欧州関連

年間予算約40億ドルのアルメニア、アゼルに賠償金500億ドル以上の支払い?

アルメニアの検察総長が12日、アルメニアは領土を失うだけではなく500億ドル以上の賠償金を支払いを約束していると言及して注目を集めている。

参考:Armenia to pay $50 billion in compensation to Azerbaijan

国家予算が約40億ドルのアルメニアが500億ドル以上の賠償金支払いを約束???

ナゴルノ・カラバフ紛争は要衝シュシャが陥落したことを受けてロシア主導の停戦案をアルメニアとアゼルバイジャンが受け入れることで合意したが、著しくアゼルバイジャン側に有利な内容だったため事実上アルメニアが降伏したに等しいと言われている。

アルメニアが紛争を終結させるため署名を余儀なくされた停戦協定の主要内容は以下の通りだ。

  1. 2020年11月10日00:00(モスクワ時間)に全ての戦闘行為を停止
  2. アゼルバイジャンが奪還した地域の支配権は維持
  3. ナゴルノ・カラバフ地域の停戦ラインとアルメニアとアゼルバイジャンの国境にあたるランチ回廊を監視するためロシア軍で構成された平和維持軍が5年間展開(自動延長あり)
  4. アルメニアはアゼルバイジャン領のカルバジャル地区から11月15日(25日に変更)までに撤退、ナゴルノ・カラバフ地域のアグダム地区から11月20日までに撤退、アゼルバイジャン領のラチン地区から12月1日までに撤退して、同地域をアゼルバイジャン側に譲渡
  5. アルメニア支配下に留まるナゴルノ・カラバフ地域とアルメニアを結ぶ新たな交通路の建設
  6. 捕虜、人質、死者の遺体の交換

アルメニア国民の一部は停戦時にアルメニア側が維持していたカルバジャル地区、アグダム地区、ラチン地区の返還が協定に含まれいるため、この協定を受諾することを決断したパシニャン首相を批判しているが、決断が遅れていれば首都ステパナケルトや周辺地域もアゼルバイジャン軍に占領されアルツァフ共和国は完全に崩壊していたと語り「これがアルメニアとアルツァフ共和国にとって最善の選択肢だった」とパシニャン首相は主張している。

出典:Kremlin.ru / CC BY 4.0

ただ停戦協定には公にされていない賠償金支払いの内容が含まれており、アルメニアがアゼルバイジャンに約束した賠償金の額は500億ドル(約5.2兆円)以上だと報じられて注目を集めている。

アルメニアの検察総長は「停戦協定に署名したアルメニアは領土を失うだけではなくアゼルバイジャン側に500億ドル以上の賠償金を支払うことを約束しており、将来の世代もアゼルバイジャンに対する賠償金を支払い続けることになる」と語り、私たちが素早く法的対応を行わなければパシニャン首相が署名した恥ずべき停戦協定は私たちと将来の世代に深刻な財政危機をもたらすだろうと主張した。

今のところアルメニア政府は賠償金支払いについてコメントしていないため検察総長の話が真実なのは謎だ。

しかしアゼルバイジャンのアリエフ大統領は12日、アゼルバイジャン領を占領していたアルメニアが破壊した公共施設や住宅などについて調査を行い損害額を算出すると言及して「アルメニアは賠償金を支払うことになる」と述べており、トルコは今回の停戦協定にアルメニアが違反した場合には「違反金」を支払うことになっていると言っているため、アルメニア側は何らかの賠償金(もしくは違反金)支払いに同意している可能性が高い。

参考:Armenia to compensate for damage to Azerbaijani territories
参考:‘Armenia to pay price if violates cease-fire agreement’

因みにアルメニア政府の国家予算は1兆8,800億ドラム(約40億ドル:2020年)なので、仮に検察総長の話が本当ならアルメニア国内で暴動が起きるだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:President.az / CC BY 4.0

