欧州関連

火力支援能力の再構築、オランダ陸軍がCV90Mjölnerや新型迫撃砲を取得

オランダはCV90Mjölnerに発注したと噂されていたが、Janesも1日「オランダ陸軍は保管中だったCV90MkIIIを改造してCV90Mjölnerを15輌取得する」と報じ、新型の120mm/81mm迫撃砲調達と合わせて陸軍全体の火力支援能力を再構築する計画だ。

参考:FMS 2024: Netherlands plans to procure Mjölner 120 mm armoured mortar vehicles
参考:Landmacht krijgt CV90 120mm mortier

CV90Mjölnerは第43機械化旅団の装甲歩兵大隊に配備される

120mm迫撃砲を搭載した装甲車輌や高機動車は「手軽で安価な火力支援車両」として重宝され、スウェーデン陸軍は120mm迫撃砲を2門搭載した「CV90Mjölner」を、ポーランド陸軍はPatria AMVに120mm迫撃砲を搭載した「M120Rak」を保有し、この2機種は120mm迫撃砲を砲塔式で搭載しているため射撃効率が高く、特に自動装填装置が組み込まれているM120Rakはロシアとの戦いにも投入され、台湾も関心を示している。

出典:BAE

米陸軍も120mm迫撃砲を搭載したM113やストライカーを保有し、調達を開始したAMPVにも120mm迫撃砲搭載モデルが設定されているものの、搭載方法は従来通り=車体後部に120mm迫撃砲を設置して手動運用する方式だったが、BAEが米陸軍にPatria製砲塔(NEMO)を統合したAMPVを今年3月に納品。

NEMOは自動装填装置が組み込まれているため連射性能(12秒で3発のバースト射撃/1分間に最大10発を発射可能)が優れており、Patriaは「高度に自動化された射撃管制システムが搭載されているため、最大6発の迫撃砲弾を目標に同着させるMRSIミッションも可能だ」「強力なネットワーク機能を備えているため外部センサーとのデータ共有も簡単にできる」と述べ、この射撃管制システムは移動しながらの攻撃も可能らしい。

オランダも今年6月にCV90Mjölnerに発注したと噂されていたが、Janesも1日「オランダ陸軍は迫撃砲能力を再構築するためアップグレードの対象から外れ、保管中だったCV90MkIIIを改造してCV90Mjölnerを15輌取得する」「このMjölnerはオランダ人の身長に合わせてコンパートメントの高さが調整され砲塔への機関銃も追加される」「射撃管制システムはPzH2000と同じものが採用される」と報じており、CV90Mjölnerは第43機械化旅団の装甲歩兵大隊に配備される。

因みにオランダ陸軍はPzH2000導入に伴い牽引式120mm迫撃砲3個小隊を解体、第43機械化旅団の装甲歩兵大隊は81mm迫撃砲のみを、他の旅団と海兵隊は81mm迫撃砲と61mm迫撃砲を装備し、第11空挺旅団のみ120mm迫撃砲を装備しており、第43機械化旅団の迫撃砲能力はCV90Mjölnerで、海兵隊と空挺旅団は新たに取得する120mm迫撃砲(徘徊型弾薬にも対応)で、その他の旅団が装備する81mm迫撃砲も新しいモデル(Hirtenberger Defence製)で更新予定だ。

関連記事:BAE、米陸軍に迫撃砲搭載のPatria製砲塔を統合したAMPVを納品
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※アイキャッチ画像の出典:Ministerie van Defensie Zweden

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コメント

    • Easy
    • 2024年 11月 04日

    それにしても。
    たかが無誘導の単発120ミリ砲弾程度の投射火力のために、こんなに高コストな車両は本当に必要なのかと・・
    これならウクライナがやってたSUVに6連装のロケット積んだ簡易カチューシャの方が、はるかにコスパが良いのでは。

    26
      • Whiskey Dick
      • 2024年 11月 04日

      120mm迫撃砲の射程は8km、120mm滑腔砲(直接照準)の射程は4km。直接照準による火力支援で使う場合、ある程度の防弾性能と不整地走行能力が必要になるのかも。一般的な重迫撃砲の交戦距離とコストを考えた場合、ベース車両はMRAP辺りで良いと思います。

      2
        • Easy
        • 2024年 11月 05日

        ウクライナ戦の戦訓は「直射砲は戦車砲ですらもう不要」というものです。射点が判明すればFPVドローンがわらわらと寄って来て破壊される、という世界になってしまっています。
        特にオランダなんて仮想敵はロシアになるでしょうから、ランセットを始めとする多種多様な射程距離を持つドローン群を使うロシア相手に120ミリ迫撃砲搭載の自走砲が何の役に立つのか皆目意味不明なんですよ。
        よしんばドローンを防いだとしても、ロシアは単純に砲火力と射程で上回る152ミリ砲を山ほど持ってるわけですから。

