欧州関連

追加投資を決断したフランス、カエサル6X6/MarkII開発をNexterに発注

フランスのNexterは19日、仏装備総局(DGA)から次世代の155mm自走榴弾砲システム「カエサル6X6/MarkII」の開発契約を受注したと発表した。

参考:NEXTER IS NOTIFIED OF THE CAESAR 6X6 MARK II PROGRAMME

トラックベースの155mm自走榴弾砲システムが今後も海外市場で売れると判断したフランスの追加投資

Nexterのカエサルシリーズは一般的な装軌式の自走砲ではなくトラックベースのシャーシに半自動装填アシスト付きの155mm榴弾砲システムを搭載した自走砲で、現在多くの国が同種のシステムを開発・採用(フランスカエサル/計8ヶ国採用、イスラエルのATMOS/計9ヶ国採用、セルビアのノーラB-52/計5ヶ国採用、チェコのShKH vz.77/計7ヶ国採用)に動いており、インドも安価なMArG/155-BRを新規に開発、米陸軍も新規開発する方向で動いている。

出典:Domaine public アフガニスタンで発砲するカエサル

このカエサルシリーズには現在サウジアラビアが大量の追加発注を検討中で、ブラジル陸軍が調達を検討している装輪自走榴弾砲にも提案(競合はイスラエルのATMOS)が行われるなどフランス防衛産業の陸戦装備の中で最も輸出が活発なアイテムの一つと言えるのだが、Nexterは「仏装備総局(DGA)から次世代の155mm自走榴弾砲システム「カエサル6X6/MarkII」の開発契約を受注した」と19日に発表した。

カエサル6X6/MarkIIは新規開発ではなくカエサル6X6のアップグレード開発で主な変更点は防御力と機動性の改善だ。

即席爆発装置(IED)や小口径弾の攻撃から乗員を保護するための新キャビン追加、無線遠隔起爆装置を使用するIEDの起爆を妨害する装置の追加、新しいエンジン(215馬力→460馬力)や新しい変速機への変更で防御力と機動力の改善を図り、155mm榴弾砲システムに統合された射撃管制システムのソフトウェアもバージョンアップが行われ2026年までに評価テストを終える予定らしい。

出典:©Marie-LanNguyen / Wikimedia Commons / CC-BY 2.5

因みに今回の契約には2つのオプションが設定されており、フランス陸軍は保有するカエサル6X6をMarkII規格にアップグレードするか、新規製造のカエサル6X6MarkIIを取得してカエサル6X6と交換するかを決定するしなければならず、恐らく海外受注との兼ね合い=カエサル製造のサプライヤー保護に新規製造が必要かどうかを見極めた上で最終決定を下すのだろう。

まぁカエサルシリーズにDGAが資金を追加で供給するのは投資効果が高い=海外受注に繋がりフランス防衛産業界の基盤や雇用の維持に繋がると判断したからで、トラックベースの155mm自走榴弾砲システムが今後も海外市場で売れるだろうという意味(競争力強化という側面もある)だ。

関連記事:サウジアラビア陸軍、トラック搭載の155mm自走榴弾砲「カエサル」を大量に追加導入か?
関連記事:ブラジル陸軍が調達予定の装輪自走榴弾砲、フランスのカエサルとイスラエルのATMOSが競合

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain カエサル6×6

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コメント

    • たま
    • 2022年 2月 20日

    自衛隊の19式と、スウェーデンのアーチャーも装輪式自走榴弾砲では?

    4
    • トクメイキボウ=サン
    • 2022年 2月 20日

    そのうちチェコのエクスカリバーも自走砲市場に出るんでしょ?自走砲って売り出しやすい兵器なんですかね?

    2
    • もり
    • 2022年 2月 20日

    19式装輪自走砲も防護力が低いんよね
    自衛用の機銃も無いし
    国内運用しかしねぇから少しでも安くするんだ!って強い意志を感じる

    11
      • G
      • 2022年 2月 21日

      そもそも自走砲という兵器自体が敵火力に直接身をさらすことがないよう運用するものでは
      装輪式自走砲が増えてきたのも防御力を必要とする場面では運用しない前提だからでしょうし

      10
        • 四凶
        • 2022年 2月 21日

        そんなことはない、敵軍が味方エリアに浸透出来ないなんてルールもないし、砲弾や爆弾の破片を喰らう可能性はゼロでもない。

        自力で早く長距離展開出来るとか、緩衝装置の進歩、砲弾誘導の進歩やユニットコストやランニングコスト、エンジンの進化や悪路走破性向上とか様々な物が組み合わさって装輪が使い勝手良くなったからでしょ。

        1
          • G
          • 2022年 2月 21日

          敵軍が味方エリアに浸透するほど戦車隊など前線を支える部隊が壊滅、もしくは後退せざるを得ない状況においてなお接敵される(自走砲部隊を後退させない)こと自体が運用方法として不適ではないかと
          また装甲を施した装輪式自走砲にしても、例えば売れているK9でも破片こそ防げても砲弾の直撃や至近弾には耐えることができませんし

          4
      • ブルーピーコック
      • 2022年 2月 21日

      車体であるMAN社のHX2は追加で装甲を含む保護システムを付けられるようです。ただし重量が1.5t増加するようなので、輸送(空輸?)と予算の兼ね合いで付けなかったんだと思います。

      (リンク先は外国サイトなので、各自でグーグル翻訳してください)リンク

      2
      • 2022年 2月 21日

      逆に装輪式自走砲が増えているところが、一陣地一斉射が基本になって、大砲により機動性が求められている、というところでしょうか?

      • ドシロート
      • 2022年 2月 21日

      それもそうなのだが、後席2名が完全に荷物扱いなのでどうしても不憫に思ってしまうw

    • 匿名
    • 2022年 2月 20日

    C130に乗る6輪のは空挺部隊や山岳部隊で8輪のはより即応弾数が多くて連射速度も早くてより重装甲でという棲み分けが進むと思う
    多分8輪クラスのは無人砲搭のに切り替わってくと思うけど単価では装軌装甲のSPHより高額装備になるだろう

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