欧州関連

米陸軍に続きオランダ陸軍もAPSを採用、CV90向けにIron Fistを選択

米陸軍はブラッドレー向けのAPSにIron Fistを選択、改良を加えたIron Fist Light Decoupled搭載のM2A4E1を今年3月に公開して注目を集めていたが、オランダもCV90向けのAPSにIron Fistを選択し、主力戦車以外の戦闘車輌にもAPSの採用が広がっている。

参考:Elbit Systems Awarded $130 Million Contract to Supply Iron Fist APS to BAE Systems Hägglunds for a European Country
参考:Elbit eyes Nordic market for its ‘Iron Fist’ vehicle-protection system

主力戦車以外の戦闘車輌にもAPSの採用が広がっている

米陸軍は10年近くエイブラムス、ブラッドレー、ストライカーへのアクティブ保護システム(APS)統合を研究し、M1A2/SEPv3パッケージにRafael製のTrophyを採用したものの、ブラッドレー向けに選択したElbit Systems製のIron Fistは向かってくる脅威の50%にしか対応できなかったため、Elbit SystemsとGDはブラッドレーへのIron Fist統合方法を大幅に変更、レーダーや光学センサーといった各要素はオリジナルと異なる方法で統合・調整され、これを制御するソフトウェアも手を加えたIron Fist Light Decoupled (IF-LD)を開発。

出典:PEO Ground Combat Systems

米陸軍は何年も欠けてIF-LDを成熟させ「限りなく実戦に近い環境下で脅威の70%に対応できた」と、Elbit Systemsも「ロケット弾や対戦車ミサイルに対する保護能力を維持したままドローンにも対応できると実証した」と明かし、今年3月末にIF-LD、改良された前方赤外線照準装置、降車する際の熱を抑制する環境制御ユニットを統合したM2A4E1を公開して注目を集めていたが、Elbit Systemsは8月「BAE Systems Hägglundsと欧州諸国向けにIron Fistを供給する契約(1.3億ドル)を締結した」と発表。

これまで誰がIron Fistを発注したのか不明だったが、Elbit Systemsはポーランドで開催されたMSPO 2024で「オランダが発注したCV90にIron Fistが搭載される」「デンマーク、スウェーデン、フィンランドが運用するCV90にもIron Fistが採用されることを期待している」「我々は米国からもブラッドレー向けのIron Fistを受注している」「ポーランドでも大きな可能性を感じている」「我々のAPSは重量に関係なく装輪車輌にも装軌車輌にも搭載できる」と述べ、オランダが6月に発注した120mm迫撃砲を2門搭載するCV90MjölnerにIron Fistが搭載されるのかもしれない。

因みに豪陸軍が採用したHanwha Aerospace製のRed backにもIron Fistが採用されており、主力戦車以外の戦闘車輌にもAPSの採用が広がっている格好だ。

関連記事:APSを搭載した新しいブラッドレー、米陸軍がM2A4E1を公開
関連記事:ブラッドレー向けのAPS、米陸軍がIron Fist改良型の生産に資金供給を開始
関連記事:米陸軍参謀総長、我々はウクライナで学んだ教訓を受け入れて適応する
関連記事:米議会、陸軍にUAVの脅威から戦車を保護するための計画を報告するよう要求
関連記事:米陸軍、エイブラムスは2040年までにハイエンドの戦場で無力になる
関連記事:米独に続き英国も主力戦車のAPSに「トロフィー」を選択

 

※アイキャッチ画像の出典:Photo by Hille Hillinga, Mediacentrum Defensie (MCD)

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コメント

    • 2024年 9月 07日

    かつての巨大戦艦が辿ったように戦車のイージス艦化が進むのだろうか
    防護力は重装甲ではなくAPSやレーザー銃などのハードキルに依存するようになるのかも

    7
    • a
    • 2024年 9月 07日

    陸自も実証で10式に導入するっぽいけど
    トップアタックを連続して防げるとかすごい要求してるんだよな、本当にあるんかそんなもんw

    16
      • 戦闘機
      • 2024年 9月 07日

      車両用のアクティブ保護システムって乱暴に言うと、大半がショットガンをばら撒く様な感じだから。コストと積載性の悪さ考えずに、大型の指向性対人地雷に似た物を山盛りにしたりも出来るとは思う。

      6
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2024年 9月 07日

    搭載してなきゃ全く防げないけど、搭載して改良を重ねても70%
    この70%もあくまで初弾に対してで次弾以降は迎撃成功率は下がるという

    でも、側面装甲や爆発装甲を増しても昨今のトップアタック仕掛けてくるATMやドローンには無力なので、こういったAPSが必須になるんですかね

    15
      • Easy
      • 2024年 9月 07日

      この程度の防御効果にこんなコストかけるなら、それこそ亀戦車で十分なような気が。

      6
        • 田舎者
        • 2024年 9月 07日

        亀戦車との比較は実に興味深いです。

        下手したら高価値目標として重点的に狙われる恐れもありますので、乗り捨て容易なピックアップ、バギー、バイクの方が兵士の生存率が高いかもしれませんね。

        また、防風林帯に身を潜めた際に、ドラゴンドローンの攻撃に遭遇したら、センサー類が損傷して放棄を余儀なくされそうです。

        5
          • イーロンマスク
          • 2024年 9月 08日

          亀戦車にAPS装備すりゃいいんですよ
          どちらか一つを選ばなければならないわけじゃない

          13
      • 田舎者
      • 2024年 9月 07日

      中国人傭兵の動画では、ウクライナのドローンは次々と飛来するので、電子戦装置も先頭の数機だけに有効で、やがて後続機や砲撃に潰されて対処困難になるってのがありました。

