欧州関連

仏装備総局、MBDAと敵防衛網を飽和させる消耗型無人機の開発契約を締結

フランスのマクロン大統領は今月15日「消耗型無人機の分野で遅れているのは明白だ」と危機感を示し、ルノーはShahedに類似した長距離無人機の生産準備を進めており、MBDAも22日「仏装備総局と敵防衛網を飽和させる消耗型無人機の開発・製造契約を締結した」と発表した。

参考:MBDA Achieves Major Milestone with the first ONE WAY EFFECTOR Contract

従来の巡航ミサイルや対地ミサイルと消耗型無人機は作戦上で競合するのではなく補完関係だ

フランスのマクロン大統領は今月15日「我々が(消耗型無人機の分野で)遅れているのは明白だ」「ウクライナの戦場で見られるイノベーションの力とスピードに対応するため迅速に行動する必要がある」と言及し、仏メディアのL’Usine Nouvelleは20日「ルノーがChorus(コーラス)と呼ばれるShahedに類似した多目的任務に使用できる長距離無人機の生産準備を進めている」「コーラスの原型はTurgis Gaillardが開発を進めていたもの」「ルノーはコスト削減と生産の最適化のため自動車用素材の転用や自動車生産ラインで一般的なセルフピアシングリベット接合を採用した」「2026年夏までに10機のプロトタイプを製造する」と報じた。

出典:Renault

このコーラス計画はマクロン大統領が言及したイノベーションの力とスピードに対応することを念頭に設計され、装備総局はプロトタイプのテストが成功すればルノーとTurgis Gaillardの合弁企業と10年契約(最大10億ユーロ)を締結する予定で、自動車車体の設計・製造を行っているルマンのルノー工場に専用ラインを設置して月600機(年7,200機)ほど生産可能になるらしいが、MBDAは22日「装備総局(DGA)と敵防衛網を飽和させるOne Way Effector(OWE)の開発・製造契約を締結した」と発表。

これは昨年のパリ航空ショーで発表した「低コストで長距離飛行が可能な高強度戦争向け無人機」のことで、OWEは「一方通行」もしくは「使い捨て」の兵器システムを意味し、MBDAも「ウクライナでの経験に基づいた消耗戦戦略で大量使用による敵防空能力の飽和を目的にしている」と説明し、22日のプレスリリースの中でも「OWEは敵の防御を飽和させる強力かつ費用対効果の高いソリューションだ」「質量と性能の両立を低コストで実現する」「計画発表から最初の試射、そして最初の契約締結まで1年足らずだった」「この前例のない短期間での契約実現はDGAの革新的な防衛ドローン協定によって実現した」と言及。

出典:MBDA

DGAもMBDAも契約金額、数量、納期を明らかにしていないが、MBDAが言及した「DGAの革新的な防衛ドローン協定」とは軍事産業と非軍事産業の協力、民需向けの生産能力を軍需生産に転換することを意味し、MBDAも従来の防衛サプライチェーン外との提携を含む「量産を目指した産業的アプローチ」を強調し、このアプローチを採用することで月1,000機(年1.2万機)のOWEが生産可能になるらしい。

因みに公表されているOWEのスペックは弾頭40kg、ジェットエンジン駆動、最大到達範囲500kmで、ディープストライク向けのOWEはCROSSBOWと呼ばれ、全長5.3m、翼幅3m、ジェットエンジン駆動、最大到達範囲800km、モジュール式ペイロード300kg、ナビゲーションにも衛星航法、慣性航法、自律的な画像ベース航法を採用し、既存の軍用及び商用向けサブシステムを活用することで「低コスト」と「量産性」を両立するらしい。

出典:MBDA

CROSSBOWは「敵防空網を飽和させるソリューション」ではなく「目標破壊を目的にしたソリューション」で、実質的には自爆型無人機もしくは低コスト巡航ミサイルに分類されるシステムとなり、従来の巡航ミサイルや対地ミサイルと何が違うのか聞かれると「速度、ペイロード、高度な能力とのトレードオフで小型化による低観測性、量産性、低コストを実現したシステム」となり、高度なシステムには達成困難な「量という質」を提供してくれる。

フランス軍の新要件も「戦力の質と量の拡張」なので、従来の巡航ミサイルや対地ミサイルと消耗型無人機は作戦上で競合するのではなく補完関係だ。

関連記事:民需から軍需への生産転換、仏ルノーがShahedに類似した長距離無人機を生産
関連記事:パリ航空ショーが開幕、初日から人気の高い無人機関連の発表が相次ぐ
関連記事:MBDA、低コスト巡航ミサイルや戦車砲発射型ミサイルをDSEIで披露

 

※アイキャッチ画像の出典:MBDA

露軍事裁判所、巡洋艦モスクワの沈没はミサイル攻撃が原因と公式に認める前のページ

米国防次官が日韓を訪問、世界基準の国防支出として総額5.0%を要求か次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    英陸軍の装甲戦闘車「Ajax」は健康な兵士を病人にする?ノイキャン機能のヘッドフォン必須?

