英国は地上発射型の長距離攻撃能力を強化するためAS90をRCH155で更新し、M270A1のアップグレードと追加調達を行う予定(26輌→85輌)だったが、イーグル防衛装備担当閣外大臣は「(前政権時代の)国防戦略を見直し中なのでM270の追加取得は決まっていない」と明かした。
参考:Decision on more rocket artillery still pending
各国の決定には事情や米国と距離感に温度差があることを物語っている
欧州では伝統的な地上発射型の長距離攻撃能力(重迫撃砲、榴弾砲、自走砲、多連装ロケットシステム)が再評価され、航空戦力に依存した火力投射能力を地上戦力に戻す動きが加速しており、英国もBAE、Nexter、KMW、Hanwha Aerospaceが入札参加を表明していたAS90後継システムの選定を取りやめ、2024年4月に「ドイツとの防衛協力強化」と「RCH155×116輌調達」を発表。
さらに英国は多連装ロケットシステム=M270A1(運用状態の26輌+保管状態の50輌)の増強も計画しており、スナク政権は2024年5月「国際的なパートナー国から余剰となったM270×16輌を取得し、この内85輌(残りは回収車輌=RRV)をアップグレードしてER-GMLRSに対応させる」と発表したが、イーグル防衛装備担当閣外大臣は12日「(前政権時代の)国防戦略を見直し中なのでM270を追加取得するかどうかは決まっていない」と明かした。
但し、M270プラットホームへの投資は現在も維持されており、米陸軍はM270A1の射撃管制システムとエンジンを新型に換装し、装甲を強化し、PrSM=精密ストライクミサイルに対応したM270A2へのアップグレードを進めている最中で、最終的に保有する全M270(運用状態のM270A1×225輌+退役したM270×160輌=385輌)をM270A2にアップグレードするため、Lockheed Martinが提供するM270運用に必要なサービスは今後も維持される見込みだ。

出典:Lockheed Martin PrSM
英国もPrSMを導入予定なので保有するM270A1のアップグレードはM270A2に準じたものになる可能性が高く、M270を非米国製システムに置き換える大陸の流れに合流しないと思われるが、M270の追加取得分だけは国防戦略の見直しに影響を受けるため流動的としか言いようがない。
因みに英国は多連装ロケットシステムの増強にM270A1のアップグレードと追加調達を選択したが、ポーランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、イタリア、クロアチアはHIMARS(ポーランドのみChunmooも調達)を、デンマーク、オランダ、ドイツ、スペインはPULSを、フランスは独自システムかEuroPULSを選択する可能性が高く、それぞれの事情や米国と距離感に温度差があることを物語っている。
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※アイキャッチ画像の出典:Corporal Max Bryan RLC/OGL v1.0
どうなのでしょう。
MLRSの瞬間火力はHIMARSの2倍ですね。発射体の種類に違いはありません。
その意味で、あまり文句はないのですが・・・。
重さがHIMARSの2倍なのと、移動速度が20km/h遅いのと、
車体幅が若干広い(2.97mと2.4m)のと、一度無力化されると、
損害がHIMARSの2台分というのが問題点?でしょうか。
素人は、以前、MLRSを装輪化したら、と書いたことがあります。
たとえば、チェンタウロ装輪戦車のように、車体の両側にドライブシャフトを
2本通して12×12または12×6として。ステアリングはスキッド式として。
あるいは、もっと簡単に、クリスティ式のチェーンドライブでも良いかな。
などと勝手に思っています。
重いと言っても27tですから、近頃の、重装輪IFVとほぼ同じだし。
車体幅もそれほど大きくない(3m未満)ので、
これが高速道路を100km/hくらいで移動できれば良いかな?、
などと勝手に思っています。
それって、ちょっと古いけど韓国の K239じゃないですか?
UAEやポーランドでも使っていて輸出実績はありますし。
中露の重MLRSは装輪でさらに重く、射程も1クラス上だから出来なくはないですが、戦略機動性が無くなるのをどう見るか。
案を否定するわけではないけれど、素人考えをプロが既に考慮していないとは思えないわけで
実際に採用されていないという事はおそらく何らかのデメリットがある、もしくはそれ以上の何があったのでしょう
前に書いた時に概ね好感された反応だったんでしょうかね。それを踏まえた上でまた発言しているならタイヤのサイズやロードインデックス、装軌→装輪変更に伴う車両特性の変化や費用も踏まえた上で実現性はあると言う話でしょうか?クリスティー方式の軍用車両が近年であるんでしょうか?
さらっと調べた限り、転輪サイズでそんなに荷重に耐えるような普通タイヤはありませんしコンバットタイヤにしたって小さいと思われるようなLAV-25のタイヤサイズですら転輪より何周りもサイズが大きい。資料ひっくり返した数値と画像測定した数値は近似だったので間違いは無いはず。12輪装備したいなら軽やコンパクトカーレベルが履くようなタイヤを付けるしかない。そんな事するなら8輪で普通のコンバットタイヤを履かせる方がまともな選択です。
あくまでもM270を装輪化したいなら既存の底面の下に駆動系通して普通のコンバットタイヤを履かせるのが現実的な選択だと思うし、そうした場合タイヤサイズ含めて全高が20cm以上上がるからバランスがどうなるか微妙。まだ直接戦闘する車両じゃ無いから車高が上がるのはいいとしてそこまでする必要があるんですかね?