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 11月 16日

    過剰な賠償金の請求は次の戦争を招くだけやぞってヨーロッパの連中が教えてやれよ。

    34
      • 匿名
      • 2020年 11月 16日

      ヴェルサイユ条約をバネに反抗出来るのは列強だけだと思うよ
      ドイツみたいな技術力もない国がナチスになれるわけがない
      普通に搾取されるだけ

      16
        • 匿名
        • 2020年 11月 16日

        次のISが生まれる、でも良いけど
        ISのとこはIRAでもタリバンでもなんでも良いけどまあ、将来を奪われると大体暴力に走るもんなのよね
        逆に、IRAは北アイルランドの発展に伴って勢力を失っていった側面があったりするし

        アゼルとしても、クラスター弾で攻撃された町だの民間人だのがいて、前線で死んだ若者がいて
        補償(報復)なしには加熱した世論も収まらんのかもしれんけど、次の争いの火種には確実になるね

        19
    • 匿名
    • 2020年 11月 16日

    ヴェルサイユ条約じゃあるまいし
    反って両国の溝を深めて将来に禍根を残すやり方を選ぶかな
    眉唾物な話ですね、アルメニア国内に和議への異論が噴出してるのは想像できるけど

    9
    • 匿名
    • 2020年 11月 16日

    この賠償金支払い額なら、将来に渡って軍備再建が不可能になりますね

    11
    • 匿名
    • 2020年 11月 16日

    どう見てもベルサイユ条約ですね。
    ハイパーインフレ起こってアルメニア人の子供がドラム紙幣の束で積み木して遊ぶ様になるか?

    21
    • 匿名
    • 2020年 11月 16日

    アゼルの賠償金設定は、ナゴルノカラバフの未奪還領域の返還に応じないアルメニアに対する制裁措置とみれる。巨額の賠償金が事実なら、アルメニアはナゴルノカラバフの残存支配地域を遠からず維持できなくなるかもしれない。

    9
    • 匿名
    • 2020年 11月 16日

    賠償金減額と引き換えにナゴルノカラバフの未占領地区引き渡し要求とかありそうな予感
    最初に相手が飲めない条件ふっかけるのはよくある交渉テクニックだし

    21
    • 匿名
    • 2020年 11月 16日

    先進国が炭素フリーを宣言してる2050年に向けて産油国は地政学的脅威にケリつけるために戦争しまくるかもしれんね

    7
    • 匿名
    • 2020年 11月 16日

    アルメニアの停戦反対派がでっち上げたのではと疑いたくなる内容だ
    しかしもし本当なら間違いなる次の戦争の火種になるだろうな

    9
    • 匿名
    • 2020年 11月 16日

    あまりに無茶な賠償金はちょびひげの再来に繋がるぞ?
    次は勝つからとか思うなら御随意に

    3
      • 匿名
      • 2020年 11月 16日

      いうてもドイツみたいに元々のポテンシャルあるような国でもないんで…

      このままアゼルの奴隷国家になるルートじゃないっすかね、そもそも軍備拡充しようにも工業力皆無だし

      7
        • 匿名
        • 2020年 11月 16日

        今のご時世ならテロリズムに走る可能性もあるんじゃない?

        12
          • 匿名
          • 2020年 11月 16日

          国家規模と周辺情勢的に無理でしょ
          全周からテロ支援国家としてフルボッコにされて終了だろう

          1
            • 匿名
            • 2020年 11月 17日

            昔のIRAみたいに国土・民族的な要因でテロに傾倒する過激派はいると思う

            2
    • 匿名
    • 2020年 11月 16日

    アルメニアは敗戦を巡って首相暗殺の試みまで起きるなど大混乱なのでこういうリークはあまり真に受けない方がいい

    3
    • 匿名
    • 2020年 11月 16日

    アルメニアのGDPは137億ドル(2019年)だからGDPの3.7倍ほど。日本のGDPが550兆円くらいだから、アルメニアが払う賠償金を日本に置き換えるとちょうど2000兆円くらい。台湾も日本も明日は我が身なのかもしれません。

