ウクライナ戦況

ロシア軍が前進を見せるバフムートの戦い、ウクライナ軍にとって厳しい戦い

両軍が激しく交戦するバフムート周辺の戦いはロシア軍がウクライナ軍の防衛ラインを突破してクルデュミフカを奪取、バフムートの南に位置するクリシェイフカにもロシア軍が迫っており、ワグナー主体の攻撃にロシア軍本体が加わった可能性が高い。

未確認のもの多いが、バフムート周辺の戦いに関する情報はロシア軍にとってポジティブなものばかりだ

バフムート周辺の戦いはクルデュミフカをロシア軍が包囲、ここを守っていたウクライナ軍は何とか包囲を自力で打ち破って自陣地域に合流できたらしいが、クルデュミフカはロシア軍に奪われてしまったらしい。

出典:GoogleMap ドネツク州バフムート周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

ここを奪われるとクリシェイフカが包囲される可能性があり、ウクライナ軍はバフムートとコンスタンチノフカを結ぶ幹線道路「T0504」沿いに防御陣地を構築し始めたという報告(未確認)もある。

さらにバフムート郊外で食い止めていたロシア軍が一部市街地に到達して戦闘が行われているという報告や、ウクライナ軍がバフムートからの撤退準備を始めたという報告もあるが、これは未確認の情報なので真実かどうか不明だが、とにかくバフムート周辺の戦いに関する情報はどれもロシア軍にポジティブなものばかりだ。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

なぜ一気にバフムート周辺の戦況が悪化したのかについて明確な答えはないが、民間軍事会社ワグナー(PMC)主体だった攻撃に「ドニエプル川右岸から撤退したロシア軍本体が加わったため」という説が最も説得力があり、この地域を守るウクライナ軍は厳しい状況に置かれている。

仮にバフムートを失ってもスラビャンスクを直撃されるわけではないが、ここから北に進まれるとスラビャンスクからセベロドネツクに伸びる地域が包囲される可能性があり、オザリアニフカやクルデュミフカから西に進まれると一度もロシア軍の前進を許していないジェルジンスクやアルテーモヴェの背後に回り込めるため、ロシア軍にとっては膠着状態を破る絶好のチャンスだろう。

追記:ウクライナ軍が公式に公開を許可したアントノフスキー橋を守るウクライナ軍の様子を撮影した動画

関連記事:両軍が激しく争うバフムートの戦い、弾薬や物資を無限に消耗するブラックホール
関連記事:ウクライナ軍とロシア軍の戦い、攻勢を止めても敵が戦力を回復するだけ
関連記事:戦場は泥の海、それでもウクライナ軍とロシア軍の戦いは止まらない

 

※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України

ロシア対外情報庁、ポーランドがウクライナ西部を併合するため住民投票を計画前のページ

ウクライナ、待ち望んでいた旧ソ連規格152mm砲弾の連続生産を開始次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    ウクライナにM777、FH70、CAESAR、M109、ハープーンが到着

    ウクライナのレズニコフ国防相は28日、M777、FH70、CAESAR…

  2. ウクライナ戦況

    セベロドネツクを巡る攻防、ロシア軍はルビージュネの大部分を占領

    ロシア軍はルビージュネの大部分を占領、ウクライナ軍の反撃を遮断するため…

  3. ウクライナ戦況

    ウクライナ軍、ロシア軍占領下のヘルソン市まで約18kmの地点に到達

    ウクライナ軍南部司令部は12日「これまでに南部戦線で約500km²の領…

  4. ウクライナ戦況

    ウクライナ軍の無人機が命中か、リペツク州のノボリペツク製鉄所で大きな爆発

    露国営メディアは24日夜「リペツク州のノボリペツク製鉄所で火災が発生し…

  5. ウクライナ戦況

    ウクライナ国防省、ベラルーシ軍の戦車300輌が国境近くに集結済み

    ウクライナ国防省の諜報機関は1日、ロシアはベラルーシの参戦を正当化する…

  6. ウクライナ戦況

    ホルリウカ方面の戦い、ウクライナ軍が1.5kmほど前線の押し上げに成功

    ウクライナ軍はホルリウカ方面のロシア軍陣地を制圧する様子を公開、ロシア…

コメント

    • 774rr
    • 2022年 12月 01日

    HIMARSの射程が地図上で解り易く表記されてる
    謝謝管理人さん

    こうして眺めてるとやっぱりクリミア大橋を落としたくなるね
    南側からの補給ルートを丸々潰せるのは大きい
    もっかい自爆ボートで落とせないかな。。。

    26
    • 2022年 12月 01日

    犬の飯さんの報告では、バフムト周辺の戦いの宇露軍の損害被は凡そ1:10とか。戦略的価値の低いクソ地形に何か月もロシア軍引き付け続けて大量出血強いただけで、ウクライナ側は半ば以上目的果たしてるよね。ここをロシア軍が奪取したとしても、所謂ピュロスの勝利の典型として後世に残るのは確実だなぁ

    24
    • class
    • 2022年 12月 01日

    ISWによるとクレミンナの北北西10kmのチェルボノポピフカをウクライナが落としたので、
    クレミンナがそろそろ落ちそうな気がするのですが
    バフムートを取ってもクレミンナが落ちればただの突出部でしかないんですがね

