フランスとドイツは将来戦闘航空システム(FCAS)の有人戦闘機を共同開発するかどうかで対立していたが、仏La Tribuneは8日「奇跡は起こらなかった」と、独Tagesspiegelも「仏独共同戦闘機計画は失敗に終わった」と報じ、6月10日のILA Berlin 2026で有人戦闘機の開発中止を発表するらしい。
参考:Le SCAF, c’est bel et bien fini
参考:Nach jahrelangen Vorbereitungen: Deutsch-französisches Kampfjet-Projekt gescheitert
参考:FCAS: Deutschland und Frankreich gehen beim Fighter getrennte Wege
欧州はラファールとタイフーンの後継機問題で大きな再編を迎える可能性が高く、英伊日が開発を進めるGCAPも大きな影響を受けるはずだ
フランス、ドイツ、スペインは将来戦闘航空システム(Future Combat Air System=FCAS)の共同開発を進めているものの、ダッソーがワークシェア配分の3ヶ国合意を無視した主導権を要求し、ドイツのメルツ首相が「このままではFCAS計画を続けられない」と、インドラのデ・ロス・モソス最高経営責任者も「我々とスペイン国防省はFCASに対する立場について完全に一致している」「計画に33%出資するのであれば33%の利益を受け取らなければならない」と述べ、フランス側にFCASのワークシェア比率を守れと要求した。

出典:AIRBUS
この問題は当初2025年末までに政治的解決策を見つける予定だったが、フランスとドイツの溝が埋まらず協議が難航し、両国はFCASの主要構成要素だった有人戦闘機=NGFを共同開発するかどうかで意見が分かれ、ダッソーは共通のNGFを、エアバスはフランスとドイツで別々のNGFを開発することを主張していたが、Breaking Defenseは2026年2月「要求要件の食い違いは新たな政治的アプローチだが、所詮はエアバスとダッソーが『NGFの主導権』を巡って争っている産業上の紛争に基づいたものに過ぎない」「ここ2週間の報道とメルツ首相の発言によってアナリストの多くがFCAS終焉を確信するようになった」と指摘。
どちらの言い分が正しいのかは謎だが、フランスとドイツはFCASのNGF部分について「フランス=ダッソー主導」で政治的に合意していたものの、欧州の共同開発は基本的にGeo return(出資額に比例したワークシェアを保証する仕組み)が前提で、F-35プログラムの国際共同開発における米国主導とは根本的に構造が異なる。

出典:Dassault Aviation
要するにフランスとドイツは「NGF部分のダッソー主導」で合意しても、出資比率はGeo returnの精神に則って均等なので「ダッソー主導」は強制力がなく、ダッソーのトラピエ氏は「協力関係を構築する上でGeo returnは不可欠だが、何を決めるにも時間がかかる交渉が必要だ。フランスは戦略的自立を追求してきた歴史的経緯があるため仏企業の一部は特定分野のトップティアだ。これを無視して公平なGeo returnを実施するのは難しい。フランスは第三国から何の制約も受けず任務を遂行可能な次世代戦闘機を望んでおり、それ以外のものは計画中止の理由になりうる」と指摘。
“もし政府が戦略的自立を捨てて同盟国との相互依存を選択すれば後戻りが出来なくなるだろう。同盟国に対して何を譲歩するのか、それ自体は欧州間の協力や欧州統合への願望において当然のことかもしれないが、それは同時に互いが依存しあう関係に陥ることを意味する。(計画中止になった場合、ダッソーは単独で次世代戦闘機をフランスに供給可能かという質問に)傲慢に聞こえるかもしれないが、戦闘機を開発するのに我々以外の誰の能力が必要なのか?協力して利益を分かち合うことに反対しないが、戦闘機開発に関する技術を持っているのは我々だけだ”

出典:Dassault Aviation
結局のところ、トラピエ氏は「Geo return=出資額ではなく開発能力や技術力でワークシェアを分配すべきだ」と主張しているため「ダッソーがワークシェア配分の3ヶ国合意を無視した主導権を要求している」となり、FCASの最初の取り決めを尊重していないのはエアバスの方だというのはダッソーの傲慢に過ぎず、トラピエ氏が「ダッソーは常に傲慢だと言われるが今日のどこが傲慢なのか?」と発言した部分にダッソーの傲慢さが集約されている。
フランスのLa Tribuneは8日「奇跡は起こらなかった」「複数の情報筋によるとドイツのメルツ首相は6月10日に開幕するILA Berlin 2026でFCAS計画の終了を発表する見込みだ」と、ドイツのTagesspiegelも「仏独共同戦闘機計画は失敗に終わった」「ドイツ政府筋によるとメルツ首相とマクロン大統領はダッソーとエアバスによる戦闘機の共同開発に関して合意に至ることは不可能であるとの結論に至った」と、ドイツのディフェンスメディア=hartpunktも「ドイツとフランスはFCASの有人戦闘機を共同開発しない」と報じ、遂に欧州の第6世代戦闘機開発は空中分解してしまった。

