欧州関連

対潜戦や海上監視にMQ-9BとP-8Aの組み合わせ、カナダ、ドイツ、英国が検討中

MQ-9B SeaGuardianはソノブイ・ディスペンサーポッドや海上監視用レーダーを搭載できるため対潜戦や海上監視への活用が期待され、カナダやドイツはP-8AとMQ-9Bを組み合わせるつもりで、英国でも「MQ-9BをP-8Aに統合することを検討している」と報じられている。

参考:UK looking at using Protector drones alongside P-8

無人機との組み合わせが成熟してくれば海上哨戒機の役割や運用方法にも変化が生じるだろう

Northrop GrummanがRQ-4をベースに開発したMQ-4Cは無人海上哨戒機としてP-8Aの認識力を拡張できると期待され、米国、太平洋、地中海など5つの拠点に68機配備される予定だったが、開発遅延、コスト増、技術的問題に直面して調達数が27機まで削減されてしまい、P-8A導入国もオーストラリアを除いて高価なMQ-4Cに興味を示さず、その代わりに浮上してきたのがMQ-4Cよりも安価なMQ-9の活用だ。

出典:U.S. Navy

GA-ASIは米海軍と共同でMQ-9 Block5とソノブイ・ディスペンサーポッドの組み合わせを2020年11月にテストし、MQ-9はソノブイが受信した水中音響信号をカリフォルニア州ユマ試験場に中継することに成功、GA-ASIは「無人航空機を使用した模擬潜水艦を追跡テストは世界初の試みで今回のテスト成功を受けてMQ-9を活用した対潜能力の開発に弾みがつくだろう」と語り、ハドソン研究所のクラーク氏も対潜戦へのMQ-9活用について絶賛したことがある。

“P-8Aによる対潜戦は運用コストが高価だが、これに無人航空機を活用すればミッション全体のコストを引き下げることが可能になる。高価なP-8Aを使用してソノブイを運ぶ必要性は何処にもなく、複数のMQ-9を使用して広い捜索エリアをカバーできれば高価で貴重なP-8Aを安全な後方に留めて置くことができる”

GA-ASIが開発したソノブイ・ディスペンサーポッドはAサイズのソノブイを最大40個(Gサイズなら80個)収納することができ、MQ-9B SeaGuardianは主翼下にソノブイ・ディスペンサーポッド、胴体下部には海上監視用レーダーも搭載できるため、MQ-9Bが敵潜水艦を発見してもP-8Aの役割は攻撃の実行だけになり、Boeingが開発した「Mk.54を高高度から最大40マイル離れた地点まで運搬可能なHAAWCキット」も導入が本格化している。

米海軍も2025年にMQ-9B SeaGuardianの評価を開始し、カナダも海上哨戒機戦力をP-8A×14機とMQ-9B×11機で構成予定で、ドイツもP-8A導入に向けてMQ-9Bの調達を検討しているが、英ディフェンスメディア=UK Defence Journalも21日「英空軍のProtector-RG Mk1(MQ-9Bの英国バージョン)をP-8Aに統合することを検討している」と報じ、2025年に入ってP-8AとMQ-9Bの組み合わせに関する動きが増えている。

出典:Boeing

因みに中国やトルコも無人機とソノブイ・ディスペンサーポッドの組み合わせを発表しており、無人機との組み合わせが成熟してくれば海上哨戒機の役割や運用方法にも変化が生じるだろう。

関連記事:ドイツ国防相、周回遅れの無人機調達を強化するため約1.7兆円を投資
関連記事:米海軍、対潜魚雷を40マイル先に運搬するHAAWCの初期作戦能力を宣言

 

※アイキャッチ画像の出典:GA-ASI

General Atomics、LRMPをGMLRSやPrSMに組み込む構想を披露前のページ

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コメント

  • コメント (22)

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    • 2025年 10月 21日

    機体コストからしても、フーシ派に対峙した際の地対空ミサイルなどによる損耗具合を鑑みるに余生を対潜哨戒などの任務などに向けるのは時勢に適した傾向に見える

    3
    • 匿名希望
    • 2025年 10月 21日

    これMQ-9Bを23機導入する海上自衛隊も当然の如くP-1との連携を考えてるよね?ね?

    8
      • ライフル
      • 2025年 10月 21日

      僕個人の意見ですが無人機との連携以前にP1みたいな欠陥機はすぐに廃止するべきだと思いますね。

      5
        • 名無し
        • 2025年 10月 21日

        とは言ってもアメリカ製兵器はアメリカから買わないといけないという最大の欠陥があるからなあ

        32
        • 通りすがり
        • 2025年 10月 21日

        P-1を全廃するとなるとおのずと
        ・有人哨戒機の運用能力喪失(無人哨戒機の能力が未知数、攻撃ヘリ全廃騒動の二の舞)
        ・P-8の導入(P-8は稼働率高くない、アメリカに依存、国内産業への影響)
        になるわけで得るものに対して失うものが大きい

        33
      • ファッツ
      • 2025年 10月 21日

      自分で低空降りてソノブイや魚雷撒けたりMADブーム使えるP-1は余り無人機頼らなくて良いからなぁ。サポート役で無人機は欲しいとは海自も思ってるだろうけどMQ−9BはP-3Cと比べてもかなり鈍足だそうだから沿岸部以外だと現場進出に時間掛かり過ぎるのがね…。プレデターシリーズのジェット化試作機にアベンジャーって居たけどアレの哨戒タイプ出て来たら相方として悪く無いだろうけど出て来る気配無いのがね。