        これでは性能は中途半端で火力も低いが値段だけは高い、といういかにも西側な装備になってしまっています。

        3
          • 流石にドローンを過大視し過ぎ
          • 2024年 11月 05日

          先ず直射戦力は使われなくなった訳ではありません。ロシアもウクライナも現時点でも投入してます。
          次に迫撃砲とドローン、榴弾砲ですが、
          こちらの別の記事で155mm砲において「撃って逃げる」から「撃って隠れる」戦術に移行していると言う話もありましたが、であればより前線に近い120mmも同様かと思います。結局射点から逃げて、カウンター砲撃下で耐える機動性と装甲は必須かと。

          4
      • 120迫は最適な歩兵砲
      • 2024年 11月 04日

      120mm迫撃砲は歩兵、機甲の随伴砲としては最適かと思います。持続的に弾幕張れますし、物によったら直射も出来ますからね
      個人的には105mm榴弾砲こそ、ソ連式のグラードみたいな小型の多連装ロケット砲で代替して良いんじゃないかと。120迫、105榴より射程は長いですし、瞬間的には105榴、120迫より弾幕張れます。砲兵火力としては105榴より優秀な点が多く、劣る部分は155mm榴弾や120迫で補えます。
      西側でも105榴を維持しない国も増えてる一方で、ロシアが火力の重要性を証明しているので、手軽に火力を増強する手段たりえるかと。

      9
        • どねつくぼうし
        • 2024年 11月 05日

        105mm榴弾砲のカウンターパートは122mm榴弾砲なんですがロシアはこれを120㎜迫撃砲で代替するような動きを見せていたのでこのクラスの榴弾砲を多連装ロケットで更新という考えはどこの軍も抱いていないと思われます

        1
          •  
          • 2024年 11月 05日

          元々ロシアは152mm榴弾とグラードクラスの多連装ロケット砲を旅団火力としていますから、結局旅団火力として152mm榴弾砲、小型多連装ロケット砲、120mm迫撃砲を用いる構図は変わらないかと。

          1
      • ののの
      • 2024年 11月 04日

      砲塔式の後装自動迫撃砲は装填の関係上発射速度で劣り、連装にしてやっと牽引式重迫撃砲と同程度っていう欠点があるからなぁ…
      自走迫撃砲にするなら、陸自の共通戦術重迫とか、米軍のストライカー重迫みたいな、前装式のほうがいいと思ふ

      5
        •  
        • 2024年 11月 04日

        両国は既に有力な直射火力がありますから、まあ良いかとはなりますが、それでも120mmの直曲射両用はなかなか魅力的と言いますか

        5
        • kasugi
        • 2024年 11月 05日

        それを発揮したところで何の意味があるのかというお話ですね
        分間20発と言っても実際に殺傷能力を発揮できるのは最初の1、2発で、あとは敵が伏せちゃいますから地面を掘り返すだけに終わります
        もちろん伏せさせるだけで意味があるという状況もありますが、それなら分間数発も撃てればいいです

        しかもその準備のためにも人力の迫撃砲は時間がかかる

        NEMO砲塔は陣地に侵入するや即座に射撃を開始し、MRSIにより最大6発分の殺傷力を無防備な敵兵に一気に浴びせることができ、また撤収も迅速ですから生存性と言い殺傷能力といい比べ物になりません

        1
      • nachteule
      • 2024年 11月 04日

       ぶっちゃけどんな攻撃であれ被弾したら諦め、通年で装軌しか超えられない地形も諦める。おまけに射撃時の安定もそこまで求めないならとことん安い何かでも良いと思いますよ。

       こいつ選ぶのは既存資産の有効活用である程度の装甲防御もあり悪路走破性が高く単独で100発以上の砲弾を使い安定した射撃が出来るからでしょ?

       6連装のSUVは綺麗な道ならば速度が出せるが悪路走破性に限界があって全て一瞬で射撃すれば補充するしかなく継続の面では不満が出るし、装甲は機関銃レベルに耐えられるかどうか。何を重視するのかで変わってくると思うし、徘徊型ドローンでどっちもやられる攻撃の質は問わないとか言うなら、もう安い方にしてくださいとしか。

      6
    • 戦略眼
    • 2024年 11月 04日

    CV90が余っているなら、CV90120に改造して、戦車大隊の穴埋めにすればいいのに。

    1
    • nimo
    • 2024年 11月 04日

    突撃砲みたいになってきましたね

    5
    • hiroさん
    • 2024年 11月 04日

    オランダは背の高い人が多いからね。
    私も日本人としては高身長な方だが、オランダに行った時は巨人の国かと思った。
    女性でも180cm以上がざらにいるし。
    戦車兵は身長制限を設けているのだろうか?