    9
    • 匿名
    • 2020年 11月 16日

    1.アゼルバイジャン人居住地域から住民を追い出し70万人以上の難民を生み出した
    2.鉱山を勝手に掘って資源を売って利益を上げた

    まあ賠償金取るのは別に普通だけど500億ドルは反パシニャン派のプロパガンダではないかな

    6
      • 匿名
      • 2020年 11月 16日

      その可能性はあるね。
      あえて和平合意を潰して、アルメニア国内の政治的主導権を握るために。
      ただ現時点では、プロパガンダとも交渉テクニックともとれるから、詳細は続報待ち。

      2
    • 匿名
    • 2020年 11月 16日

    ひょっとしたら、アゼルバイジャンは賠償金を背負わせる事でアルメニアの崩壊かより自国に従順な政権への交代を狙っているんじゃないか?
    ヴェルサイユ条約のドイツみたいに賠償金が将来の禍根となるケースもあるが、欧州の大国で一度はハイパーインフレを乗り越えた(1929年の大恐慌でナチスが台頭したが)WW1後のドイツと今回のアルメニアでは経済力が違い過ぎるので、今後は復讐戦処では無い筈
    つまり、アゼルバイジャンによる対アルメニア作戦は未だ終わっていない様な気がする

    4
      • 匿名
      • 2020年 11月 16日

      乗り越えられなかったから、ナチが支持されて合法的に政権を取ったのが実際。で、周辺国に軍事侵攻。この時点ではドイツの軍備も大したことなかったから。各国は傍観。力を取り戻したドイツはWW2へ。

      なので、この賠償金が事実なら各国が反アゼルバイジャンで介入を始めるだろう。アルメニア側の謀略かもしれんよw

      3
        • 匿名
        • 2020年 11月 16日

        注意して欲しいのだが、ドイツはWW1敗戦後の1920年代前半に一度ハイパーインフレを起こしている
        この時は1921年に1ドル=4.2マルクだったものが、1923年夏には1ドル=110万マルクにまで下落したが、1923年に土地に対する地代請求権を本位とする「レンテンマルク」と言う臨時通貨の発行で乗り切った
        その結果、1920年代中頃から1929年までのドイツは徐々に経済的に安定していた
        上の方で「一度はハイパーインフレを乗り越えた(1929年の大恐慌でナチスが台頭したが)」と書いたのはそれが理由
        ドイツが乗り越えられなかった1929年の大恐慌は米国発の国際的な物であり、ドイツ自身の責任では無い事に留意して欲しい

        1
          • 匿名
          • 2020年 11月 16日

          アルメニアの話から逸れるからこれ以上返信しないけど、1928年にはナチスは国会に議席を持っていたということが事実。デノミをしたからと言って経済が安定したわけじゃあない。だから社会不安からナチスが勢力を伸ばしたのが現実。大恐慌でナチスが台頭したわけじゃあないから君の認識違い。

          1
    • 匿名
    • 2020年 11月 16日

    「停戦」なので、アルメニアは公式には敗戦国ではないと思考します。つまり通常敗戦国が負う戦後処理としての賠償の義務は無いのではと。
    そう考えると、実質的勝者といえるアゼルバイジャン側が自国領内のアルメニアによる損害についての賠償にしか言及しないのも肯けます。ナゴルノ・カラバフ地域内の施設等を破壊したのは主にアゼル側でしょうから。
    「アルメニアが破壊した公共施設や住宅など」とはアルメニアがアゼルバイジャン領内の国際空港と都市を攻撃したことによる損害について言っているのかと。
    私見ですが、アルメニアの検事総長による500億ドル賠償云々の発言は信憑性に疑問があります。

    5
      • 匿名
      • 2020年 11月 16日

      国際法上、公式な敗戦等と言う画一的な区分線引きなんてものは存在しませんよ
      単に終戦処理の過程で条件闘争が行われるだけの話です
      そしてその条件闘争では優勢な側が有利な条件を押し付けるのが一般的な終戦処
      理の形です

