欧州関連

フランス、多連装ロケットシステムにHIMARSではなくTHUNDARTを選択

フランス陸軍のM270 MLRSは2027年頃に退役予定で、ロッキード・マーティンは「18ヶ月でHIMARSを納入できる」と提案したが、ヴォートラン国防相は15日「サフラン・MBDAコンソーシアムと独占交渉中だ」と発表し、HIMARSではなく国産システム=THUNDARTを選択した。

参考:France picks MBDA-Safran combo to supply multiple rocket launcher
参考:Artillerie : Le successeur du Lance-roquette unitaire sera le système Thundart, proposé par MBDA et Safran

両コンソーシアムはフランス陸軍が設定した期限内に長距離攻撃能力を提供できることを保証していたらしい

欧州はウクライナとロシアの戦争を目の当たりにして「大規模な地上戦が再び欧州で発生する可能性」と「高度な防空システムの普及で接近拒否が成立する可能性」を認識し、航空戦力に偏っていた火力投射能力を地上戦力に戻す動きが加速しており、自走砲や多連装ロケットシステムの新規取得や追加調達が相次いでいる。

欧州諸国の多連装ロケットシステムの導入動向(枠組み合意の数字も含む)
国種類数量
ポーランドHIMARS506基
Chunmoo290基
エストニアHIMARS9基
Chunmoo9基
ラトビアHIMARS6基
リトアニアHIMARS8基
イタリアHIMARS21基
ルーマニアHIMARS54基
オランダPULS20基
ドイツPULS5基
 EuroPULS250基
デンマークPULS8基
ギリシャPULS36基
スペインPULS16基
ノルウェーChunmoo16基
フランスTHUNDART13基

フランスもウクライナ侵攻の教訓を反映させた軍事計画法案を2023年8月に成立させ、この中で長距離地上攻撃(Frappe Longue Portée-Terre)計画に約6億ユーロの資金を計上、2026年4月に発表された改正軍事計画法案の中でも多連装ロケットシステム×13基の新規取得が予定されており、仏装備総局(DGA)主導でサフランとMBDAのコンソーシアムがTHUNDARTを、タレスとアリアンのコンソーシアムがX-Fireを開発中で、ここにテュルジ・ガイヤールが「迅速に開発が可能」という触れ込みで独自の多連装ロケットシステム=Foudreを提案。

さらに暫定的な解決策の候補としてフランス陸軍はインド製のピナカを視察しており、仏シンクタンク=フランス国際関係研究所(IFRI)は「長期的な開発ロードマップ、多彩な弾薬ラインナップ、独自弾薬を統合できる自由度、2030年までにポーランドで弾薬の生産が始まるChunmooを採用すべきだ」と勧告し、仏経済誌のChallengesは5月19日「これは予想していなかった提案だ」「ロッキード・マーティンがHIMARSを提案してきた」「ロッキード・マーティンはHIMARSを迅速に納入することを約束している」と、Breaking Defenseも6月10日「ロッキード・マーティンがフランスに18ヶ月でHIMARSを納入できると提案した」と報じた。

フランス国防省はBreaking Defenseの取材に「2つのコンソーシアムを競い合わせる革新的なパートナーシップを通じ、2つのフランス製ソリューション(THUNDARTとX-Fire)を評価・比較している。同時に市場で入手可能なソリューションの評価も行っている」と回答、Breaking Defenseも市場で入手可能なソリューションについて「IFRIは長距離地上攻撃計画の要件を満たす暫定的なソリューションとしてChunmooが最適であると推奨している」と指摘し、フランスの置かれた状況について以下のように言及。

“フランスは米国が兵器使用に課す可能性のある制約を回避するため、完全にフランス製システムを選択したいという願望と、迅速に行動する必要性との間で板挟みになっている。一部の国防アナリストは外交政策や貿易など多くの問題でフランスと米国が対立していることを考えると「米国製システムの採用は現実的なのか?」と疑問視している。IFRIのレオ・ペリア・ペイニェ氏は「HIMARS導入には国内から大きな反発があるだろう」「HIMARS導入を支持する可能性が最も高いのはDGAの調達部門、そして問題を解決して早く先へ進みたいと考えている一部の関係者のみだろう」と述べた”

出典:Thales

フランス陸軍は2027年までに即応師団を編成しなければならないという目標があり、これはNATOが各加盟国に課した能力要件を満たすものである可能性が高いため目標というよりも義務に近く、このタイミングで老朽化したLRU=M270 MLRSの退役が予定されているため、米国の国際武器取引規制=ITARの規制を受けない主権が確保されたTHUNDARTとX-Fireを選べばLRU退役時期に間に合わず、ピナカは互換性の問題が難点で、HIMARSも政治的に容認できないため、消去法でいくとFoudreかChunmooになってしまうのだが、フランスはTHUNDARTを選択したらしい。

カトリーヌ・ヴォートラン国防相は15日に開幕した防衛見本市=ユーロサトリで「我々は(長距離地上攻撃について)サフラン・MBDAコンソーシアムと独占交渉中だ」「競合各社による高品質な提案に感謝の意を表したい」と発表し、フランス陸軍の作戦司令官を務めるフィリップ・ド・モンテノン中将も「多連装ロケットシステムは2027年に戦闘準備の整った即応師団、2030年に戦闘準備の整った軍団へと移行するのに必要不可欠だ」「もちろん、多連装ロケットシステムはできるだけ早く必要だ」と述べた。

フランスのZone Militaireは「両コンソーシアムはフランス陸軍が設定した期限内に長距離攻撃能力を提供できることを保証していた」と言及しているが、フランス陸軍が設定した期限がいつのか不明で、THUNDARTはLRU退役までに間に合うのか、LRU退役スケジュールを延期するのか、ギャップを埋めるための暫定的システムを取得するのかなど詳しいことは何も分からない。

ちなみにサフランとMBDAのコンソーシアムはTHUNDARTについて「射程150kmのロケット弾を運用可能」「AASMの技術を流用したロケット弾を開発」「米国の国際武器取引規制=ITARの規制を受けない主権が確保されたシステム」と説明している。

関連記事:ロッキードがフランスに驚きの提案、HIMARSを18ヶ月で納入できる
関連記事:米国が技術移転を拒否、ポーランドのHIMARS大規模調達が行き詰まる
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※アイキャッチ画像の出典:Safran

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コメント

  • コメント (4)

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    • 無印
    • 2026年 6月 16日

    アメリカ製も韓国製もドイツ製も選ばず、独自路線を行くフランス
    流石だ、弾薬の互換性があれば輸出で選ばれるだろうけど、登場が遅すぎたような…

    6
      • 武蔵野
      • 2026年 6月 16日

      MLRS廃止して後継に25式高速滑空弾を採用する日本も負けず劣らず独自路線ですな。

      6
        • YF
        • 2026年 6月 16日

        日本は欧州が想定するような大規模な陸上戦想定しづらいですからね。対中国となると接近拒否能力を上げるのが自然な流れかなとは思います。

        11
    • 名無し
    • 2026年 6月 16日

    国産化のキモは専用のロケット弾をどれだけ作れるか次第な気がするが当てはあるのかな
    まあ他のロケット兵器会社が嫌だと言わない限りは乗せるハードルはそこまで無さそうだけど
    誘導弾の場合発射前に指示したところに飛ぶだけだから、そのデータを流し込むことができればいいはずだし

    1

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