仏独西の3ヶ国が共同開発する次世代戦闘機はプロタイプ開発で合意したものの、この合意の範囲はフェーズ1B部分に限られていたため「主導権争いが再燃する」と誰もが予想していたが、Dassaultは9日「政府が戦略的自立を捨てて同盟国との相互依存を選択すれば後戻りが出来なくなる」と指摘した。
参考:Dassault CEO strikes dark tone on Europe’s sixth-gen fighter progress
技術や能力だけで問題が解決するならフランスは最初から単独開発を選択していたはずだ
仏独が共同開発する将来戦闘航空システム(Future Combat Air System=FCAS)は有人戦闘機、チーミング可能な無人戦闘機、搭載兵器類などで構成されたファミリーシステムの総称で、このシステムの有人戦闘機=NGF部分は2027年までにデモンストレーターの初飛行、2030年までにNGFの最終設計案を確定、2040年までに実戦配備する予定だったのだが、スペイン参加が決まったことで合意済みだったワークシェアが崩壊してしまう。

出典:Tiraden/CC BY-SA 4.0
ワークシェアの見直しの結果「33対33対33」という公平な分配比で落ち着いたものの、Dassaultは有人戦闘機の開発について「FCASのコア技術=機体設計やエンジン開発はラファールで培った技術がベースなのでフランスが主導すべき」「ドイツやスペインの意見を尊重しつつも仕様に関する最終決定権は基盤技術を提供するフランスにある」と考えていたが、開発国が2ヶ国から3ヶ国に増えたことでドイツとスペインの利益を代表するAirbusの発言力はDassaultを上回ることになり主導権争いが勃発。
当初スケジュールを守るためにはフェーズ1B(試作機開発)の資金を2021年6月までに確保しなければならず、何とか合意を成立させてフェーズ1Bへの移行が確保されたものの、この合意の範囲はフェーズ1Bに限られていたため「主導権争いが再燃する」と誰もが予想していたが、Dassaultのトラピエ最高経営責任者は9日「作業分担を巡るパートナー間の争いが原因でフェーズ2合意に時間がかかるのは確実だ。我々はNGF開発において主契約者だが意思決定に占める立場は1/3に過ぎず、ドイツとスペインの利益を代表しているAirbusの方が上で、常に開発作業の分担で交渉が必要になる」と議会で不満を漏らした。

出典:Dassault Aviation
“出資額に比例したワークシェアを保証するGeo returnは協力関係を構築するのに不可欠でEUROnでは成功したが、今のところNGFでは協力関係を構築することが出来ていない。我々は単独でAirbusに立ち向かうしかなく、何を決めるにも時間がかかる交渉が必要だ。フランスは戦略的自立を追求してきた歴史的経緯があるため仏企業の一部は特定分野のTop Tierだ。これを無視して公平なGeo returnを実施するのは難しい”
“フランスは第三国から何の制約も受けず任務を遂行可能な次世代戦闘機を望んでおり、それ以外のものは計画中止の理由になりうる。もし政府が戦略的自立を捨てて同盟国との相互依存を選択すれば後戻りが出来なくなるだろう。同盟国に対して何を譲歩するのか、それ自体は欧州間の協力や欧州統合への願望において当然のことかもしれないが、それは同時に互いが依存しあう関係に陥ることを意味する”
“(計画中止になった場合、Dassaultは単独で次世代戦闘機をフランスに供給可能かという質問に)傲慢に聞こえるかもしれないが、戦闘機を開発するのに我々以外の誰の能力が必要なのか?協力して利益を分かち合うことに反対しないが、戦闘機開発に関する技術を持っているのは我々だけだ”
トラピエ氏は他にも「ドイツから何からのハイレベルな見返りがない限り、タイフーンから派生した技術(第三国から制約を受けるかもしれない技術)をNGFに組み込むのは不可能だ」「誰と協力してNGFを実施するかは政治が決めることで私には答えられない」「伝統的な同盟国と協力するかどうかは政府や政治家の判断に委ねられている」「NGFの問題は契約の細部に踏み込むと事態がより複雑になることだ」「NGFが計画通りに完成すればラファールはチープに見えるだろう」とも述べている。

出典:Dassault Aviation
