クロアチアはラファール F3Rを12機導入してセルビアに差を付けたが、セルビアも2029年までにラファール F4を12機受け取る予定で、クロアチアはラファール F3RをF4にアップグレードするため約1億1,222万ユーロの拠出を承認した。このあたりはクロアチアにとって負けられない戦いなのだろう。
クロアチアがどこまでF4.1にアップグレードするのか不明なので、セルビアのF4.2と能力的な対称性を確保できるのかは分からない
NATOに加盟したクロアチアにとって老朽化したMiG-21bisD/UMDの更新は急務であり、アンドレイ・プレンコビッチ首相は2018年3月「提出された全ての提案を分析した結果、イスラエルの提案(4.1億ユーロに中古F-16C/D バラク×12機、シミュレーター、初期兵装、訓練、3年程度の支援などが含まれた包括的なパッケージ)が最も有利だと判断した」「この決定は我々の政治的意思を示すとともに米国やイスラエルとの協力関係の強化を意味する」と表明した。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Kirby Turbak
米国が提案したF-16C/D Block70/72(マーケティング上の名称はF-16V)は金額で折り合いがつかず、米国はギリシャが提案した中古F-16C/D Block30(12機で約1.54億ドル)を押していたものの「旧式なので取得後にアップグレードが必要になる」と判断され、クロアチアはF-16C/D Block30のレーダー、電子戦装置、アビオニクスなどがイスラエル製に変更されているF-16C バラクを選んだのだが、米議会はThird Party Transfer=第三者移転の承認条件として「F-16C/D バラクをオリジナルのBlock30に戻せ」と要求。
これに対してクロアチアは「イスラエルが改修した機体=F-16C/D バラクを受け取れないなら合意を無効化する」と表明し、イスラエルのネタニヤフ首相はTPT承認条件緩和を働きかけたものの徒労に終わり、クロアチアへのF-16C/D バラク売却は白紙化された。

出典:MORH: Ministarstvo obrane Republike Hrvatske
そのためクロアチアは戦闘機入札をやり直すことになり、米国、フランス、スウェーデン、イタリア、イスラエル、ギリシャ、ノルウェーの7ヶ国が入札に応じる構えだったが、最終的に入札に参加したのは米国=F-16V、フランス=中古ラファール F3R、スウェーデン=グリペンC/Dで、クロアチアは中古ラファール F3Rを選択した。
プレンコビッチ首相は2021年5月「これで我が国に対する如何なる野心も退けることが可能になった」と発言し、これに反応したセルビアのアレクサンダル・ブチッチ大統領は「連中は自分たちが強くなったかのように思っているが、セルビアにもうすぐ何が到着するのかを知らない。我々は彼らが発表したものよりずっと早く手に入れるだろう」と述べ、セルビアはロシアからSu-30SMを導入するのではないかと予想されていたが、ネボイシャ・ステファノヴィッチ国防相は2021年12月「戦闘機戦力の近代化のためラファール導入を大統領に提案した」と明かし周囲を驚かせている。
Je garde un souvenir ému de ma visite il y a cinq ans en Serbie. Dans un monde où tout est en bascule, il est bon d’avoir des amis solides et des constances historiques. Nous les partageons. Bonheur sincère de revenir. https://t.co/AFGwdLMRm8
— Emmanuel Macron (@EmmanuelMacron) August 29, 2024
この時点で戦闘機戦力の近代化に関する完全な評価は終わっておらず、セルビアがラファールとSu-30SMのどちらを選択するのか流動的だったが、2022年2月にウクライナ戦争が勃発して状況が完全に変わってしまい、セルビア大統領府は2024年4月「フランス訪問中のブチッチ大統領がダッソーと協議してラファール購入で合意した」と発表、ブチッチ大統領とマクロン大統領は2024年8月に総額27億ユーロの契約に署名して2029年までにラファール F4を12機受け取ることになった。
ここからが今回の本題なのだが、クロアチア政府と国防省は9月4日の会合で軍近代化に関する幾つかの決定を下し、この中には「2025年12月に署名した意向表明書に基づくアップグレードの実行を決定」も含まれており、クロアチアは12機のラファール F3RをF4にアップグレードするため約1億1,222万ユーロ(VAT込み)の拠出を承認した。

出典:MORH: Ministarstvo obrane Republike Hrvatske
ラファール F4規格に「F4.1」と「F4.2」が存在し、F3RからF4.1へのアップグレードは新型の衛星通信、戦術データリンク、ソフトウェア無線、新型通信サーバーの導入、RBE2-AESAの空対地モード強化、IRSTの低シグネチャ目標に対する探知能力強化、電子戦システムの性能強化、ヘルメット装着型ディスプレイの統合、MICA NGやAASM 1000の運用能力付与、ビッグデータやAIを活用した機体整備の導入などで、一般的には「F3Rとは次元が異なる共同交戦能力を手に入れ、ミーティアをネットワーク越しに発射することもできる」と評価されるが、既存機からのアップグレードなのでF4規格で予定している能力の一部に制限がつく。
新造されるラファール F4はF4.2になり、生産段階から構造的改良が取り入れられるため2030年代に予定されているF5規格へのアップグレードが保証されており、クロアチアのラファールはF3RからF4.1にアップグレードされるという意味だが、クロアチア政府が具体的に公表したアップグレードの範囲は「追加の探知能力=F4規格のIRST」で、今回のアップグレードにはレーダー関連は含まれないとの情報もあるためF4.1へのフルアップグレードにはならない見込みだ。

出典:Armée de l’Air et de l’Espace
今回の決定はセルビアが導入するラファール F4.2仕様への対抗だと思われるが、クロアチアがどこまでF4.1にアップグレードするのか不明なので能力的な対称性を確保できるのかは分からないものの、このあたりはクロアチアとセルビアの負けられない戦いなのだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:MORH: Ministarstvo obrane Republike Hrvatske





















ダッソーだけがホクホクと。最近のラファールのセールス見るとFCASでダッソーが強気だったのもよくわかります。
これだけ機能豊富で今後もアップデートが続くとなると、ラファールの次はじっくり開発すれば良いですし、時間がかかってもラファールの更新で大抵の状況に対応できそうですからね。
例えばアップデートされていないF-22よりも無人機との連携や衛星を使ったデータリンク、長射程ミサイルの利用で優位に立てるなんて普通にあり得るでしょうし。
仲良くケンカしなって感じでほっこりする
大抵の戦闘機はAESAレーダーに載せ替えるだけで相当戦えるのでは説
ラファール対ラファールとかにならなきゃいいんですが