Financial Timesは「英国の国防支出は通常戦力近代化にほぼ影響を及ぼしていない。核開発計画など継続的な契約がある場合は支払いが続いているが、主要契約への資金供給はないに等しい」と指摘、自由民主党も「政府は国防予算不足を解消するため戦時国債を発行すべきだ」と主張した。
参考:Britain has spent little extra on conventional armed forces, experts warn
参考:Davey says war bonds would help to speed up UK defence spending
国を支えるのが義務だと考える人もいるかもしれないが、そうした債券をあらゆる投資と同じように扱う人もいる
英国政府は2025年6月に国防戦略の見直し結果を発表し、スターマー首相は「この報告書が提案した62項目の勧告全てを受け入れて実行に移す」と表明、国防予算を2027年までに2.5%、2035年までに3.0%まで引き上げる予定だったが、NATO加盟国は6月下旬に開催された首脳会談で国防支出を総額5.0%(国防支出3.5%+軍事インフラとしても活用できる分野への投資1.5%)にすることで合意し、現在の国防予算引き上げのタイムラインは2027年までに2.6%、2035年までに3.5%だが、そのための財源をどうやって確保するのかは決まっていない。

出典:UK Ministry of Defence
さらに国防戦略の見直し結果=62項目の勧告を実行に移すと「今後4年間で280億ポンド=約6兆円の不足が生じる」と指摘されており、この報告を受けたスターマー首相は2025年末に予定されていた「国防戦略の見直し結果を反映させた防衛投資計画」の発表を先送りし、英メディアは「発表が2026年3月までずれ込む可能性がある」「どの分野にどれぐらいの投資が見込まれるのかを注視している産業界にとって不確実性を抱えたまま、あと数ヶ月過ごさなければならない」「そもそも2025年6月に国防戦略の見直し結果は現在の英国が置かれた状況を反映していないという懸念もある」と指摘。
国防戦略の見直し作業はトランプ大統領の復帰前に行われたため、米国が西半球を支配するドンロー主義、欧州防衛からの撤退、グリーンランドを武力で奪取するという露骨な脅し、武力行使によるベネズエラ政権の転覆といった安全保障環境の変化を考慮しておらず、英メディアも「もはや英国と米国は同じ戦略をとっているようには見えない」と指摘している。

出典:左 WHITE HOUSE / 右 Taylor Budowich
Financial Timesは「スターマー政権は国防支出増を盛んに喧伝し、国防省も昨年『国防支出が50億ポンド=約1兆円も増加した』と発表したが、軍事アナリストや防衛産業界の関係者らは『この資金の大部分はインフレ対策、核開発計画といった他の要素に吸収され、(通常の国防予算を含む全国防支出は)F-35やAH-64といった一部の優先プログラム以外の通常戦力近代化にほぼ影響を及ぼしていない。軍人の給与引き上げも同様だ。軍は弾薬やスペアパーツが不足しており、最も憂慮すべきは即応能力が劣悪な状態でグリーンランド方面の北極に海軍を派遣した場合、これを長期間維持するのは非常に困難だ』という」と報じた。
昨年の国防予算に追加投入された50億ポンドの内、35億ポンドがアニントンホームズに売却した軍人向け住宅(36,347戸)の買い戻し費用に充当され、残りの予算はアフガニスタン人の移住・支援政策、給与引き上げ、国民保険料の増額、ディエゴ・ガルシア島の英米軍基地をリースバックするための契約に費やされ、軍事アナリストは「アニントンの買収は正しい判断だったが、他にもやるべきことがある以上、国防省はどのような新しい装備品が納入されたのかを説明する義務がある」「核開発計画など継続的な契約がある場合は支払いが続いているが、それ以外の支出は行われていない。主要な契約については何もないに等しい」と指摘。

