オランダ軍は2023年4月「フリゲート艦と潜水艦向けにトマホークを取得する」と発表したが、2025年6月に潜水艦向けトマホークの取得を撤回して「JSM-SLを採用する」と発表、さらに今月3日「オルカ級潜水艦の重魚雷を米国製Mk48から仏製F21に切り替える」と発表した。
参考:Nieuwe onderzeeboten direct voorzien van geavanceerde torpedo
Mk48からF21への切り替えも米国製装備への依存度引き下げに関係があるのかもしれない
オランダ軍の長距離攻撃能力はPzH2000の砲撃と航空戦力の対地攻撃=JDAMに依存し、ウクライナとロシアの戦争を受けて「より射程の長い長距離攻撃能力の必要性」を認識したため、2022年7月に発表された国防白書に「新たな長距離攻撃能力の確保」が盛り込まれ、2023年4月「イスラエル製のPULS、米国製のJASSM-ERとトマホークを取得する」と発表。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Jonathan Sunderman/Released
JASSM-ERについて「オランダ空軍のF-35Aは近距離の地上目標を攻撃するための武器(JDAM)しか保有しておらず、敵の防空システムがカバーするエリアの目標を攻撃するには長距離攻撃兵器が必要だ」と、トマホークについても「海軍の艦艇は敵のバンカーを破壊するのに十分な威力と射程を備えた攻撃手段を持っておらず、導入するトマホークはフリゲートと潜水艦に搭載される」と述べ、現行のワルラス級潜水艦と新たに4隻取得するオルカ級潜水艦(Naval Groupのバラクーダ級)にトマホークを統合する予定だったが、2025年5月に公開した報告書の中で「潜水艦でのトマホーク運用を断念する」と明かした。
オランダ海軍は「フリゲート艦の垂直発射装置(VLS)で運用するRGM-109E」と「潜水艦の魚雷発射管から運用するUGM-109E」を要求したが、後者は2014年に受注した英海軍分を最後に生産が中止されており、オランダはUGM-109Eの共同購入(生産再開に必要な費用の分担)を模索したものの上手く行かず、トゥインマン国防長官が議会に宛てた2025年6月の文書の中で「トマホークの代わりにJoint Strike Missileの潜水艦発射バージョン=JSM-SLを採用することにした」と言及している。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Randall W.Ramaswamy/Released
さらに興味深いのはオランダ国防省が今月3日「当初計画を変更してオルカ級潜水艦に仏製の重魚雷=F21 MK2を統合する」と発表した点で、オランダ海軍はワルラス級潜水艦で使用していた米国製の重魚雷=Mk48をオルカ級潜水艦の初期装備として統合する予定だったが、オランダ国防省は「想定より早くMk48の更新が可能になった」と説明し、オルカ級潜水艦の初期装備としてMk48を再利用する計画をスキップする(建造段階からF21 MK2を組み込む)という意味だ。
Naval Groupが開発したF21はF17の後継として一から開発され、MK48と比べてどちらが優れているのかは不明だが、フランス海軍とブラジル海軍がF21を採用しており、オランダ海軍も「F21 MK2魚雷の採用はフランスとの関係強化を意味する」「EUおよびNATOのパートナーであるフランスは同一の兵器システムを運用しており、運用戦術に関する知見の共有は兵器の有効性向上に寄与する」と言及している。
因みにオランダは借入額拡大という安易な国防費増額=将来世代に負担を押し付けるのではなく、これを現世代が負担する仕組み(医療や社会福祉の予算削減、所得税と法人税の引き上げ、自由税導入)で3.5%支出を持続可能なものにしようとしており、輸入依存の装備調達(特に米国製)方針も改めて「全兵器の約半分をオランダもしくは欧州域内から調達する」という野心的な目標を設定しているため、Mk48からF21への切り替えも米国製装備への依存度引き下げに関係があるのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:Naval Group





















オルカ級潜水艦、フランス企業が、設計製造に関与。
アメリカ製武器を組み込むより、フランス製武器の方が容易な可能性あるという指摘を見かけて、なるほどなあと感じました。
オランダの政治外交面から、とても面倒くさいけどアメリカに配慮してきた、今回それ止めるわと言い換えられるかもしれませんね。
フランス武器を統合した方が間違いないですが、少なくとも今の真っ当な新型艦なら異なる素性のハードウェア同士であってもアダプティブ・レイヤーとバウンダリ・コンポーネントみたいな物で相互にやり取り出来るようにしている筈なんですけどね。
SYCOBS 戦闘システムがどんな構成しているのか分からないのでリスクを下げるならフランス製兵器を搭載した方が間違いはない。ただF21 MKⅡを採用するならJSM-SLを辞めてMdCNした方がよりストレス無く使用出来そうだしリスクの低減出来る筈なんですけどね。
こういう目立たない所で米製から変えられてくのが一番変化を感じる
でも元はと言えば米国が防衛費増を望んだ結果なんだからしょうがないか
防衛費増加に伴う負担軽減、継続性の観点から地産地消に向かうのは自然の成り行き。