ウクライナ戦況

HIMARSで再びアントノフスキー橋を攻撃、ロシア軍の輸送遮断に成功

ロシア軍支配下のヘルソン州にあるアントノフスキー橋で再び爆発が発生、HIMARSの発射したロケット弾が橋中央の継ぎ目部分に幾つも穴を開けたため輸送車輌の通行が不能になった。

参考:ВСУ второй раз ударили по мосту в Херсоне, оккупанты хотят его закрыть – росСМИ

貨物を積んだ輸送車輌はノーバ・カホフカの水力発電所を経由する必要があり、ロシア軍への補給は著しく低下中

ヘルソン州はドニエプル川によって西岸地域と東岸地域に分かれており、両地域を繋ぐ車輌が通行可能なルートはアントノフスキー橋とノーバ・カホフカの水力発電所の2箇所(鉄道橋を入れると3ヶ所)しかないため、ここを攻撃され通行不能になると西岸地域のロシア軍は孤立することになる。

出典:GoogleMap 大まかなヘルソン戦線の状況/管理人加工(クリックで拡大可能)

ここを攻撃する手段をウクライナ軍は持ち合わせていなかったため、ロシア軍は両ルートを使用してドニエプル川西岸地域へ安定的にアクセスすることが出来たが、18日~19日にかけてアントノフスキー橋とノーバ・カホフカの水力発電所が攻撃を受けて損傷した。

ただ通行が不能になるほどの損傷を与えることが出来なかったため車輌の通行が維持されていたが、20日に再びHIMARSの発射したロケット弾が橋中央の継ぎ目部分に幾つもの穴を開けたため輸送車輌の通行が不能になったらしい。

ロシア軍占領下のヘルソン当局は「攻撃を受けたアントノフスキー橋を修理するため一時的に交通を制限する」と発表、自動車やバスなどの車輌は橋を利用できるが「貨物を積んだ輸送車輌」はノーバ・カホフカの水力発電所を経由する必要があり、ドニエプル川西岸地域のヘルソン南部に展開するロシア軍への補給は著しく阻害されてるため舟橋の建設を検討しているらしい。

ドニエプル川西岸地域への安定的な物流を確保するため舟橋の建設したところで、ロシア軍支配地域にあるドニエプル川全域がHIMARSの射程範囲内なので短時間でウクライナ軍に潰される可能性が高く、アントノフスキー橋とノーバ・カホフカの水力発電所を継続して攻撃して輸送を妨害すればロシア軍の補給は先細るだろう。

出典:GoogleMap アントノフスキー橋への攻撃が命中した大体の場所/管理人加工

もしロシア軍がアントノフスキー橋によるアクセスを守りたいなら前線を押し上げてHIMARSを80km以上遠ざけるしかなく、兵力の大部分を東部戦線に投入しているロシア軍にその余力があるのかは謎だ。

追記:20日~21日の夜間にヘルソン周辺で爆発と火災が報告されており、HIMARSの攻撃でロシア軍の指揮所か倉庫が破壊された模様

関連記事:ロシア軍の退路遮断に乗り出したウクライナ軍、ドニエプル川に架かる橋を攻撃

 

※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

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コメント

    • 名無しさん
    • 2022年 7月 21日

    HIMARSの打撃力で橋を破壊できるのか?と疑問視されていましたが、
    自動車やバスなどの車輌は橋を利用できるが「貨物を積んだ輸送車輌」は通行不能という、絶妙な塩梅で損傷を与えることに成功しました。
    兵士が橋を渡って逃げることは可能ですが、後方から支援を行うのは困難ということで、狙ってやったのならウクライナ軍は配備されたばかりの装備を相当に熟知していることになります。
    ロシア軍が撤退した後もウクライナが修理・再利用は容易になるので、この程度で済ませるのか、徹底的に破壊するまで攻撃するのか、ウクライナ軍の判断が気になりますね。

