ポルトガルはトランプ政権への不信感でほぼ確定していたF-35A導入を白紙化し、米国は「ポルトガルはF-16をF-35で更新すべき」と圧力を加え始め、ロッキード・マーティンも「ポルトガルにF-35のサプライチェーンへ参加と整備権限を与えることも可能だ」と訴えた。
参考:Norte-americanos da Lockheed Martin admitem produção de componentes do F-35 em Portugal
コア部品の製造が欠けた25%程度の生産率で「欧州のソリューションだ」と主張すればするほど販売不振が透けて見える
トランプ政権は他国の主権を軽視するような発言や態度を連発し「米国は信頼できるパートナーなのか」という疑問が生じた結果、安全保障分野の後ろ盾を象徴する米国製システム=F-35への不信感が急速に広まり、ポルトガルはF-16の後継機として確実視されていたF-35A導入を白紙化、スペインもF-35AとF-35Bの導入を断念してトルコ製第5世代戦闘機に関心を示し、ドイツは期待されていたF-35A追加導入を事実上撤回し、カナダもF-35A導入を見直し中、スイスは契約上の問題でF-35A取得数を削減した。

出典:Turkish Aerospace Industries
デンマークでもF-35A導入決定に関与したラスムス・ヤルロフ国防委員長が「導入を後悔している」「F-35Aは安全保障上のリスクでしかない」「他の同盟国やパートナーは米国製システム導入を回避したほうが良い」と言及、それでもベルギーはF-35Aを追加調達する方針だが「F-35を調達するなら地元サプライチェーンへの経済的利益を確保する必要がある」「追加調達するF-35はカーメリで生産する必要がある」と主張し、ロッキード・マーティンは欧州のF-35離れを阻止するため「調達条件の見直し」「追加のオフセット」「追加の産業的見返り」に応じざるを得ない状況だ。
ポルトガル空軍は運用中のF-16について2023年「F-35Aが後継機に相応しい」と、2024年「空軍はステルス戦闘機への移行段階にある」「新型戦闘機への完全移行には約20年かかる」「このプログラムには推定55億ユーロの資金が割り当てられる」と述べていたが、ヌーノ・メロ国防相は2025年3月「世界は変わってしまった」「我々の同盟国はあらゆるシナリオ下で戦闘機を運用するための要素(メンテナンス、スペアパーツ、アップグレードなど)に制限を課す可能性がある」と指摘。

出典:Portuguese Air Force
メロ国防相はメディアの質問(例えばフランスの戦闘機で代替することは可能か)に「ここでそれを議論するつもりはない」と回答したが、欧州での生産という観点から「検討すべき選択肢が幾つかある」とも付け加えており、米国のPoliticoは「ポルトガル空軍はF-35Aの導入を奨励しているものの、メロ国防相はトランプ政権の不確実性を考慮しなければならないと主張してF-35A導入を否定した」と報じ、ダッソーのトラピエ最高経営責任者も「ポルトガルにラファールを提供したい」と言及、サーブのヨハンソン最高経営責任者も「グリペン導入の可能性についてポルトガルと連絡をとっている」と認めた。
メロ国防相は2025年11月「まだF-16の後継機選定プロセスは始まってもいない」と述べたが、ジョン・アリゴ駐ポルトガル米国大使はCNNポルトガルの取材に「ポルトガルは老朽化したF-16をF-35で置き換えるべきだと考えている」「ポルトガルにとってF-35は他の欧州諸国との間で相互運用性を確実に確保する唯一の道だ」「しかもF-35の25%は欧州製の部品で構成されている」「ポルトガルの国防支出を2035年までに総額5.0%(現在は約2.0%)へ引き上げることを支援したい」と言及。

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Zachary Rufus
CNNポルトガルは「アリゴ大使はポルトガルが国防支出を総額5.0%まで引き上げるのにF-35購入が有効な手段だと考えている」と、ロイターも「米国大使がポルトガルにF-35購入と相互運用性の確保を促した」と報じており、これは事実上のトランプ政権によるF-35導入圧力で、ロッキード・マーティンもポルトガル国営通信社=ルサ通信の記者をテキサス州フォートワースにあるF-35最終組み立てラインに招待して「(F-35計画への出資国でもない)ポルトガルにサプライチェーンへの参加と整備権限を与えることも可能だ」と訴えた。
F-35を組み立てるのに必要な部品製造は計画への出資比率に合わせて「出資国の企業」に割り当てられており、F-35が売れれば売れるほど出資国に経済的利益が還元され、出資レベルがTier1の英国では「F-35生産が終了する2046年までに約450億ポンド=9.5兆円の経済効果を得る」「顧客が購入量を増やせば増やすほど英産業界と納税者は追加の恩恵を受けられる」と、Tier3のカナダでは「2007年から2058年までの生産・運用終了までに155億カナダドル=1.7兆円以上の経済効果を得る」「すでに33億米ドル以上の部品契約が確定済み」と予想されている。
LM highlighting economic impact of F-35 to UK plc. 20,000 jobs, 500+ UK companies & predicted out of service date – 2082 – meaning decades of support/sustainment work. #avgeek pic.twitter.com/n61SYDUNDS
— Tim Robinson (@RAeSTimR) October 28, 2024
対外有償軍事援助(FMS)で比較的早くF-35を調達した日本、韓国、ポーランドはサプライチェーン(製造したF-35部品の国際供給)への参加が認められず、日本は1,000億円以上を負担してF-35最終組立ライン=FACOを国内設置、重整備が可能な機体整備(MRO)拠点の設置には約8億円、エンジン整備拠点の設置には約243億円を投資し、日本向け機体に限定した極一部のF-35部品製造が認められたものの国際供給は認められていない。
しかし、2020年4月のベルギー、2022年2月のフィンランド、2022年9月のスイス、2022年12月のドイツ、2024年7月ギリシャ、2024年1月のチェコ、2024年11月のルーマニアはオフセットとしてサプライチェーンへの参加が認められており、特にドイツはF-35Aを35機導入する見返りとして「最低でも400機分のF-35A中央胴体を製造して国際供給する権利」を確保、フィンランドやスイスは整備権限も獲得し、韓国も日本に次いで重整備MRO設置権限を獲得するなど日本、韓国、ポーランドが契約したころの条件とは別次元だ。

