欧州関連

エアバス、A400Mを活用して複数のUAVを戦場に供給する技術を開発中

エアバスは14日、戦術輸送機A400Mの貨物スペースから無人航空機(UAV)を空中射出するためのランチャーを開発中だと発表して注目を集めている。

参考:Airbus Develops UAV Launcher for A400M Aircraft

将来の戦争初日に要求されるUAV需要を満たすため、エアバスが開発に取り組んでいる戦場へのUAV供給システム

エアバスは「UAV Launcher project」に基づきA400Mの貨物スペースに搭載された無人航空機(UAV)を安全に空中射出するためのシステムを開発中で、同社のプロジェクトマネージャーは開発しているシステムの有効性について「複数のUAVが必要とされる将来の戦闘シナリオを想像して欲しい、A400Mがあれば複数のUAVを運搬することも空中発射することも可能だ」と語っており、将来の戦争初日に要求されるUAV需要を満たすのに「必要不可欠」だと言いたいのだろう。

因みに公開された動画に登場するUAVはランチャー開発のためのテスト機(エンジンも非搭載)であり、射出したUAVの空中回収についても触れられていないため、恐らくエアバスが取り組んでいるのは「帰還の必要がない消耗タイプの無人航空機(徘徊型もしくは自爆型と呼ばれる攻撃型UAVや偵察・監視型UAV)」を後方基地から戦場に複数投入するための技術開発で、動画に登場するテスト機やランチャーがそのまま実用化される訳ではなさそうだ。

ただ同様のシステムは米空軍でも実用化に向けて開発中なのでエアバスの取り組みに斬新さや革新さを感じることはないが、輸送機を使用して低コストのUAVを戦場に素早く大量に供給することで敵防空システムの対処能力を奪う可能性を秘めた技術の実用化に「欧米が揃って取り組んでいる」という点は興味深い。

もし同技術が確立され有効性が証明されれば非常に面白いと思うのだが、同様のシステムをロシアや中国も採用してくれば頭痛の種が増えるだけとも言える。

 

※アイキャッチ画像の出典:Airbus

ICBMとUAVの交換、北朝鮮は短期間でステルス無人航空機を実用化可能か前のページ

対潜戦のコスト削減が可能に? 米海軍がMQ-9を活用した潜水艦狩りをテスト次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    スウェーデン空軍、次世代戦闘機の戦略立案を11月まで終える

    スウェーデン空軍の参謀総長を務めるエドストローム少将は17日「現在進め…

  2. 欧州関連

    ドイツの自走式対空戦闘車輌「スカイレンジャー」が売れない理由

    ドイツのラインメタルは14日、自走式対空戦闘車輌「スカイレンジャー35…

  3. 欧州関連

    ウクライナ側が否定するTIME誌の記事、記者は現大統領顧問が情報源と示唆

    ウクライナ政府高官はTIME誌の記事内容(ゼレンスキー大統領は西側諸国…

  4. 欧州関連

    テンペストとFCASは統合されるべき、伊空軍ゴレッティ参謀長の発言に関心が集まる

    イタリア空軍のルカ・ゴレッティ参謀長が議会の国防委員会で「テンペストと…

  5. 欧州関連

    ウクライナ、民間航空機への保険打ち切りを回避するため5億9,200万ドル拠出

    ウクライナ政府は閉じかけている民間航空機の飛行を継続するため保険会社と…

  6. 欧州関連

    ドイツ、海軍の艦艇約100隻にロシア製ナビゲーションシステムを採用して問題化

    ドイツ海軍が運用中の艦艇約100隻にロシア企業が開発したナビゲーション…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 1月 19日

    こういった頻繁なアップデートや改良があるのも、日本製兵器のC-2よりも欧州製A400Mの方が優れている理由の一つだろう

    5
      • 匿名
      • 2021年 1月 19日

      単純に顧客の需要があるかないかの違いじゃないかな?
      あるいは顧客があったとして、内容の非公開を指定されているか否かとか。

      15
      • 匿名
      • 2021年 1月 19日

      技術的に優れているかは別として、国際的企業として輸出実績のあるエアバスにはさまざまなノウハウやコネという蓄積があるのはうらやましいところ
      防衛省以外の取引先から探さないとならない川崎との差はここだよ
      ここは簡単には真似できないよな

      21
        • 匿名
        • 2021年 1月 19日

        うらやましいかなぁ?
        A-400Mにしろタイフーンにしろ、多数の取引先の過剰要求やら
        利益誘導やらでグッダグダになってる様にしか見えないが…。
        頻繁なアップデートや改良でUAV運用能力だの地形追従飛行能力だのつけても
        本来の各国の要求性能を達成してないんじゃ顧客の満足度は上がらんと思うのだけど。

