欧州関連

クレバ外相、ロシア領に対するウクライナ軍の砲撃疑惑に国際調査を要請

ウクライナのクレバ外相は20日、偽旗作戦を阻止するため「ロシア領に対するウクライナ軍の砲撃疑惑」について国際的な調査を行うことを要請した。

参考:Україна закликає провести міжнародне розслідування нібито обстрілів РФ

誰が攻撃しているのか不明な砲弾が飛び交う地域に「国際的な調査」が入るのか謎なので、実際には大きな声で主張した方が勝ちなのかも

19日に露メディアは「ウクライナと国境を接するロシア領ロストフ州の入植地近くに砲弾が着弾が着弾した」と報じ、さらにウクライナ陸軍保有の多連装ロケット砲(BM-21シリーズ)で使用される122mmロケット弾の残骸が確認されたため「ウクライナ軍がロシア人入植地に向けて攻撃を行ったのではないか?」と露メディアが主張、これに対してウクライナ側は「陸軍の砲兵部隊は接触線(ウクライナ支配地域と親ロシア人勢力の支配地域が接触するコンタクト・ライン)から21km以上離れた地域に配備されているため、残骸が見つかった地点に122mmロケット弾は到底届かない」と反論。

つまり露メディアが「ウクライナがロシアに攻撃を仕掛けてきた」と積極的に流布しているのは偽旗作戦の一環だという意味で、クレバ外相も「私達に隠さなければならないものは何もなく、私達自身が攻撃していないことを一番よく知っているので独立した国際的調査を行うことを支持する」と20日に発表したが、これは「欧州安全保障・協力機構(OSCE)と国連に民間人を狙ったウクライナ軍の攻撃を確認してほしい」と言い出したドネツクに対抗するため措置だ。

出典:Nickispeaki / CC BY-SA 4.0

2015年2月に成立した停戦合意(ミンスクII)によってウクライナと親ロシア勢力(ドネツクとルガンスク)は接触線から100mm口径以上の大砲を50km以上、多連装ロケット砲を70km以上、弾道ミサイルを140km以上後方に移動させ緩衝地帯を構築するはずだったのだが、ロシアと親ロシア勢力側は「停戦合意で禁じられた重火器を使用してウクライナ軍が親ロシア勢力下の集落を攻撃している」と主張、逆にウクライナは「親ロシア勢力こそ禁じられた武器を保管庫から勝手に持ち出し攻撃に使用している」と主張しており、この停戦違反の数がウクライナ侵攻危機に連動して急増している。

ロシアと親ロシア勢力は「ドネツクとルガンスクに住む(ロシア語を話す)住民を抹殺することで民族浄化をウクライナが企んでおり、まもなくゼレンスキー大統領は軍に当該地域の強制解放を命じる」という偽旗作戦を成立させるため民間人の住居に撃ち込まれたとされる「砲弾サイズ」を喧伝することでウクライナの停戦合意違反を糾弾、実際に住民避難も行って見せることで「民族浄化目的の侵攻」というレトリックを戦争の口実に利用しようと目論んでいるのだ。

出典:Генеральний штаб ЗСУ

ロシア連邦捜査委員会もドネツクとルガンスクにおけるウクライナ軍の犯罪行為を調査するため専門家を派遣、すでに現地入りした専門家は戦争犯罪の証拠集めという名目で活動を開始しており、ドネツク側のデニス・プシーリン代表も「OSCEと国連はウクライナのテロ行為(民間人に対する攻撃)を確認してキエフがとった行動を評価してほしい」と要求したが、ウクライナも国際的な調査を支持することで「調べられ困るのはお前たちの方だ」と言いたいのだろう。

まぁ誰が攻撃しているのか不明な砲弾が飛び交う地域に「国際的な調査」が入るのか謎なので、実際には大きな声で主張した方が勝ちなのだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:Армінс Янікс / Міноборони Латвії

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コメント

    • tofu
    • 2022年 2月 21日

    双方が要求してるんだから、新たに期限付き停戦合意を交わして国連調査団を入れたらWIN-WINだな!(すっとぼけ

    13
    • 無無
    • 2022年 2月 21日

    満州事変?リットン調査団?
    人類はまた繰り返すしか脳が無いのか
    人類に歴史など無いという構造主義者じゃあるまいし

    5
    • 匿名
    • 2022年 2月 21日

    関東軍の残党は瀋陽軍区におるかと思ってたら実はロシアにおったのかみたいな手口
    世間のIT化(世界中どこでも写真添付でググると答え出る)を知らないおじいちゃんが工作責任者なのかなあと

    4
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