欧州関連

同型原潜の前部区画と後部区画を合体、ニコイチ修理が進む仏原潜の動画をフランスが公開

フランスのNaval Groupは今月13日、火災で損傷したリュビ級原子力潜水艦6番艦「ペルル」の修理が進む様子を収めた動画を公開して注目を集めている。

参考:Naval Group welcomed the French Minister of the Armed forces for a visit of the shipyard hosting repair work on the nuclear attack submarine Perle.

2隻の潜水艦の船体を真っ二つにして1隻の潜水艦として再生するという手法は世界初の試み

フランス海軍のリュビ級原子力潜水艦6番艦「ペルル」はオーバーホール中に艦内前方区画で火災が発生、船殻に使用されている高張力鋼(80HLES)や耐圧殻が14時間も高温の火災に晒され潜航時の水圧に耐えるための「強度」が失われてしまった。

そのためペルルは廃艦処分されるのではないかと噂されていたがパルリ国防相はペルルを修理して艦隊に復帰させることを発表、しかも同艦の修理方法は火災のダメージがないペルルの後部区画と2019年に退役した2番艦「サファイア」の前部区画を合体させるという斬新な方法を採用すると明かしており非常に多くの関心を集めている。

このような好奇心を満たす粋な計らいなのかは不明だが修理を担当しているNaval Groupは今月13日、船体の中央で切断されたペルル後部区画とサファイア前部区画が接合されていく様子を収めた動画(実際には修理現場をパルリ国防相が視察したことを報告する動画)を公開した。

ペルル後部区画とサファイア前部区画の結合作業には順調に進捗しており、今年後半には原子炉への核燃料の搭載と搭載機器の近代改修が行われ2023年初めに母港トゥーロンへ帰還する予定になっている。

因みに結合作業はどちらか一方の配管や配線の位置を変更する必要があるため前部区画と後部区画の間に約1.4mのジャンクションエリアを追加しているためペルルの全長は73.6mから75mへと延長されており、この部分には両区画の配管やケーブルを繋ぐための緩衝装置に加え居住スペースが増設されているらしい。

なぜフランスは複雑でリスクの高い作業を行ってまでペルルを修理するのか、ペルルを廃艦にして退役したサファイアを現役に復帰させたほうがリスクが低いのではないかと思うかもしれないが、フランスは安全保障上の政策によって攻撃型原潜5隻体制を維持する必要があり、退役したサファイアは2019年7月から原子炉区画の解体工事が進められていたため無傷だったペルル後部区画と解体されていないサファイア前部区画を合体させる以外選択肢がなかったというのが真相だ。

出典:public domain ロサンゼルス級原潜サンフランシスコ

どちらにしても損傷した潜水艦の一部を他の同型艦から移植するというのは手法は米海軍のロサンゼルス級原潜「サンフランシスコ」で実際に行われているが、2隻の潜水艦の船体を真っ二つにして1隻の潜水艦として再生するという手法は世界初の試みで非常に挑戦的だが、Naval Groupは3Dデジタルモデリングを活用して前部区画と後部区画の配管や配線の位置を正確に把握、このデータを元に制作されたデジタルツインで実際に修理を行う技術者は事前に作業手順を訓練したり確認するなど難解な工事に対策を施したと明かしている。

補足:2005年に海底に激突して艦首部分を損傷したロサンゼルス級原潜24番艦のサンフランシスコは同型艦で2006年に退役したホノルルから艦首を移植して現役に復帰した。

要するにテクノロジーや工法の進化が今回のような修理を可能にしたという意味で中々興味深い実例だ。

関連記事:原潜のニコイチ? フランスが火災で廃艦寸前の原潜「ペルル」修理を発表
関連記事:受けた損傷は修復不可能か、仏リュビ級原潜の火災は14時間後に鎮火

※アイキャッチ画像の出典:Naval Group

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 4月 16日

    おフランスらしからぬ英国面、艦名はサファイルルになるのかな?

    6
      • 匿名
      • 2021年 4月 16日

      紅茶が足りてないフランス人は国際的な?慣例則って、機関部が残った方の艦名を残してペルルのまま

      10
    • 匿名
    • 2021年 4月 16日

    前部と後部で金属疲労の度合いが違うと思うのだが?
    潜航深度を制限するのか?

    11
      • 匿名
      • 2021年 4月 16日

      もともとこのクラスは深深度潜航をあまり考慮していないようだ、地中海やフランス沿岸部の行動なら事足りるのでしょう
      潜るとミシミシときしむ船体、緊張し顔面蒼白になる乗組員w
      ドイツ映画Uボートの世界

      10
        • 匿名
        • 2021年 4月 17日

        自分もdas boot好きですけれど現代潜水艦はミシミシ言わないんですか?
        安心感が違いますね

        1
      • 匿名
      • 2021年 4月 16日

      潜航深度も速度も回頭も、全部へたれてる方に合わせるんでしょうね。
      上のコメントにある様にそれで事足りる使い方しかしないんでしょう。

      7
    • 匿名
    • 2021年 4月 16日

    原潜っても水中2700tでそうりゅう型より小さいし、サフィールが84年でペルルが93年の就役か。
    これは試験潜行する乗組員には選ばれたくないな。怖すぎる。

    17
    • 匿名
    • 2021年 4月 16日

    執刀医はブラックジャック先生かな? (混乱

    3
    • 匿名
    • 2021年 4月 16日

    艦尾が壊れた艦と艦首が壊れた艦をニコイチするのは伝統的な手法だが
    まさか今どきやる国があるとはなあ

    7
      • 匿名
      • 2021年 4月 16日

      昔はよくやったけど今はあまりやらないなら「伝統的」じゃなくて「古典的」というべきでは?