出典:GlobalCombatAir
ただし、hartpunktは「FCASの有人戦闘機部分以外の要素(クラウド・ネットワークや無人戦闘機など)は引き続き共同開発する予定だ」と報じており、欧州はラファールとタイフーンの後継機問題で大きな再編を迎える可能性が高く、英伊日が開発を進めるGCAPも大きな影響を受けるはずだ。
特に英国は高騰するGCAP開発コストの捻出に苦しんでおり、ドイツが「開発コストを負担するので合流したい」と言い出せば大喜びするのは目に見えているものの、ドイツが開発に参加すればワークシェアの見直しから始めなければならず、そうなれば2035年配備の目標はほぼ確実に守られなくなるだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Dassault Aviation





















欧州情勢に振り回される気分はいつの時代も同じか…
ドイツはオブザーバーやバッチ2からの開発参加で妥協するような国ではなさそうだし…資金提供をチラつかせれば英国が揺らぐだろうなぁ
英国含めてさっさと資金拠出してGCAPを可能な限り進めていれば、欧州各国に対して先行する優位を使って商業的にも強い立場を確保できていたのかなあ…。「皆様のご購入や参加は大歓迎です。もっとももうここまで進めちゃってるから後乗りする皆様方のワークシェアや仕様への要求については日英伊より引き下げてしか話を聞けませんよ。かえって高付いて遅くなりますからね」みたいな。
金を出せないと金を稼げないんですよね、いやはや。
フランス側としてはドイツの代わりにインドを共同開発国に招き入れて開発を続行するのが理想でしょうね
お互い空母保有国なので艦載型も既定路線ですしラファールのサプライチェーンを現在進行形でインドに移転中ですからジオリターン条項もなんだかんだでインド側と折り合いを付けたい所ですね
結局第六世代戦闘機なんて概念は存在しないんじゃないかねぇ。本体は既存の戦闘機に対する誰の目にも明らかな明らかな革新とかが特にないというか。
戦闘機を用いた無人機管制なら別に既存戦闘機にその機能をつければいいでしょ?という言葉に対してこれというハッキリとした反論が可能な要素がないし、本格的なステルス性が必要ならF-35でいい(アップデートがグダってるのに関しては、どうせ無人機がやるからと割り切って機能を絞るのも手)し、それすら必要ない場面も多々あるだろうし、なんなら場合によっては戦闘機でなくともいいかもしれない。
ウクライナにおいてドローンがゲームチェンジャーたりえた要素の一つは、歩兵という小さな単位で長距離打撃能力を獲得できることだったわけで。空にもそれを拡張して当てはめられるのならば、本体はむしろ安価でコンパクトなアセットの方がいいのではという気はする。
それこそ、絶対にステルス機が必要な局面でない限り、グリペンEのような戦闘機で用は足せる、というようなシステムが望ましいのかも。
そんな気がしますよね。
私も、妥協するべきはして、時間内に作れるものを作ってしまおう派です。
逆にいうとグリペンでも、売れるときに売れる期待があることが、商機を逃さないために必要ではないでしょうか。
拙速すぎてもいかんが、開発スピード、投入時機、使いやすさと拡張性のほうが重要。
うちらがやらんと、隣国がやるでしょうね。当たり前のはなし。
売れるものを作ったうえで、買ってくれる国がいればよし。
オフセットで何か取引をしてもいいし、とにかく選択肢が増えます。
実体は分からないが第六世代戦闘機を自称してる開発機を飛ばしてるのは今のところ米中だけなので
最短でもコイツらの量産機が実戦に投入されるまで真価の程は分かりませんな
ウクライナにしてもロシアにしても、できれば装甲車の中からドローン運用したいはず。まあ見つかりやすいという欠点はあるが、移動が楽で生存性も高い。今のように前線が膠着して延々と陣地が構築される前ならなおさら有用だったはず。そう考えると、本体がコンパクトであることが自然とも言い切れない。
それにレーダーはデカさと電力が大事なので、米中の次世代機も大型化しているしロシアでは Mig-31 が未だに重要な立ち位置を果たしている。データリンク能力が上がれば不要になる可能性はありますが、AWACS は地上撃破や長射程ミサイルに対して脆弱になりつつあること、衛星だって衛星攻撃兵器に対して安全とは言い切れないので全依存は危険なことを思えば、やはりシンプルにデカくて強力なレーダーがある戦闘機は一種の保険としても欲しい。
