欧州関連

ギリシャ海軍の新型フリゲートを巡り5つのNATO加盟国が熾烈な受注競争

ギリシャ海軍の新型フリゲート導入需要を巡り5つのNATO加盟国が熾烈な受注競争を繰り広げていると報じられている。

参考:Grecian Air to Launch Seaplane Service Connecting Islands in Greece

果たしてギリシャは米国、英国、スペイン、イタリア、フランスから提案された魅力的なプランの中から何を選択するのだろうか?

東地中海の排他的経済水域(EEZ)問題でトルコと深刻な軍事対立に直面しているギリシャ政府は軍の近代化を進めるため大幅に増額された約55億ユーロ(約7,000億円:前年比約3割増し)の国防予算案を承認、ギリシャ海軍はイドラ級フリゲート4隻のアップグレードに加えて新型フリゲート4隻を導入することを検討しており、これを受注するため5つのNATO加盟国が新型フリゲートの提案を終えたらしい。

この5つのNATO加盟国とは米国、英国、スペイン、イタリア、フランスでギリシャ国防省は提案された5つのプランの検討に入っている。

米国は米海軍が設計上の欠陥を理由に受け入れを停止して評判が悪いフリーダム級沿海域戦闘艦を提案しており導入予定の4隻内3隻をギリシャ国内で共同建造することが出来ると言っており、英国は31型フリゲートの派生型31e型フリゲートを提案しているが米英の提案にはギリシャ海軍が求める中間ソリューションの提案が抜けているので不気味だ。

出典:Public Domain フリーダム級

ギリシャ海軍が求める中間ソリューションとは新型フリゲート4隻を導入するまでの期間を埋めることが戦力補強のことで、ギリシャ側は状態の良い中古艦艇を2隻導入することを望んでおり米英の提案にはこの部分が欠けているという意味で、恐らく水面下で何らかの提案を行っているのだろう。

フランスは仏海軍向けに建造中の中型フリゲート(FDI)を提案、中間ソリューションとしてアキテーヌ級駆逐艦とジョルジュ・レイグ級駆逐艦を無償で譲渡すると言っており、スペインはアルバロ・デ・バサン級フリゲートを提案して中間ソリューションに新設計のアルファ3000フリゲート(サウジ海軍向けF3000Sベースの派生型)を35ヶ月で建造して引渡すことが可能だと言っている。

イタリアは米海軍も採用したFREMMに基づくフリゲートを提案して中間ソリューションにイタリア海軍が運用中のマエストラーレ級フリゲートを2隻提供すると言っているらしい。

出典:Naval Group フランスがギリシャに提案する予定のフリゲート艦

恐らく各国が提案した5つのプランには現地生産やギリシャ企業がどれだけ建造に関与出来るのかなどオフセットの部分が付帯しているため外野からどのプランが最も優れているには判断がつかないが、提案されている新型フリゲートと中間ソリューションだけで判断するとフランスとイタリアは新造艦+中古艦艇の提供だが、スペインだけがオール新造艦なのでコストを無視すれば最も受けが良いのかもしれない。

しかしフランスだけは中間ソリューションとして提供するアキテーヌ級駆逐艦とジョルジュ・レイグ級駆逐艦を無償で引渡す用意があると言っているので、プログラムコストを気にするならフランス案が有利だ。米国は評判の悪いフリーダム級沿海域戦闘艦ベースなので他の提案と比べると見劣りするが、米国はギリシャに無償もしくは無償に近いセール価格で多くの装備を融通するなど長年の付き合いがあるので政治的に無視することは出来ないはずだ。

果たしてギリシャは米国、英国、スペイン、イタリア、フランスから提案された魅力的なプランの中から何を選択するのだろうか?

関連記事:フランス、ギリシャ海軍が仏製フリゲートを採用すれば中古駆逐艦2隻を無償で提供
関連記事:米国とトルコの対立で利益を得るギリシャ、装甲車もヘリも無償で獲得

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 4月 15日

    アメリカはないと思う。アレwにいまさら手を出しても、メンテナンスやトラブルで泣く羽目に陥るのは誰でも想像できるし
    フランスとスペインの一騎討ちですね

    9
    • 匿名
    • 2021年 4月 15日

    フランス決定だろうけど、フリーダムのあれとかクイーンエリザベスのあれとかヨーロッパメーカーがやってるから。

    9
    • 匿名
    • 2021年 4月 15日

    長年アメリカ装備品を使用しているので、フランスは無いかと。
    スペインかイタリアなら問題無いのでは?