      APSも、次弾以降は迎撃率が下がるなら、次々と飛来するドローンに対応出来るのかな?と思いました。

      あと、テルミットを撒くドラゴンドローンが登場し話題になっていますけど、防風林帯に身を潜めている時に、アレを撒かれたらセンサー類が台無しになって放棄やむなしになるような気もします。

      開発も生産も低コストのドローンに対し、APSの高額な開発&購入費用に見合った結果を出せるのか気になります。

      8
    •  
    • 2024年 9月 07日

    オランダや米国がAPS(アクティブ保護システム)を戦車以外の装甲車両にも導入する流れは、日本にとっても重要な参考になると思います。特に、昨今の戦場ではトップアタックを行う対戦車ミサイルやドローンが脅威となっているため、従来の装甲強化だけでは防御が難しいです。APSの導入は今後の戦車や装甲車の生存性を高める必須の技術として、日本でも真剣に検討するべきでしょう。

    陸上自衛隊も10式戦車にAPSを導入する実証実験を進めていますが、技術的な要求が非常に高く、トップアタックに対する連続防御が求められているようです。これが実現できれば、日本の防衛力向上に大きな貢献を果たすでしょう。ただし、コストや技術的な課題もあるため、海外の事例を注視しながら慎重に進める必要がありそうです。

    APSが必須となる現代戦の中で、日本もこれらの新技術を早期に導入して戦場での生存性を高めることが求められています。

    11
      • bbb
      • 2024年 9月 08日

      10式はパッシブで割と行けるがERAは爆発物で張りっぱなしが出来ないのでAPSという行になってる。しかし、本命はパッシブ強化で耐弾できない装輪装甲への付加で1000両以上が所要数となる。
      一式3億なら3000億円が必要となるがあの車格だからAPS無しでは実用に耐えないだろう。陸自はやはりLAV化で良かったんだろうなと気づいても後のなんちゃらですが、後継を国外仕様要求で耐爆性付与で肥大化させる手前で仕方はないかもですが馬鹿な判断したなとは思います。
      国内任務用に底部TNT25kg防護とか馬鹿げた要求ですからタイヤハウス上部が座席に出来ません。5人乗り以外無い。またその防爆性能は三菱製では不可能です。防衛費1%枠時代じゃ絶対不可能な判断がまかり通る時代になったはいいが今後の維持費はどうなるやら。

      1
    • T.T
    • 2024年 9月 07日

    また戦車の上が百貨店になる流れが。
    でも、戦車が開発された目的を考えれば、APSやRWS山盛りで対歩兵戦闘力を向上させるのが案外正しい方向にも感じる。戦車を対戦車兵器として捉えてその目的に特化した進歩が実は歪だったのかもしれない。

    14
      • Easy
      • 2024年 9月 08日

      しかし対歩兵用、となればそれこそFPVドローン全盛ですから、50トン50億円の戦車1台持ってくるぐらいなら50億円分のFPVドローン買って持っていった方が効果があるんじゃないのか、という話が可能になるわけで。
      とにかく戦車のコスパの悪さが目立ちます。

      5
        • 本末転倒
        • 2024年 9月 08日

        >50トン50億円の戦車1台
        1台10億程度の戦車にAPSやRWSを山盛りして50億になったら、本末転倒だしな。

        1
      • 反革命分子
      • 2024年 9月 08日

      大戦期の対戦車自走砲って徒花扱いされるけど、実は対戦車自走砲に戦車が統合されてできたのが主力戦車だったりして・・・

      2
    • nimo
    • 2024年 9月 07日

    RWSも標準でついてないことが多いけど高いからだよね

    8
      • kasugi
      • 2024年 9月 07日

      がっちり固定されてメインの大型照準器に統合されてる同軸機銃があるのに、なんでより不安定でより照準性能の低いシステムを搭載する必要があるのかというお話でして

      何故こんなに戦車搭載が流行ってるのか個人的には謎です、イスラエルでも載せてないのに

      4
        • カメラ
        • 2024年 9月 08日

        同軸機銃は正面の戦車を警戒してできるだけ正面を向けておいて、RWSは側面の敵歩兵に対応するとか。
        RWSは設計が新しいし、防御力が低い分、大きなカメラを搭載できて、カメラで隠れた敵を探すのに都合がいいとか。
        戦車以外にも搭載できるからスケールメリットが出て進化も早そう。

        4
        •  さ
        • 2024年 9月 08日

        乗る側、乗せられる側の士気の問題もあるから
        やられる可能性、死ぬ可能性が高いとわかっているのに無対策で送り出すのは後々責任問題になりかねない

        4
        • bbb
        • 2024年 9月 08日

        MBTやIFVのRWSは車長操作の第2砲塔だし。元々車上HMGって車長が対空するやつでしょ。
        主砲塔は砲手捜索用でRWSは車長捜索用なのは昔の砲手IRが極めて曖昧で車長もオーバーライドで見て判断が必要だったけど、
        今のは砲手だけで判断出来うる上にRWSのIRも可視光もMBTサイトと同等レベルだから。
        そのうち操縦手用RWSも追加されるかも。

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