英国のReaction Enginesが開発した画期的な冷却装置=プリ・クーラーは1,000度に達する高温の空気を1/100秒で-150度Cまで冷却することができ、既存の戦闘機エンジンにも飛躍的な性能向上をもたらすと期待されていたが、同社は資金調達に失敗して経営破綻してしまった。
参考:British aviation pioneer Reaction Engines crashes into administration
参考:UK vows to ‘closely monitor all our supply chains’ after collapse of hypersonic supplier
BAE SystemsとRolls-Royceは同社救済に資金を提供する意志を示さなかった
英国のReaction Enginesが開発した冷却装置=プリ・クーラーは1,000度に達する高温の空気を1/100秒で-150度Cまで冷却することができ「理論上M5.5の極超音速で飛行中でもエンジンの過剰加熱を防ぐ事ができる」と主張、米国防高等研究計画局(DARPA)も2019年に実施した地上テストで「プリ・クーラーは期待通りの性能を発揮した」と発表。
このプリ・クーラーの冷却性能は「既存の戦闘機エンジンにも飛躍的な性能向上をもたらす」と期待され、英国ではRolls-RoyceとReaction Enginesが主導してEJ-200へのプリ・クーラー活用を研究、米空軍研究所(AFRL)もReaction Enginesと共同でプリ・クーラー技術の開発に乗り出し「既存の戦闘機エンジンをM4.0以上で作動させて検証を行う」と述べていたが、英メディアは「潜在的な救済者との協議がまとまらずReaction Enginesが経営破綻した」「管理業務を引き受けたPwCによって従業員の3/4以上が31日に解雇された」と報じており、英国防省もReaction Enginesの破綻に「注意深く監視している」と述べた。
Breaking Defenseも「Reaction Enginesの破綻は英国の極超音速飛行検証機(HVX)プログラムにとって頭痛の種になるだろう」「最大の影響は英国が冷却分野における主導権を失うことだ」と指摘しているが、Reaction Enginesの戦略的株主であるBAE SystemsとRolls-Royceは「同社救済に資金を提供する意志を示さなかった」とも報じられている。
プリ・クーラー技術は今直ぐ戦闘機エンジンの常識を一変させるものではなかったものの、夢のある技術だったためReaction Enginesの倒産は非常に残念だ。
関連記事:米空軍、英Reaction Enginesと共同でプリ・クーラー開発に乗り出す
関連記事:極超音速飛行が第6世代機の必須条件に?革命的な「極超音速エンジン」のテストに成功
※アイキャッチ画像の出典:Rolls-Royce
性能は素晴らしいが、占有するスペースの広さもまた素晴らしかったんでしょうな。
失敗は研究開発ではよくあること
有望と思われた技術が爆死するなど日常茶飯事
コツは一つのテクノロジーに一点掛けせずに複数掛けすることだ
この辺はベンチャーキャピタルの考えがそのまま応用できる
リスクとリターンを踏まえて失敗しても耐えられる分だけ投資する
そういう点では北の大地に半導体メーカー作るために数兆円ぶっこんでるのは狂気の沙汰にしか見えねえっていうね
燃料が液体水素じゃないと使えないんだから既存航空機には縁遠い技術
スペースプレーンや極超音速機とかが現実味を帯びてきたら日の目を見るんじゃないかな
-150度?って思ったがそういう事か。でも液体水素ってだけで軍用には厳しそうだな。空軍基地に巨大な固定目標の弱点を設置する必要が出てくるし。
どう考えても、スペースプレーンとかそっち側の技術な訳で、戦闘機に売り込むのが無茶だったかな。
大型ミサイルならワンチャンあるかなと思いたいのですが、液体水素は軍事向きかと言われると辛い。