    1
      • 匿名
      • 2021年 4月 15日

      陸や空と違って船は自己完結力も高いから、(途上国だと特にそうだけど)製造メーカー、国家が入り乱れてる事が多い。
      なのでギリシャもアメリカ製を使ってるからと言ってフランス製を使わないというわけでもないよ。
      実際、使ってるミサイル艇のミサイルはエグゼソだったりするわけだし。
      フランスだってギリシャに色々販売してるから付合いも相応にあるし。

      イタリアだって兵装は結構独自のものが多いよ?
      スペインは新品とはいえ、36か月後っていうのがなぁ。
      トルコと緊張した状態だから即戦力が欲しいっていうのに3年後っていうのはどうだろう?

      4
    • A
    • 2021年 4月 15日

    もしかしてラファールを格安で売却したってのはこれの伏線か?

    6
    • 匿名
    • 2021年 4月 15日

    純粋に船だけで見るとおすすめはイタリアのFREMM
    やめとけってなるのはフリーダム

    8
      • 匿名
      • 2021年 4月 15日

      フリーダムは船自体の筋が悪いうえに、戦闘力も低いのが致命的
      ギリシャはガチ戦闘考慮してるってのに

      5
      • 匿名
      • 2021年 4月 15日

      機能的にいうと全部フリゲートだし、フリーダム級フォートワースが南シナ海で中国船に追跡されるなど、実戦での実績は一番フリーダムがある気がする。気になるのはギリシアじゃメイン装備の換装なんて行わないんだろうがお高く着くとこぐらい。

      故障もアメリカ基準だと多いんだろうけど。他も似たり寄ったりでは。

      1
      • 匿名
      • 2021年 4月 15日

      フリーダム級の設計はLMってことになってるけどシステムの統合が担当で、実際の船体の設計と製造を担当してたのはフィンカンティエリ(FREMMやコンステレーション級のメーカー)だったりする

      1
    • 匿名
    • 2021年 4月 15日

    トルコが一番嫌がる選定をするだろうけどラファールの件もあるからフランスなんじゃないかな それより経済がそもそも軍事費を捻出できないのに脅威を煽って国の借金で買わせるのギリシャを餌に西側軍需産業は儲かるね 地政学的に旧ユーゴスラビア連邦とブルガリアはフィルターになるからエーゲ海以外そこまで危機感が無い

    2
    • 匿名
    • 2021年 4月 15日

    厄介払いを兼ねて、フリーダム級を無償供与するかも。
    そういえば、2隻予備役になってたよね。
    ゴテゴテ後付けするには、良いかもしれない。

    9
      • 匿名
      • 2021年 4月 15日

      それ(米には)いいなぁ

      4
    • 匿名
    • 2021年 4月 15日

    後学の為に賄賂が飛び交う事で有名なギリシャの受注競争に日本も参加した学んだ方がいい。

    ってか、ギリシャの潜水艦の受注競争で賄賂と欠陥口外禁止で採用されたのが後でバレたドイツがなに食わない顔で参加してるのが笑える。

    6
    • 匿名
    • 2021年 4月 15日

    フリゲート8隻ってヨーロッパではちょっとした規模なんだよな。
    ゲルマン系金持ち国家たちの軍事費はどこに消えてるんだろう。

    3
    • 匿名
    • 2021年 4月 15日

    しかしフリーダム級が撃沈されると米国も黙ってらんない事になりそうだし
    中身ゴミでも政治的に盾にするには一番良さそう

    5
    • 名無ンシー
    • 2021年 4月 15日

    どうでもいいけど、住友重機械工業が自衛隊の重機関銃の生産から撤退するとさ。テストの結果を改ざんしたり、銃の内径を誤ったり、命中精度悪かったりで有名だったけど

    7
      • 匿名
      • 2021年 4月 15日

      てか日本の銃器系メーカーはなんであんなに細分化してんの?
      全体需要たかがしれてんだから2〜3社にまとまらんのかね。

      9
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