        16
      • 匿名
      • 2021年 1月 19日

      A400Mは、その定型分には不向き。共同開発で、各国高い要求が並び、予算超過で全て性能未達。
      身内で100機以上売れる予定だけど、それも未達かも。ヘリに給油できないとかあるし。

      14
      • 匿名
      • 2021年 1月 19日

      kytn先生お疲れ様です

      6
      • 匿名
      • 2021年 1月 19日

      肝心の輸送機としての基本性能が終わってるのに他の機能が優れてても意味ないのでは?
      正直この輸送力ならC-130買った方がマシだと思うけど、A400Mみたいに4基もの欠陥エンジンを抱えてメンテナンス地獄、改修地獄になる事もない
      本邦に限って言うなら16式輸送できない時点でC-2と比べられるわけでもないし

      14
    • 匿名
    • 2021年 1月 19日

    輸送機を言わば空中空母にするのは面白いけど日本で作るのはこっち系のUAVじゃないっぽい
    輸送機で運用する利点こそあるがそれと同時に機内に収まるコンパクトさを要求されるし

    6
    • 匿名
    • 2021年 1月 19日

    カッコいい
    UAV母機
    欲しいw

    • 匿名
    • 2021年 1月 19日

    自衛隊は石橋叩いても渡らないというか新兵器導入にはかなり保守的な面があるけど
    ドローンの運用方法や対抗手段の研究ぐらいは予算つけてしておいてほしいんだよねぇ
    ぶっちゃけ居酒屋に毎日6万円払うより有意義だと思う
    中国と揉めた時にドローンを投入してくるのは確実なんだから

    14
      • 匿名
      • 2021年 1月 19日

      あまり知られてないだけで対抗手段だと近接防空用レーザーにHPM(高出力マイクロ波)を研究開発中だし、ドローン運用なら陸自はFFOS・FFRS、スキャンイーグルに各種クアッドドローンを運用してるし、空自はTACOMにi3ファイターの随伴無人機など以前から研究してるし随伴無人機はF-3と併せて実用機の開発に動き出してる。
      自衛隊は中露あいてに使えるドローンにしか興味がないから雑魚狩り専門の流行に乗らなかっただけで昔からコツコツ研究してるし手を付け始めたのはむしろ早い方だったはず。
      あとレーザー兵器研究なんかは鳩山政権の頃から予算が通って始まってるものだったはず

      18
        • 匿名
        • 2021年 1月 19日

        そうだよね。

        陸自だとドローンの通信妨害、傍受用の装備が5年くらい前に調達されてる。
        これは中共は、今のはやりの何年も前から研究、調達してたから。今どきの兵装ってわけじゃあないんだよなぁ。
        クボタがこれでキャッチオールに引っかかったのはもう20年も前。

        6
    • 匿名
    • 2021年 1月 19日

    空中空母

    2
      • 匿名
      • 2021年 1月 19日

      XF-85(ゴブリン)ですね

      4
      • 匿名
      • 2021年 1月 19日

      マザーシップ的な雰囲気だな

    • 匿名
    • 2021年 1月 19日

    C-2で真似ようにも、C-2の数が足りない…
    C-130でも出来るようにならないかな

      • A
      • 2021年 1月 19日

      ならC-2を増産しちゃいましょう。

      13
        • 匿名
        • 2021年 1月 19日

        現実は増産どころか2度に渡って調達数が削減されているんだがな

        5
      • 匿名
      • 2021年 1月 19日

      P-1を母機にして自爆型ドローン搭載したら無人型桜花とか言われちゃうかな?

      6
        • 匿名
        • 2021年 1月 20日

        無人桜花はただのイ号無線誘導弾でしょ

        1
    • 匿名
    • 2021年 1月 19日

    これは空対地ミサイルと同様に母機の安全な位置での発射を考えると、前線からかなり離れた地点での射出になるからUAVの航続距離を奪うし相手側に対処時間を与えることになる。
    F-3がマッハ2クラスでスパクルできれば亜音速の母機もUAVを始末するついでにJNAAMで撃墜できる。
    UAVは航空優勢が無ければ烏合の衆。

    6
      • 匿名
      • 2021年 1月 19日

      滞空型のUAVってのは動力切ってりゃ実質そこそこ高性能なモーターグライダーなので
      高度1万mで投下すれば滑空比30として300km無動力で飛べます。
      投下時の対気速度(ドン亀A-400Mでも800km/h超え。カタパルトでも到達不可能)も利用できますので
      空母から発艦するより遥かに広範囲に展開出来るでしょう。
      運用次第ではなかなかにいやらしい兵器だと思いますけどね。

      2
        • 匿名
        • 2021年 1月 19日

        うーん、そんな高高度でそんな滑空比って出るの?
        民間機は確かに滑空比30を求められるみたいだけれど、高空では難しいんじゃあないの?
        たしか空気密度も影響したはず。
        その辺どんな感じ?

