欧州関連

エストニア、弾道弾迎撃に対応した長距離防空システムを3月末までに選定

ロシアの脅威に対応するためバルト諸国は独自の迎撃手段確保に動いており、エストニアとラトビアはIRIS-T SLM、リトアニアはNASAMSの調達を決定したが、エストニアは弾道ミサイルの下層迎撃に対応する防空能力を獲得するため、3月末までに長距離防空システムの調達先を選定する。

参考:Estonia nears decision on which missile defense system to buy

エストニア当局は契約を締結してからシステムが到着するまで数年かかると述べ、推定納期を2030年と予想している

エストニア、ラトビア、リトアニアは領空を監視するセンサー(AN/MPQ-64、AN/TPS-77、TRML-3D、LANZA-3D、TRML-4D、GM403、GM400a、Giraffe AMBなど)は充実しているものの、空中の脅威を直接迎撃する手段がMANPADSに限られており、このギャップをカバーするためNATO加盟国は戦闘機と地上配備型防空システムを派遣しているが、ロシアの脅威が高まったためバルト諸国は独自の迎撃手段確保に動いている。

出典:Raytheon

エストニアとラトビアはIRIS-T SLMの共同調達、リトアニアはNASAMSの調達を決定し、バルト諸国は2028年までに独自の中距離防空能力を確保する予定だが、エストニアは弾道ミサイルの下層迎撃に対応する長距離防空能力も獲得するつもりで、エストニア国営放送=ERRは2025年4月「ロシア軍のIskander-Mで国内の飛行場、港、鉄道、国防軍の司令部などが破壊されると自軍とNATOの能力が著しく制限される」「そのためエストニアは弾道ミサイルを迎撃可能な長距離防空システムを取得するつもりだ」「ペフクル国防相は4月中旬まで導入システムの検討が始まるだろうと述べた」と報じた。

この話を要約すると「大陸間弾道ミサイルや中距離弾道ミサイルの迎撃能力は予算的に対象外」「そもそもロシアと国境を接しているのでTHAADやArrowは必要ない」「エストニアに適しているのは高度20kmで弾道ミサイルを迎撃できるシステム」「候補はパトリオット、SAMP/T、David’s Slingの3つ」「選定基準は能力の他にも納期の短さ、資金の出所、戦略的パートナーシップの観点が考慮される」「システムの取得費用が10億ドルになるか15億ドルになるかは現時点では不明」となる。

出典:photo by U.S. Army

調達資金を欧州から調達するアプローチを採用するならSAMP/Tを強制され、自国財源で調達するアプローチを採用すれば選択肢に自由をもたらすが、政治的には「国内に米軍と仏軍が駐留している」という事実も無視できず、納期の短さで選択すればDavid’s Sling、調達資金の出所と戦略的パートナーシップを考慮するならSAMP/T、戦略的パートナーシップのみで決定するならパトリオットになるが、エストニアの戦略的パートナーシップにとって米国が最上位かどうかは分からない。

エストニアはHIMARS追加導入を検討してきたものの、ペフクル国防相はミュンヘン安全保障会議で「納期が非常に長いHIMARSを待てるほど我々に時間はない」「米国の回答次第で調達を他システムに切り替える」と言及して2025年末「韓国製のChunmoo導入」を発表、長距離防空システムについても「このような大規模投資は戦略的パートナーシップの観点が重要だ」「最も安価なシステムを市場から選ぶという方法は賢明な選択ではない」と述べているため、欧州に対するトランプ政権の態度を加味すれば「戦略的パートナーシップのみ」で判断した場合でもSAMP/Tを選択するかもしれない。

出典:Italian Army/CC BY 2.5

Defense Newsは26日「エストニア当局が3月末までに長距離防空システムの調達先を選定し、調達費用として最大10億ユーロを確保する計画だ。これは潜在的な全ての調達候補がエストニアにシステムの詳細情報を提供したことを意味する。エストニア当局は評価中のシステムを明らかにしていないが、有力候補にはパトリオット、SAMP/T、David’s Slingなどが挙げられる。システムの選定時期は2026年3月末だが、調達契約の締結時期を特定するのは困難だ。エストニア当局は契約を締結してからシステムが到着するまで数年かかると述べ、推定納期を2030年と予想している」と報じた。

つまり「2026年末までに長距離防空システムの調達先を選定して調達契約を締結した場合、システムを製造してエストニアに引き渡すまで3年しか時間がない」という意味で、パトリオットシステムの製造には平均2年かかる上、スイス×5セット、ドイツ×8セット、ポーランド×6セット、ルーマニア×3セット、スペイン×4セットが納入を待っているため、エストニアがこの最後尾に並んでも2030年までにパトリオットシステムを入手するのは困難だろう。

出典:LIG Nex1

そのためエストニアはSAMP/TかDavid’s Slingを選択する可能性が高く、Defense Newsは「エストニア当局は評価中のシステムを明らかにしていない」「有力候補にはパトリオット、SAMP/T、David’s Slingなどが挙げられる」と述べているため、パトリオットシステムのPAC-3弾と同じ直撃方式(hit-to-kill)の迎撃弾を採用し、弾道ミサイルに対するターミナル・フェイズの下層迎撃に対応しているCheongung-II(天弓2、KM-SAM-II、MSAM-IIとも表記される)なども検討候補に入っているのかもしれない。

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※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin

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コメント

  • コメント (9)

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    • ice
    • 2026年 1月 27日

    韓国の生産能力次第でしょうけど天弓でしょうね
    売れればどんどん洗練されるだろうし羨ましい

    1
      • アンゴラ
      • 2026年 1月 27日

      ミサイル防空システムって、ガワよりも衛星からの観測情報の方が遥かに重要なのに・・・
      韓国って軍事衛星持ってましたっけ?

      6
        • MK
        • 2026年 1月 27日

        衛星持ってる国から買った所で無条件で借りられる訳でも無いし、記事にもありますが対抗手段何も無いよりはマシって事なんでしょうね。一式で守れる範囲なんてたかが知れてるのだから実際は相当数揃えないと意味ない物ですよね防空弾。

        12
        • 名無し
        • 2026年 1月 28日

        対空目標の迎撃に偵察衛星が重要とは?????
        衛生が何か分かってます?

        6
          • kitty
          • 2026年 1月 28日

          弾道ミサイルを対象にするなら早期警戒衛星が無いことには話にならないでしょう。

          1
            • 名無し
            • 2026年 1月 29日

            弾道ミサイルを対象にするならランチャーの展開とか発射前の兆候を掴むとかは衛星の仕事ではありますがね
            衛星で得られる情報は凄まじいスピードで飛行する飛翔体を戦術レベルで捉え続けるようなもんではないですので

            3
      • 特盛
      • 2026年 1月 29日

      欧州の枠組みで調達するならSAMP/Tが有力では

      1
    • たむごん
    • 2026年 1月 27日

    エストニアの政府債務残高は、GDP20%程度ですから余裕ありますね。

    GDP400億ユーロの国ですから、長距離防空システムに10億ユーロ使うというのは、かなりの決断だなと。

    エストニアはロシア系住民が4分の1と多いですから、ウクライナ戦争後どういった変化がでているのか、今後も見守りたいと思います。

    5
    • kitty
    • 2026年 1月 28日

    David’s Slingの厨二感あふれるセンスよ。
    天弓は要審査レベルかな。

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