因みにDefense Newsは「断片的な合意がNGFの開発遅延に繋がっている」「トラピエ氏は出資額ではなく能力でワークシェアを分配すべきだと主張した」「トラピエ氏の主張は戦略的自立政策を支持する議員の共感を呼ぶかもしれない」と指摘しているが、技術や能力だけで問題が解決するならフランスは最初から単独開発を選択していたはずだ。
米国は自国の需要のみで規模の経済をある程度確保できるものの、フランスが単独開発したラファールはアフォーダビリティの向上や産業界の商業的機会に課題を抱えており、それを認識しているためラファール後継機で単独開発を回避したのだが、戦略的自立と共同開発を成立させるためには何らかのトレードオフが必要で、フランス固有の要件=核抑止や空母での運用能力を満たすため開発の主導権は譲れない、戦略的自立を支える仏企業の能力維持のためGeo returnではなく能力重視のワークシェア分配を願うなら出資額を増やすしかない。

出典:Airbus
但し、ドイツもスペインも産業界の能力や基盤を維持したいと考えているため「フランス配分を増やすための出資比率変更」には同意しないと思われ、FCASの枠組みを維持できるかどうかは「フランスが何を優先するか次第」といったところだろう。
関連記事:フランス、ドイツ、スペインが次世代戦闘機の開発を進めることで合意
関連記事:仏独の対立は泥沼化、次世代戦闘機の実用化は10年遅れの2050年頃
関連記事:フランス、ドイツがダッソー主導を受け入れないならFCAS崩壊の可能性
※アイキャッチ画像の出典:AIRBUS
いつもの
ただでさえ自己主張が激しい西欧の中の極めつけに煩い独仏何だから、合意なんてできるわけ無いでしょ。
最近は戦闘機開発の機会自体が少なくなってるのだからお互い譲るわけがない。
フランスの要求を通すには独自開発か、金だけ出して一切ワークシェアや口を出さない奇跡のようなパートナーいない限りあり得ない。
次期戦車のMGCSではスペイン入ってこないのかな
平和ですねー
あと十数年はNATOに攻めてくるような奴は出ないと思ってるんでしょうね皆
戦車もそうですが、こんなの始める前からわかっていただろうに、なんでいつも同じところをぐるぐる回っているんですかね…
金でしょうね。
金が理由でもよいですが、あらかじめ予期されることなので、もう少し対策というかなんというか…
フランス単独で実行可能な計画を立てて着手していたほうが良かったと思う
兵器に限らず製品はどんどん完成させて市場に出した方が良い
GCAPで日本も当初は日英伊で4:4:2のワークシェアを提案してたらしいが、揉めると悟るやあっさりと33:33:33を飲んだ。確かに今まで積み上げてきたものを考えると物足りなく感じるが、優先順位を間違えなかった。
根底にあるのはやはり危機感の差でしょう。
技術力や資金力を考えると3:5:2ぐらいが妥当だったように思うから、33%のワークシェアは日本にとって悪くない結論だったと思う
レオナルドの技術力でしょうね。
イタリアは1機も買う予定は無いですから。
歴史は繰り返す
いつも通りのフランスという感じですね。
フランスは、規模の経済・財源がついていけばいいなと思いながら、遠目に眺めてしまいます。
緊急課題は、ウクライナ派兵を声高に叫び続けてきましたから、『陸軍増強・歩兵増強』かなあと思ってましたがどうなりますかね…
艦載仕様絶対!それがフランスの独立性の証なんだ!っての本当に理解できない
肝心のカタパルトがアメリカ依存の時点で空虚な主張にしか聞こえない
一応イギリスからもかえなくはないし。>蒸気カタパルト
F-35Bからも滑走路も使うようになったから空母の共同開発して日本とイタリアを巻き込んで艦載機開発するFCAS計画がスタートする可能性
EU圏内Buy Europeanなどと言い出してアメリカのみならずイギリスも排除すると息巻いているのに売ってくれますかね…
中国から電磁カタパルト買えばいい
普通にフランス単独で空母出して介入とか治安維持とか頻繁にしているから当然だとしか
さらに言えば、予算規模の問題から空母はさほど緒方かできないので米製艦載機を導入すると艦載機体の規模が維持できなくなる
ラファールの開発ではそこは大変重視されたし、運用実績もそれを裏付けているとフランスは考えているのだから当然の結論なのでは?
