ベルギーのフランケン国防相は10日「維持費用が極めて高額なNH90調達は失敗だった」と述べ、オーストラリア、ノルウェー、スウェーデンに続き「NH90早期退役」を発表、さらに「石で応戦したり、バンバンと叫んだりするのはもう終わりだ」と述べて過去最大の弾薬購入計画も発表した。
参考:Belgium To Withdraw Battlefield NH90s Over High Cost Of Operation
参考:Belgium plans largest ammunition order, announces early NH90 helicopter retirement
開発国や生産に関与する国の評判は当てにならないと浮き彫りになった事例
フランス、ドイツ、オランダ、イタリアが共同開発したNH90は海外市場でUH-60、AW149、H225M等と競合するものの、スペイン、ベルギー、フィンランド、ギリシャ、ノルウェー、スウェーデン、オーストラリア、ニュージーランド、オマーン、カタールへの輸出に成功して商業的成功を収めたが、オーストラリア、ノルウェー、スウェーデンは運用性やスペアパーツの入手性を問題視してNH90廃止を発表した。

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オーストラリアはS-70A、UH-1H、シーキングMk.50Bを更新するため2005年にNH90を発注、最終的に計47機を導入したものの不具合解消に時間を要し、スペアパーツの入手性に起因した稼働率の低さも問題になって「NH90を早期退役させUH-60Mを導入する」「まだNH90は耐用年数に達していないもののUH-60Mに切り替えることで計18億ドルを節約することができる」と2021年12月に発表。
ノルウェーも発注したNH90の引き渡しが10年以上も遅れ、稼働率も期待していた半分以下(14機で年間3,900飛行時間を予定していたが実際の年間飛行時間の700時間/8機)で、2022年6月「どれだけエンジニアが時間を費やして整備をしても、どれだけスペアパーツを購入してもNH90は軍の要求要件を満たせないという結論に達した」「我々は受け取ったNH90やスペアパーツの返却作業を開始し、これまでに支払った約50億クローネとその利息を返還するようNHインダストリーズに要求する」と発表。

出典:Forsvaret
スウェーデンも稼働率の低さを問題視して2022年11月「NH90を廃止する(UH-60M取得を予定)」と発表し、NHIの最高経営責任者を務めるアロシオ氏も2024年10月「ノルウェーとの調停が不調に終わり法的手続きが開始された」「(評判を傷つけたNH90問題について)サプライヤーの供給スピードについて理解不足だった」「顧客から期待されていたものに対して我々の能力サイズは小さすぎた」「稼働率改善のため整備計画の簡素化やスペアパーツの供給スピードを高める」と述べていたが、ベルギーも「NH90の調達は失敗だった」と述べて早期退役を発表した。
フランケン国防相は10日「4機のNH90は今年9月から運用を停止する」「NH90の調達は失敗だった」「このヘリは維持費用が極めて高額だ」「NH90の代替機は直ぐに到着する」と発表したが、運用を停止するのは陸上配備型の輸送機バージョンのみで、引き続き対潜戦/捜索救難バージョンの4機は運用を続けるものの、同機を対潜戦任務に集中させるため「新たな捜索救難ヘリを取得する意向」を表明。
Lange commissie defensie gisteren, wat je moet weten:
✅ Grootste munitieaankoop ooit. Eindelijk gedaan met stenen werpen en pang pang roepen.
🚁 De 4 NH90 TTH helicopters worden vanaf september uit roulatie genomen. Slechte aankoop. Peperduur in onderhoud. De vervangers komen…
— Theo Francken (@FranckenTheo) July 10, 2025
但し、輸送機バージョンの代替機や新たな捜索救難ヘリとして「何を調達するか」は不明で、Aviation Weekも「機種は不明なものの輸送機バージョンの代替機は2026年に到着する予定」と報じているが、恐らく発注済のH145Mのことを示唆しているのだろう。
因みにフランケン国防相は4月「(NATO加盟国が首脳会談で国防支出増で合意することに)そんなことは止めよう、これまで通りのやり方を維持しようと考えるのは不可能だ」「我々は全く弾薬を備蓄しておらず、戦争が始まれば数時間以内に弾丸や手榴弾を使い果たし、その場にある石を投げ始めなければならない」と述べたことがあるが、NH90の早期退役発表と合わせて「過去最大の弾薬購入が予定されている。石で応戦したり、バンバンと叫んだりするのはもう終わりだ」と発表し、現地メディアは弾薬購入パッケージの総額が23億ユーロ=約4,000億円になると報じた。
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※アイキャッチ画像の出典:Alan Wilson/CC BY-SA 4.0 対潜戦/捜索救難バージョンのNH90





















驚くほど静かなコメ欄
日本人には見限られる以前に関心さえ全く持たれないNH90が不憫でならない。安らかに成仏してくれ。
欧州で売れたけど実績が芳しくなくて時代が変わりつつあるからさもありなんとしか…
そういえばイラン戦争中に湾岸で活発に活動しててああいたなあと思い出した機体でした。
そこは正直、意外性のないニュース記事だからとしか
ヘリに関しては、世界的サポートがあるところの方がましなんですかね
日本でも採用候補に挙がったことがあるようだが、採用してなくて本当によかった
ヘリ調達には日本も偉そうなことは言えませんからねえ。
しかし、一般論として、補給パーツの入手性は、どの兵器でも大きな問題ですね。F-35もしかり、P-1のエンジンもしかり。
GCAPは、せめてパーツレベルでは各国機の互換性を高めて、そういう問題を生じさせないようにして欲しいものだ。
むしろ何がそんなにだめなのか
なんか性能もダメみたいな話だが
いかつくてかっこいいんだけどなぁ…。
どんなに高性能だったとしても、元気に飛べなきゃ意味ないよね。
UH-2やSH-60L(ドンガラだけならH-60L?)売りたいですね。欧州もですが豪フリゲート選定に絡めて8機位…