出典:Lockheed Martin
ロッキード・マーティンはルサ通信の記者に「部品生産と現地整備は十分に可能だ」と述べており、もうF-35を売り込むためサプライチェーンへの参加と整備権限の大判振る舞いをしており、恐らくロッキード・マーティンが管理する国内部品製造枠をオフセットとして提供しているのかもしれない。
ただし、ルサ通信は「F-16の後継機選定プロセスは始まっていない」「この需要を巡る戦いにはF-35A、グリペン、タイフーンが参加している」「トランプ大統領がNATO脱退を繰り返し示唆しているためEU域内での軍事生産が強く求められている」「アントニオ・ジョゼ・セグーロ大統領も米国との同盟関係を維持しつつ、欧州防衛の戦略的自主性を確保すべきだと述べて米国への従属論理を否定した」と報じた。

出典:Lockheed Martin
ロッキード・マーティンはこうした国際情勢の不利について「F-35は欧州域内で機体の25%が製造されているため欧州のソリューションだ」「F-35の前部胴体はフィンランドで、中央胴体はドイツで、後部胴体は英国で製造されている」「F-35は欧州防衛の戦略的自主性を支えるものだ」と反論しているが、コア部品の製造が欠けた25%程度の生産率で「欧州のソリューションだ」と主張すればするほど欧州での販売不振が透けて見える。
ちなみに、Tier2のイタリアも当時約1,200億円を負担してF-35B組み立てに対応したFACO(年間24機生産/最近の稼働率は12機~15機)を国内設置し、F-35の主翼生産の約半分(年間72セット)も担っており、イタリア政府が2024年に発表した予算文書の中で「F-35プログラムにおけるイタリア産業界のワークシェアは47億ドル(2023年12月時点)に、カーメリに設置されたFACOも欧州諸国の導入国利用で売上が16億ドルに達した」と明かした。

出典:Photo by Scott Swofford
日本は情報が全て非公開なので推定値でしかないが、小牧南のFACOは空自向けのF-35Aしか生産していないため稼働率は年数機程度(推定2機~8機)と予想され、重整備MROもオーストラリア、日本、韓国(機体の重整備のみ/2027年稼働予定)に設置されるため重整備需要も分散される見込みだ。
日本は何も情報がないのでFACOやMROの設置コストを回収できるのかは不明だが、カーメリのFACOは売上が16億ドル=約2,540億円に達しているため設置コストの大部分を回収できているのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by William R. Lewis





















『雄弁は銀、沈黙は金』トランプ大統領は、少し余計なことを言い過ぎな面はありますからねえ。
で、ソフトウェアはどうなった?
ハードウェアに言及はされていても、ソフトウェアに言及されてない辺り、現代では心配事はぬぐい切れないよね
小牧南のFACOの技術者
「俺TR3への書き換えやってないよ。そんな、だってLMの指示でだから、書き換えるふりして、TR3起動画面のダミー放り込んで、ディスケットそのまんま送り返しちゃったわけ。中身は昔のまんまのTR2だけど、全然不都合なかったでしょ
いや向こうでTR3がやばいってわかったときはやった、と思ったね。」
(CV:千葉繁)
正直イスラエル並みの権利課金でいいからくれなんだよな・・・
それはアメリカを支配しないと得られない権利なんで、高望みもすぎますね!
せめて、フィンランド並みのデータ主権は欲しいところですね…。
イスラエル並は「でいいから」と言えるレベルじゃないくらい特別待遇なんだよなぁ
政治的な面以外でもF-35はブロック4への更新がいつになるかわからないですからね。
今購入してもブロック4への更新は無料じゃないですし、だったら割高になっても最初からブロック4の機体を購入したいですよね。
AN/APG-85レーダーも将来的に海外販売が解禁された場合入れ替えないといけない事考えると、F-35は将来的な不透明感が販売不振の理由の一つだと思います。
日本の場合は喫緊の見せ武器が必要だったけど、その上でお客様としてはかなりの待遇はされてたと思う
現状の売上とかは、まあ無視しろとは言わないけど、F-35及び米国への信頼が余りに変わってしまってるから、比較するのはちょっと意地悪じゃないかと思う
欧州と違ってじゃあグリペンやラファール買うけどいい?って駆け引き出来る立場でもないですしねぇ…
対ロシアでは正直F-35は過剰性能な気がしなくもないよね
ロシア相手なら4.5世代戦闘機でも十分なのでは?
ブロック4問題はアメリカ軍向けの問題だし、ブロック3の時点で性能は対抗馬がいない状態なので、全てはトランプ大統領に起因する問題でしょうね。
ほんと、アメリカを弱体化させる事しかしない人だ。
韓国の場合は元々サプライチェーンに参加する代わりにKF-21のために技術転移プリーズって契約じゃなかったっけ?
輸出規制でポシャったけど