M270A1のアップグレードと追加調達を行う予定だったなら、基本遠距離に拠点を構えてロングレンジを基本としてより近距離は機動性に優れるRCH-155に任せる棲み分けが出来ているんでしょう。MLRSに機動性が欲しい、それに加えて装填数も欲しいなら米国のしがらみを切って新型の車両を選択した方が良いでしょう。
装軌車両〜装輪車両への変更はAMX-10がありますね。
AMX10P(14.2t)〜AMX10RC(17t)と変更して、
重さに差ほどの差は無いように思えます。
タイヤはもちろん検討が必要でしょう。
素人意見ですが、シングルタイヤである必要も無いと思います。
おっしゃられるように、新規の検討も一案ですね。
米国のしがらみは、ある程度残るのでは?。
今回の英国の例がそう思えます。
M270はウクライナ戦争まで退役させる国の多い兵器で陸自も退役予定
履帯式で、重量もあり、長距離自走するのにストレスがかかる
そこに不安を感じる国もあるだろう
後継には複数候補があり、遠隔操作で動く無人のAMLやローグファイア、ランチャーがMLRSの2倍で4連ポッドのLVSRMKR18トラックなど予定されているらしい
ただ、ハイテクが過ぎて逆に不安を覚える国も多そうな候補でもあるだろう
大砲なら分かりますがこの手のロケット兵器って専用の発射機、車両って必要なんですかね??保管と発射機を兼ねたコンテナに入ってる訳だし基本弾頭内で完結してるのだから制御するノートPCとか繋ぐだけで撃てるのでは?産廃運ぶトラック(荷台を簡単に下せる)みたいのに積むだけで良いのでは?
高額な費用でアップデートしなくても旧型の車体から降ろして普通のトラックに積めば弾頭の使用期限までは余裕で使えるのでは。色々な弾頭積み替えて撃てます!って積み替えないでそのまま撃てばって思ってしまいます。
既にそういったコンテナ式ミサイルシステムはアメリカのMK 70や、ロシアの「クラブ-K 3M54対艦ミサイル/20フィートコンテナ搭載型」など世界的に開発が進んでいます。スウェーデンのサーブ社も昨年のユーロサトリで発表しており、中には多数のドローンを搭載したラインメタルの『Hero Kamikazeドローン用コンテナ』なんてものも。なんちゅう名前を付けてくれたんじゃ。
陸自は今年度末に20ftコンテナ対応の10トントラックを輸送学校に納入予定で、海自は去年の段階でミサイル搭載能力の無い護衛艦にコンテナ式ミサイルを積む計画や、コンテナ式対艦ミサイルの公募を始めています。
流石にその認識はどうなんでしょう?基本ロケットと収納コンテナで完結しているならゲリラのテクニカルで十分だと思いますが、ゲリラのテクニカルに高性能なPC繋げたとしてHIMARSやMLRSに出来のかですね。
長距離攻撃する軍用プラットフォームは防御能力や耐久性、悪路走破性、天候や車両の傾き発射基の角度等の複合情報を踏まえた上で発射位置に設定するFCS、照準と装填時間に関係する駆動系が強化されています。PC繋げただけならそこまでの精度の射撃が出来るのか、弾頭が幾ら修正してくれるとは言え始まりから理想からはズレていてはまともな運用は難しいでしょう。
軍用だと不意に目標が変っての何秒が惜しいとかあって360度すぐに照準付けて撃てるように早くスムーズに動くような仕様です、そういう事態は考慮せずに最初から狙った所だけ撃つと言うなら幾らでも性能をおとしコストダウンは図れます。
元からGPS/INS情報等の情報を元に長距離を飛翔するような巡航ミサイルとかは多少のずれがあっても誤差レベルでしょうが限られた距離を最短で飛ぶようなロケットだと数に訴えるばら撒きが目的無ければまもとな制御が出来る車両を使う方が無難です。
発射体の射程が100kmとか200kmになってくると
そこまで防御力や悪路踏破性能はいらないと思います
ウクライナでも主に橋とか基地の攻撃に使われてる印象がありますので
>不意に目標が変っての何秒が惜しいとかあって360度すぐに照準付けて
こういった考慮は切ってコストダウンした方が見返りは大きいのでは
記事の趣旨とは異なりますがイギリスは首相が代わるたびに国防戦略の見直しと軍の内部調査をやってるみたいですが方針がかっちり固まるのはいつになるんでしょう?
輸送を考えるなら、ハイマースみたいな方が適してるような。そっちの方がRCH155と足並み合わせられるし。
砂漠や泥濘地みたいな場所を主戦場と考えてるなら装軌式も必要だけど、両方揃えるのは今のイギリスには難しいわな。
ウクライナ派兵の延長戦など、陸軍派兵の前提としても考えてるんでしょうかね?
陸軍増強・兵員増加をやるのかどうかで、イギリスの本気が分かりそうなものですがコロコロ変わるからなあ…
日本の退役してるものは以前からの削減計画と新しいミサイルの要員確保のため?
昨年の読売新聞の記事では
《「多連装ロケットシステム(MLRS)」の部隊には、長射程の 島嶼とうしょ 防衛用高速滑空弾(開発中)を配備し、離島防衛任務に用いることも検討している》
とあるので、それの準備もあるでしょうが、今の日本はクラスター弾や地雷散布弾は使えないのと、装輪車を重視しているのも関係しているかと思います。装軌式の戦闘車両は北海道に集まっていますし。
演習において護衛艦しもきたの上で発射態勢を取った事もある(発射はしてない)のですが、それだけのために残しておくならHIMARSを買うか、サーブとボーイングが試射したような20ftコンテナからのGLSDB発射システムのような物を採用した方が良いと思います。