欧州関連

米英の大手防衛産業企業と組んだエアバス、NATOのE-3後継システム開発に名乗りを上げる

エアバスは8日、2035年までに廃止されるE-3の後継システムを開発するNATOのAFSCプログラムに参加すると正式に発表した。

参考:Airbus and Northrop Grumman Lead Team Seeking to shape NATO’s Future Surveillance and Control

エアバスが主導するコンソーシアムには米英防衛産業界の大手企業が参加しているためネームバリューだけで言えば圧倒的

米空軍ではE-3セントリーの老朽化や運用・維持の問題を解消するため韓国空軍、オーストラリア空軍、トルコ空軍での運用実績があり、英空軍も導入を決定しているE-7Aウェッジテイルを採用すべきだという動きが加速しているが最終的には敵の攻撃に脆弱な大型機ベースのAWACSを取りやめ、戦闘機や無人機などに搭載されたセンサーやレーダー搭載の小型衛星群などで構成された分散型ネットワークに移行することを目指している。

NATOも2035年までにE-3を廃止して新しいプラットフォームに置き換える計画を2019年に正式発表したが、E-3の後継システム探し自体はAFSC/Alliance Future Surveillance and Controlプログラムとして2016年に始まっており、こちらも米空軍と同じようにセンサーを搭載した地上/海上/空中ベースの既存資産に宇宙ベースの監視資産を統合した分散型ネットワークを想定している。

つまりNATOがAFSCプログラムを通じて開発しようとしているのはセンサー類を搭載した特定の装備品ではなく分散型ネットワークの基盤=システム・オブ・システムズ(複数の異なるシステム群を統合したシステム)で、米国のL3ハリス・テクノロジーズはヘンソルト(独)、ジェイコブズ(英)、ジェネラル・ダイナミクス(GDのカナダ法人とイタリア法人)など複数の防衛産業企業とコンソーシアムを結成してAFSCプログラムの入札に参加すると今年9月に発表していたが新たなライバルが登場。

エアバスはノースロップ・グラマン(米国)、ロッキード・マーティン(米国)、IBM(米国)、BAEシステムズ(英国)、コングスバーグ(ノルウェー)、MDA(カナダ)、GMV(スペイン)、Exence(ポーランド)といった企業とコンソーシアム「ASPAARO(Advanced All-domain Resilient Operations)」を結成して「NATOのAFSCプログラムの参加する」と正式に発表した。

エアバスが主導するコンソーシアムには米英の大手防衛産業企業が参加しているため「ネームバリューだけで言えば圧倒的」と言えなくもないが、L3ハリス(米国内で6番目の売上高を誇る防衛産業企業で特に電磁スペクトル分野や通信分野に強い)側に参加する企業も防衛産業界では実績がある企業なので、年内に契約締結が実行されるAFSCプログラムの「初期コンセプトに関する分析・評価フェーズ」をどちらが受注するのかは結果を見るまで誰にも分からない。

出典:AIRBUS

しかし欧米の脱AWACSへの動きは「検討」ではなく実際の研究・開発に向けて具体的に動き出しており、少なくとも2030年代には部分的に実用化された分散型ネットワークへの移行が始まりそうな雰囲気なので、恐らく2040年代には高価で敵の攻撃に脆弱な大型機ベースのAWACSは戦場から姿を消すことになるのだろう。

関連記事:2035年までに廃止されるNATOのE-3、後継システムの受注にL3ハリスが挑戦を発表
関連記事:米空軍トップがE-7導入へ前向きな発言、但し本命はレーダー衛星を活用した分散型ネットワーク
関連記事:米空軍がE-3更新のための取り組みを正式に開始、E-7Aを米空軍仕様に変更

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo/Airman 1st Class Chris Massey

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 11月 10日

    >エアバスはノースロップ・グラマン(米国)、ロッキード・マーティン(米国)、IBM(米国)、BAEシステムズ(英国)、コングスバーグ(ノルウェー)、MDA(カナダ)、GMV(スペイン)、Exence(ポーランド)といった企業とコンソーシアム「ASPAARO(Advanced All-domain Resilient Operations)」を結成して「NATOのAFSCプログラムの参加する」と正式に発表した。

    世界の名だたる防衛企業ですね。
    いつか日本もこういった取り組みに誘われるといいんですが。

    9
      • 匿名
      • 2021年 11月 10日

      今テンペストの話した?

