Baykarは30日「Piaggio Aerospaceの買収手続きが完了した」「世界的な需要に応えるためPiaggioの生産拠点でAkinciとTB2を生産する」と発表、Defense Newsも「Baykarはイタリアに生産拠点を構えることで欧州域内に足場を築いた」と指摘し、この取引はイタリアとトルコにとってメリットしかない。
参考:BAYKAR FINALIZES ACQUISITION OF ITALIAN AVIATION GIANT PIAGGIO
参考:Baykar vows to produce military drones at Piaggio sites in Italy
欧州生産機となるAkinciとTB2がどれだけの顧客を確保できるのか注目される
ドローン戦争と評されるウクライナとロシアの戦いでは「消耗型ドローン」に注目が集まっているものの、依然として再使用が可能な上、武装も携行できるペイロードを活かした多用途性は消耗型ドローンにはない戦術面の柔軟性をもたらすため、中高度を長時間飛行できるMALEタイプのUCAVには大きな需要があり、米国のMQ-9やMQ-1C、イスラエルのHermes900やHeron、トルコのTB2やAkinci、中国のWing LoongシリーズやCHシリーズに対する関心は旺盛だ。

出典:GA-ASI
Leonardoも今年3月「無人機に対する欧州市場のニーズはを取り込むためBaykarと合弁会社を設立する」と、チンゴラーニ氏は第1四半期の業績報告でも「Baykarとの提携が極めて素早く進展している」「既にイタリア国内にはBaykarの生産拠点が3つある」「スピードは資金と同じぐらい重要で、特に無人機分野や成長市場なのに欧州は出遅れている」「この市場の競合他社は製品投入を加速しているため、LeonardoとBaykarも輸出可能な製品を出来るだけ早く欧州市場に投入したい」「6月のパリ航空ショーで正式な合弁会社の契約に署名する」「パリ航空ショーでは幾つかのプロトタイプを公開する予定だ」と言及。
両社は予告通りパリ航空ショーで「無人航空機技術の開発に特化した合弁企業=LBA Systemsを設立する」「Leonardoがもつ認証取得や統合型マルチドメイン技術のノウハウと、Baykarがもつ無人機セグメントを網羅するポートフォリオを統合させることで世界規模のビジネスチャンスを掴むて大きな力になる」と発表し、Baykarは30日「Piaggio Aerospaceの買収手続きが完了した」「我々はP.180 Avantiを改良して世界市場に再投入する」「さらに世界的な需要に応えるためPiaggioの生産拠点でAkinciとTB2を生産する」と発表して注目を集めている。
İtalya’nın 140 yıllık havacılık devi Piaggio Aerospace’in Baykar’a devrini başarıyla tamamladık.
Gururluyuz!
Bu stratejik adımla Türkiye ile İtalya arasındaki iş birliğini güçlendirerek Piaggio Aerospace’in köklü mirasını geleceğe taşıyacağız.
Ülkelerimize hayırlı ve uğurlu… https://t.co/FYGxBxiNOr pic.twitter.com/0EmbB9JRFz
— Haluk Bayraktar (@haluk) June 30, 2025
A milestone for Piaggio Aerospace: @BaykarTech CEO @haluk Bayraktar personally raised the Baykar flag at our Villanova site and met teams in Villanova and Genoa, marking a new chapter of innovation and continuity. #PiaggioAerospace #Baykar pic.twitter.com/UAtlcTyVdz
— Piaggio Aerospace (@PiaggioA) July 1, 2025
Defense Newsも2日「Baykarはイタリアに生産拠点を構えることで欧州域内に足場を築いた」と指摘しており、Leonardoとの提携やPiaggio Aerospaceの買収は欧州再軍備計画=ReArm Europe Planの規制をバイパスするのに役立つ=AkinciとTB2の調達は欧州安全保障行動(SAFE)の融資対象になるという意味で、イタリアにとってもトルコにとってもメリットしかない。