長距離打撃に関して言えば、空を飛ぶブツは航続距離の問題が付きまとうのですが、空中給油の自動化・迅速化が将来進めば一変するかもしれません。フォークランド諸島への爆撃のようなトンデモ空中給油をお気楽にできるなら、航続距離を伸ばすために機体を大型化・高価化するということは減りそうです。
MIG31みたいにSバンドアンテナ40個くらい生やして遠距離探知を期待するのは良いが、S/Lバンドの送受信アンテナってそれなりに大きいから物理的に取り付ける場所が限られる…
多分グリペンEだと胴体のキャパシティや発電能力が足りないのでは。
デかくてパワーがある、可能であれば複座でワークロードを分散できるものが求められているのではないかなと。
脱アメリカ依存の方向を各国が検討していますが、
やはり一筋縄ではいきませんね。
そもそも戦闘機開発を10年程度で量産に移るのは計画がタイトすぎるように見えますね。
もっとも遅れること前提で日本も考えているのかもしれませんが。
行き場を失ったドイツのFCAS用の資金の大半は、無人機に行くんじゃないかな
かなり無人機に前のめりだし
母機はタイフーン用だろうけどね(ドイツで自由に出来るのがタイフーンしかない関係)
過渡期やねー
将来的には主力戦闘機=AIパイロットの無人機になりそうだが
各国とも有人機を捨てきれないジレンマ
だからこそ計画が遅々と進まないのかな…
ドイツさん遂に無人戦闘機に全ツッパするか
無人戦闘機なんぞロマンは感じないがね…
知ってた&こっちみんなトルコ行け
むしろ我々がトルコに逃げ込んだ方が幸せになれるのかも…
財政難の英国抜いてドイツ入れよう
ドイツのエンジン技術+イタリアの機体デザイン+日本のおもてなし侘び寂びの精神で世界一の戦闘機ができる!
忍の心ではアカンですか
戦術的要求が違いすぎるので設計が迷走してさらに遅延するのが目に見えています。ドイツは、要求の近いスウェーデンとグリペン後継も含めたターンアラウンド重視の機体で対地攻撃を重視した機体を開発する方がお似合いです。
イタリアがGCAPメンバーですから、戦術上高強度の防空網を貫通する長距離作戦が必要なら、NATOとしてイギリスとイタリアが担えば良いだけ。
100歩譲って、既に決定済みの仕様の変更には応じないのを前提に、他の国に資金提供と引き換えにイギリスのワークシェアの範囲内で仕事割り振るのがせいぜいでしょう。
ジャガイモもカエル喰いも、後から来てリーダーシップ取らないと気が済まない民族なのでノーサンキューです。
顧客リストの順番を金で買ってくれるなら、まあ……
そこはドイツのおもてなし+イタリアの機械設計+日本の機体デザインで、どんなドッキリメカが出てくるかを楽しみにするんじゃないのか
これでドイツがGCAPに入るならゴタゴタは確実なのでそうなったら日本は思い切って手を引くべきだと思います。
当面はF-35でなんとかしのいでF-47?あたりの輸出版に期待するしかないんでしょう。F-22の時と違ってアメリカもだいぶ日本に甘くなりましたし。
イギリスが出せない分を日本が拠出して、その分のワークシェアも日本が取ればいいだけでしょ。
イギリス側には比率を(ペナ額上乗せで)買い戻せるオプションでも付けときゃ良い。
どうせ防衛費を3.5%まで上げなきゃいけないんだからGCAP関連に思いっきりブチ込むくらいしないと達成自体が覚束ないし。
とにかくドイツを入れるとこっちまで崩壊するので絶対入れちゃ駄目なとこは同意。
様々な思惑を持つ国々をまとめるのは一筋縄ではいかない。空中分解自然消滅するのは目に見えてる。
結局はアメリカ様に頭を下げるだろう。
>「ダッソーは常に傲慢だと言われるが今日のどこが傲慢なのか?」
4周ぐらい回ってこの姿勢は好き
GCAP組はドイツの方から交渉を求めてくるまで待ちの一手ですね。
こっちから声をかけるとナメられますからな。
英国のGCAP予算拠出が正式決定されてから交渉しないと足元見られますから、英国は早く決めて欲しいです。
そして、GCAP予算がロクなチェックも受けずに膨張しているのが問題であることは確かなので、全面的な洗い直しはするべきだと思います。
まさに欧州情勢は複雑怪奇なり。
まあいつものことだよね独仏で共通でなんだかんだ言いだしてすぐに喧嘩を始めて分裂するってのは…
正直上手く行く方がビックリというものなので政治的なセレモニーみたいなもんだねこりゃ。