オランダは防衛白書の中で「戦車大隊の再導入」に言及し、オロングレン国防相も「Leopard2A8取得の意向」を表明。さらに2026年後半に実施される戦闘用UGV(戦車6輌相当の戦闘能力)のテスト結果次第で、戦車大隊はLeopard2A8とUGVで編成されるかもしれない。
参考:Dutch to buy tanks for more than $1 billion, add Kongsberg air defense
オランダの調達はバラエティーに富んでいるため見ている分には非常に面白い
オランダはGDP比1.0%前半台の国防予算を2022年に129億ユーロ、2023年に154億ユーロ、2024年に214億ユーロ(GDP比1.95%)に引き上げたが、オンノ・アイヘルスハイム国防長官は「我が国が置かれた現状を考えると現在の予算では全くたりない」「国防支出が2.0%に達しても我々は選択を迫られる」「ロシアは侵攻初期の損失を迅速に回復しているのに我々は停滞している」と述べ、これまでに戦車大隊の再導入、PULS、JASSM-ER、トマホーク、バラクーダ級、対潜用フリゲート艦、フリゲート艦の追加弾薬庫として機能する支援艦、NOMADSの取得、F-35A、NH90、NASAMS、GM200の追加調達を発表。

出典:Ministerie van Defensie
現地メディアは戦車大隊の再導入について「約50輌で構成される戦車大隊の再導入(大隊用に44輌+訓練及予備8輌/最大3.5億ユーロの投資)が決定された」「Leopard2を手放してから13年後の決定により戦場の王者が復活を遂げようとしている」「まだ何を取得するかは議論されていないものの40年以上に渡るLeopard2の運用経験、オランダ陸軍と独陸軍との一体運用、ドイツがLeopard2A8プログラムにオランダを招待していることを考えるとLeopard2A8を選択する可能性が高い」と報じていたが、オロングレン国防相もLeopard2A8取得の意向を表明した。
Leopard2A8の調達は46輌を予定しているものの追加購入オプション(6輌)が含まれ、これを行使するかどうかは2026年後半に実施される戦闘用UGV(戦車6輌相当の戦闘能力)のテスト結果次第で、期待外れならLeopard2A8を追加発注し、要求要件を満たすならLeopard2A8とUGVの組み合わせを採用し、2030年までに戦車大隊の編成を終える予定らしい。

出典:KNDS
とにかくLeopard2A8は需要が供給能力を大きく上回っているため、潜在的な顧客の間で生産スロットを奪い合う事態に発展しており、オロングレン国防相も「複数の国がKNDSの納期スケジュールの枠を巡って争っている。この計画は条件が有利な生産スロットを確保し、一刻も早くLeopard2A8を手に入れられることを重視している。年末までに正式な契約を締結して最初の引き渡しは3年後、最後の引き渡しは2030年を予定している」と説明している。
さらに興味深いのはNOMADSの取得とNASAMSの追加調達、これに関連してAMRAAM-ER、AIM-120C8、AIM-9Xを調達する点で、NOMADSは機械化部隊に随伴して近距離防空(SHORAD)を提供するシステムでAIM-9XはNOMADSとNASAMS向けの調達だが、AMRAAM-ERとAIM-120C8はNASAMS向けだ。
NASAMS1はオリジナルのAMRAAMを使用していたが、NASAMS2では「AIM-120C-7のシーカー」と「RIM-162ESSMのロケットモーター」を組み合わせて射程が拡張されたAMRAAM-ERの使用可能になり、NASAMS3向けに開発されていたAMRAAM-ERの新バージョンは「AIM-120C-8のシーカー」と「ノルウェー企業=Nammoが開発したロケットモーター」の組み合わせに変更され、2021年のテストで期待された性能を実証していた。
KongsbergはAMRAAM-ERの新バージョンについて「AIM-120C7の地上発射と比較して交戦距離が50%、交戦高度が70%向上している」と述べており、RTXは中国空軍の長射程空対空ミサイル=PL-15に対抗するためF-35AへのAMRAAM-ER統合を検討(正式な統合要求に基づく計画ではなく社内計画)していたことがある。

