155mm砲弾の増産は火薬の供給を確保できるかどうかに左右され、BAE Systemsは21日「ニトロセルロースやニトログリセリンを必要としない革命的な新手法を開発した」「BAEは英国防省と輸出のニーズを満たすのに十分な火薬と推進剤を国内で生産できるようになる」と発表した。
参考:Major breakthroughs in UK munitions production
BAEは過去5年間に850万ポンドを投資し「これが次世代の火薬と推進剤の開発における大きな進歩に繋がった」と述べている
西側諸国では冷戦終結による軍備縮小、国防投資の削減、航空戦力に偏った火力投射能力の影響で「伝統的な地上ベースの砲兵戦力」が衰退し、関連システムの開発能力や生産能力もニーズに合わせて縮小してしまったが、ウクライナとロシアの戦争では「航空戦力の接近拒否」が成立して砲兵部隊の投射火力量が戦場を支配し、欧米諸国は砲兵システムや弾薬の増産に乗り出したものの、砲弾や装薬に使用する火薬の主原料=ニトロセルロースやニトログリセリンの供給能力が増産の足を引っ張っている。

出典:U.S. Army Photo by Cpl. Geordan J. Tyquiengco, Operations Group, National Training Center
火薬の生産工場は様々な規制によって新設・増強に時間がかかるため、市場に流通する火薬の取引価格が高騰して砲弾価格を押し上げて問題になっているのだが、BAE Systemsは21日「英国や同盟国のサプライチェーン回復力強化が期待できるエネルギー物質及び推進剤生産における革命的な新手法を開発した」「この新手法は火薬原料の合成に連続フロープロセスを使用し、需要の高いニトロセルロースやニトログリセリンの必要性を推進剤製造から無くすものだ」と発表。
さらに「この技術は比較的小規模な施設で火薬を製造できると実証済みで大規模な火薬工場が不要になる」「革命的な新手法で製造された火薬は小口径火器や大口径弾薬まで幅広い製品に使用できると確認されている」「新手法は火薬製造のランニングコストを削減し、連続フロープロセスは生産時の安全性を向上させることを意図している」「BAEは英国防省と輸出のニーズを満たすのに十分な火薬と推進剤を国内で生産できるようになる」と述べ、今夏に南ウェールズのグラスコード工場(弾殻に爆薬を充填する施設)が稼働すると155mm砲弾の生産能力が16倍に増加するらしい。

出典:U.S. Army Photo, Radford Army Ammunition Plant ラドフォード陸軍弾薬工場
どういった手法なのかは不明だが、BAEは過去5年間に850万ポンドを投資し「これが次世代の火薬と推進剤の開発における大きな進歩に繋がった」と述べている。
因みにRheinmetallの155mm砲弾生産能力は2024年時点で年70万発(スペインや南アフリカの製造拠点)、2026年以降にドイツ、ウクライナ、リトアニアの新工場が稼働を始めると2027年までに年110万発に増加する予定で、欧州全体の砲弾生産能力は2025年中に年200万発を達成する見込みだ。
関連記事:第二次大戦当時の設備で運営される米陸軍弾薬工場、BAEが近代化を発表
関連記事:フランスが火薬生産に5億ユーロを投資、戦争が終わっても世界は元に戻らない
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by Sgt. Victor Everhart, Jr.
それだけ革新的な技術ならロシアや中国は是非とも手に入れるべきだな。
>どういった手法なのかは不明だが
ここが肝心なのに不明…
ストーンヘンジからのオーパーツでも使ったのかな?
威力が落ちる、保存性が非常に悪い、火薬カスや煙の発生が多い、といったようなトレードオフとなるデメリットがありそう
今の発射薬は100年以上前のテクノロジーで、そろそろ刷新があっても良いころ。
農産物頼りではなく、TNTみたいに、化学合成だけで発射薬を安価に大量に作れるということでしょうか?
もしそうなら確かに画期的です。
革新は需要の元起きるもんだからな
現宇露戦争だけで無く、今後の砲兵の重要性も上がったんなら心血注いで開発するだろうし、期待値は高そう
翻訳のせいか、新火薬を作ったのか、既存の製法よりはるかに効率的になったのか、いったいどっちなんだろう?
前者なら黒色火薬に対する無煙火薬、後者なら第二のハーバー・ボッシュ法ということなんだろうけど。「新素材による新火薬はもっと効率的に製造出来ます」という良いとこ取りなのかな。
これがベンチャー会社だったら胡散臭いの一言になるが、BAE自らが言ってるというのがねぇ。
お得意の「英国面」が出ているだけ?
英国面でしょうね。一応紙パルプもニトロセルロースで、そこから火薬作る技術は日本ではとっくの昔に実用量販されてますがそれで綿花不要になった話など聞きませんし。下水汚泥からリン抽出再利用も実用量販ですがリン輸入不要になった話など聞きませんし。そのレベルですらないでしょうイギリスは。
元の記事を読んでみましたが、”novel manufacturing methods”と書いてあったので、後者ですね。
ニトロセルロースやニトログリセリンをもっと安定した物質で運搬保管できて、兵器工場の敷地内で比較的手軽に変換できるようにしたんじゃないかなぁ。
本当ならすごいけれでど、出所がイギリスで詳細不明というのがなあ。
バトルオブブリテンでイギリス軍の夜間迎撃能力が高い理由はレーダー管制だったけど、騙すためにビタミンAやらブルーベリーを大量に食べてウチのパイロットは夜の視力が抜群だから(イギリスジョーク)とやってたからなあ。
真面目に考えたらアンモニア合成のハーバー・ボッシュ法(HB法)みたいなものの火薬版なんですかね?