FCASとGCAPの統合を求める主張をたまに見るけど、やはり何もどうやっても上手くいくとは思えませんね…
GCAPはGCAPでメローニさんがサウジ参加支持したり、日本でも今月下旬に日サウジ防衛相会談で話に出るみたいだしどうなるやら…
まあライセンス生産したいなら別にいいと思う
開発に参加は出せるもんないでしょって感じ
金だけ出させて口は出させない(は流石に虫が良すぎるかw)、またはTier2国としてライセンス生産だけの話とする
これで纏まるなら自分としても文句は無いですね
別に虫が良い話でもないのでは。
「(購入分以外の)仕様に口は出させない。出せる技術は限定する」は戦闘機輸出ではごくごく普通の条件です。
サウジは対等な開発国として参加したいとの発言はありましたが(個人的にはブラフでサウジ自身そんなことが可能だとは思ってなかったと考えています)、その可能性はGIGO条約の発効・正式発足で完全になくなり、仮に今後GIGOに参加できたとしても外様にしかなれないでしょう(GIGO条約に「参加国は対等な権利を有する」的な条項はないので)。
そしてどうなるにせよサウジには「その条件でいくら出せる?」というだけの話です。
開発に参加したいというサウジの考えは本音だと思いますよ
中東の石油で成り立ってる国は、枯渇後を見据えてどこも産業育成に必死ですから
最も、今回の場合はただし金は出すから技術をくれ、ということでしょうけれど
あとあの手の本物の成金金持ち国家は、金があれば何でもできると割と本気で考えてるので断られるまでは普通に皮算用してます
「開発に参加したい」は本音でしょう。
私がブラフだと思ってるのは「『(日英伊と)対等な開発国として』参加」です。
てかその「金のある国家は金でなんでもできると思い込んでる」という前提は具体的に何を根拠に生まれてるんでしょうか。
戦闘機調達でそんな事例、具体的に何かありましたっけ?
戦闘機に限らず、経済関連では普通にそういう態度で接してきますよ?
経済関連以外でも、ちらほら聞きますが…?
個人としての振る舞いならもっと露骨ですね
で、戦闘機の導入でその無理難題が通った事例があるんですか?
最後まで通ってない、通してないならそれは単に「交渉術」でしょう。
戦闘機以外でもそういうことしてくる国だから戦闘機でもそうしてきますよ
といってるのであって、通った通ってないなんて、私何も言ってませんよ?
そもそも
>私がブラフだと思ってるのは「『(日英伊と)対等な開発国として』参加」です。
という事にして大して、
金さえあればで何でも通ると思っていると言ってるだけですよ?
私はそれしか言ってませんよ?
変な言い方になりますけど、日本人の常識というか考え方が、外国の方全てに通じるわけではないですよ
考え方、価値観、論理などの形態が全然違う国の人なんてありふれてますし
本件と同じ様に票数を増やして影響力を高めようとする愚かな試みが出てこないとも言えない。
なので一枚噛みたいとしても、基本的な部分に余計な口出しをする権利は与えるべきではないですね。
こりゃFCASは空中分解しそうですね。
フランスは独自でやりたがるだろうから放っておくとして
今GCAPに独西が転がり込んで来られると話が面倒なので、
冷たいようですがこちらがある程度形になるまでFCASがグダグダやっててくれると良いのですが
多分ですけど、中東の国をパトロンを見つけて独自開発にするのでは…
そもそも彼らにはあんまり期待するものがないしやたらと条件にうるさいというのもあるので…買いたかったら後で言ってねあなたたち向けの生産分については別途考えましょうって方がいいかも知れないね。こっちの生産分にまで入ってこないで感。
独西の合流は英伊も望まないでしょう。
伊がFCAS統合を望んだのはテンペストの頃で今とは状況が違う上に、仏抜きの独西と合流して当然日本が離脱して、それで上手くやれるくらいなら最初からユーロジェット社で「ユーロファイターNG(意味深)」でも開発してるでしょう。
LGBTに配慮したNoGenderな機能ですね(すっとぼけ)。
日本が33%の公式発表なんてあったの?
