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英陸軍がドローン戦争対応の指揮統制システムを導入、攻撃効率は10倍に向上

英陸軍のウォーカー参謀総長は「2030年までに攻撃能力を3倍にする」と述べていたが、英陸軍は「地上戦闘を根本的に変革して攻撃力を10倍まで高めるAsgard digital systemの導入」を発表、参謀総長も「何時間もかかっていた攻撃サイクルが数分で済むようになった」と明かした。

参考:New technology unveiled that will increase British Army lethality
参考:UK’s Project ASGARD plots next steps following live trials in Estonia

ドローン戦争の本質的は「先に発見する能力によって優位性が決まる」という原則をブラッシュアップしただけ

英陸軍参謀総長のローリー・ウォーカー大将は2024年7月「英軍の攻撃能力を3年以内に2倍、2030年までに3倍にする」と述べたが、これは戦力を2倍~3倍に増強するという意味ではなく「AIを組み込んだソフトウェアなど新技術を採用することで戦場認識力の範囲を2倍に拡張し、収集した情報処理速度を高めて判断を下すまでの時間を半分に短縮し、現在の半分の弾薬で影響を及ぼす範囲を2倍に拡張する」「もし英軍の攻撃能力が2倍~3倍になれば陸軍は最低でも3倍以上の規模の敵を破壊できるようになる」「兵士の数だけで攻撃能力が決まると信じている人もいるが、それは時代遅れの考え方だ」と説明。

出典:Oklahoma National Guard photo by Sgt. Elliott Kim

トランプ政権の国防総省でも陸軍戦力構造の大胆な改革=伝統的な武器システムからドローンとAIへの移行に着手、ミンガス副参謀総長も「我々は有人システムから無人システムに、プラットホーム中心からセンサーとネットワークへの接続型に世代交代を進めている最中だ」「我々は決断を下しているところで、必要な戦力構築に今直ぐ取り掛かるのか、装備不足、訓練不足、多くのリスクに晒したままにするかだ」「結局のところ資金が少ないため競合する優先順位のどちらかを選ばなければならない」「そのプレッシャーの中でも我々は近代化を選択している」「これは無料ではなくレガシーな構造を犠牲にすることで手に入れている」と言及。

生まれ変わる陸軍戦力構造の課題は「伝統的な武器システムからドローンとAIへの移行」「1個旅団戦闘団に必要なドローンの数は約1,000機」「FPVドローンで兵士1人の交戦距離をmからkmへ拡張」「ドローンで拡張された認識力に対抗するためカモフラージュ技術と分散の重要視」「徘徊型弾薬や自爆型無人機など低コストな長距離攻撃能力を優遇」「小型無人機を如何に遠距離へ投射するか、各戦場に独立したローカルネットワークを如何に構築するが課題」といったところだが、英国も陸軍改革に同様の方向性を発表した。

出典:Ministry of Defence UK

6月に発表した国防戦略見直し結果は「兵力、装甲部隊、防空、通信、AI、ソフトウェア、長距離兵器、ドローンを組み合わせることで地上ベースの抑止力が10倍強化された陸軍を創設する」と勧告、Timesは「抑止力が10倍強化された陸軍とは20-40-40という新しい戦闘概念のことだ」と説明。

“無人化技術を取り入れた新しい概念の下で戦車など重装備が提供する能力は全体の20%に過ぎず、この能力は戦闘の後半まで最前線から離れた場所に配置される。精密誘導兵器、自爆型無人機、徘徊型弾薬、ドローン、砲弾など使い捨てシステムが提供する能力が40%、残りの40%はMQ-9など使い捨てシステムよりも高価だが消耗も可能=再利用可能な偵察もしくは攻撃可能な無人機が提供する能力だ。チャレンジ3に乗り込む兵士も自爆型無人機を運用する”

出典:British Army

“この大胆な改革はウクライナとロシアの戦いから得られた教訓に基づいており、国防省によればロシア軍はウクライナ軍がドローン攻撃で効率的に装備を破壊するため、戦場で重装備ではなくバイクを使用するようになったと言う。さらにウクライナのザゴロドニュク元国防相はNew York Timesの取材に「最近の前線は10km~30kmの深さを双方がドローンによって制御している」「この深さの霧は完全に晴れている」と語っており、国防戦略の見直しはドローン、自律性、AIに焦点を当てて従来の戦力を強化することが目的だ”

