スペイン政府は、ドイツとフランスが計画している第6世代戦闘機開発計画、「Future Combat Air System(以下、FCAS)」プロジェクトに参加するための準備を行っているが、肝心のスペイン海軍と空軍は、F-35への興味を失っていない。
参考:Spain’s military still has eyes for the F-35 despite European fighter push
スペイン空軍、海軍はF-35への興味を失っていない
スペイン海軍は、強襲揚陸艦「フアン・カルロス1世」で運用するため、新しいSTOVL(短距離離陸・垂直着陸)機を探している。

出典:Public Domain アメリカ海兵隊のAV-8B
現在、運用しているAV-8Bは、2030年前後に機体の寿命を迎えるため、そろそろ更新用の機体の検討に入らなければならないが、選択肢は多くない。
AV-8Bに改修を施し、機体寿命の延長や搭載電子機器のアップグレード等を行い、もう10年から15年ほどAV-8Bの運用期間を延長するか、米国から海兵隊向けのSTOVL機、F-35Bを新しく導入するか、強襲揚陸艦で固定翼機運用を廃止するかの3つだ。
スペイン海軍としては、F-35Bに興味を持っているが、F-35シリーズの中で、もっとも高価なB型の価格は、現在1億ドルを超える値札がついているのがネックだ。
補足:F-35Bは今後、9,700万ドルまで価格が下がる事が予告されている。

出典:Public Domain アメリカ海軍のF/A-18A
スペイン空軍は、84機のF/A-18A/Bを更新するための戦闘機を探している。
特に20機あるF/A-18Aは、2025年までに新しい戦闘機へ更新する必要があるので、数年以内に更新用の機体を選択しなければ、最悪、F/A-18Aがリタイアし始め、戦力の空白が生まれることになる。
現在、スペイン空軍の新戦闘機需要に対し、エアバスは、ユーロファイター・タイフーンを提案しているが、ここで競合するのは、やはりF-35Aで、スペイン空海軍ともF-35への興味は未だ健在のようだ。
ドイツと同じ事が、スペインでも起こる可能性が高い
しかし、スペイン政府は、ドイツとフランスが計画している第6世代戦闘機開発計画、「Future Combat Air System(以下、FCAS)」プロジェクトへ参加しようとしているため、FCASプロジェクトの中心的企業である、エアバスからの提案を、無下には出来ないだろう。
既にFCASプロジェクトへ参加しているドイツは、老朽化したトーネードの更新候補からF-35Aを排除した。
ドイツ空軍はF-35Aの採用を支持していたのに、エアバスはドイツ政府に対し、この段階で米国製のF-35Aを選ぶことは、FCASプロジェクト全体に影響を及ぼすと主張し、第5世代機であるF-35A導入を阻止した。
2035年前後までに第6世代戦闘機を開発するFCASプロジェクトを主導するエアバスにとって、プロジェクト主導国であるフランスが、あと15年以上、第4.5世代機のラファールで戦うのに、もう一方の主導国ドイツが、この段階で第5世代機のF-35Aを導入すれば、両国の第6世代戦闘機に対するモチベーションに差が生まれ、プロジェクト自体の足並みが乱れる可能性があるため、ドイツに第5世代機を導入させたくなかったのだろう。

出典:Public Domain pixabay
これと同じ事がスペインでも起こる可能性がある。
スペイン空軍や海軍の戦闘機更新需要は、2025年から2030年頃、ピークに到達するが、この段階でFCASプロジェクトで開発する第6世代戦闘機を供給できれば良いのだが、とても間に合わない。そこに第5世代機のF-35を導入されてしまえば、スペインでも第6世代戦闘機に対するモチベーションが低下するため、エアバスとしては、どうしても阻止したいところだ。
2025年に発生するスペイン空軍のF/A-18A更新先行需要をF-35Aに奪われれば、ドミノ倒し的に、残りのF/A-18更新需要も、全てF-35Aに奪われるだろう。
エアバスとしては提案できるSTOVL(短距離離陸・垂直着陸)機を持っていないので、スペイン海軍のF-35B導入は仕方ないと諦めることは出来ても、スペイン空軍のF/A-18A更新需要は、絶対に譲れない戦いになるだろう。
※アイキャッチ画像の出典:Attribution: javicaselli / CC BY-SA 2.0 強襲揚陸艦「フアン・カルロス1世」
欧州は危機感無くていいよなぁ…とか思ったり
現状FCASってCGしか存在してないモノによくオールインできるな
遅延してどうしようもなくなってからアメリカに泣きつきゃなんとかなるだろう程度にしか思ってなさそう
結局安全保障より公共事業&防衛産業保護を優先てことで
これはヨーロッパだけではなくオセアニアの某潜水艦や覇権国家のボーイングの扱いなどみればはっきりしますけど
他国だけでなく本邦もかなり防衛産業保護に金を掛けてきましたが、
安倍内閣になってから尻に火がついてF35の大量購入に走ってますな
ま本当に慌ててたら防衛費GNPの3%を超えてくるでしょうね。