    • 匿名
    • 2020年 11月 16日

    ナチスのように賠償拒否する政府が出てきたら?
    厭戦感情に覆われていた英仏と違ってアゼルバイジャンは嬉嬉としてカラバフを抹消するんじゃないかな。
    アゼル側としては賠償金が支払われても支払われないことを口実にカラバフを完全に支配下に置いてもどっちに転んでも悪くはないだろう

    • 匿名
    • 2020年 11月 16日

    やっぱ戦争は負けられねぇよなぁ…
    過去の経緯はどうあれアゼルバイジャンが侵攻して一方的にボコった挙げ句に
    お前らの負けだから賠償金払えよって飲めるかそんなもんって話だわな
    戦力放棄とか馬鹿の戯言ってのがこの戦争の結末からも窺い知れるわ

    2
      • 匿名
      • 2020年 11月 16日

      >戦力放棄とか馬鹿の戯言ってのがこの戦争の結末からも窺い知れるわ
      戦力放棄は負けた結果なのでは

      3
      • 匿名
      • 2020年 11月 16日

      経緯は考慮しないとか短絡的にも程があるだろw

      3
    • 匿名
    • 2020年 11月 16日

    日本は未だに賠償金支払ってませんけどね、アジア諸国にね

      • 匿名
      • 2020年 11月 16日

      賠償金又はそれに代わる経済支援を行っていないのは対北朝鮮だけでは?
      北朝鮮とは2002年「日朝平壌宣言」で国交正常化交渉において具体的に協議することになってます。
      中国は国交正常化に際し賠償金を断ったが、その後日本は技術協力・支援、及び様々な経済支援を行いましたよ。ODAに至ってはGDPで中国が日本を抜いた後も続けられ、完全終了は2021年度末の予定です。
      その事実は中国人民には正しく伝えられていませんけどね。

      9
      • 匿名
      • 2020年 11月 16日

      こういう煽りコメントはやっぱりある程度管理してほしいなぁ

      11
    • 匿名
    • 2020年 11月 16日

    どこかで聞いたような話で草も生えませんよ…アルメニアの明日はどっちだ!?

    1
    • oominoomi
    • 2020年 11月 16日

    管理人さんにスルーしろって言われてるんですが、すみません、マジレスすると下記の通りです。(外務省の資料による)

    ア 日本はフィリピンに対し5億5,000万ドル、ベトナムに対して3,900万ドルの賠償を行った。その他の条約当事国は日本に対する賠償請求権を放棄した。
    イ 日本は条約当事国に対して在外財産の処分権を認めた。
    ウ 日本は赤十字国際委員会に捕虜に対する償いとして英貨換算450万ポンドを支払った。同委員会が各国へ分配し、国内での配分方法は各国の裁量に委ねられた。
    エ 上記を除き日本と条約当事国は相互にすべての請求権を放棄した。
    オ 戦後日本より分離した地域(日本との間で戦争状態があったわけではないので賠償の問題は生じない)の分離に伴う財産・請求権の問題については、日本と当該地域の当局間の特別取極の主題とすることが定められた。(a)韓国
    1965年の日韓請求権・経済協力協定により、財産・請求権問題が解決されたことを確認するとともに5億ドルの経済協力(無償3億ドル、有償2億ドル)を実施した。

    12
    • 匿名
    • 2020年 11月 16日

    中国としてもこれは美味しい案件だと思うぜ
    戦争ふっかけて賠償金までもらえる時代がまた来たんだからな
    対台湾にしろ、対日本にしろ

    • 匿名
    • 2020年 11月 16日

    ロシアに参戦させようとアルメニアからロケット打ち込んだ件の民間賠償じゃないかな。そもそも戦闘地域からしてド田舎で不動産もそれほど無いので5兆円はあり得ない。

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