欧州関連

導入して後悔するベラルーシ、Su-30SM調達費用は年間国防予算に匹敵

ベラルーシは空軍近代化の一貫としてロシアから戦闘機「Su-30SM」を12機調達中だが、現地メディアを中心に評判が宜しくない。

参考:Су-30СМ взяли небо под охрану. Зачем небольшой Беларуси такой мощный истребитель

12機のSu-30SM調達費用はベラルーシの年間国防予算に匹敵、本当に必要だったのか?

ベラルーシは12機のSu-30SMを調達するために約6億ドル(機体単価約5,000万ドル×12機)もの費用を支払う必要があり、この調達費用はベラルーシの年間国防予算(約7億ドル)に等しい。さらにロシアは同機のライフサイクルコストとして1機あたり約1億8,500万ドル~2億1,000万ドルを要求してくため、最終的にベラルーシがSu-30SMのために負担する額は20億ドルを越えると見られている。

機体価格が5,000万ドルのSu-30SMが何故ここまで高価になるのかには幾つかの要因があるが、その一つに挙げられるのはSu-30SMに搭載されているエンジンの耐久性が短く同機が退役するまでに交換用のエンジンを多く必要とする点だろう。

一般的に西側製戦闘機に搭載されているエンジン寿命は機体寿命よりも長めに設定されているため、予備のエンジンを多く必要としない。しかしSu-30SMに搭載されているエンジン「AL-31FP」の寿命は、35年に設定されている機体よりも先に寿命を迎えるため計6基(購入時に搭載されている2基を含む)のエンジンを必要とする。そのため12機のSu-30SMを運用するためには最低でも72基のエンジンが必要となる。

出典:Alex Beltyukov / CC BY-SA 3.0 ロシア空軍のSU-30SM

さらに現地メディアはSu-30SM導入経緯についても疑問の声を挙げており「小国のベラルーシが何故、このような高価で高性能な戦闘機を購入しなければならないのか理由が見当たらない」と主張した。

当初、ベラルーシは空軍のMiG-29BMを更新するため高性能なSu-30SM導入を決めたのだが、同機を選んだ最大の理由は39機のMiG-29で提供していたエアカバーをSu-30SMならもっと少数で効率的に行える=導入機数が少なくて済むという点を評価したからだ。

しかしSu-30SMは元々長距離迎撃機として開発されたため航続距離が非常に大きく、空対空ミサイル以外にも巡航ミサイルや対地ミサイルなど多彩な攻撃兵器が搭載可能なため周辺諸国に必要以上の脅威を与えることになり、幾つかの国との関係が悪化していると現地メディアは指摘している。

要するに現地メディアは「ロシアに勧められるまま自国の防衛のためSu-30SMを導入してみたが、実際にはロシアの防衛のためだった」と言いたいのだろう。

仮にSu-30SMの最終コスト約20億ドルを35年で割った場合、1年あたりの負担額は約6,000万ドル(約65億円)で、約7億ドル(約750億円)の年間国防予算しかないないベラルーシにとっては重すぎる負担なのかもしれない。

関連記事:ロシア製戦闘機を買うと損をする? SU-30SMを導入したベラルーシの後悔

 

※アイキャッチ画像の出典:Alex Beltyukov / CC BY-SA 3.0 ロシア空軍のSU-30SM

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 7月 23日

    ベラルーシの仮想敵ってどこでしょう。NATOかな?

    • 匿名
    • 2020年 7月 23日

    最初から調達費用に含めないとやってられませんね。
    F414に載せ替えられるものなら載せ替えたいくらいの酷さ。
    無理でしょうけど。

    • 匿名
    • 2020年 7月 23日

    北はバルト三国、南はウクライナ
    モスクワの目と鼻の先にあっては
    どのみちロシア製以外の選択肢も
    ロシアの意向、オススメを無視する選択も無かったのでは?