ウクライナとロシアのドローン戦争は表面上「伝統的な攻撃手段がFPVドローンや徘徊型弾薬に取って代わった」と見えるため「ドローンさえ導入すれば最新の戦争に対応できる」と思いがちだが、本質的には「先に発見する能力によって優位性が決まる」という原則が大幅にブラッシュアップされただけで、認識力を拡張して脅威の発見、評価、決定、攻撃のサイクルを短縮することこそドローン戦争の核心であり、英陸軍は21日「地上戦闘のやり方を変革するAsgard digital systemの導入」を発表した。

出典:British Army

Asgard digital systemはデジタルネットワーク、ビックデータ、人工知能、情報能力、火力(砲兵、長距離ミサイル、航空機、消耗型無人機など)を統合し、従来よりも遠距離で脅威を検出して破壊することを目的に開発中の新たな指揮統制システムで、英陸軍は声明の中で「このシステムは10年後までに陸軍の攻撃力を10倍まで高めるだろう」と、ウォーカー大将も「このシステムは我々の攻撃効率を倍増させ、敵の発見、判断、攻撃の実行にかかる時間を飛躍的に短縮させた」「これまで何時間もかかっていた同サイクルを数分で済むようになった」と言及。

英陸軍は今年5月にエストニアで実施した演習でAsgard digital systemのプロトタイプをテストしており、ウォーカー大将も「ウクライナがドンバスでロシア軍を壊滅させた際に使用したのと同じ偵察・攻撃システムを保有している」「このシステムはエストニアに駐留する英陸軍部隊の中核を担っている」と、エストニア駐留旅団のインドレク・シレル少将も「アイデアの1つ過ぎなかったAsgard digital systemの実現速度に感銘を受けている」「このシステムの導入によって旅団の戦闘能力や効率性がどれほど向上したか目の当たりにした」と述べ、Breaking Defensも以下のように報じている。

出典:British Army

“エストニアの演習に投入されたAsgard digital systemの能力は限定的だったものの、それでもサムスン製のスマートフォンを通じてデジタル標的システムのネットワークに接続した兵士の数は800人以上で、標的の補足にはParrot製のクアッドコプター、標的の攻撃にはModini製の徘徊型弾薬が使用され、同演習に参加していたフランス軍やエストニア軍もAsgard digital systemの能力を直接垣間見た。このシステムの関係者らもAsgard digital systemが自律的に目標を検出して識別し、最も適切な武器システムを選択し、戦場に及ぼす効果の仕組みを詳細に説明した”

“前線にもっとも近い地上無人センサーと前線の背後に展開する特殊部隊はAsgard digital systemを通じて情報と標的のデータをリアルタイムで共有し、指揮官はシステムが自律的に選択した攻撃アプローチ(AH-64、F-35、無人地上車輌、徘徊型弾薬、長距離精密火力など)を最終確認した後、標的への攻撃が開始される。このシステムの接続性は戦場のメッシュネットワーク、LEO/GEO衛星通信、様々な無線周波数帯域を組み合わせることでさらに最適化される”

出典:British Army

“同等の能力を保有する敵が反撃する可能性=戦場の双方向性についても「敵がセンサーや攻撃手段を破壊できることは明らかだが、理論的には数が多すぎて全てを阻止することは不可能だ」と述べ、国防省は攻撃手段にドラゴンファイアやドローンの群れを追加することを検討中だ。さらに陸軍は既存のヘリコプターからFPVドローンを戦場に投射するテストも行っている。陸軍の最高技術責任者=デイビッド・ウィリアムズ氏も「Asgard digital systemがエストニア駐留旅団を単なる抑止力からロシア軍と対峙可能な戦略的戦力に格上げした」と指摘した”

“ウィリアムズ氏は「我々は戦い方を改める必要がある」「予定されている次の演習ではAsgard digital systemの構成要素としてAIアルゴリズムをテストする」と明かし、陸軍将来計画の責任者を務めるアレックス・ターナー少将も「非伝統なアプローチの効果はウクライナで生じる被害の80%を占めている」「Asgard digital systemはFPVドローンなどの低コストなデュアルユース技術を活用していく必要がある」と述べ、安価で消耗可能な技術を迅速に提供するため設立されたRapstoneとの協力の重要性も訴えた”

