欧州関連

デンマーク、ウクライナ人パイロットへのF-16操縦訓練を年内一杯で終了

Politicoは今月5日「ウクライナ人パイロットの養成がF-16の提供数に追いついていない」「デンマークは来年からウクライナ人パイロットの訓練に参加しなくなる」と報じていたが、デンマークのポールセン国防相も「年内一杯でF-16の操縦訓練を中止する」と発表した。

参考:Overgang til F-35-fly får Danmark til at stoppe træning af ukrainske piloter ved årets udgang

ウクライナへのF-16提供は当初から年1個飛行隊分のペースだったのかもしれない

Politicoは今月5日「ウクライナが現在の訓練ペースで1個飛行隊分の編成を終えるのは2025年末頃になり、F-16の提供数に対してパイロット養成が追いついていない」「デンマーク空軍もF-35Aへの移行が迫っているため2025年にF-16の訓練施設を閉鎖する予定で、ウクライナ人パイロットへの訓練が提供出来なくなる」と言及していたが、デンマークのポールセン国防相も24日「2024年以降にウクライナ人パイロットの訓練が出来なくなる」と明かした。

出典:Lockheed Martin

ポールセン国防相は「F-16の訓練を提供しているスクリュズストロプ空軍基地の能力はF-35Aの訓練に切り替えるため、ウクライナ人パイロットへの訓練提供は2024年末までになる。この訓練プログラムが終了するまでに約20人のウクライナ人パイロットが訓練を終える予定だ。デンマークは自国での訓練提供が終了してもウクライナ人パイロットの訓練に貢献していくが、貢献の具体的な内容(ルーマニアで始まる訓練プロセスに参加するかどうか)は決まっていない」と言及。

ルーマニア南部のフェテシュティ空軍基地に2023年11月設立されたF-16訓練センターはルーマニア(施設・資金提供)、オランダ(F-16D提供)、民間の請負業者(Lockheed Martinの子会社=Daedalus Aviation、Airbusの子会社=ILIAS Solutions、Draken Internationalによる運営)の枠組みで運営され、最終的にルーマニア人パイロット以外の受け入れも予定されており、ここでウクライナ人パイロット8名が訓練を受けることになっているものの、ルーマニア人パイロットや資金を出してパイロットを送り込むNATO加盟国との契約分があるため「ウクライナ人パイロットの追加受け入れ」は難しいらしい。

出典:Romanian Air Force F-16訓練センターで説明を受けるルーマニア空軍のパイロット

ウクライナ人パイロットを受け入れている米国も状況(モリス空軍州兵基地、ルーク空軍基地、サンアントニオ統合基地)は同じで、ウクライナに提供できる年内の訓練機会は4枠しか残っておらず、関係者の話によれば2024年末まで操縦訓練を終えるウクライナ人パイロットの数は約20名で、この数字は「米国とデンマークを合わせたものなのか」「米国のみなのか」不明だが、仮に後者なら「米国20名」と「デンマーク20名」となるため、2024年末までに「20機で編成される1個飛行隊分のパイロット供給(40名)が間に合う格好だ。

但し、現在の訓練ペースだと1個飛行隊分のパイロット供給に1年かかるため「F-16の提供数に対してパイロット養成が追いついていない」という状況に変わりはないが、そもそもオランダ(42機)、デンマーク(19機)、ノルウェー(22機)、ベルギー(30機)が提供する機体は段階的に提供されるため、ウクライナへのF-16提供は当初から年1個飛行隊分のペースだったのかもしれない。

関連記事:F-16は魔法の杖ではない、2025年まで大きな期待は抱かない方がいい
関連記事:ウクライナのF-16導入、パイロット養成が機体の提供数に追いついていない
関連記事:デンマーク外相、F-16によるロシア領内の攻撃は戦争ルールの範囲内
関連記事:ベルギーがウクライナへのF-16提供を表明、2028年までに30機提供

 

※アイキャッチ画像の出典:PRESIDENT OF UKRAINE

侵攻852日目、ロシア軍がシヴェルシク方面とドネツク西郊外方面で前進前のページ

対戦車ミサイルの需要が大きいインド、米国がJavelinの共同生産を提案次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    英国軍、バイラクタルTB2の成功を受けて安価なUAV調達を検討

    英国軍はトルコ製UAV「バイラクタルTB2」の成功を受けて、安価で武装…

  2. 欧州関連

    アゼルバイジャンがアルメニア領を占領した理由、停戦協定を破り捨てるための口実探しか?

