Wall Street Journalは21日「イスタンブールで22日に開催される見本市でトルコのタイフーン購入に関する暫定合意が発表されるかもしれない」と報じ、もし暫定合意が発表されれば「エーゲ海上空におけるギリシャの優位性は永遠ではない」と強く示唆するため、ギリシャにとっては残念な発表になるだろう。
参考:Turkey Nears Preliminary Deal for Eurofighter Combat Jet Order, Sources Say
参考:Turkey nears $5.6 billion Eurofighter jet deal, WSJ reports
タイフーンとミーティアの組み合わせを見たくなったギリシャにとっては残念な発表になるだろう
ギリシャとトルコの間にはキプロス問題、エーゲ海の領海・領空問題、東地中海の排他的経済水域問題など多くの対立点が存在し、2020年にトルコが「自国のEEZ圏内」と主張する海域で油田の掘削調査を始めると両国の緊張は武力衝突寸前まで高まり、ギリシャは軍事的優位性を確保するのに手を尽くしているものの「トルコのタイフーン導入」が現実味を帯びてきた。

出典:Πολεμική Αεροπορία
BAE主導によるトルコへのタイフーン売り込みはドイツの反対=シリア内戦関与に起因した武器販売の制限に直面し、ギリシャは「ラファールとミーティアの組み合わせによるエーゲ海上空の優位性は揺るがない」と考えていたが、ショルツ首相は安全保障環境の変化、他の開発国=英国、イタリア、スペインの説得を受けて輸出交渉を許可したものの、エルドアン大統領の政敵=野党指導者のイスタンブール市長が逮捕されたため「タイフーン輸出を阻止する方向に方針を転換した」という噂が登場。
ギリシャもフランスに「トルコへのミーティア売却を認めないでほしい」と働きかけるなど「優位性の確保」に動いたが、ドイツ政府もトルコ政府も噂を否定、メルツ新首相も「トルコは戦略的に極めて重要なNATOのパートナーだ」と述べ、フランスもギリシャの要請を拒否したため、ギリシャメディアは「トルコへのタイフーン売却を否定しなかった」「ショルツ前政権の態度とは対照的だ」「フランスがミーティア売却を承認すれば2度目となる優位性の喪失だ」「武器生産国はギリシャの防衛ニーズよりも経済的利益を優先するため欧州に防衛の連帯は事実上存在しない」と失望していた。

出典:U.S. Air Force photo by William R. Lewis
Wall Street Journalは21日「イスタンブールで22日に開催される国際防衛産業見本市でタイフーン購入に関する暫定合意が発表されるかもしれない」「最大40機のタイフーン購入契約は56億ドルの価値があると見積もられている」「まだ正確なタイフーンの仕様や数量については協議が続けられている」「ドイツのメルツ政権もトルコへのタイフーン売却を進める意向を表明している」「交渉担当者も輸出許可の取得に限りなく近づいていると述べた」と報じ、この報道をギリシャメディアも速報で報じている。
英国国防省は2025年末までに「トルコ関係者によるタイフーンの視察と試乗」を計画中なので、仮にイスタンブールで暫定合意が発表されても「正式な契約締結」は2026年以降になる可能性が高いが、それでも暫定合意の発表は「エーゲ海上空の優位性は永遠ではない」と強く示唆し、英国の産業界や労働組合、特にウォートンの最終組立てラインにとっても暫定合意の発表は朗報となるものの、タイフーンとミーティアの組み合わせを見たくなったギリシャにとっては残念な発表になるだろう。

出典:Presidency of the Republic of Türkiye
因みにトランプ大統領とF-35問題を協議したエルドアン大統領は「トランプ大統領がF-35納入について善意を持っていることを確認した」「この件に関連してS-400問題は議論されなかった」と言及、さらにトルコ側は米国のディフェンスメディアに「トルコのプログラム復帰がF-35の生産にどれだけ有益か」「F-35とS-400を関連付けた脅威論が如何に荒唐無稽なものか」を訴える内容を寄稿するなど、これまでにない動きを見せているが、ギリシャもトルコへのF-35売却を阻止するためロビー活動を強化している。
もしトルコがF-35プログラムに復帰すればギリシャの絶望は計り知れないものになるはずだ。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo Senior Airman Shelimar Rivera Rosado





















欧州の防衛の連帯という美しいけ綺麗事より、やはり金が重要という当然の結果ではないかと考えます。
むしろ今まで金を捨ててまで綺麗事をやってきたことがおかしかっただけ。
>武器生産国はギリシャの防衛ニーズよりも経済的利益を優先するため欧州に防衛の連帯は事実上存在しない
おフランスに誠実さなんか求める段階で間違ってる、としか思えないですね。
全体としても、タイフーンの増産で分け前貰う事しか考えてないでしょうし。
その内ギリシャとトルコの間で紛争が勃発するかな?
キプロスは現在進行形ですよ
今の所キプロスの武力紛争は沈静化してますからね
ギリシャとトルコの関係が今より拗れたら、前哨戦としてキプロスの武力紛争は再開するかもしれません。
R.I.P、ギリシャよ安らかに眠れ
もしトルコがF-35プラグラムに復帰できるとなると
F-35
タイフーン
F-16V
+
KAAN完成待ち
という普通にツヨツヨな戦力構成になってしまうのでは
トルコの政策金利は46.0%に達し、戦時中のロシアにダブルスコアを付ける惨事になっているのですが、良くそんなお金あるなって。
ドル・リラも日本円なんて目ではない下がり方してますし、民間経済は崩壊しかけてると思うんですけどね。
経済規模に不釣り合いな財政支出と、それに伴う軍備拡張って、なんかナチスドイツを連想してしまいます、
タイフーン機の製造T終によるBAEの工場閉鎖によって、GCAPの製造する時に人材やノウハウが失われているけれどどうするの?という指摘がBAE側から出ているだけに朗報になると良いですね。
ヨーロッパと中東・アジアを結ぶ歴史的・地理的な交通の要衝であり歴史的強国であった『オスマン・トルコ帝国』の復活を着実に引き寄せていると思いますね。バイラクタルで一躍、世界でもドローン先進国となったトルコ。正直、軍事的に脆弱で財政基盤が火の車のギリシャは相手にもならないでしょう。
米関税交渉も一段落ついた事だし、日本もFー15Jの改修諦めて40機ほど買ってみないかい?
GCAPの応援企画としても。