欧州関連

民間航空機で密輸? 互いに違法な武器輸送を非難するアルメニアとアゼルバイジャン

アルメニアもアゼルバイジャンも人道的停戦期間を活かして、消耗した装備や弾薬の補給を民間航空機を使って運び入れていると報じられている。

参考:Attack drones being brought to Azerbaijan from Turkey, Israel
参考:Atlantis Armenian Airlines transports missiles and rocket systems to Armenia on civilian aircrafts

ロシアが主導した今回の停戦は「人道的停戦」と呼ばれているが現実は起こっていることは「非人道的停戦」に近い

アルメニア国防省は11日、トルコとイスラエルが人道的貨物に偽装して無人航空機(UAV)をアゼルバイジャンに供給され続けていると非難したが、アゼルバイジャン国防省もアルメニアが自国の民間航空企業「アトランティス・アルメニア航空」を使ってロシア製多連装ロケットシステム「BM-30」で使用するロケット弾や各種ミサイルを運び入れており、これは国際民間航空条約(通称:シカゴ条約)と 国際民間航空機関(ICAO)が定めた規則に違反すると応戦した。

もし両国の主張が正しいのなら陸路と海路による輸送が不可能(両国とも開けた海に面しておらず陸路による輸送もイランやジョージアが武器の移送を許可してない)なアルメニアとアゼルバイジャンは、民間航空機を使用して違法な軍需物資輸送を自国に運び入れていることになる。

勿論、これしか方法がないのでお互い様なのかもしれないが戦いが激しさを増せば増すほど民間航空機への攻撃に発展する可能性があるため、この空域近くを飛行する民間航空機に搭乗するのは当分控えたほうが良いのかもしれない。

あと両国の停戦は全く守られておらず、アルメニア軍はアゼルバイジャンの首都バクーに次ぐ人口を擁する「ギャンジャ」に連日ロケット弾やミサイルを打ち込んでおり、都市の建造物や民間人に多くの被害(昨日だけで民間人が7人死亡し33人負傷した)が生じているが、アゼルバイジャン軍もアルツァフ共和国(事実上アルメニア支配下のナゴルノ・カラバフ地域)の首都ステパナケルトに対して連日ロケット弾やミサイルを打ち込んでおり、こちらも大きな被害が出ている。

ここで注目すべき点はアルメニア軍によるギャンジャへの攻撃理由だ。

アゼルバイジャンのギャンジャ周辺にはカザフスタン~カスピ海~アゼルバイジャン~ジョージア~トルコ~欧州へと続くエネルギー輸送用のパイプラインを通っており、ギャンジャを攻撃すると言うことは「いつでもパイプラインを破壊できる」ということを意味しており、これはアゼルバイジャンへの脅しというよりも欧州への脅しと映る。

どこまで効果があるのかは不明だが、恐らく欧州がナゴルノ・カラバフ紛争を軽視や無視することが出来ないようギャンジャを攻撃することで危機を煽っているつもりだのだろう。

以上にのように停戦後も両国の戦闘は続いているが、停戦発効前にナゴルノ・カラバフ全域で繰り広げられていた戦いに比べれば戦死者数についてマシと言えるののかもしれない。しかし互いの軍事ユニット同士の戦いが抑制されただけで敵の拠点や都市への攻撃は激しさを増している=民間人への被害が増えているため凄惨さが逆に増しているという指摘もある。

因みにロシアが主導した今回の停戦は「人道的停戦」と呼ばれているが、現実は起こっていることは「非人道的停戦」に近い。

 

※アイキャッチ画像の出典:Vitaly V. Kuzmin / CC BY-SA 4.0 9K58 Smerch

戦争のルールを変えたトルコ製UAV「バイラクタルTB2」の活躍前のページ

ドイツのトーネード後継機問題、タイフーン単独導入以外は認めない?次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    ナゴルノ・カラバフ地域に住むアルメニア系住民の脱出、9万人を突破