出典:Airwolfhound from Hertfordshire/CC BY-SA 2.0
英国は2028年~2029年度までに国防予算を実質12%増額する計画を示したが、この増額の大部分は支出見直し期間の終盤に計画されているため、12月に発表された財務省の数値によると2025~2026年度の予算は前年度比で0.5%の実質減となり、軍の主要計画への資金供給が途絶えているため、Leonardoは「陸軍向けの契約(約10億ポンド)を獲得できない場合、所有する英国内最後の軍用ヘリ工場を閉鎖する」と警告している。
英伊日が共同開発する次期戦闘機=GCAPの本格開発に向けた契約締結が遅れているのも国防省が予算を精査しているためで、防衛産業界の関係者らは「潤沢な資金を背景に高額な調達契約を次々と締結するドイツと比較して英国の資金不足は際立っている」と嘆いており、自由民主党のエド・デイビー党首は「トランプ大統領がホワイトハウスにいる限り米国は信用できる同盟国ではない」「そのため国防費について迅速に行動する必要がある」「政府は戦時国債の発行を開始すべきだ」「戦時国債の発行で最大200億ポンド=約4兆円を調達できる」「国民に愛国心を持って我々の国防を支援する機会を与えることにもなる」と主張した。

出典:GlobalCombatAir
政府報道官も「新たな債務手段=資金調達手段については常に検討を続けている」と述べたが「それらは価値に見合うものであり、より広範な財政目標と整合している必要がある」と述べ、投資会社のAJ Bellも「戦時国債は国防費を調達する実績がある手段だが、政府に長期債務の重荷を負わせる可能性がある」「さらに国民は戦時国債を購入する際、銀行に現金を預けた場合よりも高い金利を要求するかもしれない」「国を支えるのが義務だと考える人もいるかもしれないが、そうした債券をあらゆる投資と同じように扱う人もいるだろう」と述べている。
仮に戦時国債を発行して市場から200億ポンドを調達できても、この資金は短期的なニーズ(今後4年間の不足分)しかカバーできないため「国防予算の不足」の根本的な解決策ではなく、ドイツは2025年だけで総額830億ユーロ=約15.1兆円もの調達契約へ資金供給を開始したが、ドイツ議会は「GDP比1.0%を超える国防支出を債務制限外として扱うための憲法改正」と「特別インフラ基金の創設」を承認しているため、2026年から2041年までに計4,002億ユーロ=約72兆円もの資金(通常予算と基金の合計)を防衛装備品の調達に投資する計画だ。

出典:Dirk Vorderstraße/CC BY 2.0
英国とドイツの資金調達能力の差はGDPに占める債務の割合が大きく関係しており、ドイツは債務対GDP比率が60%前半台なので借入額の拡大が容易だが、英国の債務対GDP比率は90%後半で借入額を増やす余地が少なく、英国の国防予算不足は解決の目処がついていない。
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※アイキャッチ画像の出典:UK Ministry of Defence





