      1
        • 匿名
        • 2021年 11月 10日

        イギリスが日本を誘ったのは資金目当てでしょう。

        そうではなく、技術力を評価されて誘われるといいよね。

        18
          • 匿名
          • 2021年 11月 10日

          一応、マネーだけじゃなく素材とその製造技術目的みたいだよ

          日経IDが必要だけど「風立ちぬ次期戦闘機「F-X」 国産信仰でも英米迎合でもない針路」で読める

          4
            • 匿名
            • 2021年 11月 10日

            リップ・サービスだよ。
            お目当てはカネ。

            5
              • 匿名
              • 2021年 11月 11日

              コメを見てると(日本の)自国産業に自信があるんだかないんだか分からんな
              技術がないならF-3作らずテンペスト合流しろって話だし、技術があるならテンペストから引き合いがでいいんじゃないのか
              なのになんでカネが目的という結論になるのか

              1
              • 匿名
              • 2021年 11月 12日

              金さんですねw

        • 匿名
        • 2021年 11月 10日

        あれは技術じゃなくて、日本のカネ目当てなのでは

        10
      • 匿名
      • 2021年 11月 10日

      「船頭多くして船山に登る」なことにならなきゃいいんだけど

      2
        • 匿名
        • 2021年 11月 10日

        各種システムを統合するシステムを開発するのだからどうやってもコンソーシアムの形を取らざるを得ないと思う

        5
    • 匿名
    • 2021年 11月 10日

    各センサーノードを安定して接続できるのだろうか?

      • 匿名
      • 2021年 11月 10日

      無理
      だけれど、陸上なら基地局を多く設置すればどうにかなる
      海上にはなにも設置できないから、航空機による管制機は絶対いる
      なんで、海上では英国のE-7をつかうんじゃない?

      • 匿名
      • 2021年 11月 10日

      それを実現させるための研究も当然含まれてるだろ
      20年後の最先端技術がそれを出来ないようじゃ技術の進歩遅すぎる

      8
        • 匿名
        • 2021年 11月 10日

        電波はこれ以上発達できないから
        電波は曲がらないし、これ以上速くもできない
        相対性理論無視すんな

        1
          • 匿名
          • 2021年 11月 10日

          > 電波は曲がらないし

          ??????
          ごめん、解説を頼む。

          1
            • 匿名
            • 2021年 11月 10日

            電波は、直進しかしないのだよ。

            にもかかわらず、水平線の先まで届くのは、地表と電離層の間を電波が反射しながら進んでいるから。

            ちなみに、電波の発信源から見通し範囲内は直進波が届きますが、水平線以下の見通せない部分は、上記の電波の反射波が進んでいくのです。

            3
          • 匿名
          • 2021年 11月 10日

          その電波というものを、現在の人類が知り尽くして物理の限界まで使いこなせているかが問題だと思う

            • 匿名
            • 2021年 11月 12日

            電波が限界を超えてくれない
            フランスもE-2を運用し続けるし、英国はE-7を運用し続ける
            無くなるのは、あくまでもE-3という大型レーダー、大規模管制機能を持つAWACSであって、E-2やE-7といった比較的小型軽量な管制機は残り続けるし、調達も続けられる

            1
        • 匿名
        • 2021年 11月 10日

        英国はE-7Aをセンサーノード機の母機として使う構想あるんだよ
        それをもうちょっと調べて見ような
        AWACSはなくなっても、管制機はなくならない

        2
    • 匿名
    • 2021年 11月 10日

    約20年先ですか…
    また、状況が変わったりしてね

    • 匿名
    • 2021年 11月 10日

    分散システムは極めて極めて複雑で難しく、しかもレイテンシーやデータの整合性などが今までと同じにならない可能性が高いので、「なんでこんな大金と時間をかけてこの程度の使い物にならないゴミにしかならないんだ!」と大炎上する可能性がたかいと思うよ。

    4
      • 匿名
      • 2021年 11月 12日

      小中型機を多数飛ばすことになることによる兵站への負荷の増大もバカにならなさそうな気がするんだよな。

      1
    • 匿名
    • 2021年 11月 10日

    何にせよ競合相手が出てくるのは朗報だよ。片方がポシャっても、もう片方に注力すればいいんだから

    両方ゴミだった時は中露が内政を大ゴケするのを祈れ

    1
    • 匿名
    • 2021年 11月 10日

    米英独伊のビッグネーム目白押しだな
    この末席に日本企業も加われるようになりゃ良いんだけど

    やっぱまだまだだよなぁ

    1
    • 匿名
    • 2021年 11月 10日

    VTOL式の早期警戒機造ってくれないかな?

      • 匿名
      • 2021年 11月 10日

      VTOLにすることに、何の意味があるの?

      1
        • 匿名
        • 2021年 11月 10日

        たぶん軽空母や強襲揚陸艦で運用できる早期警戒機が欲しいんじゃないの。
        いずも型用にあれば便利ではあると思うけど。

        5
          • 匿名
          • 2021年 11月 12日

          強襲揚陸艦は、基本的に本国沿岸や正規空母の庇護下で行動するから、そこまではいらないでしょ
          空中管制が必要なほどの艦載機が積めるわけでもないし
          日本も東南アジア周辺に出張るときも、米第七艦隊の庇護下でしか行動してないし

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