フランスとドイツは新型海上哨戒機の共同開発を予定していたものの、この取り組みはドイツがP-8Aを調達したため実質的に崩壊しており、フランスは独自に「A321XLRベースのAirbus案」と「Falcon10XベースのDassault案」を検討し、A321XLRを次期海上哨戒機の優先プラットフォームに指定した。
参考:Airbus signs new study contract to define France’s future maritime patrol aircraft
参考:Airbus’ Maritime Patrol A321 Bests Dassault Falcon Proposals
アトランティックIIの後継機はFalcon10XではなくA321XLRベースになる見込み
フランスとドイツはアトランティックIIとP-3Cを更新するため新型海上哨戒機(MAWS)の共同開発を約束していたものの、P-3Cのアップグレードに失敗して退役時期が10年前倒し(2035年→2025年)されることになり、フランスはMAWS導入までの繋ぎとしてアトランティックIIのリースを提案したものの、ドイツは最終的にP-8A調達に踏み切ったため共同開発の取り組みは実質的に崩壊してしまった。

出典:U.S Navy photo by Personnel Specialist 1st Class Anthony Petry
ドイツ側はP-8A調達はMAWS導入までの繋ぎで「フランスとの取り組みを予定通り進める」と説明しているものの、まもなく引き渡しが始まるP-8Aは最低でも30年間は使用できるため、フランス側は「2035年までに新型海上哨戒機が必要という仏独の共通需要は崩壊した」と見ており、仏メディアも「ドイツの主張をフランス人は誰も信じていない」と報じ、フランス装備総局も議会の公聴会で「MAWSを再考せざるを得ない」と証言してAirbus案=A321XLRとDassault案=Falcon10Xを検討してきたが、最近締結されたリスク評価契約の中でA321XLRが優先プラットフォームに指定されたらしい。
Airbusは当初A320neoベースの設計を提案したものの、より大きなペイロードを確保できるA321XLRにプラットフォームを変更したため、A321MPAはA320MPAよりも航続距離と滞空能力が大幅に強化され、Thalesが供給する対潜システム(捜索レーダー、音響システム、磁気探知機、ソノブイなど)や自己防衛装置を搭載し、ペイロードベイには魚雷に加えて英伊と共同開発を進めている新型対艦ミサイル=FC/ASWも搭載でき、P-8Aに近いサイズ感になる見込みだ。
因みに英仏が開発を進めていたFC/ASWは当初「極超音速ソリューションを取り入れたコンセプト」を研究していたものの、正式な開発コンセプトは「高機動が可能な超音速ミサイル=RJ-10」と「超低認識な亜音速ミサイル=PT-15」となり、2023年にイタリアが計画に合流したためFC/ASWは3ヶ国の共同プログラムになっている。
RJ-10はラムジェットによるスピードと機動力で敵の防空網を突破し、AWACSや空中給油機など高価で大型な空中目標への攻撃能力も備える可能性もあり、全体的には戦略的抑止力としてフランス向けに開発されたASMPのコンセプトに、PT-15は低認識技術で敵の防空網を突破するためStorm Shadow/SCALPのコンセプトに近く、FREMM、26型フリゲート、タイフーン、ラファール、GCAP、FCASに統合される見込みだが、RJ-10とPT-15のサイズは魚雷発射管に収まらないため潜水艦発射型の開発は予定されていない。
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※アイキャッチ画像の出典:Airbus
>RJ-10はラムジェットによるスピードと機動力で敵の防空網を突破し、AWACSや空中給油機など高価で大型な空中目標への攻撃能力も備える可能性もあり
我が国のASM-3もこういうのに派生したらいいんじゃないかなと思います。
現状、マッハ4程度の超音速対艦ミサイルの迎撃技術は確立されており、超音速による撃墜不可能を謳うならマッハ5以上は必要とのこと。超音速対艦ミサイルの欠点として①高価、②大型で重い、③飛行高度が高い(20m程度)、④空力加熱がある、などの理由で大量配備が難しく、敵に簡単に探知されてしまう。