    1
    • 匿名
    • 2020年 7月 23日

    ここはベラルーシを助けるために日本がSu-30を引き取ってあげようではないか!

    1
      • 匿名
      • 2020年 7月 23日

      我々軍オタには嬉しくても自衛隊が泣きますわ

      4
      • 匿名
      • 2020年 7月 23日

      インドかインドネシア辺りが言ってきそう

      • 匿名
      • 2020年 7月 23日

      インドネシアがオーストリーのタイフーンの代わりに引き取るんじゃね?

      • 匿名
      • 2020年 7月 23日

      せめてアグレッサー専門のPMCたちあげてからいってほしいかな

        • 匿名
        • 2020年 7月 24日

        日本にその手の軍事系民間企業ってできないのかなって思う。
        一極政策は合理的だけど個人や小企業から生まれる細かい多様性とかがキャッチアップできてるように思えないんだよね・・・

    • 匿名
    • 2020年 7月 23日

    スペアエンジンまで想定した運用コストを考えたら、西側機でもコンフォーマルタンクを備えて航続距離を伸ばした単発エンジンのF-16Vの方が長期的なライフコストは安く済むよね。

    • 匿名
    • 2020年 7月 23日

    主力装備品の維持に年間70憶円前後しかかからないならお得だと思う。少数購入したSu-30Smをすべて戦闘待機や訓練用に回すとは思えないので、稼働率を下げればエンジン寿命を十分に伸ばせる。
    ベラルーシは国土が小さいので長距離任務の必要もないし、長期的に見ればmig29の上位互換として十分に機能する。
    なによりベラルーシと言うお国柄を考えれば、ロシアとの良好な関係を維持したほうがお値段以上の効果が見込めるので妥当な決定だと思うぞ。

    • 匿名
    • 2020年 7月 23日

    Su-30が駄目とはいうが、なら結局どの機体なら良かったのだろうか?
    正直中古以外思いつかないのだが・・・

    • 匿名
    • 2020年 7月 23日

    超典型的なロシアの商売。機体は安く、維持費は高く。

    1
      • 匿名
      • 2020年 7月 23日

      プリンターかよ…

      5
        • 匿名
        • 2020年 7月 23日

        プリンターにはシナ製の激安互換インクがあるからね。
        あ!Su-30にもシナ製の互換エンジンが・・・w

          • 匿名
          • 2020年 7月 23日

          どっちも採用したが最後詰まる未来しか見えないのですがそれは…

          1
            • 匿名
            • 2020年 7月 23日

            WS-10Aも採用したのか。
            金や良い伝があるね。

    • 匿名
    • 2020年 7月 23日

    Su-30カッコイイどころか美しいな
    もはや芸術の域

    1
      • 匿名
      • 2020年 7月 23日

      Su-27の系統は、複座がスタイル良いよね。

    • 匿名
    • 2020年 7月 23日

    ロシアのエンジンの寿命が延びたって話はどこへ行った?
    米ロのエンジンのカタログスペックは似ていてもレクサスのNAエンジンとカローラのエンジンをカリカリにターボチューンして出力を上げたようなものか、無理やり出力を上げればどうしても寿命は短くなる。
    アフターバーナーを使えばさらに寿命が縮むから、こんな機体を空自が使って年間1000回もスクランブルをかけたら自衛隊が破産することになりそう。
    各国とも要求性能を満たす機体を追求すると選択肢は少なく高価になるのは悩ましいところ。

    1
    • 匿名
    • 2020年 7月 23日

    購入する前にそんな事分かるだろうに
    バカの極みだな

    1
      • 匿名
      • 2020年 7月 23日

      分かっていて嘆いているんですよ
      外交的に他に選択肢がないので

      1
      • 匿名
      • 2020年 7月 23日

      MIG-29にCFTと増装詰んだだけのほうがやすあがりだったかもね。

      1
    • 匿名
    • 2020年 7月 23日

    経済規模的になんであっても似たり寄ったりだったと思うけど
    まあ政治システム的に国民の評判とかさほど問題ではないのでは
    ほぼ独裁なんだもの

    • 匿名
    • 2020年 7月 23日

    新品購入の場合、もう中国のJF-17を別格にすればロシアの双発戦闘機よりグリペンやF-16Vの方が退役までのライフコストは安いんじゃ無かろうか?