    アルツァフ共和国は2024年1月1日までに消滅することが確定し、ナゴル…

  2. 欧州関連

    やっぱりトルコのジェット無人戦闘機「MIUS」は超音速飛行に対応、強襲揚陸艦にも着艦可能

    トルコのジェット無人戦闘機「MIUS」は巡航ミサイルをウェポンベイ内に…

  3. 欧州関連

    国産COIN機まで売れ始めたトルコ航空産業界、ニジェール共和国がTB2とヒュルクシュCを発注

    トルコのエルドアン大統領は18日、西アフリカのニジェール共和国に無人戦…

  4. 欧州関連

    空対空ミサイルを16発搭載? タイフーンのビーストモード化を予感させる公式画像

    ユーロファイター・タイフーンコンソーシアムは今月5日、ウェブマガジン「…

  5. 欧州関連

    ついに全貌を表す第6世代戦闘機「FCAS」、パリ航空ショーでモックアップ公開予定

    フランスのダッソーは、17日の月曜日(現地時間)、パリ航空ショーでFC…

  6. 欧州関連

    アゼル軍、ナゴルノ・カラバフ地域への補給路遮断まであと一歩

    アルツァフ共和国(旧ナゴルノ・カラバフ自治州が独立国だとして名乗ってい…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 10月 12日

    「3分間待ってやる」(実際は50秒)も銃の再装填の為だったしてん

      • 匿名
      • 2020年 10月 12日

      途中投稿сука блять!

    • 匿名
    • 2020年 10月 12日

    戦線の全体像知らないですが、一般論でいうとこっそり空路で運べる程度の軍需品で大規模な長期戦は無理ですから、事態は収集の方向に進みそう。でも小競り合いだけは延々と終わらない気配
    民族紛争ってのは、離れて眺めると似た者同士のケンカ、当人だけが互いにアイツとは違うと言い張るのが、他人からは愚かしい

    • 匿名
    • 2020年 10月 12日

    天然ガス利権がらみになると、この紛争は混迷を深めるだろうね。
    ロシアは主力輸出品の石油天然ガスが売れなくて財政がひっ迫している。
    その上、野党指導者の毒殺未遂が浮上して欧州向けノルド・ストリーム2の開発がストップ。
    その間にトルコ・ストリームが完成すれば、欧州シェアを奪われるか。
    ロシアがこの紛争を利用しようと画策している疑惑は深まった。

    1
      • 匿名
      • 2020年 10月 12日

      トルコ・ストリーム→ナブッコ(南コーカサス)・ストリームです。訂正いたします。

      2
    • 匿名
    • 2020年 10月 12日

    軍に攻撃するな?なら民間人だ

    1
    • 匿名
    • 2020年 10月 12日

    人道的停戦だから「捕虜交換」を口実にした一時的な停戦と解釈できる。「不可侵条約」の様な平和協定が結ばれない限り争いの炎は燃え続けるよ。

    1
    • 匿名
    • 2020年 10月 12日

    お互いに長距離ロケット弾を撃ち合っているとなると、前線の兵力・兵器はお互いに消耗して膠着状態に陥っているのかな?

    • 匿名
    • 2020年 10月 12日

    なんかアルメニア本国の都市カパンが普通に攻撃されてるらしいけど
    ロシアさんあなた「ナゴルノ・カラバフでなくアルメニアが攻撃されたらすぐ軍出動する」って言ってましたよね
    相手の都合で勝手に無効化される集団安全保障ってなんか結ぶ意味あるんですかね?

    4
    • 匿名
    • 2020年 10月 12日

    アルメニアが攻撃されてる?
    でも、ジョージア上空なんてロシアはとても通れないから、カスピ海を通って、アゼルを直接攻撃?以外のルートがない。
    アルメニア人保護のついでに、欲張ってアゼル人の住む土地を回廊にするからとプーチンは思ってるのか?
    前回、ジョージアに嫌われてアルメニアは陸の孤島だな。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  2. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  3. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  4. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  5. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
PAGE TOP