    調達スケジュールが大きく遅れている英陸軍の次期装甲戦闘車「Ajax/エ…

  2. 欧州関連

    アゼルバイジャン大統領、不介入のアルメニアを評価し和平協定締結を示唆

    アゼルバイジャンのアリエフ大統領は20日「南コーカサスは何世紀も血なま…

  3. 欧州関連

    ドイツ国防相がGlobalEye取得に言及、控えめに言っても最有力候補だ

    スウェーデンのジョンソン国防相と会談したピストリウス国防相は「ドイツは…

  4. 欧州関連

    燃料詐欺に引っ掛かったルーマニア空軍、MiG-21が故障して飛べなくなる

    ルーマニア国防省は今年4月「事故率が異常に高い」という理由で空軍のMi…

  5. 欧州関連

    トルコが新たにT129、HürkuşB、TB2を受注、TB3の新イメージも公開

    トルコ航空宇宙産業はナイジェリアから攻撃ヘリ「T129ATAK」をチャ…

コメント

  • コメント (11)

  • トラックバックは利用できません。

    • MK
    • 2026年 1月 25日

    戦いって有効かどうかはともかく相手が持ってるものと同等以上を自分達も持ってないと話にならないのですよね。今後世界が無人機で溢れかえりますね。

    9
      • バーナーキング
      • 2026年 1月 25日

      日本を中型以下の無人機で攻撃するなら無人機母艦を用意するでしょうが同じものを用意しても屁の役にも立たんでしょう。
      相手が持ってる兵器に有効でかつ自国で用意、運用できる装備の方が大事。

      2
    • Mr.R
    • 2026年 1月 25日

    そうした低コスト巡航ミサイルとでも言うべき無人機への対処手段も確立しないといけないんですよね…
    本当に戦争は金食い虫だ

    6
    • Authentic
    • 2026年 1月 25日

    使い捨てを前提にするならまずは電子部品やモーターをなんとかしたほうがいいんじゃないかな
    電子部品の生産は東アジアに集中してるから
    今のヨーロッパの電子産業がウクライナばりの消耗戦に耐えられるとは思えない

    5
    • ペルシャ文明の叡智
    • 2026年 1月 25日

    シャヘドは現代イラン最大の発明かもしれない

    19
      • Authentic
      • 2026年 1月 25日

      もはや国旗に描いていいレベル
      本当に結果としてそれくらい画期的な兵器だったし
      イラン人はドヤ顔していい

      17
      • 朴秀
      • 2026年 1月 25日

      経済制裁されて通常兵器が買えない国の
      苦肉の策が大ヒット
      分からないものですね

      12
      • 58式素人
      • 2026年 1月 25日

      他にもいくつか目新しい事をしていますね。
      機材358徘徊型SAM:イエメンで米国製のMQ-09を複数墜としています。
      MQ-170センチネル捕獲:今のところ、彼ら(イラン)だけと思います。
      よほどにセンスの良い技術者がいるのだ、と思います。

      4
    • Ard
    • 2026年 1月 25日

    日産も工場止めるだ何だってやってないでやってみようぜ?

    9
    • 58式素人
    • 2026年 1月 25日

    日本の場合、シャヘド136/他の飽和攻撃にどのように対処するのかな。
    今のところ、対策のようなものは(有るとしても)表に出て来ていないような。
    大阪や東京のように、外海から奥まった所にある都市はさておき、
    北九州などは、外海に面していると思うのだけれど。
    シャヘド136の飛翔速度は概ね100kt、ジェット化されたものは概ね200ktだから、
    外海の海岸線から200海里くらいから海岸線に至るまでの間に全数撃墜する方法を
    用意しておく必要があるのでは?。
    全て海上で対処する、という事なのでしょうね。
    キラードローンなどは、射程から陸上での運用でしょうから主力にはならないでしょうし。
    やっぱり、航空機からの対処になるような気がします。
    海上からの対処は、フネの数が全く足りないでしょうし。
    そして、飛んでくるのは、UAVだけではないでしょうし。

    • kitty
    • 2026年 1月 25日

    東海金属工業株式会社のセルフピアシングリベット接合のHPの解説を興味深く、眺めてしまいました。
    仮にも航空機をこんなんで作られたら、従来機はたまったもんじゃないですね。
    片道飛行で済むのと何万時間も飛ぶ機体じゃ製造コストは違ってもしょうがないとはいえ。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  2. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  3. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  4. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  5. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
PAGE TOP