ空軍は2029年までに「敵地深部で危険な任務を遂行可能なCCAベースの無人戦闘爆撃機」の初期作戦能力(IOC)獲得を計画していたが、Die Weltは22日「2029年までに無人戦闘爆撃機を実現するのは不可能で、このプロジェクトは予定よりも遅れる」と報じた。
参考:„Nicht realisierbar“ – Kampfdrohnen-Projekt der Bundeswehr muss verschoben werden
参考:Projekt Jagdbomberdrohne dürfte sich verzögern
欧州諸国の中でCCAを最初に実戦配備する国がどこになるのか分からなくなってきた
米空軍のNGAD、米海軍のF/A-XX、英伊日のGCAPには有人戦闘機に随伴可能なウイングマン(自律的飛行が可能な無人戦闘機)が設定され、有人戦闘機の代わりにリスクの高い任務の一部を肩代わりしたり、有人戦闘機の認識力や戦場に運搬するペイロードを拡張したり、価格高騰で減少傾向が続く航空戦力の量を補完できると期待されているが、ウイングマンとの協調能力は次世代戦闘機のみが利用できる固有要件ではなく、既存の第5世代機や第4世代機向けに実用化が相当前倒しされている。

出典:Anduril
米空軍は有人戦闘機に随伴可能な協調戦闘機=Collaborative Combat Aircraft(CCA)を1,000機調達する予定で、今年6月にCCA第1弾調達=Increment1に選定してテストを行っていたFQ-42AとFQ-44Aを正式発注し、フランスも「ラファールF5と協調可能なステルス無人戦闘機を2033年までに実戦配備する」と発表してCCA調達に関する情報提供依頼書(RFI)を6月に発行、英国でも独自のCCA開発=Storm Fighter(ストームファイター)計画が始まり、BAEシステムズはBrontanax=ブロンタナックスの初飛行を2027年に予定しているらしい。
オランダは「CCAに対する知見の獲得」を目的に米空軍のCCAプログラムに正式参加、ドイツは2029年までに「敵地深部で危険な任務を遂行可能なCCAベースの無人戦闘爆撃機」の初期作戦能力(IOC)獲得を計画しており、欧州諸国の中でCCAを最初に実戦配備するのはドイツ空軍になると思われたが、Die Weltは22日「2029年までに無人戦闘爆撃機(公式な計画文書では対地攻撃用無人航空機システム=UAS-A-D)を実現するのは不可能で、このプロジェクトは予定よりも遅れる」と報じている。

出典:Boeing
この話を簡潔に説明すると「MQ-28Aベースで無人戦闘爆撃機を開発する早期導入案は頓挫し、複数機種による競争が行われることになり、最新の内部文書には『政権が対処すべき第一の課題には2029年までにIOCを獲得するという目標からの逸脱』が挙げられ、現在の調達アプローチでは2029年のIOC獲得は実現不可能だ記されている。まだ決定は下されていないものの、最終的には無人戦闘爆撃機の導入が数年遅れる現実を受け入れざるを得ない」となり、これまで謎に包まれていた無人戦闘爆撃機の導入アプローチについても以下のように報じている。
“ドイツの狙いは空軍に無人戦闘機の運用経験を可能な限り早く積ませることで、そのためオーストラリアとの直接協力で12機のMQ-28を導入し、これを無人戦闘爆撃機に改造して可能な限り早く配備することだった。これと並行して複数機種(MQ-28、XQ-58、CA-1)による競争実施も予定されていた。つまりMQ-28の先行導入は同時並行で行われる選定結果を先取りするものではなく、MQ-28の早期導入は迅速な無人戦闘機の初期能力獲得のためであり、開発途上にある他の競合企業に対して提案システムの開発時間を与えるという計画だった”

出典:Airbus
“このアプローチで「調達スピード」と「長期的な技術的自立」という2つの目標を両立させようとしていたが、ドイツ独自のコンセプト=無人戦闘爆撃機を追加の技術開発なしで実現可能な既存のシステムは存在せず、実用化に最も近づいているMQ-28も対地攻撃能力を獲得するには改修が必要だ。国防省は当初「MQ-28の対地攻撃能力獲得に関する作業は容易ではないものの実現可能だ」と考えていたが、装備・情報技術・運用支援局は必要な改修を2029年までに完了できるか疑問を呈した”
“さらにMQ-28を12機調達するコストは当初8億ユーロ以上が必要だと見積もられていたものの、国防省内の会議出席者らは「このようなMQ-28早期導入案を議会の予算委員会に説明して納得させられるか重大な懸念がある」と指摘し、複数機種による競争実施後に調達に関する決定を下すことになった。この競争は早くても2027年になる見込みで、これによりドイツは要求要件を満たしていないシステムに数億ユーロを投資するリスクを軽減でき、各企業も提案システムの開発に時間を掛けられるようになるが、同時に2029年のIOC達成も不可能になる”