出典:British Army

指揮統制、能力統合、戦場認識力といった類の話を具体的な形で言語化するのは困難で、何をどうしたいのかを理解するには想像力を要求されるものの、この3つの能力はドローン戦争対応への取り組みに不可欠な要素であり、このドローン戦争をより深く理解するためには喰らいついていく必要がある。

4年前に陸上戦の構成要素に占める「無人戦力の割合と存在感」がここまで大きくなると予想できた人間は皆無で、西側諸国の陸上戦力も変革期の真っ只中にあるため「ドローン戦争に対応した将来の戦力構造」を現時点で予想するのは困難だが、一つだけ言えるのはドローン戦争への対応は「効果が証明されたドローンさえ導入すればいい」という簡単なものではなく、より深い部分で無人戦力がもたらす効果を伝統的な戦力や能力に統合する必要があり、この流れに陸自を含む西側諸国の陸軍がついていけるのかどうかは未知数だ。

出典:U.S. Army photo by Sgt. Joskanny Lua

それでも米陸軍と英陸軍は「ドローン戦争に対応した将来の戦力構造」に向けて具体的な動きを見せているため、これを参考にしてドローン戦争に対応してくる国も現れると思われるが、数年前に立案された計画にしがみつく国だけには将来性がない。

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※アイキャッチ画像の出典:British Army 

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コメント

  • コメント (14)

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    • 無印
    • 2025年 7月 23日

    >本質的には「先に発見する能力によって優位性が決まる」という原則が大幅にブラッシュアップされただけ
    先に見つけた者勝ちの世界
    「敵はどこかな?」から「撃破完了」までが数分で終わる事に

    戦車の乗員まで自爆ドローンを操作するって、大変そう

    3
    • 赤帽
    • 2025年 7月 23日

    今回のウクライナ戦争のように軍の進行方向が限定されて戦線が膠着状態になればドローン戦重視も有などでしょうが、そこに至るまでは普通の通常戦なわけで(米軍とイスラエル軍以外はロシア軍のSAMの傘の突破は中々難しいのでしょうが)局地戦ではなくNATO軍対ロシア軍との全面戦争に移行するとドローン戦に戦力を振り過ぎると広い戦線での軍事行動には影響がありますよねとは思いますが、ドイツやポーランドの通常兵力の増強ぶりを見れば前線からと遠く離れた英国と条件が違うのには納得。
    英国経済や職業軍人不足の話を聞けば英軍はそうせざる得ませんね。
    韓国辺りの侵攻方向が限られる半島をめぐる地上戦ですとある程度戦線が膠着すると塹壕戦ならぬドローン戦へ移行なのでしょう。

    6
    • p-tra
    • 2025年 7月 23日

    理屈はその通りだと思うんだけどね。
    小型ドローンが陸戦の何を変えたか、というと戦車を破壊できるとかそんな事じゃ
    なくて全ての部隊に空中観測能力を与えた、つまりOODAループのobserveを超強化
    してしまった事に尽きる。
    結果的に巨大な機甲部隊は一瞬で発見され、位置が露呈すれば一瞬で火力が志向される
    戦場では生き残れなくなり、部隊は分散・小規模化することを強いられていると。
    で、このAsgardというソフトはorient→decideを主に強化してさらにループを加速する
    つもりなんだろう。
    でもこれだけじゃ現代の陸戦の革命とまでは言えないと思う。
    結局戦車突撃が通用しない現代って圧倒的な防御優位環境なんだよね。
    いかなる車両を使っても敵に向かって移動する速度が敵の火力志向より遅いから攻勢を掛ける
    軍隊は歩兵が大量に死ぬことを受け入れるしかない、現代戦は前進することが難しすぎる。
    英軍もこの問題への解決策を掲示できたようには見えないし、大量の歩兵か従来の戦車突撃に
    代わる何かを生み出せてない以上、電撃的な勝利は無理だろうね。

    28
      • 理想はこの翼では届かない
      • 2025年 7月 23日

      行き着く先は空・陸共に無人機の大量投入になるんじゃないですかね

      2
    • a.k
    • 2025年 7月 23日

    翻訳文なのも有ってなんか分かりにくい記事だなあとは思いますが、
    戦場でドローン情報をクローズシステムでは無く「開放型のインターネット化」して、誰にでも情報の発信ができ、それによる司令部と前線部隊での素早い戦場情報の受け取りと情報へのアクセスが出来るようにして、
    司令部からの指揮と、部隊個別の対処ができることによる、阻止火力手段の増加(とりあえず対処できそうな兵器を指示してやらせる)と対処エリアの増大を図る。
    という認識で良いのでしょうか?
    敵にも情報筒抜けにならない?という点はともかく。