        気候が影響するだろうし、進路を変えれば滑空距離は短くなるだろうし、現実的なところでどんな感じなんだろうか?

        2
          • 匿名
          • 2021年 1月 20日

          揚力と抗力は共に空気密度に比例するから揚抗比=滑空比は基本的には変わらない。
          1万mに最適化した設計はしないだろうからレイノルズ数の低下による多少の性能低下はあると思うけどね。
          少なくとも「空気密度が1/3になるから滑空比も1/3」とか思ってるならそれは間違い。

          1
            • 匿名
            • 2021年 1月 20日

            おお、ありがと。
            うん、そういうわけじゃあない。誘導爆弾やミサイルの感覚からすると空気密度の影響って大きいからそれなりなんじゃあないかと思ったわけ。

            進路変更も影響しない感じ?

              • 匿名
              • 2021年 1月 20日

              説明不足だったけど↑で空気が薄くて揚力が減るのに同じ機体重量を支えられるのは「その分速度が上がるから」。
              なので旋回や進路変更にはモロに影響する。

              2
                • 匿名
                • 2021年 1月 21日

                ああ、やっぱりそうなのね。
                THX

    • A
    • 2021年 1月 19日

    コスモファルコンの発艦みたい。

    3
    • A
    • 2021年 1月 19日

    UAVをまとめて運んで戦場付近で発艦(?)させるのって良いアイデアのように思えたけれど長距離何たらミサイルで撃墜されちゃうんじゃないかな。
    早期警戒機を無力化しちゃうんじゃない?っていうあのミサイルで。

    7
    • 新・にわかミリオタ
    • 2021年 1月 19日

    なんかSFみたいな世界がもうすぐそこなんですね。

    3
      • 匿名
      • 2021年 1月 19日

      宮崎監督のルパン最終話、
      輸送機から投下される装甲ロボット兵シグマの群れ
      だんだん近づいてる

      4
      • 匿名
      • 2021年 1月 19日

      航空機からUAV、戦闘機にレーザー、どんどんエスコンの世界に近づいてる

      8
    • 匿名
    • 2021年 1月 19日

    A400Mの中に積めるUAVでどれくらいのことが出来るんだろう?。
    幅4mまでだから滞空時間長くするには不利だよね。大きくてのろまな母機の安全は大前提だから前線まで自力で進出してもらわないといけないし…発射場所に融通が利くけど機体設計と運用法の制限を考えるとメリットあるのかな?

    7
      • 匿名
      • 2021年 1月 19日

      遠隔地での非対称戦での弱い者イジメには使えるのだろうけれどもね
      主翼は折り畳みで空中で展開するといった、ミサイルと同様の方式でないと。サイズがだいぶ大きくなっているが

      2
      • 匿名
      • 2021年 1月 19日

      ロシアだったかな、可能かどうかはともかく極音速ミサイルでAWACSや空中給油機を叩いて米空軍のバックアップ体制を崩す戦術を研究してたの
      それと同じで長射程のミサイルの餌になりそうだなとは思う、B-2みたいに母機をステルス化してリスクを低減するならありかも知れないけど、それだとコスト上がって企画倒れだしなぁ

      4
        • 匿名
        • 2021年 1月 19日

        同感。極超音速ミサイル等が配備されると、後方の大型輸送機などロジ系は好い標的になる予感。戦場に素早く大量にUAVを供給、と言っても、輸送機が前面に出張ってくるのは、いまでも危険でしょう。この記事のテーマはとても魅力的で、技術屋や戦略家に新たな問題を提起する話だね。

        3
      • 匿名
      • 2021年 1月 19日

      一時的に対空監視レーダーを無効化できれば、使い道はあるでしょう。
      例えば、民間コンテナに偽装したジャミング装置を起動させたと同時に、多数のUAVを母機から移出。ジャミングが有効な期間内に、予め地上の対空装備の場所がわかっていれば、初手でダメージを与えられそう。

