ウクライナ戦況

BAYKARがTB2を無償提供、ウクライナ人が集めた2,000万ドルは他の支援に

BAYKARはウクライナ人が寄付で集めた2,000万ドルの受け取りを辞退、無償でウクライナにTB2を提供すると発表した。

参考:У украинцев не возьмут 600 миллионов гривень на Байрактары, а отдадут три БПЛА бесплатно

これでBAYKARが無償提供を約束したTB2の数は計4機で、販売価格に換算すると27億円相当になる

リトアニア人はウクライナにTB2を送るため購入資金500万ユーロ(1機分)を集めたが、BAYKARは「我々が無償でTB2を提供するので集めた資金はウクライナへの人道支援に使って下さい」と発表して注目を集めたが、再びBAYKARはウクライナ人がTB2購入のため集めた資金の受け取りを辞退して「無償でTB2を提供する」と発表した。

慈善活動家でもあるTV司会者のセルヒィ・プリトゥラ氏はロシア軍と戦う祖国を助けるため3機分のTB2購入資金をクラウドファンディングで集めるキャンペーンを開始、たった3日間で予定額を上回る2,000万ドル(TB2を4機購入するのに十分な額)を集めることに成功したが、BAYKARは「大人だけなでく子供までも寄付を行いTB2購入資金を集めたことを知り、ウクライナ人が見せた連帯の精神に我々は感銘を受けた。TB2を無償で3機提供するので集めた資金は他の支援に回してほしい」と発表したため再び世界中から注目を集めている。

TB2を計4機無償で提供するBAYKARにも驚かされるが、最初に無償を提供を発表したTB2はまもなくリトアニアに引き渡される予定(リトアニア経由でウクライナに納品)で、発注から引き渡しまでの期間の短さ=約1ヶ月でTB2を届けるという素早さにも驚かされる。

出典:BAYKAR リトアニアに引き渡されるTB2

このような決定は宣伝効果を見込んでのものかもしれないが、それを差し引いてもBAYKARの決定は称賛されるべきだろう。

追記:ロシア軍が強固な防空網を構築してきた東部戦線でTB2を対地攻撃に使用するのは困難かもしれないが、同機が搭載するEO/IRセンサーは最大75km先の目標を識別できるため無人機本来の働き=貴重なISR戦力としてウクライナ軍に貢献できるだろう。

関連記事:BAYKARがウクライナ向けTB2を無償提供、寄付金は人道支援に使って
関連記事:ウクライナへのMQ-1C売却は困難、国防総省が機密漏洩を恐れて反対
関連記事:ウクライナはアフガニスタンではない、MQ-1Cの対地攻撃は通用しない

 

※アイキャッチ画像の出典:BAYKAR

NATO事務総長、現行の4万人から30万人以上に即応部隊を拡張すると発表前のページ

MBDA、HIMARSやM270で使用可能な巡航ミサイルJFS-Mを発表次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    ウクライナ軍の反攻、ムィコラーイウ州のロシア軍をほぼ駆逐

    ウクライナ軍はムィコラーイウ州のロシア軍をほぼ駆逐することに成功、ヘル…

  2. ウクライナ戦況

    譲歩しないプーチン、ウクライナが要求に屈するまで都市の破壊を続ける

    英国のヘイグ元外相は「あと数週間もすればロシアとウクライナが決して合意…

  3. ウクライナ戦況

    ロシア軍がセベロドネツク市の大部分を支配、戦闘は市中心部で発生

    ルハーンシク州政府のロマン・ヴラセンコ氏は31日、ロシア軍がセベロドネ…

  4. ウクライナ戦況

    ウクライナ軍がノヴォロシスク基地を攻撃、ロシア海軍の大型揚陸艦が大破

    ロシア国防省は「ノヴォロシスク海軍基地に対する無人艇の攻撃を撃退した」…

  5. ウクライナ戦況

    バフムートを巡る戦い、ロシア軍が市街地に向けて前進している可能性

    ウクライナ軍とロシア軍の戦いは泥濘んだ土地の影響で全体的に低調なものの…

  6. ウクライナ戦況

    ハルキウで前進するウクライナ軍、スラビャンスクで前進するロシア軍

    69日目に突入したウクライナ軍とロシア軍の戦いは一進一退だが、ウクライ…

コメント

    • A
    • 2022年 6月 28日

    素直にすごいなぁー。
    日本にもこういうスピード感はあってもいいよね。

    6
    • sobrock
    • 2022年 6月 28日

    損して得取れの精神なんでしょうが、なんとも太っ腹
    宣伝効果と注目度は今以上に鰻登りになりますね。

    17
    • そら
    • 2022年 6月 28日

    素晴らしいね。
    そりゃ利益を見込んでの腹積もりも有るでしょうが、浮いたお金で民間人を守る活動ができるし。
    只々賞賛ですわ。

    19
    • 鳥刺
    • 2022年 6月 28日

    この素早いデリバリーも売れて稼動している生産ラインがあればこそ可能な話で、今回の戦争での西側軍需産業の立ち上がりの遅さはもう直近の懸念材料ではありますね。装備の予備保管や弾薬の備蓄を積み増していくしかないのか…

    10
      • ナイトアウル
      • 2022年 6月 28日

       そこに不満があり企業にそれなりの成果出して欲しければ必要な措置を講じれば良いだけの話。予算無制限ですぐにでも環境整えろとか国が動かないなら何も変わらないよ。少なくとも防衛関連企業だけの努力でラインの維持や在庫を持って有事に備えろなら無責任すぎる。
       日本や米軍の艦船建造能力とかの現状は国がそれを望んだからでしか無い。

       ガチの戦争に備えるならレーガン大統領みたいな軍事拡大計画とか進めるしかない。その結果が湾岸戦争時の圧倒的な勝利やその後の米軍戦力のベースになっているのは知られた話。

       装備は保管していても一から作るよりマシなだけで劣化はするし即応体制維持するのかもあるし、弾薬の備蓄に関しては長期間メンテフリーか、しっかり温度とか管理された倉庫で保管する必要がある。それでもいずれは寿命なりメンテが必要なタイミングが来るし、それを覚悟で積み増す気があるか。何にしても力による平和を望むならお金が沢山必要。

    • けい2020
    • 2022年 6月 28日

    いままでトルコ政府というか、エルドアンの無方向外交の影響で色々困ってたから
    今回の事態が、自社のプラス知名度向上の数少ないチャンスと理解してるのでしょう

    TB2もどんどん注文が来る見込みで、最大生産体制にしてそう(そこから更に拡張も進めて

    7
    • Rex
    • 2022年 6月 29日

    この3年で一気に増えたなぁ

    もう「無人機と言えばバイラクタル」といいうとこまで来てるかもしれん。

    費用対効果バツグンだな

    3
      • A
      • 2022年 6月 29日

      一時期ゲーム機と言えば「ニンテンドー」って言われていたけれど今後無人機は「バイラクタル」って言われるようになるかもね。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  2. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  3. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  4. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  5. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
PAGE TOP