>国の債務対GDP比率は90%後半で借入額を増やす余地が少なく、英国の国防予算不足は解決の目処がついていない。
イギリスでこの有様なら日本はマジでどうすんだよ……
>日本: 約251.9% 国税庁 (または236.1% GLOBAL NOTE)
参考までに他の国々の債務対GDP比率
>イタリア: 143.2% 国税庁
>米国: 126.9% 国税庁
>フランス: 110.5% 国税庁
そら『ドイツも金出せ』、と言う話になる
こうしてみると、日本の債務が際立っていますね。
これでは、防衛費を5%になんて増やせませんわ。
日本はGDP比で見た債務残高こそ非常に高いものの、
国債の利率が長期にわたり低水準に抑えられてきたため、
利払い費そのものは相対的に低く抑えられてきました。
しかし最近では金利が急上昇しており、
今後は利払い費が大きく増加する可能性があります。
こうした財政制約を踏まえると、
日本が防衛費をGDP比5%まで引き上げることは、
現実的には極めて困難ではないでしょうか
日本の政府総債務残高・対GDP比は200%を超えスーダンに次ぎ世界第2位なのが知られているところですが、対外債務総額では5位で4.2兆ドルです。(1位米国26.9兆ドル、2位英国9.8兆ドル、3位仏国7.66兆ドル、4位独国6.72兆ドル)
対外債務総額・対GDP比では30位で100%です。(10位英国290%、11位仏国251%、23位独国149%)
対外債務総額・対国民人口だと30位で約3.4万ドルです。(10位英国14.3万ドル、14位仏国11.2万ドル、18位独国8.1万ドル、19位米国8.0万ドル)
日本国債が円建てであること等と併せ、日本政府が多額の借金を持ちながら財政破綻リスクは非常に低いと言われる所以です。
残念ながら財政破綻リスクが低いと見られてたのは、昨年までです。
日本では国全体としては確かに対外資産はあります。
しかし殆どは民間の資金ですので、その資産を国債の償還に使うには、増税なり何らかの法的な根拠が必要ですが。
でも、今の選挙公約を見る限り、どの党もやる気が無いようで、
そのヤバさが認識されてきたため、投資家が動揺して日本売りが起こりました。
米国に助けられて、一旦、パニックは収まりましたが、まだ火種は残ったままです。
そのご指摘には同意しますが、政府が何の手立ても講じないとは思っていません。
リスク管理は必須で楽観視している訳ではありませんが、現時点では過剰に悲観的になることはないのかなと。
そんな日本国債が国際格付機関(S&P、フィッチなど)からAクラス評価なんですがね。
てか国債の約9割が国内に円建てとなると『最後の手段』も使える訳で。基軸通貨としての信頼は地に落ちるけど。
>国債の約9割が国内に円建て
そうですが、現在日本国債の「買い手」の65%は外国人投資家です
近年、外国人投資家の割合が急上昇したため「保有率」ではまだ低いですが
『最後の手段』を使おうとした瞬間に日本国債のジャンク債への格下げと破滅的な円安が起きるかと
財務省が昨年7月に出した国債等の保有者別内訳では海外投資家の保有率は6.6%です。
あなたの言っているそれは保有期間が1年以内の国庫短期証券の話であり、国債は国債でも長期の国債とは分けられています。
いや、2025年通年で期間10年を超える超長期国債は市場での買い付けの半分以上が外国勢によるものだったそうですよ。
外国勢が買うのは国庫短期証券と決まっていたのは過去の話になりつつあるのかもしれません。
最近はNISAで個人の資金の流れが長期で海外に向かう流れが強まってますから、国債を消化する資金の出し手を国内で見つけるのは難しくなっているのではないでしょうか
仰る通りで、日本が色んな拠出拒否・拠出削減する理由に使って欲しいですね。
(外貨準備では)金利の安い円を調達して(国庫短期証券)、金利の高い米ドル債を購入したりしてまして、キャッシュフォローで見ると違う面が見えたりするんですよね。
相殺して純資産(ネット)で、企業会計と同じように考えれば、なかなか上手くやってるなあと感じる面でもあります。
追記です。
キャッシュフロー
>キャッシュフォロー
英国は、本当に苦しいようですね。
富裕層増税により富裕層が流出して、トータルの税収減予想なんか見てると、ポピュリズムに走ると大変だなあと…。
スターマー首相支持率10%台・労働党支持率10%台という支持率が墜落した調査も見かけるわけで、リフォームUKにやはり勢いを感じますね。
>富裕層のロンドン離れが加速し、与党・労働党の看板政策「富裕層課税」が英国経済に最終的には損失をもたらすリスクが明らかになりつつある。
(2025年6月13日 英国で止まらぬ富裕層の転出-労働党の非永住者課税、国庫に逆効果も 税収増狙った「ノンドム」課税措置、最終的に損失が上回る恐れ 2世紀続いた優遇制度-海外資産への相続税課税で流出が加速 bloomberg)
日本が買っていきましょう
サムネの戦車が田んぼにいるコンバインにしか見えなかった……
まだ火曜なのに疲れてるのかな
10年物のGCAP国債を日本の個人向けに発行してくれ。
英国が日本向けのGCAP国債出したら面白すぎですね。
「日露戦争の時、買ってやっただろ!」
って言えますしw。
日本の国債がでっかい額の割に低金利で発行できるのは、日本人ならちゃんと返すという信用あってのことでしょうけど、英国人も100年後も紅茶飲んでフィッシュ&チップス食ってそうな信頼感。
こちらとしても当時の英米の銀行の力には個人では全く及ばないけど「日露戦争の恩と太平洋戦争の不義理を返せる」と喜んで買いたい所
英国債 10年4.5%ですからねえ。
それと欧州全体で起きてる軍拡が欧州全体の国債増発に繋がってて金利が高止まりしてるんでは?って思ってるんですよねえ。
戦争のために借金して、借金で首が回らなくなったら戦争か革命で誤魔化そうとする
欧州史で幾度となく繰り返された光景