出典:Helsing
“実用化に最も近づいているMQ-28を導入すれば運用経験を早く蓄積することができるものの、機体の改修には多額の費用がかかる上、そのための開発作業=付加価値の大部分がボーイング・オーストラリアに流出することになる。逆に競争結果を待てば複数機種のシステムを比較することができ、国内企業=エアバスのドイツ部門やヘルシングによるより良い提案は重要なソフトウェアに対する主権確保に役立つが、その代償として時間を失うことになり、この遅れの背景には根本的なジレンマが潜んでいる”
“無人戦闘爆撃機が配備されるまでの能力ギャップは低コスト巡航ミサイルでカバーする予定で、最新の内部文書は「低コスト巡航ミサイルは作戦上の柔軟性を備え、再使用可能な無人戦闘爆撃機を完全に代替することはできない」と指摘しているため、無人戦闘爆撃機を導入する計画は継続されるが、MQ-28先行導入案の救済は事実上不可能となっている”

出典:Destinus
独ディフェンスメディア=hartpunktが報じていた無人戦闘爆撃機導入に関する情報はDie Weltの報道とほぼ一致し、今回の報道を受けてhartpunktは「専門筋は数週間前まで戦闘爆撃無人機調達の先行きについて不透明な状況が続いていたという。したがって、戦闘爆撃無人機の具体的な要求性能も明らかになっていなかった。企業側から見ればドイツが求める対地攻撃任務の仕様に向けた追加開発に着手できなかったことを意味する。専門筋は現在も要求性能に関する詳細な情報は提示されておらず、同計画の戦略的な方向転換に関する通知しか来ていないらしい」と報じた。
無人戦闘爆撃機が配備されるまでの能力ギャップをカバーする低コスト巡航ミサイルとは、デスティナスとラインメタルが共同生産を進めているKryla(クリラ)やRuta(ルタ)シリーズの可能性が高く、既にドイツ国内でKrylaの初期生産が始まっており、2027年末までに射程800kmのRuta Block2、2028年末までに射程2,000km以上のRuta Block3の資格取得(各種試験とNATO基準準拠への証明=航空機の型式証明取得のようなもの)を終えることが目標で、これらの低コスト巡航ミサイルで能力ギャップをカバーしたいのだろう。

出典:BAE Systems
どちらにしても2029年のIOC獲得は不可能になったため、フランス、英国、ドイツのCCA計画には大きな差がなくなり、欧州諸国の中でCCAを最初に実戦配備する国がどこになるのか分からなくなってきた。
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※アイキャッチ画像の出典:Boeing





















ドイツは進んでるなぁ、と思ったら、意外と見切り発車だったのね
いつもの言うことだけは立派な欧州仕草である
まあ、将来を見据えた堅実な方向に転換したとも言えるのでこっちのほうが良いよ
遅れるだけで進んではいるんならまあ良いでしょ
このご時世に「競争入札で値段が下がる」なんてルノアールのココアより甘いんじゃあないかな。
人命とか、パイロットがいないとか、有人機の負担が云々言っている本邦もCCAって凄いニーズの高いものだと思うんだけど、どうするも何も来ていないのは、凄い気になる。
管理人様もよーく言ってるけど、本邦はプレスリリース少なすぎるよ……
せめてスバルの協調型無人機、三菱の無人戦闘機をベースに国産でやるのか、GCAPに合わせてイギリス製を導入するのか、F35への統合を期待してアメリカ製を買うのか、何も考えてないのか
せめて発信してほしいなぁ
防衛装備庁の資料から 令和8年3月
次期戦闘機に連携する無人機
2025年 運用構想策定
2026年~2028年 構想設計策定 外国政府と海外企業との協力の在り方も検討
2028年 研究開発体制の確定
2035年 次期戦闘機に合わせて配備開始
既存戦闘機に連携する無人機についてはデータ主権の関係からアメリカ頼みにならざる得ないですが、GCAPに連携させる無人機については、ここ1~2年で具体的な話が出てくると思いますよ。
配備開始が2035年はフランスの構想と2年しか違いませんから、日本が特別遅れてる感じはしないですね。
防衛以外も広報戦略弱いですよね。
情報に対する認識が古いと言うか……
確定してるのは2028年度半ばまでの事業計画である独自の「構想設計」までなんですよね。
令和7年度「事前の事業評価」では「将来的に国際共同研究・開発へ移行し、協議する可能性を踏まえて我が国の技術力の獲得」が「構想設計」の目的としてるんで、2028年度中ないし2029年度に国内開発を含む選択肢の中から、2025年度の配備開始を可能と判断する具体的方向性が示されるのだろうとは思います。
一応発信はしてるんですけどね。一般メディアによる積極的な取材や解説が乏しいので・・・
レーダーの載せられないF-35を無人機に改造すれば、直ぐ完成。
そのソフトウェアの改修とレーダーが完成するのとどっちが早いか……
F-35を無人機にする前にブロック4として火器管制ソフトを完成させてから出ないと、結局ミサイル運用とかできないだろ
有人機でさえ単独で開発できない国ばっかりなのに無人機を単独で実用化とかそもそも無理じゃないの?
自動車で進めているように共通ソフトウェアを開発して、これで動かせるようにハードウェアとしての航空機を開発する。未知の装備の実用化も見越してソフトウェアには余裕ある設計を行う。
で上手く行けば色々と捗るんだろうけど。
ヤーボも無人化。