      6
        • 匿名
        • 2021年 4月 17日

        現代でもしらねのCICが燃えてはるなのCICを移植してたりするし、もっぱらの場合、艦首が破損した場合、新造しちゃうから話題にならないだけでペルルの場合、解体中のサファイアがあって再利用した方が安く済むからニコイチ修理したんでしょ

        4
          • 匿名
          • 2021年 4月 17日

          事実は問題じゃなくて、
          当人が「伝統的」と言いながら「今時やるとは」と言うから
          矛盾しとらんか、と突っ込んでるんですよ。

          3
    • 匿名
    • 2021年 4月 16日

    紅茶の香りがしますね…

    4
      • 匿名
      • 2021年 4月 16日

      ズビアン「!」
      こうですかわかりますん?

      9
      • 匿名
      • 2021年 4月 16日

      艦首交換自体は涼月もウィスコンシンも艦首の交換をしている普通のこと

      4
    • 匿名
    • 2021年 4月 16日

    これ乗り物ニュースのパクリ記事か?

    1
      • 匿名
      • 2021年 4月 16日

      うーん、元記事はフランスの記事で、このサイトでは昨年10月にほぼ同じ内容で伝えてるから、タイミングがかぶるのに気付いてても、進捗を扱いたかったんでは。

      どっちかというと乗り物ニュースが当サイトの10月と一緒って感じか。

      12
      • 匿名
      • 2021年 4月 16日

      乗り物の記事よりこっちの方が内容濃いけど?1日平均3回も更新してるだから元ネタが被る事ぐらいでケチつけたら酷だよ

      19
      • 匿名
      • 2021年 4月 17日

      ニュース系ブログで記事がかぶる事自体は当たり前でしょ?
      3日前の動画公開、というトリガがあるんだからタイミングも別に不自然じゃない。
      何か文章とかに不自然な一致でもあったの?

      11
    • 匿名
    • 2021年 4月 16日

    ダメになったのが前半部で良かったね
    後半部が燃えていたらこの状況だと万事休すだったわけでしょ?

    9
    • 匿名
    • 2021年 4月 16日

    プぺル?

    • 匿名
    • 2021年 4月 16日

    国によって違う誕生石
    リンク
    フランスでは
    4月・・・<上半期>サファイア(後悔)
    10月・・・アクアマリン(不幸)
           真珠(希望)
      (この月の誕生石は、吉凶が相殺されている。)
    ということで、この運命は誕生石によって予言されていることだったんだよ!!

    4
      • 匿名
      • 2021年 4月 16日

      ナ、ナンダッテー!!!???

      • 匿名
      • 2021年 4月 18日

      キバヤシさん…

    • 匿名
    • 2021年 4月 16日

    名前はペルルのほうがかわいいから残ってよかった。

    3
    • 匿名
    • 2021年 4月 16日

    ペルファイア

    2
      • 匿名
      • 2021年 4月 20日

      ヘルファイヤでいいかも

      1
    • 匿名
    • 2021年 4月 16日

    ニコイチW
    もっと別の言い方はなかったのか?昭和の悪徳中古車店みたいだWWW

      • 匿名
      • 2021年 4月 17日

      同一艦体合体再生工法
      自分で書いてても面白くない・・・

      2
    • 匿名
    • 2021年 4月 16日

    世界初の試みだから、ギネスブックには載るだろうが、軍艦には安全運転もないだろうし
    2艦とも退役しておいた方が良かったんじゃないのかな(あるいはダウングレードして
    売り飛ばす)

    • 匿名
    • 2021年 4月 17日

    この試みが成功するか否かは、耐圧殻の溶接作業を行なう職人の技量で決するでしょう。
    フランスの溶接職人、頑張れ!

    3
      • 匿名
      • 2021年 4月 17日

      想像ですけど、両艦の同一耐圧隔壁を残すように切断して間に延長ブロックを挿入するんでしょうね。
      潜水艦のブロック工法は普通ですし難度はさほど高くないように思います。

      1
    • 匿名
    • 2021年 4月 17日

    そのまま艦数減るなら、2個イチ技術も修得する気持ちでしているのでは、戦争がない平和は続くどこまでもと思えば、次の新型艦が出来るまでの繋ぎなら誤魔化しながら運用出来るだろう。新人養成の練習艦ぐらいにはなるでしょ!知らんけど!

    • 匿名
    • 2021年 4月 17日

    延長区画に居住スペースを増設するみたいだけど、スペースの限られる潜水艦とはいえ1.4mって狭いなぁ

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