    30
      • ともろう
      • 2022年 7月 21日

      ウクライナ軍は橋への攻撃は続けると思います。
      理由はロシア軍が撤退する際は、橋を落とす可能性が高いからです。

      35
      • くらうん
      • 2022年 7月 21日

      橋を落とす前に前線やや後方の集積所を襲いまくって補給拠点をドニエプル川南岸に下げたタイミングを狙ったんでしょうね。こうなると北岸には物資の備蓄が少ないロシア軍が取り残された形になる。

      それにしても、この穴だらけの橋を通る一般車の度胸はすごいな・・。

      1
    • 匿名
    • 2022年 7月 21日

    綺麗に1メートル程度の間隔で複数の箇所に大穴を開けてて
    HIMARSの精度すげえなあ……と思う

    再度の攻撃でこれだけの被害を受けるってことは
    ロシア軍の防空能力では現状対処が難しいってことでもあるから
    反復すれば完全に橋を落とすこともできるんじゃないかねえ
    そこまでやる意思があるかどうかは別問題になるけど

    24
      • G
      • 2022年 7月 21日

      これを見るとウクライナにATACMSが提供されれば、戦線の推移次第ではクリミア大橋の線路をピンポイント攻撃できる可能性も十分ありそうですね
      そういう意味でもこの攻撃は結果以上のプレッシャーをロシア軍へ与えることができたように思えます

      4
    •     
    • 2022年 7月 21日

    航空攻撃力の大きさってのが分かるな
    ww2レベルの大型なレシプロ機でハイマース同等もしくはそれ以上の攻撃力を持ち合わせてしまう
    もちろん命中精度や阻止され易さの違いはあるけど

    軽攻撃機を大量に供給したりはどうなのか?
    前線低空での近接支援ならば活躍の余地はありそうだけど
    スカイレイダーをですね、もう一度

    1
    • t14
    • 2022年 7月 21日

    日本には馴染みませんがHIMARSめちゃくちゃ強いですね

    1
      •  
      • 2022年 7月 21日

      陸自もHIMARSの原型となったM270を99両導入していたけれど、まだあるのかな?

      1
        • ido
        • 2022年 7月 21日

        まだ持ってますね。駐屯地の前に飾ってあったりします。後継が高速滑空弾なんで開発完了するまでは保持するかと。

        8
      • ブルーピーコック
      • 2022年 7月 21日

      昨年、八戸駐屯地において、普天間基地から空輸されたHIMARSと第4対艦ミサイル連隊が実働訓練『RD21』を行っています。
      また、中国への対応を念頭に置いた離島防衛の一環としてHIMARSに長距離対艦ミサイルを搭載して展開する案や、艦上でのHIMARS発射実験(2017年に輸送艦アンカレッジ艦上にて実施し、成功)を行っています。
      C-2で空輸可能かつ、(実証実験は必要でしょうが)輸送艦や船舶を発射台にできるかもしれないHIMARSは、むしろ日本も導入を考えるべきか同等兵器の開発を行うべきだと思います。

      13
        • 通りすがり
        • 2022年 7月 21日

        予算に限りがなければ、ね
        揚陸されてからのミサイルより、航行中の揚陸艦を沈めるミサイルが先だろうさ
        それと航空優勢のための航空機
        ああ、一気に全部開発に取り掛かれるアメリカの軍事予算が羨ましい

        7
          • 無無
          • 2022年 7月 21日

          これが狙い通りならば、HIMARSはびっくりするくらい高性能な兵器ということになる、もちろん最強米軍の組織力がフォローしての成果だろうが
          中国はどんな顔してこのニュースを聞いているだろうか、

          1
    • 2022年 7月 21日

    思ってたより奇麗に着弾点だけ穴が開くんだな。
    だからこそ絶妙な打撃になってるのは凄い。
    いずれはクリミア大橋にも撃ち込むのだろうか。

    9
    • 名無し2
    • 2022年 7月 21日

    ロシア打つ手なし。決まったな

    1
    • NATTO
    • 2022年 7月 21日

    一休さんのトンチみたいな戦果。

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