    予算の乏しい小国向けの廉価な機体が無くなってきている。

    1
    • 匿名
    • 2020年 7月 23日

    日本にロシア機を導入しようとかいうやつがいかに頭が悪いかベラルーシさんはわかりやすく教えてくれる

    1
      • 匿名
      • 2020年 7月 23日

      一機当たり高くても250憶円。全てを一括購入して輸入するなら高くても、年単位で購入し運用すれば安くなる。これを政治的・能力的に高いとか値段に見合わないとするなら、日本も同水準の値段のF35ではなくタイフーンを買えばいい。

        • 匿名
        • 2020年 7月 23日

        タイフーンみたいなガラクタ高かろうが安かろうが買うわけねえだろボケナス

        1
        • 匿名
        • 2020年 7月 23日

        一括購入しない方がコストを抑えることができるというのは初耳なんですが、どういった仕組みなんですか?

        あとタイフーンの方が機体価格とライフサイクルコストどちらも高額な上に、整備インフラを一から整えてまで現時点で4.5世代機最弱クラスの機体を買う理由あります?

        • 匿名
        • 2020年 7月 23日

        タイフーンの抱える欠陥ほぼまとまったものが知られているんですが、ご存知ない感じ?
        スパホ買った方がコスト比で倍程度は働きますよほんと。
        F-35のようなチート兵器を前に〇〇の方がいいなんて比較自体できるものはありません。
        F-22ですら同様です。

        • 匿名
        • 2020年 7月 23日

        一機350億以上する産業廃棄物はいらんとです。

        1
    • 匿名
    • 2020年 7月 23日

    F-2を買わないからこうなる

    1
    • 匿名
    • 2020年 7月 23日

    ここで、支那がパクったスホーイが、実はあまり飛行してないって話に。
    稼働率が低いのにはそういう背景があるという、メンテナンスと、機体そのものにも問題が伺える
    やたら数を揃えても、いざ実戦は?なんだよね

    • 匿名
    • 2020年 7月 23日

    F3に求められる性能と似てるんかね
    長大な航続力、武器搭載量

      • 匿名
      • 2020年 7月 23日

      日本が欲しい防空戦闘機とは、長大な航続力と大量の兵器搭載量を持ったステルス化されたSu-27で有るとは、以前から何度も指摘されている所ですね
      長大な国土に広大な排他的経済水域、それに比して少ない航空基地と、広大でインフラの整っていないシベリアを抱えるソビエト/ロシアと条件は似通っていますし。更には主たる防衛正面が北東から南西へと逆転したので、それなりに縦深的に航空基地が配置されていた北東方面よりも尚条件が悪化してしまいましたので

      1
        • 匿名
        • 2020年 7月 24日

        求める戦闘機像とか技術・データの相互補完、って点で言えば
        理想の共同開発パートナーは実はロシアってのもちょいちょい出る話ですね。
        まあ政治的にも人道的にもあり得ないけど。

        1
          • 匿名
          • 2020年 7月 24日

          政治的にも人道的にもあり得ないけど

          そう言っていられる余裕が残ってるのを願う。

            • 匿名
            • 2020年 7月 25日

            余裕が無くなってたとしてもあり得ないですよ。

            米国が敵に回るか日本がロシアに降伏、もしくはロシアが米国に降伏したら可能性があるかもしれない程度の話なので、今論じても意味のないことです。
            色んな人に噛み付いて回るのではなく、仲間内で妄想して楽しんでてください。

