デンマークでも複数の空港や軍事施設上空で小型ドローンが目撃されたため対ドローンシステムの必要性が急浮上し、デンマーク公共放送は「軍はイスラエル製防空システム=Barak MXに関心を寄せている」と報じたが、国防省は24日「Barak MXの調達は行わない」と発表した。
参考:Israelsk luftforsvar er igen på Forsvarets radar: Kan leveres hurtigt og zappe droner
参考:Forligskreds enige om ikke at gå videre med israelsk system
ソフトキル・ソリューションの正体はBarak MXの構成要素ではなく地上配備型電子戦システムのScorpius
デンマークは冷戦集結後の安全保障環境=テロとの戦いや海外作戦に対応するため戦力構造の再編を行い、この過程で地上配備型防空システム=Hawk PhaseIIを廃止してしまったが、ウクライナ侵攻が勃発して安全保障環境が急変し、デンマーク国防省は6月10日「本格的な地上配備型防空システムを取得するまでの短期的な解決策としてIRIS-TとVL-MICAを購入する」と、7月4日「本格的な地上配備型防空システムを取得するまでの暫定的な能力としてNASAMSをリース契約で取得する」と発表。
デンマーク国防省が検討している地上配備型防空システムには長距離防空システムも含まれており、デンマークは9月12日「長距離防空システムにパトリオットシステムではなくSAMP/Tを選択した」と発表したが、欧州各地で正体不明の小型ドローンが現れ、デンマークでも複数の空港や軍事施設上空で小型ドローンが目撃されたため対ドローンシステムの必要性が急浮上し、デンマーク公共放送のDRは1日「依然として軍はイスラエル製防空システム=Barak MXに関心を寄せている」と報じた。
“イスラエル航空宇宙産業(IAI)がデンマークに提案しているBarak MXにはソフトキル・ソリューションが組み込まれており、これは電子攻撃でドローンを無力化する特殊な兵器システムで、これは巨額の費用を投じて購入するSAMP/Tには備わっていない機能だ。IAIは「SAMP/Tよりも2年早くBarak MXを納入できる」と説明していたものの、長距離防空システムの選定過程で候補から除外されてしまった。しかしドローンの脅威が浮上したためBarak MXの短納期とソフトキル機能が国防省の関心を集めている”
DRの報道によって「最も早く入手可能な対ドローンシステムはBarak MXだ」という認識が高まったものの、このソフトキル・ソリューションはBarak MXの構成要素ではなく地上配備型電子戦システム=Scorpiusのことで「Barak MXに統合して使用しなければならない」というものでもなく、国防省は24日「Barak MXの調達は行わない」と発表した。
因みに米軍のマコンヴィル大将は「高度な防空システムのことを『隙間のない壁のようにイメージして脅威はこれをすり抜けることは出来ない』と考えるかもしれないが、これを回避する方法もあるし、突破する戦術もある」と述べたことがあり、パトリオットシステム、SAMP/T、Barak MX、S-400などは100km以上離れた空中目標を検出し交戦することができるものの、これは直進するレーダー波が届く範囲内の話で、水平線の下に隠れる目標は検出できず、低空域は地形の問題もあるため目標を検出することが困難な場合もあり、巡航ミサイルやドローンが主戦場とする中高度や低高度をカバーするには専用のシステムが必要だ。
デンマークの件も同様で、Barak MXに組み込まれたソフトキル・ソリューションのスイッチを入れればドローンの脅威から解放されるかのように喧伝されたものの、どの様な電子戦システムもカウンタードローンシステムもカバーできる低空域の範囲が非常に狭く、国土全体を隙間なく保護するには相当量のScorpiusを配備しなければならない。
これに良く似ているのがパトリオットシステムが提供する弾道弾攻撃に対する保護範囲で、PAC-3弾の射程は40km(交戦目標が航空機なら80km)、最新のPAC-3MSE弾の射程は60km(交戦目標が航空機なら120km)と言われているが、米議会調査局は2023年1月に作成したレポート(PATRIOT Air and Missile Defense System for Ukraine)の中で「弾道弾攻撃から保護できるにはランチャーを起点に15km~20kmの範囲」と指摘しており、パトリオットシステムの弾道弾に対する保護能力はエリアディフェンスではなくポイントディフェンスに過ぎない。