報道とかメーカーの先走りとかは無しで
日英伊4:4:2の話(ロイターの飛ばし?)をイタリア国防省が否定した、という文脈の中で「対等なパートナーシップの原則」というのは出ていますね。
それを勝手に「33:33:33」に意訳したメディアはあったかと思います。
五分と五分の盃は、骨肉の争いを呼ぶからアカンとあれほど・・・
FCASは仏・ダッソーの我儘に独西が従う以外に成功する可能性が小さいでしょう。
対してGCAPは日本の自由度があり2030年代にプロトタイプ機が完成すれば航空
自衛隊に最適化した魔改造を施す、ラピダス・キオクシア等の最先端半導体による
R2-D2のような個々のエリートパイロットに特化した人工知能を搭載した隊長機が
ウイングマン僚機隊を指揮して侵略する中国・ロシアの戦闘・爆撃機を撃破する。
実現する事を願ってます
さすがに夢を見過ぎなのでは…
仏・ダッソーの我儘に独西が従う以外に成功する可能性が小さいでしょう。
対してGCAPは日本の自由度があり2030年代にプロトタイプ機が完成すれば航空
自衛隊に最適化した魔改造を施す、ラピダス・キオクシア等の最先端半導体による
R2-D2のような個々のエリートパイロットに特化した人工知能を搭載した隊長機が
ウイングマン僚機隊を指揮して侵略する中国・ロシアの戦闘・爆撃機を撃破する
日本列島を守ってくれる事を願ってます
他山の石。
能力だけでワークシェアを決めるのはどうかと思うが、
それと同じくらい、出資額でワークシェアを決めるのもダメな気がしてきた…
FCASの場合、フランスの技術やノウハウの持ち出しが多そうだし…
かといってフランスだけで51パーセントは無茶だと思うが
フランスは影響力を保ちたいという考え方とフランス企業の偉い人達の派閥が強すぎるという問題を抱えてるからね。
だからいつ心変わりするかわからないというリスクがあって、早期からフランスを抱えるのは難しい問題かもしれない。目途がついてからフランスも参画するかという形の方がああいう手合いの国には良いのかも知れないね。何度こうした共同開発が台無しにされてきた事か…
金さえあれば、完全自力で開発してるはずなのに、っていうのがフランスの本音なんだろなぁ…
UAVとの協働が前提になる次世代の戦闘機システムにおいては、ハブ役の有人機は5世代機よりもさらに高価でさらに配備数が減るだろうなというのは現時点で分かりきっています。ラファールは初飛行から何十年も経ってお値打ち価格になってきた頃に雪崩を打ったように売れ始めましたが、同じことがNGFでも出来るかは黒寄りの不透明だと思います。現時点でもトルコや韓国のような国々が先端兵器開発に参入しているのだから、20年後にはラファールの顧客たちが競合になっていることだってあり得ます。
そうなると絶対確実な需要は自国と共同開発者だけです。だったらアライアンスが瓦解するような事を言うのはおかしい気もしますがそれはアジア的な考え方で、ヨーロッパの大陸側ではこういうときこそ内輪での自分の優位性を示して分け前を増やしておく必要があると、そう考えてるんじゃないでしょうか。西と独、特に独の立場としては再武装化で軍備が嵩んでいるのに経済が不調な中であらたに(未経験の)戦闘機自主開発をするのはリスクに映っているはずで、フランスがここで逃げ場がない事をアピールし始めるのは意図は分からないでもないです。トランプ関税まつりが始まって以降の独の産業界、特に兵器産業は米資本のヨーロッパからの排除を声高に主張しています。これが米資本だけでなくアジア資本も含んでいることは言うまでもないことで、すなわち独はフランスか自主開発以外の選択肢を自分で丁寧に潰しているわけですし。
やはり欧州に主権国家がいくつもあるとグダグダになってダメだわ
欧州には国家は2つくらいで良いよ
首都は当然ローマとコンスタンティノープルでお願いいたします