    言ってることは納得できますが、なんかこう相変わらずの「英国面」が強く感じられて。

    出来上がったのが、「二人羽織で空中戦をするようなデファイアント戦闘機」的な、チグハグなあちこちで情報と指令と正誤ごちゃまぜの戦果が錯綜するシステムになりそうな気がします。
    エストニアでの小規模な実験では、そこまで難点が見つからなかっただけかもしれません。

    4
      • daishi
      • 2025年 7月 23日

      ロシアがウクライナの携帯ネットワーク網やTelegramを使ってドローン制御、情報収集する事も想定しているように、民間ネットワーク「も」ドローン制御や情報収集に使う、というように読み取りました。
      この場合、こちらの情報をオープンにする必要はないですね。
      西側は通信の秘密が憲法などで決まっているため、Telegramのようなアプリは実現困難ですが、それでも民間ネットワークの利用は大きいと判断します

      2
        • kitty
        • 2025年 7月 23日

        通信の秘密が守られると、Telegramのようなアプリは実現困難というロジックがわからないのですが、TelegramがSignalとかより当局に筒抜けという意味でしょうか?

        4
        • a.k
        • 2025年 7月 23日

        情報収取のみをフルオープンの民間協力型にして命令と戦果報告はクローズなのか、
        指揮司令のみクローズで、それ以外は戦果も含めてオープンなのか、
        よく分からない話(その辺りは機密事項も有るんでしょうけど)です。

        民間情報込みだと、欺瞞情報とオオカミ少年が続出しそうです。

        1
        • daishi
        • 2025年 7月 23日

        すいません。
        「ロシアはTelegram botを使ってシャヘドなどのドローン制御を行っている」という話を「Telegramをインストールしている端末がロシア政府から制御可能なバックドアになっている」と勘違いしていました。

        スマートフォン用アプリやIoTネットワークがドローン制御やセンサーとして使われる可能性があること、欺瞞情報とそれを見抜く能力も必要となるため、情報システムの重要性はさらに上がりそうです。

    • 白髪鬼
    • 2025年 7月 23日

    昔スーパー、ファミコンで機甲師団もののウォーゲームやってましたが、実戦に近い、難易度の高い敵情がわからないモードでは、勝利するためには一にも二にも敵情の把握が絶対の勝利条件でした。
    (攻略戦の場合は自軍の、防衛戦の場合は敵の)進撃路に可能な限り偵察部隊を配置し、接触したら損害が拡大する前に無益な戦いは避けて後退して接触を維持。長距離砲などで敵を叩くとともに、戦車中隊などの強力な部隊を派遣して阻止するか、歩兵部隊による遅滞戦術で時間を稼ぐなど、効率良く敵を叩き、自軍部隊に遊兵を作らないために如何に敵情を把握するかが、作戦上の要求を完遂するための最大のポイントでした。この原則に気づかないプレイヤーは、全く勝てないとぼやいていたのを覚えています。

    勿論、実際の戦場はそれほどシンプルではないでしょうが、ゲームのルールが図上演習をベースにしていることからも、マクロ視点では大きな間違いでは無いと思います。問題は、従来の戦場では自軍の損耗や戦力の分散なしに、縦深の深さときめの細やかな戦場認識ができなかった点で、それを可能とするドローンの有効利用が、戦場における優位を確保する上で極めて重要なことは容易に想像できます。

    4
    •  
    • 2025年 7月 23日

    戦車兵がドローンを操作するより、戦車は移動式中継基地に徹して、ドローンは車外の何処かから操作されて、ドローンが提供する映像を司令部と戦車兵で共有する方が負担減にならないか?

      • のののの
      • 2025年 7月 23日

      全体のワークロードは減るかもしれませんが、戦車の中の人が欲しいピンポイントの情報取得にタイムラグが発生するのでは?狙われる身としては自身で索敵したいでしょう。

      3
        •  
        • 2025年 7月 23日

        それは古き良き車載のセンサー類で索敵で良いのでは?

    • nimo
    • 2025年 7月 23日

    スナイパーや特殊部隊の潜入も厳しいことになってきた

    2

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