イタリア産業界にはビジネスチャンスを掴むためのUCAVがなく、EU加盟国ではないトルコは欧州再軍備計画の資金(最大8,000億ユーロ)にアクセスするためのパートナーが必要で、トランプ政権の不確実やイスラエル製システムへの批判もLeonardoとBaykarにとっての追い風になる可能性が高く、欧州生産機となるAkinciとTB2がどれだけの顧客を確保できるのか注目される。

出典:Turgis Gaillard
因みにフランス装備総局(DGA)もパリ航空ショーで「最近の激しい紛争を通じて中高度を長時間飛行できる武装可能な無人航空機=UCAVの必要性が浮き彫りになった」「現代戦においてUCAVは重要な役割を果たしている」と述べ、仏企業5社と契約して国内開発に乗り出すことを発表した。
関連記事:現代戦において必要性が浮き彫りになったUCAV、フランスも単独開発を発表
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関連記事:欧州が開発中のEurodrone、日本に続きインドもオブザーバー参加が決定
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※アイキャッチ画像の出典:Baykar
日本はどうしても既に使ってるMQ-9Bが強いけど、テストするにしても「トルコ製」ってのが導入のハードルになってしまっているのなら、これで少しはハードルは下がるのでしょうか
陸自がTB2を試験するって話はどうなったんですかね、一部じゃ海外でもうやったって噂を聞きましたが
TB2は、実戦経験・武器の信頼性を生かして、トルコは上手に販路を積み上げますね。
トルコ(市場拡大・外交への影響)=イタリア(雇用拡大)、明らかにwinwinになるいい契約ですね。
日本は、最近の動向を見ていると追いつける気がしないのですが、少しずつでも学びながら販路を拡大したいところですね…
(2025年6月27日 P1哨戒機の稼働低調、エンジン不具合や部品不足 装備品輸出に影 日経)
(2025年6月29日 全く売れない日本の防衛装備、10年で輸出1件 世界とずれた商慣習 日経)
商慣習の方はこれから頑張っていくとして問題は商品(兵器)の方ですね
大前提として日本を含めて基本的には「お客様専用兵器」を作ってる余裕はないので、自国ファースト、それを国外向けにカスタマイズするのが普通です
とはいえ日本は仮想敵国がロシア(GFP2位)、中国(GFP3位)、北朝鮮(36位)、そして潜在的に韓国(GFP5位)とかいうスーパーヘビー級ばかりなので必然的にハイエンド志向になりがちです
おまけに南北に長く山がちで湿潤な国土と更にガラパゴス化する要因が揃っているので、そもそも『売れる商品』自体を作るのが難しい
幸い、海ではもがみ型のように競争力のある兵器は存在するのでオーストラリアのコンペでは頑張って欲しいものですね
仰る通りですね。
もがみ型オーストラリア販売、素晴らしいチャレンジなので、是非とも経験を積み上げて欲しいですね。
個人的にはもっと海外に輸出してボッコボコに欠点指摘されてガンガン兵器も意識も改善されてほしい
そうでもしないとなかなかお上は動いてくれないし、なんつーか(最近は大分マシになったとはいえ)メーカーさん制服組とばっかり話して現場組と話してくれないんだよね
国産はどうなのでしょうね。
素人は、攻撃とか、偵察に特化した物ではなく、
汎用の輸送型が良いと思うのですが。農業用とかに実績はあるのですし。
以前、載貨500lb(≒277kg)のオクトコプター(外見はクアッドコプター)
などはどうかな?、と書いたこともあります。ジープの代替用として。
他の記事を眺めていると、三菱やIHIで似た方向のものが作られつつあるような。
大重量が扱えれば、運ぶものはなんでも良いでしょうし。
補給品でも、負傷者でも、偵察機材でも、爆弾(!!)でも、と思います。
企業としては採算が取れないとダメなわけで、採算が取れる程売ろうにも、痔国内では無理
必然的に外国との競争だけど、今度は価格競争という問題が立ちはだかる
円安の強みを生かせるかもしれないけど、何時までも円安というわけでもないし…
こんなもん作ったらダメだろう…
UCAVにも大ペイロード+滞空時間というメリットがあるのは事実だが
陸戦の真のゲームチェンジャーはGroup1,2のUAV、特にFPVドローンだ。
防衛企業があくまで大型UCAVの売買に熱心なのは自分たちの金の為だよ。
ウクライナとロシアが実践しているように、FPVドローン程度なら家内工業のように
そこらへんの作業所でも量産できてしまう。
別に特定の技術をもった一部企業に税金を吸い取らせる必要はない…
つまりこれらの存在は既存防衛企業にとって存立の危機だ、これらの重要性を
正しく認識されると自分たちの仕事が無くなってしまう。
だからUCAVの有効性を喧伝してあくまで大型・高価・希少なプラットフォームを
自分たちから買わせ続けたい、こいつらは平時の金儲けしか考えてない。
思想強過ぎでしょ
今さら書くほどでもない気がしますが、実際ウクライナで小型ドローンが活躍するためには、長時間・長距離の哨戒索敵ドローンが重要なようですけれども…