出典:Mediacentrum Defensie (MCD)
F-35AとNASAMSで使用できるAIM-120C8に1本化したほうが運用、調達、備蓄の面でスマートだが、オランダがAMRAAM-ERの調達に言及している点、2021年のテストから3年が経過しているため新バージンの調達が濃厚で、この新バージンの調達や導入に関する情報が非常に少ないため個人的には興味津々だ。
因みに欧州諸国の装備調達に関する話題はウクライナ侵攻前よりも格段の増えており、特にオランダの調達はバラエティーに富んでいるため見ている分には非常に面白い。
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※アイキャッチ画像の出典:FaceMePLS/CC BY 2.0
いつ戦車が必要になるかですね。
言われるように2027〜2028年頃に危機が来るなら、間に合うのかな?。
第二世代戦車(M48/60、レオ1)がどれほど残っているか判りませんが、
掻き集めて、近代化改装もしなくてはいけないのでは?。
最低限、主砲をラインメタル120mmL44滑腔砲に無理矢理に交換して。
今の技術ならば、低反動化はできないかしら?。
マガフとか改修系大好きです。
M60Tが良いね。
何れも、L44 120mm砲は搭載可能。
M48/60は、L55 120mm砲も可能だよ。
オーバー―ホール+アップデートしたM1が一番早く入手しやすそうですが眼中になしのようですね。
オランダだったら米軍使用に近いものを売ってくれそうですが。
レオパルド2の購入順を待っている間にロシアが欧州に攻めてきそう。
ウクライナの惨状を見れば、間に合せの旧式車両でなんとかなるという希望は持てないでしょう、むしろポーランドが頭を抱えていそうです
>オランダの調達はバラエティーに富んでいるため見ている分には非常に面白い
どうにも手当たり次第調達してる感じに見えます…調達の根拠となる具体的な戦略・戦術論が公開されてる訳では無いので伺いしる事はできませんが、オランダはどういう戦況を想定してるんでしょうかね?
NATO多国籍軍に混ざる状況であれば、部品調達はどうとでもなる。とかでしょうかね?
組織改革を最速にする事に重点を置いているだけかもしれませんが
>戦闘用UGV(戦車6輌相当の戦闘能力)
一体どんなUGVなんだ、1輌で6輌分の戦力ならとんでもない車両だ
そんな単純な物ではないでしょうけど
ソースの記事では複数形なので、単体で6両に匹敵という話ではないと思います
そうですよね
さすがに1輌で戦車6輌分の戦闘能力を持ったUGVは無いですよね
超兵器になってしまう
この後に及んで戦車を減らす我が国の有り様。
10式の調達数は約10年ぶりに10輌を超えてますけど、退役する戦車がそれより多いという…
これからは状態の良い戦車などは、モスボールして保存する事になったけど、いつまで残すかは分からないですし
個人的には特科を増やして欲しい
減らすというより、損耗に対して新規製造が間に合わない状況なんですかね?
74式の保管数は1個旅団分ぐらいはあるから、数字上はそこそこの戦力です
実際に保管状態の戦車が稼働可能かは別ですが。。。
中国に対する抑止力という観点からは、短期間で再稼働可能な戦車の数は重要ですから
台湾危機が過ぎるころまでは残すのではないかと
MCVが装輪なので実践じゃ一回戦でデポ送り(主に足回りで)って話なんでMCV乗りが既に習熟してる74式がむしろ90式より必要という笑えない話ではあります。
恐らくMCVの後継が何かかしらのこじつけ(無人120化で)で早期に実現され既存のは早めにモスボール化され平時の105mm消耗は最小化されるのではないかと。
24式IFV系ベースでC2乗って対無人機で砲塔無人化して120mmとALSでMGSの大型版って感じでしょうが、10式部隊が増えることはこれで余計に起こらない感はあります。
一回戦で足が壊れるというのがよくわかりませんね
ウクライナでやってるように弾痕だらけの原野を突っ切るならそうなるでしょうが、日本にはあのような戦闘が可能な平野はほとんど残されていません
水田を戦車が突っ切るというのも現実的じゃありませんし
現地を見てない人は理論上の接地圧の話だけで通行可否を判断しちゃいますけど、強固なあぜ道とコンクリがための水路が縦横に巡っていてとても機動など出来たものではないです
実践では整備された野外ではなく市街や人工物の踏破で底部むき出しの懸架操向系に動力伝達系も逝かれるって事ですよ。あれらは部隊修理は出来ません。
16式はサブフレーム構造で一部がアンダーガードで覆われるに過ぎませんがあこが踏んづけた軽を引きずる事になるし戦闘中はそのまま続行でしょ。
これまでの装輪装甲が最高でも偵察用だったのが普通科直協用ですから自由にトンズラできない上に普通科要望で動くはめに陥ると車両保全は困難ってことです。
キドセンのシャフトがつっかえるような動かし方をしたら戦車だって亀になったり履帯切れたりするでしょうね
部隊修理できる分マシとは言え、「一回戦で」などと断言できるレベルで毎度毎度発生してるようでは戦争どころじゃありません
陸自の機甲科は路肩に乗り上げてるおばちゃん並みの練度でやっとるんでしょうか
陸自戦車の74式以降で地上高は姿勢制御で高めることが可能ですが、デフ露出の16式は最低地上高があまり無い上に姿勢制御もありません。
しかしRCVと同じことしかしない(出来ない)で普通科直協にはなりません。戦車なら車高上げてゆっくり踏破する所を逆に速度上げて突っ切る博打しか出来ませんが平時訓練でそんな博打な事するわけもありません。
例えば市街地訓練施設で廃車並べてこれを16式で踏破してますか?そんな事したこともない練度であるのは明白です。しかしそれが実践です。
74式なら屁でもない障害でも16式は容易にスタックします。履帯なら切れるような状況にまで到達(耐久)できるわけがないのが16式です。
いいえつっかえますよ
あなたの主張ですと陸自の乗員はみんな自車の最低地上高をさっぱり把握していないバカばかりなので、どのような車両に乗せたところですべてカメになります
74式に乗せたところで車高の調整を忘れてカメになります
だって地上高のことなんか全く頭にないんだもの
廃車をぞろぞろ並べて踏破する訓練なんか予算不足の陸自がやってるわけないでしょうが
そもそも市街地戦闘において踏破せねばならんほど車が並んでることなどありえませんからねぇ、住民はみんな避難しちゃうんですから
三菱のラインの関係もあるからまぁ
UGV導入でも45両の大隊ということは主要戦力ではなく情報小隊用みたいな?
それか中隊本部で各2両の配備って所ですが、そもそも戦車砲搭載UGVが無い。
搭載火砲が中口径RWSでは戦車定数の代替装備には当然なりやしませんがね。
しかし無人であるならIFV系中戦車でも可能でこれなら生産余力がかなりある。
MBTじゃ調達は間に合わないので無人中戦車を暫定導入とはまだなりませんか?
運用する人と、それを訓練する人も用意するか育てなきゃならんしな。時間と金がいくらかかるやら。
創作みたいに窮地になってからベテランが来てくれる展開なんてまずあり得んし。
>見ている分には非常に面白い
草ァ!