      4
        • バーナーキング
        • 2025年 10月 23日

        滞空時間ではMQ-9Bの方が長いし人も乗ってないから有事ともなればローテ組んで24時間哨戒とかするんでしょうから進出時間は問題にならないかと。
        あるいなあからさまに驚異度が高い領域にカナリアとして送り込むとか用途は色々あるので「同じことができない」のは特に問題にはならないと思いますよ。

        2
    • 無印
    • 2025年 10月 21日

    トライトンって最近あまり話を聞かないな~と思ったら、イマイチな子だったのか…

    今はMQ-9Bからソノブイを投下だけど、そのうち魚雷を投下させよう、ってなるのかな

    5
      • 名無し
      • 2025年 10月 23日

      あれは7機だか11機で世界中の海を見て回る計画だそうだから27機で止めたのはそんなにおかしな話でもないかな
      RQ4も50機くらいしか無い高級機だし

      魚雷は航続距離とペイロード的な問題のほうが大きいかな

    •  
    • 2025年 10月 21日

    欠陥があったら即廃止とか米でさえ止めようとしている路線をなぜ日本が突っ走らないといけないのかは置いておくとして、
    無人機の発展は想像以上だし、日本としても対潜戦に関するデータと意見をGAと交換したら、MQ-9Bの対潜戦の更なる能力向上が期待できるんじゃないかな。ただ全てを米国と無人機に全賭けするのは危険に過ぎるので、有人機の哨戒能力(=P-1)維持を今すぐに放棄することもないだろう。無人機性能が向上すれば要件を緩くするだけ。

    21
      • せい
      • 2025年 10月 21日

      P-1に関してはエンジンの改良とパーツ生産のルートをちゃんとして、としか言えないね
      予算の問題は新首相に頑張ってもらおう

      22
        • バーナーキング
        • 2025年 10月 21日

        部品不足も企業の撤退も予算のせいが大きいので今後に期待かな。

        29
      • 匿名希望係
      • 2025年 10月 22日

      操作用のコンソールは地上設置向けでしょうから
      本気で無人機で代替え考えるなら全く足の足らない産業廃棄物になるかと

      なんでつなぎとして地上での運用とかはとりあえずして、国産に走る気がしますね>本気の導入なら
      元々将来的なP-1の代替えは削減時に考えていたみたいですしね。

      電波中継母機としての役割も期待できますからP-1を全廃はないでしょうね。
      あるいは空母から出してヘリ空母ならぬUAV空母を目指すか

      3
    • のののの
    • 2025年 10月 21日

    MQ-9BだとP-8に随伴するには巡航速度も航続距離も足りないと思うけど、どう折り合いをつけるんだろう。

    10
    •  
    • 2025年 10月 21日

    比較的狭いノルウェー海を突破してくる露潜を迎撃する(独英)運用なら航続距離と速度より滞空時間と物量の方が優先度が高いんじゃないかな?想定される進路に無人機を大量に飛ばす形になる。東シナ海、フィリピン海ではそう上手く嵌るかは分からない。

    • フラット
    • 2025年 10月 21日

    無人哨戒機の発展が進んでも日本は有人海上哨戒機は開発し続けるんじゃないでしょうか。
    米製の機体じゃ国産スタンドオフミサイルを運用できませんから。

    10
      • 幽霊
      • 2025年 10月 21日

      米国製の機体で国産兵器を使えるようになるかどうか決まるのは、兵器の統合用費用の支払いと各種データを提供出来るのかにかかっているでしょう。

      2
      • 名前を入力してください
      • 2025年 10月 22日

      スタンドオフミサイルの運用についてですが、
      将来的には無人機からの発射や、地上発射型ミサイルの長射程化といった形に進化していくのではないでしょうか?

    • 名無し
    • 2025年 10月 21日

    てかP-8単体で運用してる国って、
    MADとかどうしてんだろ

    トライトンとの組み合わせで初めて100%の能力発揮なのに

    3
      • のののの
      • 2025年 10月 22日

      米海軍はつけなかったけど元々MAD装備できる設計になってる。
      事実インドのP-8はMADを装備してる。

      最近の旅客機は二点間を経済的に結ぶ能力だけに特化しているから
      737NGベースのP-8では低空・低速で飛ぶリスクが専用設計のP-1に比べてより高くて
      米軍はMAD運用したくなかったんだろうと思う。
      トライトンとの組み合わせも協調運用による能力向上より
      P-8を海面に近づけたくないのほうが先なのではと勘ぐってしまう。

      5
      • 名無し
      • 2025年 10月 23日

      P-3Bからコンピューター支援でソノブイ解析が自動化されたからあまり要らないはずなんだが、なぜかP-3AやP2Vの頃の認識だよな
      というか小さな音でも拾われて、時間かかるMADを飛ばして即雷撃された(逃げる時間を確保できなかった)のがP-3Cショックでは…

    • 匿名希望係
    • 2025年 10月 21日

    もうAWE&Cや固定レーダーサイトからの誘導で良くないかな?>P-8A

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