            3
          • 匿名
          • 2020年 7月 27日

          ちょっとお花畑すぎる考えだな。安全保障に大義名分なんて無いので、日本は強い若しくは国益に叶う方を選ぶ。その国益が金で買う安全か主権を放棄する服従かの違いしかない。
          今のトランプ政権を見て政治的にあり得ないと考えるのは、トランプが米国に不利益を持たしてまで日本を守ろうと考えているに等しい。彼はビジネスとして安全保障政策を決めており、日本から多額の金が獲れないなら関係白紙化も辞さない。
          それだけアメリカ軍は疲弊しており、これを改善する為の費用をアメリカ国内で捻出するのが難しいから米軍再編に取り組んでいる。いつまでもアメリカに頼っていると多額の出費を払うことになる。そもそも安全保障に人道なんて無い、国益だけだ。

    • 匿名
    • 2020年 7月 23日

    最新型のMig-29なり35を購入した場合、おいくら億ドルだったのでしょうか?
    1対1で更新して39機買うのか、Su-30SMと同じく12機で済ませるのかで大きく変わるでしょうが、39機買う場合はSu-30SM x12機よりもはるかに高額になったと思いますが。同じロシア機なので、大量のエンジンが必要なのは変わりませんし
    なお、ロシア機以外の機体を買う選択肢は無かったでしょう。西側寄り諸国への脅威は減ったかもしれませんが、ロシアへの脅威は増えて国家存亡危機になったでしょうから

    • 匿名
    • 2020年 7月 23日

    主権を全て日本に渡してくれるなら、F-3を購入する権利をあげてもいいんだけどね
    果たしてその覚悟があるかどうか

      • 匿名
      • 2020年 7月 23日

      ベラルーシの主権ですか?むしろいらない気が・・・。
      外交権も取るってことですよ?
      地政学的に泣きたくなる地域ですよ、あそこは。

      2
      •   
      • 2020年 7月 23日

      百年以上前の時代錯誤な感覚すね

      • 匿名
      • 2020年 7月 24日

      冗談だと思うけど、陸続きでも無い国の主権を譲ってもらってどうすると言うのでしょうか?
      ロシアぐらいしか、主権譲渡されて意味ある国が無いと思いますけど。

      1
        • 匿名
        • 2020年 7月 25日

        ベラルーシってその内ロシアに吸収されちゃうって話はありませんでしたっけ?
        なんにしても主権をもらっても嬉しくない場所ですね。
        短距離核をモスクワ向けに配備するなら役に立つかも?

        1
    • 匿名
    • 2020年 7月 23日

    日本の高級和紙で折った紙飛行機でも輸出するのはどうだろう?
    向こうとしては使い捨てできるほど安価だからメンテナンスも不要だし、こちらとしても武器ではないからいくらでも輸出できる
    戦闘機としての性能には劣るが、あの辺の国ならまあ十分だろう
    これこそWIN-WINなのでは

      • 匿名
      • 2020年 7月 23日

      滑ってますよ

      1
      • 匿名
      • 2020年 7月 24日

      >日本の高級和紙で折った神飛行機
      なんだ、F3のことか?

      • 匿名
      • 2020年 7月 26日

      済まない、普通の人間にも理解できる内容を話してくれないか?

      2
    • 匿名
    • 2020年 7月 24日

    日本もアメリカ防衛の為にF-35やNGFに金を出したりせず
    非武装中立を守る事で世界一の平和国家であると主張していくべきでしょ?

    落ち目のアメリカと心中するなんてあまりにも馬鹿げてるわ

      • 匿名
      • 2020年 7月 24日

      そんな左翼思想の塊で日本が守れると思っているのか
      もしかしたら9条バリアー?

      1
      • 2020年 7月 24日

      非武装中立論なんて釣りにもならんわ。

      1
      • 匿名
      • 2020年 7月 24日

      馬鹿げてるのは、貴方の頭。

      • 匿名
      • 2020年 7月 25日

      お、釣りだ釣りだ。

      1
      • 2020年 7月 26日

      再教育が必要だな

      1
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