こんなことは本ブログの読者なら馬の耳に念仏だと思うが、一般の認識はそうではないらしい。
関連記事:デンマークがSAMP/Tを選択、中長距離防空システムに総額1.3兆円を投資
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※アイキャッチ画像の出典:Israel Aerospace Industries





















馬の耳に念仏は誤用では。
言うまでもない、当然のことだ、ということなら例えば「犬が西向きゃ尾は東」とか。
どんなに優れた防空システムや電子戦システムでも隙間無く完璧に経空脅威から国土を守れる訳ではない、そんなことはここの読者にとっては言うまでもないことだ。
と管理人さんは仰りたいのですよね。
コピペ対策とかでわざとそうしてるというのであればすみません、どうしても気になったもので。
釈迦に説法と言いたかったのでは。
こと日本ではマジンガーZの光子力バリヤーが、一般人に誤った概念を植えつけたような気がする。
光子力バリヤー、懐かしいw
今の若い人には伝わらないでしょうが、パリンと割れるアレですね。
くりかえしの揚げ足を取りたいとか管理人さんを貶めたいとかそのような意図は全くありません、管理人さん気分を害されたら
うわ、途中で送信してしまった(焦
すみません再掲します。
光子力バリヤー、懐かしいw
今の若い人には伝わらないでしょうが、パリンと割れるアレですね。
繰り返しの釈明になりますが、揚げ足を取りたいとか管理人さんを貶めたいとかそのような意図は全くありません。
管理人さん気分を害されたら申し訳ありませんでした。
今後とも変わらず愛読させていただきたく、宜しくお願い致します。
いやここは何度もブログで書いてるんだからわかってるよな?という意味では…
耳にタコ かな
ああ思い出した、太平洋に向かって北が撃った弾道ミサイルを「何で撃ち落とさないんだ!」
って言ってた人達、いたなあ…
ミサイルを弾道飛行の頂点で撃ち落とせると思っていたのか、そもそもどんな風に飛行して
いるのか考えたこともなかったのかな。
パトリオットに対する毀誉褒貶も昔は本当に激しかった。
アメリカのリベラル系に「BMDは物理的に不可能だ」みたいな陰謀論みたいのが広まってて
社会保障の拡充を主張する人たちがPACは金の無駄だって叩くのもお決まりだった。
ウクライナで戦うチャンスが無かったら今でも言われてそうなので、戦争が起きたのは
パトリオットにとっては良いことだったな。
>ああ思い出した、太平洋に向かって北が撃った弾道ミサイルを「何で撃ち落とさないんだ!」
って言ってた人達、いたなあ…
ミサイルを弾道飛行の頂点で撃ち落とせると思っていたのか、そもそもどんな風に飛行して
いるのか考えたこともなかったのかな。
その人達は「ペトリに限定した話」をしてたんですかね?
そうでないなら↑の後半の煽りは盛大なブーメランになりそうですが…
ノドン試射の頃の話だと思われます。湾岸戦争でパトリオットがスカッドを落とした後で、弾道ミサイルは落とせると言う新常識が出てきた頃合いです。
当時はABM禁止条約が有効でしたので「アレ、良いの?」ってのも有りました。後段のリベラル系の議論も「迎撃弾頭に原爆でも使わなきゃムリ」的な旧常識から来てます。
引用の後段ではBMD一般について話してる様に見えるので、前段がその頃の「ペトリの成果を見て『じゃあうちも』的な=ペトリに限った話をしてる人」限定だと全体の筋が通らない様に見えましたので。
北の弾道弾を撃ち落としちまえ、迎撃練習しとこうぜ、的な意見はことあるごとに出て来てますしね(個人的には単純にコストと備蓄の二点で勘弁してくれ、と思いますが)。
「オレは文系だからって数学物理学への理解」を放棄するヒトはホントいなくなって欲しい。
経済学だって大学教養レベルの数学を理解できなければ卒業すら本来おぼつかないはずなのに。
なんでインドのミサイル導入するの?って思ったけどそういえばあれはイスラエルのミサイルだったか…
エリアディフェンスをしたければ某BETAの光線級を1個中隊ばかり引き連れてくるか(なお人類の危機)