ミサイルでマッハ5や6なら液体水素不要、ラムジェットで良いわになるわけだし。
殲99には有用なんじゃね。知らんけど。
5年後くらいに普通に中国が実用化しそう
せっかくの素晴らしい技術なのですから、発電やゴミ焼却など、民生分野で活用出来ないものでしょうか…
燃料で有る水素の不安定さと値段が下がらないと難しいでしょうね。水素での1kwh発電コストは約97円なんですが、コレが石炭だと12.3円、天然ガスだと12.7円、石油だと30〜43円の間なので、幾ら環境に優しいと言っても天然ガスがありますし、せめて石油以下にはしないと難しいですね。
というか別にトータルでのエネルギー効率が良い訳ではないので(冷却にもエネルギー使うし)、民生分野での用途は(宇宙開発とか以外)あんまりないのでは。
なるほど…燃料の水素が高額な上にトータルのエネルギー効率も悪いのですか。
ただ、急速冷凍という技術は魅力的に感じます。
発電などは効率上無理でも、採算度外視の人体冷凍保存とかカツオ漁船とか、何か技術を繋げて活用出来るものがあれば…とも思ってしまいます。そちらはそちらで、私が無知なだけで凄い技術があるのかもしれませんが。
うーん「効率が悪い」というより「効率ではなく瞬発力を求めた技術」というべきかと。
冷却対象も気体限定、応用するとしても融点の低い液体が精一杯でしょうからあまり食品の冷凍には向かないでしょう。
漁船だと帰ってくるまで短くても数時間、どうやって最終排熱先(本来なら液体水素)の温度を維持するのかが問題になりますし。元は数十秒とか長くても十数分程度の大気圏を離脱するまでの推力を維持するための技術ですからね。
中国「へえ・・・」
プリ・クーラー(空気予冷)技術って、液体水素の扱いが大変なのと、霜がどうしてもこびりついちゃうという問題点が未解決だったと思うけど
問題点が全部解決した訳でも無いはずなので、解決の目処が立っていない技術に大金を投資するのはなかなか難しく、資金調達に失敗というのも仕方ない話だとは思う
まあ、優先順位の問題だから仕方ないけど
新規の技術はどんなものでも10年くらいはみないと成否は分からないからね
某無音推進装置みたいに「これはプリクーラーだ、我々も開発したが失敗した。中国が開発したというのか・・・?!」ってなったら面白いんだけど
こういうのって大企業でゆっくり研究した方がいいでしょ
ただ、そうすると成功した時に成果物が企業のものになるから
それ嫌ってアイデア持ってる人間が起業するんだろうけど
黙って長期間金出してくれる投資家はいないのよね……
イーロンみたいに詐欺師と紙一重の話術持ってて金引っ張ってこれる人間でもなきゃさ
ベンチャー乱立させて成功したのだけ拾い上げるような研究開発してると
小粒なドローン技術みたいなのは発展しても
人類全体に寄与するような大きな技術開発が停滞しちゃう気がするなぁ…
その為に国立だったり国際だったりの公的な研究所や研究施設があると思いますが…
当然、三菱が買い取るのでしょうね
これはイギリス政府にもメリットがあるので納得する
ほぼ瞬間に1000度以上冷やすとか、冷媒の液水の体積が一気に800倍になるんかぁ?それでエネルギーの等価変換出来てるんか。なんかメチャクチャな仕組みやな。知らんけど。
他はさておき液水が熱で気化して体積約800倍になるのは極々当たり前では…
冷媒が円筒形に並べられた細い管の中を循環して、そこに触れた1000度の空気の熱エネルギーを冷媒が受けたらた、気化して?増えた冷媒の体積はどうなるのかな?って話で。エアコンみたいに何処かで放熱しないと、冷媒が液体に戻らないのでは?とか思ったのよ。冷媒の冷却も1/100秒でするの?とか寿限無。
例えばH2のエンジンの燃料は、噴射ノズルの冷却に使った後に燃料として燃やすから、液体から気体に代わる事はむしろ望むところだったりするけど。
プリクーラーでも液水は冷媒ではなくて排熱先にして燃料ですよ。
ノズルではなく吸気を冷やす、ってだけ。
SABREエンジンみたいなスペースプレーンにするためのエンジンだろ?
見通し立たなかったんだな