    11
    • wk21
    • 2022年 12月 01日

    ロシア軍がバフムートを制圧できたとして、膠着状態を破る絶好のチャンスになるのでしょうか?
    ウクライナ軍は縦深陣地を築いているでしょうし、WW1のように更なる膠着状態が待ち構えているだけだと思います。

    13
      • HY
      • 2022年 12月 01日

       ロシアとしては、いやプーチンとしては1ミリでもウクライナでの占領地を広げられればいい。彼の最終目標はあくまでもウクライナ征服だから、時間をかけてでも侵攻を続ける。その間国内の統制を強めて自分はずっと独裁者でいられると思い込んでいる。

      5
    • TKT
    • 2022年 12月 01日

    巨大な岩塩鉱山の地下坑道のあるバフムート市街は、容易に地下要塞化できる場所と言われ、そのためにこの地区のウクライナ軍の防御、抵抗の拠点、中心となり、それ故にまたロシア軍もバフムートの制圧を重視してきたと言われます。

    逆に言えば、ウクライナ軍の方はバフムートを放棄、退却してしまうと、平たんな地形の多いドネツク州ではこれ以上、防御に有利な場所というのはあまりないということです。

    ドニエプル川西岸から移動して、投入されたというロシア軍とは、最精鋭部隊と呼ばれる空挺軍の第76親衛空挺師団のような部隊かもしれません。

    とにかく155㎜砲弾の補給がもうこれ以上できないとか、ウクライナ軍は勘違いしている、などとアメリカ軍が言うことが致命的で、これでは最前線のバフムートで戦うウクライナ兵が一気に戦意を喪失するのも当然です。

    また10万人のウクライナ兵が戦死しているとか、してないとか、よくわかりませんが、タマでも人でも、本当に足りなくなれば補充がいずれ来なくなり、防御線が突破されるのは当然です。損害比10対1というのも本当かどうかはよくわかりません。

    ウクライナ軍の最後の頼みは、自国で生産した152㎜榴弾砲弾ということになるのでしょうか?

    12
      • ああああ
      • 2022年 12月 01日

      これが言うウクライナの崩壊って、結局いつ来るの?

      14
      • 劇場型クローザー
      • 2022年 12月 01日

      こいついっつもウ軍の士気崩壊してんなぁ?
      ロシア軍のが士気終わってるとおもうけど

      12
    • タイヤキ
    • 2022年 12月 01日

    バフムートはいろいろ言われているがまだ要塞化されたバフムートの市街戦していないから、まだ今の段階で陥落の話は時期尚早だと思う。市街戦になってから、地下要塞化しているでしょうから1ヶ月はもつでしょうし、他の地域のロシア軍は劣勢だからこのままだとバフムート市街戦の段階にまだいくとウクライナ軍に逆包囲される構図になる。

    15
    •  
    • 2022年 12月 01日

    塹壕や地下に潜んでるウクライナ兵を掃討出来たかは怪しい感じがする。ただ通り過ぎただけならまた退路を失うことになるけど、前線ウォッチャーの反応が鈍いのでもう少し様子見かな。

    7
    • 2022年 12月 01日

    ロシア国軍は戦果を主張し、プリゴジンは否定してるらしい。
    単なる権力闘争でフカシの可能性もあし、ヘルソンからの精鋭が効いてるのかもしれない。
    乗っけからプーチンの開戦は無いとウソを付かれたからロシア情報イマイチ信用できないな。
    真偽は待ちかな?

    しかし世界2位の大国が格下に騙し討ちなんて、真珠湾攻撃よりダサいしヤバイな。

    3
      • HY
      • 2022年 12月 01日

       ロシアはもう世界第二位じゃない。経済力は韓国よりも下。

       それに真珠湾攻撃は当時最強の兵器と位置付けられていた戦艦を航空機で沈めた画期的な戦法として評価されている。

      13
      • ほい
      • 2022年 12月 01日

      上がってくる情報がフカシの可能性もあるから。

      4
    • mun
    • 2022年 12月 01日

    この地域ではロシア軍は損害を厭わない攻撃を以前から繰り返しています
    守りに有利な地形でウクライナ軍ががっちり守っているため
    ロシア軍の人的損害はとんでもない数だと思われます

    とはいえ多勢に無勢の波状攻撃
    しかもヘルソンから撤退したロシア軍の精鋭がここに投入されるのは明白なため
    ウクライナ軍の守備隊は厳しい戦いを強いられる事になるでしょう

    そろそろ、泥濘と化していた大地が凍結し、戦線が動き出すと思われます
    ロシア軍が切ったカードは見えてきたようです
    ウクライナ軍はどのようなカードを切るのか見えてくるまで予想は難しいですね
    ウクライナ軍もどこかで攻勢をかける準備をしていると思われます

    1
    • けい2020
    • 2022年 12月 02日

    この状況でロシア軍が防御陣地を捨てるメリットが思いつかないんだが
    復数方面で一斉に突破して機動戦するなら分かるんだが、連携した機動戦が出来るようになったのかな?

    防御陣地の無いところにロシア軍が布陣したら、それを撃破するチャンスが生まれれるのでは
    側面からの攻撃に対処しながら、バフムートに進軍するのって機動防御しながら攻撃する必要があるよね

    2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  2. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  3. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  4. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  5. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
PAGE TOP