本当にニトロセルロースが不要になったのならば、中国がシェアの過半を占めるコットンリンターという西側のサプライチェーン上のボトルネックから解放される訳ですかね。
確かに画期的な大発明です。
なんでもあと1年、せめて半年早ければ・・
戦争当事国ではないとはいえ、もう少し動きが早ければいいのに
特許調べると、RDXをフロー合成する英国特許と、RDXに限らないように一般化した国際特許が出てますね。
リンク
リンク
実証プラントを作ったのはRDX合成で、そっちがメインだろうとは思います。国際特許の方ではニトログアニジンも例に含められてはいますが、推進薬の方は将来的にできたらいいなレベルじゃないかな。従来のニトロセルロースを使う推進薬とコストで競争できるようになるかが課題という認識です。
製造業が終わってていい所無しのイギリスではなく、技術も製造基盤もある韓国等が言ってるならある程度は信憑性があるのですが、なんとも。
”需要の高いニトロセルロースやニトログリセリンの
必要性を推進剤製造から無くすものだ”
これは、ダブルベースやトリプルベースと同等威力の推進剤を、
セルロースを使わずに製造する、と言うことなのかな?、と想像します。
銃弾にも、と言っているし。
連続フロープロセスとあるから従来のバッチ式からの変更だろう
ニトロ化では有用な手段でホットなジャンル
危険なニトロ化工程を少量ずつ行えるので安全とされている
大抵の場合人件費は下がるが材料費は上がる
ニトロセルロースやニトログリセリンも要は多価アルコールをニトロ化したものなので何か他のアルコール類が見つかったのかね
本当ならすごいけれど、出所がイギリスで詳細不明という所にまず疑いの方が強い。
バトルオブブリテンでイギリス軍の夜間迎撃能力が高い理由はレーダー管制だったけど、騙すためにビタミンAやらブルーベリーを大量に食べてウチのパイロットは夜の視力が抜群だから(イギリスジョーク)とやってましたし。
ロシアに対する牽制のつもりで針小棒大に言っているだけかも、と正直思ってしまいます。
連続フロープロセスという点が引っ掛かりますなぁ。
多品種の作り分けができず、ライン停止すると仕掛かり品が全部ダメになる。生産量調整できる幅が狭く、ライン増設以外に増産の方法がない。各社敬遠、パイロット工場以外の採用例なく終わる。という未来も想像できるのですが。
大規模工場不要、とのことなので、ラインも小規模なんだから
その辺はそれこそライン単位、工場単位で対応できるんじゃ。
一次大戦でコルダイトに使うワセリンを割るアセトンの製法がイスラエル建国への道筋を付けた逸話を思い出しますね
この種のプロセス系で「画期的な新手法が開発」されるケースって
・別に今までも知られてたけど採算性の関係で誰も商業ベースに載せようと考えなかった
・確かに新しいが既存手法に採算性で負けているので需要が激増でもしない限り日の目を見ない
が大半なんですよね。鉱業や重化学なんかでは投資が重い割に価格競争が厳しいぶんこの傾向が顕著ですが、今回の場合は末端価格が上がっているのでどっちのパターンもあり得ると思います。ただまあ、いくら反応系が軽便に済むとはいえ充填設備や弾殻製造は従来どおりですし、今から着工したとして落成する頃には市場の需要も一巡してましたなんてことにならないといいですね。欧米のセルロース火薬需要って背景に中国の原料輸出制限なんかもあったはずで、少なくとも恒久的なものではない気がしますが…
(とはいえ防衛需要に投資で応えるのは良いことですが…)
この時代に老いぼれを見たら『生き残り』と思え
というゴールデンカムイの名言がありましてw
伝統的プロセスは数多開発された新手法より優れてるから生き残ってるわけで
それに勝つのはなかなか難しいのが現実
まぁニトロ化なんて枯れた技術だし、なんならセルロールより安価な素材って何よという気もするのですが
現実問題火薬類は法規制きつすぎて中々作れないでしょうからそれを迂回する奇策ってカンジでしょうか
思うのですが。
賞味期限切れの無煙火薬やRDX/TNT/ペンスリットの再生はしないのかな。
WW2のドイツのように。物が不足しているのは同じでしょうに。
ニポリトと言う再生爆薬があったと思います。
モノが無いよりははるかに良いとも思うのですが、話は聞こえてきませんね。
ウクライナ紛争の緒戦の頃に、ロシア軍が、ウクライナのミサイルを解体に伴い
発生した多量の推進剤の集積所を爆破して無力化した話はありましたが。
嘘臭いって言おうとしたらすでに言われてましたか
ここのコメ欄はイギリスソースをしっかり疑うのいい姿勢だね
> ウクライナとロシアの戦争では「航空戦力の接近拒否」が成立して砲兵部隊の投射火力量が戦場を支配し、
(本記事より引用)
砲兵戦力の重要性が再認識されたものの、前提に航空戦力の接近拒否があるんですよね。
ウクライナとロシアがともに地対空ミサイルなど対空戦力を充実させていたから発生した事態ではないでしょうか。
欧州諸国が戦うことにでもなったとして、接近拒否を成立させるだけの対空戦力があるのか、用意しようとしているのか、開戦後にでも供与を受けてでも用意できるのか、疑問に感じています。
接近拒否を成立させなければ地上戦力は西側のここ最近のドクトリンで敵側の立場として想定してきたように航空戦力に激しく叩かれることになるかと。
作れるけどコスト高なんかね?
ああそうか
デンプンから作ればいいんだ
構造異性体だもんな
ハーバーボッシュ法は神