    4
    •  
    • 2024年 11月 04日

    同じ120mm自走自動迫撃砲でも米陸軍はフィンランド式、海兵隊はフランス式採用ですか?見た目は砲塔あり、直射可能なフィンランド式のが良さげに感じつつ、直射砲は直射砲として分けるべきと言うのもありますし、難しいところですね。

    1
      • hogehoge
      • 2024年 11月 04日

      まぁ器用貧乏と言われても、何でもそこそこ出来るというのは戦力分配としての安定剤になりますしね

      正面的な火力が要求される戦場や、硬直化した戦場では器用貧乏は微妙かもしれませんが
      機動戦主体の流動的な戦場であれば、器用貧乏というのは有効的かもしれません

      1
    • 58式素人
    • 2024年 11月 04日

    ”第43機械化旅団の装甲歩兵大隊の装甲歩兵大隊に配備される。”
    歩兵大隊が3個なら、各大隊に5門という事でしょうか?。
    足りるのかしら?。他にも火器はあるとは思うのだけど。

    1
    • 通りがかりさん
    • 2024年 11月 04日

    ニッチな自走榴弾砲が現在の戦争にマッチするかどうかですよね。
    初速が遅い分、射程以外は値段含めて概ね良好ではあるんですが、射程は正義でもありますので。。。

    2
      • T.T
      • 2024年 11月 04日

      弾道の違いは用途の違い。
      長射程加農砲は迫撃砲の代わりにならないし、逆も又然り。

      4
    •  
    • 2024年 11月 04日

    装軌式の120mm口径の直射も可能な自走迫撃砲…戦車と無砲塔迫撃砲で良くないか?と思ったらオランダは現状戦車を保有してないんだった

    1
      • どねつくぼうし
      • 2024年 11月 05日

      基本的に戦車車体は後部扉を持たないのであまり自走砲には向いていないんですよね
      弾薬補給のたびに肩より上に砲弾持ち上げるのって数を撃つ自走砲にとっては地味に重労働ですから

      1
        • 58式素人
        • 2024年 11月 05日

        そうすると。
        現役なら、イスラエルのメルカバ、米国のM10ブッカー、
        中古なら、フランスのAMX13、米国のM24/41の自走車台、
        などは使い出があるのでしょうか。
        いずれもFFだし。M24/41は自走砲用に改造していますが。

    • 直曲両用
    • 2024年 11月 05日

    120 mm迫撃砲の分布見たら、原産国と装輪戦車に一定の自負があるイタリア、日本が無砲塔のフランス式で、それ以外は砲塔有りのフィンランド式が着実に普及してる傾向か?まあ直曲両用は魅力的ではあるが…

    2
    • col
    • 2024年 11月 05日

    ウクライナ戦を見る限り、大勢の兵員が集合する事が危険になった。
    ヨーロッパ平原で役に立つのかな。
    ドローン指揮所が狙われていると言うし、ドローンとアンテナ、オペレーターと統括システムを積んで移動できる車両でも作った方が良くないかね。
    上部には極距離レーダーと相手ドローンを撃ち落とせる兵器を積む。
    兵オタじゃないので詳しい事は分らんが。

    2
    • 58式素人
    • 2024年 11月 05日

    素人の妄想なのですが。
    米国の古いM81ガンランチャー(短砲身カノン)と
    M551の砲塔を使って似たような歩兵支援車両は作れないかな。
    M81は口径152mmなので榴弾の威力は疑いないだろうし。
    152mm榴弾はは塹壕の破壊ができます。120mmでは少し威力不足かな。
    機械装填だし。対歩兵用散弾も撃てるし。
    TOWが152mmなので、改造したらM81から運用できないかな。
    あと、仰角を65°にまで改造が必要でしょうが。
    どこかで作ってくれないものでしょうか。

      • hiroさん
      • 2024年 11月 05日

      M81の使用弾はHEAT-MPであり、通常の榴弾と比較すると1~2割威力が減るので、120㎜榴弾とさほど変わらないと思います。
      ゲテモノとしては面白いかもしれませんが、わざわざ造る意味は無さそうな。

      1
        • 58式素人
        • 2024年 11月 06日

        ”M81の使用弾はHEAT-MPであり”
        その通りです。
        榴弾の威力を期待するにはHPの開発は必要でしょう。
        難しいことではないと思います。大射程は求めませんし。
        あと、M625キャニスター弾があるのも良いと思っています。

    • 伏せる暇すら無い
    • 2024年 11月 06日

    NEMOの直射機能はおまけです
    これを搭載した車両が直射戦闘を迫られるのは、よほど切迫しているか、よほど余裕があるかのどちらかでしょう
    直射に適した砲弾開発の動きも聞きませんし(将来的にはわかりませんが)

    NEMOが支持されているのは自走迫撃砲に求められる機能が順当に優れているからです
    前装式の自動システムは陣地に進入後に射撃体制に展開し、撤収も同様で時間がかかり、射撃性能は旧態依然で、しかも射撃中は露天です
    しかしながらNEMOは陣地に進入すれば即座に射撃を開始し、また即座に撤収することができ、MRSIにより衝撃力も非常に高く、常に装甲で保護されている

    個人的にはcardom10や2R2Mのように中途半端に自動化されたシステムの方が意義が疑問です
    装填機構が単純だとしても、精度の高い旋回俯仰装置に乗り、高性能の火器管制装置に連接されていればコストは上がります
    NEMOよりは幾分安いかもしれませんが、性能の差を覆すほどの価格差になるでしょうか

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