これが亜音速ミサイルであれば高度5m以下の飛行が可能なので探知は困難になる。更にステルス形状でパッシブセンサー誘導のものも開発されており(ノルウェーのNSM)、同時に複数発射しておけば探知される頃には敵艦の目の前となるだろう。高度5m以下で対艦ミサイルが飛行すると海面との電波乱反射によって物体の判別が困難で、気象状況によっては逃げ水効果でセンサー探知を逃れられる。
って文谷氏が解説していた。
文谷氏は亜音速ミサイル推しですよね。それなりに納得出来る論ではあります。迎撃技術が確立されているかは疑問符が付きますが。
一方対艦ミサイル最大手のロシア軍が超音速対艦ミサイル重点である実績もありますし、米国もフランスもやってないのに日本だけ~という論じ方は説得力を減じる。
ブン谷の言うことだからなぁ…
アレは信用ならない
可能性の一つとしては、開発中の極超音速誘導弾がありますので、それをキンジャールみたく航空機に載せれるようにすると言うのがあるかもしれませんね。
開発がうまく行くかは分かりませんが、今のアメリカの状態を見ていると独自開発を続けるのは当然と言えば当然ですよね。
NATO加盟国内で調達・運用がてんでバラバラなのが良いのか悪いのか
NATOもですがせっかくEUとかやってるんだから共通化すれば良いのにねえ
フランスは昔から武器輸出の為に自国開発が積極的で、共同開発しても離脱してきた歴史がありますからね。
色々な記事読んでても、共同開発中のFCASの開発も怪しいと言われて久しいですし。
P-8は無人機共同を押し出してる(成功はしてない)けど、フランス軍は単機運用するのかな?フランスって原潜もあまり強くないし、対潜哨戒は外国頼りって国是的に不味くないのか?
フランスも哨戒機としてなんの実績もないエアバス案をよう採用したな
ドイツと同じP-8Aにしておけば良いのに
日本は提案してないのか、売る気無いんだな
どんなチャンスにも絡んでいかないと売る機会なくなるのにな
まあ、フランスって共同開発だろうが輸入だろうが
自国のエンジン使えだのなんだのごり押ししようとして話を壊すんで
フランスと組んだり、売りたがる国はあんまりいないんじゃないかな……
ドイツもドイツで旗振る力はないくせに声は高くて無駄に先頭に立ちたがる印象。
旗振る力はあるが足並みを揃える気のないフランスと、共同開発においてどっちがマシかは意見の分かれるところだろうけど、確実に言えるのは
「混ぜるな危険」。
フランスは兵器は自国で揃える国だし、ベース機には実績はあるし、アビオニクスも実績あるから問題ないのでは?
フランスがP-8を選ぶのは無いと思う
フランスは自国産業保護しか考えてないんだから、最初から米国主導のP-8も日本のP-1も検討すらしてないでしょ?
アイキャッチ画像で嵐の中を飛んでいるせいか、B級パニック映画のパッケージに見える···
この後竜巻に乗って空を飛ぶサメに襲われそう
米国のP-8もそうだけれど。
今回のフランスの機体も、対潜UAVが必要でしょう。
自機単独で潜水艦の捜索はできないでしょうから。
その辺りは日本のP-1とは違うでしょうし。
そこで、随伴すべき対潜UAVは何を使うのでしょうか?。
MADを固定翼で運用するのは原理的に現実的じゃないからソノブイや海面レーダー運用程度なら普及してる機体をベースにしたほうが維持費等を低減できるしさして問題ないかなって…
アトランティックみたいな大きなウェポンベイとなると主翼が通ってるからニムロッドみたいな腹にせざるを得ないが…
どれだけMADが役に立っているのか知りませんけど、だったら、なんで、P-3CもP-8もP-1もMADブーム載せてるの?
P-8を採用しない事は自国の権益を守る事だけが目的ではないだろう
・P-8が30年使用できるとしても、ベース機がB-737NGである事を考えたら、いつ生産終了になってもおかしくない
・カナダが発注以降に別の国が発注してなければ、P-8Aは今年生産終了するかもしれないらしい
・なぜとは言わないけど生産はボーイング
・フランス国内の整備事情
・フランスが欲しいのはアトランティックIIの後継機で実機が出てくるのは10年後の話
それらを加味してA321XLRを選択したのではないだろうか