      • 匿名
      • 2021年 1月 19日

      普通に輸送機か爆撃機のパイロンに吊って発射すればいいんでないの?つまりB-52みたいな機体。
      西欧の大国にはその発射母機がないのかも知れませんが。

      2
      • 匿名
      • 2021年 1月 19日

      別に格納庫の幅に翼が収まる必要はないでしょう。
      縦に詰め込んでそのまま投下すればいい。
      縦にだったらリーパーが無理やりねじ込めるかどうかってキャパあるから十分かと。
      投下時に外乱でとっ散らかるかもしらんけど所詮は外乱、
      不規則ではあってもそれほど高負荷でも長時間でもないだろうから、
      人間にはキツくても機械にはそこまで致命的なダメージはないかと。

        • 匿名
        • 2021年 1月 19日

        そんなギミック使っておさめなきゃいけない大きな機体だと消耗品には出来んだろう。

        4
          • 匿名
          • 2021年 1月 20日

          ギミックも何も縦に突っ込んで「えいやっ」と放り出すだけやで。
          つか「A-400Mに搭載だとちっちゃくなっちゃって使い道なくない?」つーから「いやデカいのでもいけるで?」と言ってるだけ。
          4m〜20mまで(できれば16m以内)、自由なサイズをお選び下さい。

          • 匿名
          • 2021年 1月 20日

          使い捨てでいいなら柔軟翼(パラグライダーやウイングスーツみたいなリップストップ生地をラム圧等で展開させる翼)を使えば、
          4mに楽々収まる大型機が超軽量格安で作れるね。

    • 匿名
    • 2021年 1月 19日

    パラサイト・ファイターやん!!!
    昔の欠陥兵器とされたものも今の技術でリブートすれば使えるやついっぱいあるんやろなあ

    3
      • 匿名
      • 2021年 1月 19日

      パンジャンドラム「そうだよ!」
      マウス&ポルシェティーガー「今の技術ならば・・・!」
      ハボクック「いける!いける!」

      8
        • 匿名
        • 2021年 1月 19日

        自爆ドローンは広い意味でパンジャンの系譜だと思う
        マウスは昨今のUAVの戦車キラーぷりのせいで的にしかならないかな、ハボクック君は、うん・・・

        4
    • 匿名
    • 2021年 1月 19日

    80年代にはトマホークをC-5から投下して大量発進という話があったし
    軍事的雑学|1機たったの120万円?米軍が開発中の「使い捨て無人輸送機」が斬新過ぎ!
    リンク
    米空軍、空飛ぶ弾薬庫「アーセナルプレーン構想」実現に一歩近づく
    リンク

    米国のほうが現状は欧州よりリードしているかも
    ロシアや中国はわからないが

    1
    • 匿名
    • 2021年 1月 19日

    使い捨てっていう点が最も気になる。
    訓練するだけでもすごいコストがかかりそう。
    かと言って回収するのは難しそう。
    まぁ高価な空中発射ミサイルと考えるのか・・

    1
    • 匿名
    • 2021年 1月 19日

    しかしこういうUAVの発展を見ていると今にエースコンバット7のアーセナルバードが現実化してしまいそうだね。

    1
    • 匿名
    • 2021年 1月 19日

    トライアルとしては面白いけど中途半端な気はするけどなぁ。

    母機を前線近くまで飛ばしたら撃墜のリスクが増すから意味ないだろうし、後方から送り出しなら機体サイズがポイントになる。
    ある程度大きなサイズを想定してるんだろうけれど、A400自体がさほど大きいわけじゃあないから制約がある。
    そうなるとペイロードが少ないので火力と航続距離は小さくなるだろう。投下後の機体の制御が難しいだろうから馬力のあるエンジンも必要だろうし、そこでも燃料を消費するね。

    一番使いでがあるのは、山岳なんかでそれなりの滑走路を準備するのが難しいといった地域での偵察だろうね。地上偵察も手間だろうから、大量に飛ばして一気に状況を把握する。もしくは広範囲の定期偵察。こういう用途には向いてるだろう。
    これならペイロードの小ささより有用性が上回ると思うなぁ。

    4
    • 匿名
    • 2021年 1月 20日

    使い捨てでいいならミサイルでもよさげだし、日本はc2から長距離ミサイルうてるようにできないかな。

    2
    • 匿名
    • 2021年 1月 20日

    EC-2開発して、ハーピーやらハロップみたいな自爆型UAV積んで…
    ってはならないかなぁ?

    • 匿名
    • 2021年 1月 20日

    いぜんこちらで中国が多連装ロケットランチャーのようなのから多くの無人機を射出している映像を見ました。
    スウォーム攻撃のためのヤツですね。
    ああいう小さいのじゃダメなの?

    > EC-2開発して、ハーピーやらハロップみたいな自爆型UAV積んで…

    そそ、そういうやつ。アゼルもつかってたジャン

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  2. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  3. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  4. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  5. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
PAGE TOP