    アゼルバイジャンがアルメニア領セブ湖周辺に軍を派遣して占拠した狙いは領…

  3. 欧州関連

    利害が一致した英国とサウジ、戦闘機分野における協力関係の強化を約束

    英国防省は「FCASプログラムに参加(研究開発・共同生産)する」という…

  4. 欧州関連

    ドイツ政府、国内から核兵器撤去とF/A-18E/F購入撤回を迫られる

    ドイツのカレンバウアー国防相が独断で戦闘機F/A-18E/F購入の意思…

  5. 欧州関連

    英国、テンペスト開発に不可欠なデジタル・エンジニアリングの基盤構築に382億円を投資

    英国防省は29日、テンペストと呼ばれている未来戦闘航空システム(Fut…

  6. 欧州関連

    ウクライナ軍の反攻作戦、互いに演じる役も台本の内容も分かっている戦い

    英国のTimes紙は29日「ウクライナもロシアも選択の余地がなく、ウク…

コメント

    • たむごん
    • 2024年 6月 25日

    ウクライナに、F16本体・パイロット・整備担当者・メンテナンス部品、2024年末にどの程度揃うのかでしょうね。

    2025年6月末・2025年12月末と、時間を経るに従ってどの程度増えるのか・戦闘によって消耗していくのか、この点も注目したいと思います。

    14
    • Whiskey Dick
    • 2024年 6月 25日

    F16を廃止する以前にF35の戦力化は完了しているのか?

    19
    • 無名
    • 2024年 6月 25日

    F35の訓練にウクライナ人を参加させて、F16よりF35を操縦できるパイロットの方が多いからF35を供与って流れになれば良いんですが。

    1
      • マミー
      • 2024年 6月 25日

      撃墜されて捕獲されたら西側大問題になるから不可能でしょ

      48
      • cosine
      • 2024年 6月 25日

      本邦のF35Aがぽちゃんした時のことをお忘れか

      15
      • ふむ
      • 2024年 6月 25日

      大量投入して手早く圧殺できるならまだしも、今の戦況で投入してもロシアにF35に適応する為の情報と時間を与えるような物では

      37
      • jimama
      • 2024年 6月 26日

      F35の無敵の戦闘機()っていうメッキが剥がれたら今の米軍、旧世代機しかないことになるからそれはないと思います
      あと整備体制その他が万全のはずの本国でさえ稼働率最悪だから、ウクライナみたいな戦場に送ったらそれこそ一度降りたら二度と飛び立てないということになりかねない(戦場に送れない戦闘機とは)

      19
        • かに
        • 2024年 6月 26日

        そうだね、su-57みたいに温存するのが一番良い戦略かもしれないね

        4
      • nachteule
      • 2024年 6月 26日

       そのFー35はどの型か知らないけど、どこが提供してくれてアメリカなりが提供に許可出してくれるのかな?なんかステルス機渡すべきって人がちらほらいるけど、渡してどれだけの寄与する目論見してるんだろう。

       Fー35なんて通勤だったかでフェラーリ使うような物とか言われるような高コスト機体でウクライナが責任持って全ての負担負いますなら分かるんだけどそうじゃないよね?Fー16ですらコストで物議醸したのにそれ以上の機体を渡せれば良いとか意味が分からない。

       Fー16は世界的なベストセラーで長く使われているから提供機体も多いし、パイロットや整備に関わる訓練も関係者なんて世界中にゴマンといてまだハードルは低い。
       
       世界が渡した物はどんな背景があるか考えた方がいいよ。古い物であるとか高性能武器だが提供国の意思次第で渡せる物、世界的に普及して居るので数が有りサポートがやり易いとか色々あるがFー−5にそれが当てはまるのか。

      7
        • kitty
        • 2024年 6月 26日

        F-22に本土防衛させる米国もですが、アラート任務にF-35使わざるを得ないわーくにも相当…。

        2
    • イーロンマスク
    • 2024年 6月 25日

    エリア88かフライングタイガースになる気しかしないんよな

    3
    • 名無し
    • 2024年 6月 25日

    実質的に生け贄じゃないか

    9
    • POW
    • 2024年 6月 25日

    意外とF-16用操縦者の養成員枠が少ないとは意外でした。
    ウクライナ人パイロットが英会話を始めからできたのでしたら又条件も変わっていたのでしょうね。
    英国で初等教育から始めた人たちもF-16にたどり着くまでどれくらいかかるのかもありますね。

    6
      • 名無し
      • 2024年 6月 26日

      土産物売るレベルなら、いくらでも喋れる奴いるんでしょうが、専門技術用語の極致ですからね。。。母語でも理解出来んやついっぱいいるだろう。

      7
    • 鼻毛
    • 2024年 6月 26日

    エースコンバットだと新しい機体が次々に手に入りますが現実は機種転換訓練とかあって大変ですね

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  2. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  3. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  4. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  5. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
PAGE TOP